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性欲に弱い王子は、呪われる 02

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「呪いね……」


 いつもどおりの診断結果が出ると思っていたのに、思わぬ急展開だ。俺は思わずドスンと音を立てて、ソファーに座った。それを見て従者が見咎めようとするが、俺が頭を抱えるふりをすると、注意するのを止めたようだ。


「殿下、魔術師も言いましたが、軽く考えないで下さいね。誰が呪ったか不明ですが、殿下を王座に就かせたくない者の仕業かもしれません」
「そうだな。気を確かに持たないとな」


 たしかにそうかもしれない。下には弟が二人いるし、王弟やその息子達もいる。俺はこの国で権力を持っているカザリー侯爵家の娘、ルチアと婚約しているから王座が決まったようなものだ。しかしそれを苦々しく思っている者もいないわけではないだろう。


 俺がもし夢に取り込まれ、王座に就けなくなったら得をする者。弟達はまだ小さい。すぐには王座には就かないだろう。その後見人を狙っている者か? 弟を傀儡ぐぐつとして扱い、実権を握ろうとする欲深い者? 王弟とその家族は無いと信じたいが、息子可愛さに何を企んでもおかしくはない。


 もしくは、弟達に継がせ王妃として、自分の娘を嫁がせたい者の仕業かもしれん。そうなると、俺の妻になるルチア絡みの線もあるな。ルチアを王妃にしたくない者が俺を……。いやそれは意味が無いか。それなら俺を呪うより、ルチアを直接呪ったほうがいい。


「ふう、考えすぎて頭が痛いな」
「お茶をお持ちしましょう」
「ああ、すまない」


 少し気分転換でもしたほうがいい。それにしてもあんなに魅惑的な夢ともお別れか。小さくため息を吐き、ふと自分の右手を見ると、婚約の指輪が目に入った。


 婚約者のルチアはあの夢の女と違って、真面目で堅物だ。それを見込まれて未来の王妃にと決められたのだが、妻としてはどうだろう。正直な気持ちとしては、あの女と夢で息抜きできるのなら、結婚生活もうまくいくと思っていたのだが。


 王子というのは憧れの目で見られることも多いが、制約も多い。最初は結婚前に夜伽の女と楽しめれば、それで満足だと思っていた。その後はルチアと信頼を築き、良い家庭を作ればいいと考えていたのだが……。


「私を捨ててしまうのですか?」
「えっ?」


 目の前にあの女がいた。猫のように少し釣り上がった、魅惑的なあの金色の目で俺を見ている。ああ、この強気な目が俺の前で蕩けきってしまうのが、たまらない。


「ずっと一緒にいたいです……」


 そう言って女は、俺の唇に噛み付くように口づけをし、舌を差し込んできた。くちゅくちゅと熱い舌が絡み合い、いつの間にか俺は彼女をソファーに押し倒している。気付けば彼女の胸元の服をずらし、ふるんと飛び出した豊満な胸の先端に吸い付いていた。


 しっとりと雪のように白い二つのふくらみを揉みしだく。赤く熟れた実のような胸の先端を舌で転がすと、女は腰をのけぞり甘い声を上げた。彼女のしなやかな腕は俺の首に回り、艶のある声で俺の心を誘惑してきた。


「殿下、私、もう、欲しいです……」


 そう言って女は俺の手を自分の秘部に持っていく。ああ、本当だ。彼女のここは下着の上からなぞるだけで、くちゅりと音を立てて俺を求めている。


 女の望みどおりすぐにズボンの前をくつろぐと、ブルンと跳ねるように熱い肉棒が飛び出した。俺の先端からもトロトロと粘ついた液体が溢れ、自分も女と同じだとクスリと笑う。


 そのまま躊躇することなく女の下着を横にずらし、蕩けきった蜜壺にずぶりと挿入すると、女は体を震わせ涙をぽろりと零した。


「殿下、私を捨てないで……」


 そう懇願する切ない声に、胸が締め付けられる。同時に女の中がきゅうと締まり、まるで俺を離すまいとしているみたいだ。俺は興奮のあまり彼女の口内を犯すように舌を入れむさぼると、女も必死に舌を絡めてきた。


「俺も……んんっ……おまえと、ずっと一緒にいたい……!」


 ずちゅずちゅと激しく剛直を抜き差しし、女の奥に吐精する。ポタポタと俺の汗が女の体に落ち、かつてないほど興奮しているのがわかった。まだ、抜きたくない。体を繋げていないとこのまま一生この愛しい女と会えない気がする。女は「殿下、殿下」と俺の名を呼んで、体にしがみついてきた。


「……俺の名前は、殿下じゃない。アルバートだ。そう呼べ」


 以前の夢で女に名前を尋ねられた時、なけなしの理性で「殿下と呼べ」と答えた。その頃すでに女の性技の虜になっていた俺は、名前を呼ばれるのが怖かったのだ。名前を教えてもらった女は喜びの涙を流し「アルバート」と何度も俺の名を呼んでいる。王子としてでなく、ここまで俺自身を求められたことがあっただろうか。


 夢の女と情を交わしてはならない。頭ではそう思っているのに。


「女、おまえの名前はなんと言う?」
「私の名は――」


「――か、殿下! 起きて下さい」
「えっ!」


 ぱちりと目を開けると、そこには心配そうに見つめる従者がいた。俺は一人ソファーで横たわり、呆然とするしかなかった。
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