【完結・R18】夢で美女を好き勝手できる呪いにかかった王子は、婚約者に土下座する

花伊美咲

文字の大きさ
上 下
11 / 12

ルチアの幸せ 01

しおりを挟む

 あまりにも激しい行為でさすがに疲れ果てたのか、アルバートは私の横ですうすうと可愛らしい寝息を立てていた。私はそっと頬に口づけをし、口元を緩める。


「アルバート様、良い夢を……」


 私がアルの柔らかい髪を優しく撫でても、ピクリとも動かない。


(ぐっすり寝ていらっしゃるわね。ふふ。可愛い寝顔だわ)


 私は夫を起こさないよう、そっとベッドから下りる。少しベッドが軋んだが、大丈夫そうだ。アルは起きる気配すらない。


 そのまま隣に続く私の私室に移動すると、音が響かないようにゆっくりとチェストを開けた。このチェストはわざわざカザリー侯爵家から持ってきたもので、引き出しには魔術で二重底を作ってあった。底に隠してあったものをゆっくり取り出すと、出てきたのは魔法陣が描かれた羊皮紙と、アルと私の婚約の指輪だ。


(……証拠隠滅しとかないとね)


 私は魔法陣をテーブルに敷き、その上に婚約の指輪を二つ置いた。ゆっくりと魔力を流すと魔法陣は青く光り、魔法の炎で魔術を施した指輪が燃え始める。暗闇にぼうっと青白い炎が浮かび上がり、とても幻想的だ。指輪が少しの欠片も残さず燃え上がると、部屋はまた暗くなっていく。私はその光景を満足気に見届けると、テーブルの灯りを点け、深々と椅子に座った。


「けっこう、楽しかったわね」


 私は婚約指輪がはまっていた右手を見ながら呟き、クスリと笑った。アルバートには「私が夢に出てくる魔術」と伝えたけれど、実は違う。本当は「指輪を着けている者同士が、夢の中で会える魔術」なのだ。


 だからもちろん「アルとピクニックした」とか「お忍びデート」なんてことは、大嘘だ。


 最初っから私は、アルバートと夢の中でエッチなことをしまくっていたのだ。


 初めて夢の中で会った時は、私から誘った。まあ、アルバートは私の姿を見た瞬間から、ゴクリと生唾を飲み込んでいたけど。それに私は勉強ばかりして堅物だと思われてたようだけど、こっちの勉強もかなりしていましたからね! 殿下はすぐに私の虜になってくれたわ。


 爽やかで優しい第一王子として周囲に振る舞っているぶん、抑圧したものがあるのでは? と思って、心の奥の乱暴な欲望すら引き出した。


(ふふ。私も強引にされるのが好みなので、ちょうど良かったわ。好みじゃない男性には髪の毛一本も触られたくないけれど、好きな人は別ですもの)


 そう、私がアルバートと会ったその日に一目惚れしたというのは、あながち嘘ではない。だって殿下はとってもお顔が良いし、私の好みど真ん中! 金髪碧眼で爽やかな容姿。絵本の中の王子様みたいにキラキラと輝く人が大好物なのだ。


(もっと正確に言うと、そういう一見爽やかな人が卑猥な言葉で私を攻めたり、反対に私にいじめられて喘ぐ姿が好きなのよね)


 ついでに性欲絶倫なら最高ね! と思ってたら、なんとアルバートが夜伽の女性を毎晩呼んでいるではないか! 「あんな彫刻のような綺麗な顔をして性欲が旺盛だなんて、期待以上かしら?」なんて胸がときめいたものだわ。見かけどおり繊細な人で性欲が薄いなんて困るもの。私は結婚後の夜のことを考えては、ワクワクしていた。


 それでも毎晩のように、殿下が伽の者と楽しんでいると思うと腹も立つ。


(私だってアルバート様と同じくらい性欲を持て余しているのに、殿下ばかりずるいわ!)


 それが最初の不満だった。だって私達は恋をして結婚するわけじゃない。家格の釣り合いと、私の優秀さ。王妃教育も嫌がらない勤勉さを買われて、十二歳の時に決まった婚約だ。それに決まってしまったなら、私に決定権など無い。


 それは殿下も同じだったのだろう。私達の関係は喧嘩もなく表面的には穏やかだったが、結婚間近の年齢になるにつれ「私以外の女を知りたい」という欲望が膨れ上がったようだ。


 でも男性であるアルバートはそれでいいでしょうけど、淑女である私は他の男性となんて絶対にできない。そんな悶々とした日々の中見つけたのが、この魔術だったのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

閉じ込めちゃうほど重い愛を受け止めて!

しがついつか
恋愛
ルイーザは見知らぬ部屋で目を覚ました。 首輪を付けられ、部屋に閉じ込められていた。 アラフォーとなり日々の生活に疲れ切っていた彼女は、見知らぬ部屋からの脱出を簡単に諦めた。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫

梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。 それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。 飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!? ※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。 ★他サイトからの転載てす★

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...