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マジェストーラ国立魔法学院 編入
美しき情景1
しおりを挟む長い回廊を歩くと次第に風の流れを感じるようになった。
薄暗さに目も慣れていき、次第に楽器の音色は薄れてゆきやがて無音となっていく。
何も聞こえず歩く足音だけに変わる頃、水流と滝のような水飛沫の音が耳に届いた。
「この先の渡り廊下は、既に庭園の中を通るようになっておりまして、端に腰掛けて眺めるお客様も中にはいらっしゃいます。今はどなたもいらっしゃいません。
向きによっては見方も変わり、又、昼と夜ではまた違った楽しみ方ができるというお声を頂戴しております。
本日は特別に、渡った先から庭へ降りる散策路を解放する許可を支配人から得ています。
よろしければ、水場には足元をお気をつけてごゆっくりご覧になって下さいませ。」
店員は、庭園が見れる渡りまで案内し、簡単な説明はしたがそれ以上庭園について蘊蓄を語ることもなく、スッと下がった。
ゆっくりと進む先にあるのは夜の帳と渡り廊下の足元を照らす行灯。
個室近くの回廊よりもあきらかに暗い。所々照らされた渡り廊下の手すりの色に気づく。
「……朱色?」
ああ、そうか。この渡り廊下自体が日本庭園で見たことがある池の上によくある朱色の橋みたいだったんだ。
真っ直ぐな渡り廊下にさしかかり、空気が一変して外の匂いが強くなる。
「っ……!?」
屋外とわかる風にそよぐ木々と葉擦れのカサカサという音と滝の音が耳に心地いい。
葉擦れと水の音に誘われ、渡り廊下に進むと視界に広がる庭園風景にアーヤは言葉を失った。
先に言葉を発したのはラナとエルシオン。
「…見事ですね。月光花が満開です。」
「………ええ。」
庭園は、アーヤの知る範囲の想像していた景色と重なるものも確かにあったが、人工的なライトアップやイルミネーションとは全く違う光と闇の織り成す美しさにとにかく圧倒された。
建物の照明はあえて暗いのか行灯の光は柔らかく庭園を囲み、庭との境界を型どっている。
暗闇に溶け込むような岩、木々、草花、この空間を鏡のように逆さまの世界を映す池。
ユラユラと広がる波紋の根源を辿れば、池の空中に浮く岩のような塊から滝が池に勢いよく流れている。
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