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婚約者ルチアと夢の女 02
しおりを挟む「あぁっ……! アルバート様! もっと、もっとして下さい……!」
ああ、やっぱり抗えなかった。俺は切なそうに懇願する彼女を振り切れない。ずちゅずちゅと彼女の中を追い上げ、自分も吐精する。もうこれで三度目だ。今夜は彼女も何か感じているのか、中がうねるように俺の精を搾り取ってくる。
「私だけ、私だけを愛してくださいませ……」
その言葉に喜びと同じくらい、苦しさがよぎる。この国の王族は側妃をもてない。血筋で争いごとを避けるため、妻は一人だけだ。唯一許されているのが、結婚前の伽だけ。
この女は呪いの夢の人間だ。この場で睦言として約束するのは危険だし、なにより俺には婚約者がいる。真面目で堅物できっと閨事には疎いだろう。この女にもたらされる喜びは皆無な結婚生活だ。
それでも彼女は――。
ずるりと女の中から肉棒を抜くと、自分で見ても卑猥に思うほどヌラヌラと濡れ、そそり勃っていた。女の蜜壺からは、二人の熱い粘液がこぽりと溢れ出す。
また女の中に入れて、思う存分突き上げたい。そんな欲望が膨れ上がると同時に、同じくらいの強さでルチアの頬を染め喜ぶ顔が頭に浮かんできた。
「……すまない。それはできないんだ」
「……私がお嫌いですか? こんなに淫らだから?」
女の取り乱し泣く様子に、思わず手を伸ばし慰めようとする。それでも昼間見た嬉しそうなルチアの笑顔。何年も未来の王妃として頑張ってきた姿を想うと、ここが潮時なのだろう。俺は伸ばしかけた手を引き、無言で女を見つめた。
「もう、アルバート様は、私を必要としないのですね……」
「……すまない」
俺がそう答えた瞬間、女は砂の城が崩れるように、目の前からすうっと消えた。ほんの一瞬、名前を聞けば良かったかと、後悔の気持ちが湧く。しかしその気持ちも、目が覚めると同時に消え去ってしまった。
「殿下、おはようございます。おや、今日は顔色が良いですね」
部屋に入ってきた従者の声が、スッと頭に入ってきた。いつもの気だるい目覚めとは違う。
(呪いが解けたか……)
目の前で消えた女とは、もう二度と会えない。そう、確信めいたものを感じた。そしてその予感どおり、毎夜現れていた夢の女は、次の日から出てこなくなった。
これからは、ルチア一人を愛していこう。
そう決意し日々を過ごしていると、意外にもあの女への執着心は湧いてこなかった。呪われてると教えてくれた魔術師を呼び出し確認しても、やはり解呪されていると驚いていた。
「これで、良かったんだ……」
それに今日は結婚式の日取りを決めるため、両家の話し合いがある。心が決まって良かった。俺はすうっと大きく息を吸うと、足取り軽くルチアの元へ急いだ。
「アルバート様!」
ルチアとその両親が待つ部屋に入ると、顔にベールをかけた女性が立ち上がった。両隣にルチアの両親であるカザリー侯爵夫妻がいるのだから、ルチアだろうけど別人に見える。
ベールだけじゃない。ルチアの服装もいつもと違う。目の前にいる女性は、胸元が大きく開いた流行のドレスを着ている。そしてそこから零れんばかりの豊かな胸が見えた。
それに髪もダークブラウンだったはずだ。それなのにベールからはみ出している髪は、艷やかな金色だ。それに声まで違う!
「ル、ルチア……? いや、しかし声や髪色が……」
「ふふ! アルバート様、私はルチアですよ?」
そう言ってその女性がベールを取ると、目の前には金色の猫のような目で見つめる、夢の女がいた。
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