夢じゃなかった!?

Rin’

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エスリアール王城 出会い

堪忍袋の緒が切れる?!2

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「今は男子寮に行ってるだけで、もう戻って来ます。」

説明する間も一歩、また一歩と近づいて来る姿も、やっぱり猫っぽく思えた。用心しながら気になる対象まで少しずつ距離を縮める仕草に見えてしまう。だからか、怖いとは思わなかったけど…うん?


長い前髪の隙間から見えた目の色は澄んだ琥珀色だった。いつの間にか目の色がわかるくらいの距離。
うんん?なんだか…。あれれ、近すぎるよ?!

…距離を、もう少し離れようよ。


スタ スタ 後ろに後退する私。

「「…………。」」

スタ スタ また離れた分だけ近づいて来る?!何で?

ジリジリと後退を繰り返す私だったが、とうとう背中に壁の感触が逃げ場がなくなったことを知る。


トン  


後ろはもうダメだと悟った私は、女子寮の方へ背後の壁づたいに移動することに作戦変更する。何故追い詰めて来るのか聞いてみたい気もするが、先に適度な距離を確保だ。

ズリ…  



ズリ……ズリ


タン!


一歩、一歩と壁づたいに移動する私の顔横に突然、男子生徒の手がくっついた。

これは!ぞくにゆう壁ドンではないか!?

う、嬉しくない。女子寮への退路が絶たれてしまった!
ちっ、仕方ないこうなったら反対側に…


タン!


ふぬっ!?
ふぬぬ…。八方塞はっぽうふさがり?からかわれているんだろうか?


「…………。」

「あの、何なんですか?」

「…逃げるから。」


「会話するには近すぎです。」

「問題ある? 」


「ありありです。普通、こんな距離で話しませんよ。」

「俺は…もっと近くでいい。」

な、何故、私は壁を背に会話しているんだろう。どうしてこうなった。どこで間違ったの?

「君、この学院の生徒でしょう。授業中に何で寮にいるの?怒られるから授業に戻った方がいいんじゃないですか?」

「この状況で、俺の心配?アンタ鈍いって言われない?」

鈍い?言われるけど、何だか今は認めたくない。

「べ、別に。」

「フッ、嘘が下手だな。授業中だけど、忘れ物取りに来たらアンタに会った。彼氏いるの?」

「な、急に何ですか?」

「一目惚れしたから、口説いてる。」

「はぁ?冗談でしょう……。私、絶対あなたより歳上だし。私の歳を知ったら手のひら返すに決まってる。」

「別に…歳なんて気にしないけど。俺は18。アンタはいくつ?」

「う…」

恥ずかしいけど、正直に伝えて頭を冷してもらおう。

「33歳。とうに成人してるし、異世界人だからって若く見られるけど、大人!君よりだいぶ年上なの。君はもっと歳の釣り合う若い子を彼女にしなさいよ。わかった?」

うう、何だかわびしい。

「嘘じゃなさそうだけど、やっぱり関係ない。俺はアンタに興味がある。」


突然、左のイヤーフックをしている耳のあたりに吐息と囁きが聞こえたと思ったら、後ろ髪から毛先にかけて握られていた。

「黒い髪、初めて見た。」

「ふぇ?!だからって、勝手に触るなんて非常識じゃないの?」

手で櫛削くしけずられ、目の前で滑らされる。口説くって、口説くって言ったって!いきなりで全然そんなムードもへったくれもあったもんじゃない。


むしろムカムカしてきた。


ドクン ドクン

流石に、初対面でこれはない!これ以上の身勝手は我慢できない。堪忍袋かんにんぶくろが切れそうだ。

退いてください。」


「アンタ……いい匂いだな。」 

人の話を聞こうかー。
そして言葉を理解しようかー。

尚も私の髪で遊んでいる猫系男子。

ドクン

退・い・て・く・れ・る?」


「やだ。名前、なんて言うんだ?」


はぁ?この期に及んで名前だとぉ?!

ドクン ドクン ドクン

次の行動の為に深呼吸する。

「スゥ…………ハァー……私は、退いてと、言っているんですが。聞こえませんかね。……スゥ……。」


深呼吸と共に苛立つ気持ちをギリギリ抑えて言葉で伝えるも、一向に男子の手と腕は壁と私の髪から離れてくれない。

沸々ふつふつと確実に煮詰まっていく何か。

そしてグツグツと重い感情に心が染まっていく。何で、どうしてこんなことに、嫌だ、退いてって言ってるのに…。


……プッ……チン!


窓の開いていないホール。ヒュオーとある場所から不自然な風が広がっていく。


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