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ルチアの幸せ 02
しおりを挟むそれでもあんなに私との夢に嵌るとは思わなかったわ。伽の者も呼ばなくなって、夢の中で何回も私を求めるようになった。
(でもアルと会う日の午前中に、自分の部屋で二度寝をしていたら、夢が始まったのは驚いたけど)
私はあの日のことを思い出して、クスリと笑う。
アルバートに「呪いがかかってる」と言った魔術師は、私の師匠でもあり、カザリー侯爵家と繋がっている。一年も同じことをしているから、ちょっと刺激が欲しくて先生にお芝居をしてもらったのよね。
師匠に「呪われてるので解呪する」と吹聴してもらう日だったから、健気な女を演じて「私を捨てないで」と囁いたら、殿下はやたら興奮してたっけ。別れないといけない二人。それなのに、燃え上がる欲望!
(ああいう、禁断の関係って燃えるわ!)
それにしても結婚後も疑似不倫として楽しめるかと思ったのに、存外アルは真面目だったみたい。私を理由に解呪しちゃうなんて、彼こそ堅物ね。それとも呪いという言葉が、強すぎたかしら?
まあ、それでも結婚前にだいぶ楽しんだ。乱暴に扱われるのも楽しいけど、今日みたいに愛し愛される夫婦としてするのも好き。特に今日は初夜だもの。「何も知らない私に、教えて下さい」とアルの手を胸に持っていったとたん、目がギラギラとしたのには心の中で笑ってしまったけど。
(本当にアルったら、単純で可愛い! 大好きよ!)
私は小さく鼻歌を歌いながら、アルバートのもとに戻ると、音を立てずベッドに潜り込んだ。彼は相変わらずぐっすりと寝ていて、私が出て行ったことに気づいていない。
(純粋で無垢なルチアとの初夜は、楽しかったかしら?)
すうすうと寝ている殿下の頬を、つんと優しく突くと「ルチア……」と寝言が漏れた。まあ! なんて(単純で)可愛いの!
それにしても、私が本当の姿を見せてからの殿下の様子は、待てができない犬のようで、見てて楽しかったわ。今日なんて私を愛撫しながら、勝手に腰をカクカクと動かして……。気づいていなかったけど、私はアルバートが興奮して暴走するのが好きなのかもしれない。それにもしかしたら殿下も私と同じで、攻めるのも攻められるのも両方好きなんじゃないかしら?
そう思うと心が弾む。しばらく健気なルチアとそれを溺愛する殿下を楽しんだら、師匠に嘘をついてもらって体調不良ということにしてもらおう。そして夜は別々に過ごして、しばらく体を触らせない。
そしてその後、久々に体を重ねたら、さぞかし燃えることでしょう!
それにこんなのは、どうかしら? 「しばらく一緒に過ごせなくて、淋しい思いをさせてしまったので、私に殿下をお慰めさせてください……」としおらしく言ってみるの。もちろん無垢なふりをして不器用にアルの体を愛撫するけど、殿下がもう挿入させてくれ! と懇願するまで、決して挿入させないわ。
(ああ! 考えただけでも楽しい!)
私は自分の妄想で、じわりと下腹に熱が籠もるのを感じた。はあ、もう一度したいところだけど、今のルチアでは駄目ね。夢の私なら眠っている殿下のアレを、しゃぶって起こすくらいするだろうけど……。
私はため息を吐き、自分の夜着のボタンを二つ、ぷちぷちと外していく。服の隙間からは豊かな胸の谷間が見えていて、我ながら色っぽい。
(ふふ。これできっとアルは明日の朝、私を求めるわ。だってアルって私の胸、大好きだもの)
心地よい寝息をたてるアルバートの髪を撫でると、彼は少しだけ幸せそうに口元を緩めた。私はちゅっと音を立て、アルの頬にキスをする。
「アルバート様、これからもずっと、夢の続きを楽しみましょうね」
私はアルの腕の中に潜り込み、ゆっくりと瞼を閉じた。
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最後まで読んでくださってありがとうございます!ルチアは婚約時代「ずる〜い」と思ってるだけで嫉妬もしてないですから、結婚後はアルバートを手の平で転がして楽しむと思います(笑)アルバートは気付かず幸せに過ごしますし。
まとめての返信となりますが、感想ありがとうございました!