【完結・R18】夢で美女を好き勝手できる呪いにかかった王子は、婚約者に土下座する

花伊美咲

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夢の女の正体 03

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 結婚式も無事終わりルチアの待つ寝室へ行く間、俺はふとあの呪いの夢のことを思い出していた。


(そういえば、あの夢の女は、なぜルチアの本当の姿をしていたのだろうか……)


 あの日は衝撃的なことが多すぎて、自分の夢の呪いのことを話さずじまいだった。結局なんの呪いだったのかわからないが、すでに解呪したのだから別に気にすることもないか。そんなことより、今夜は待ちに待った初夜だ。


 俺は呪いなど終わったことだと頭から追い出し、愛しい妻の待つ寝室の扉を開けた。


「ルチア……」


 薄暗がりの中でゆったりとベッドで微睡んでいる妻の姿は、あまりにも神々しく自分の目を疑ってしまうほどだった。薄い上質な布で作られた夜着はゆったりとしていたが、ルチアの女性らしい体のラインにそっていて肉感的だ。


「アルバート様……」


 俺が部屋に入ってきたことに気付き、顔を上げたルチアだったが、どこか元気がない。どうしたのだろうと隣に座り肩を抱くと、ルチアの顔は少し緊張しているように見える。初めての夜だからだろうか。それにしては、落ち込んでいるようだ。


「ルチア、大丈夫かい? 元気がないようだが、何かあったのか?」
「…………」


 俯き何も話さないルチアの態度に、不安がよぎる。もしかしたら俺と結婚したことを後悔しているのだろうか? ルチアの背中を慰めるように優しく撫でると、ようやく彼女は顔を上げ口を開いた。


「……アル。私、あなたに話さないといけない秘密があるの」
「えっ? 秘密?」


 秘密と言われると少し不安になってしまうが、今の俺は何でも許せそうだ。俺はルチアの肩をぐっと引き寄せ「怒ることはないから言ってごらん」と促した。しかしその可愛らしい唇から出た言葉は、思いも寄らないものだった。


「実はね、私がアルに呪いをかけたの」
「えっ! ルチアが私に呪いをかけた!? どういうことだい?」
「実は……」


 今にも泣きそうな顔でルチアが話したことによると、こうだ。俺が夜伽の女性を呼んでいることを知って不安になった彼女は、結婚を急ごうとしたが俺に断られてしまった。そこで思いついたのが、俺の夢にルチアを登場させる魔術をかけることだったらしい。


「古い文献でその魔術を見つけたの。戦争で離れ離れになっている恋人同士が、お互いの夢を見れる魔術具の指輪を身に着けていたって書いてあって。それで私……」
「その指輪の魔術具っていうのは、もしかして君がくれた婚約の指輪のことかい?」


 そう言うとルチアは恥ずかしそうにしながら、コクリと頷いた。あの指輪に魔術が施されてあったとは。たしかにあの指輪を身に着けてから、夢を見るようになったな。


(そういえばあの指輪は、どこに置いただろうか。一応調べてみたいのだが)


 俺が指輪の行方を気にしていると、ルチアは黙り込んだ夫を見て不安になったのか、大粒の涙を流し始めた。


「本当にごめんなさい! 寝ている時に私の夢を見てくれたら、少しは私のことを思い出してくれるのではと思って……」
「ルチア……」


 美しい瞳からぽろぽろと涙を零し謝るその健気な姿に、俺はズキンと胸が痛んだ。俺が夜伽の女達と遊んでいる間、ルチアは苦しい思いで結婚を早めようと考えていた。それなのに俺は自分の欲望だけで断り、ここまでルチアを悲しませていたなんて!


「ルチアいいんだ! 悪いのは私だ! むしろ私こそが、ルチアに許しを請わないといけない!」


 俺はベッドに手をつき、頭を下げた。ルチアを悲しませないと誓ったのに、結婚したその日に泣かせるなんて。俺が必死になってルチアに謝ると、彼女は慌てて俺の手を握ってきた。


「そんなことないわ! それにもっと早く謝るべきだったの。でも結婚が決まってすっかり指輪のこと、忘れてしまって。さっき王妃様にあなたが結婚前に呪いの夢を見ていたって聞いて、ようやく思い出したの。本当にごめんなさい」


 顔を上げルチアを見ると、目を赤くして、しょんぼりとしている。不謹慎だがその姿もとても愛らしく、俺はルチアを引き寄せ抱きしめた。


「いや、いいんだ。魔術師が騒ぎすぎただけだ。楽しい夢だったし、それに、その、途中で指輪の魔術が消えてしまってね。だから魔術師も安心してたよ」
「まあ! アルったら凄いわ。王家の加護があるのかしら」


 ルチアがほっとしたように笑っている。良かった。それに呪いというのは、やはり大袈裟だったな。実際はルチアが俺に秘密で、魔術具の指輪を渡しただけだった。


 それにしてもあの夢の魔術は、性的なことをするために見るものだったのか? ということは、ルチアも私とそういうことをしていたのだろうか? しかしいつもの初心な反応から考えると、違う気がする。俺は腕の中にいるルチアに気になることを質問してみた。

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