上 下
156 / 169
番外編7(2024年文披31題)

18・蚊取り線香(蚊取り線香)

しおりを挟む
「そろそろ蚊が出てきたわね……」
 先程蚊に足の甲を刺された寧々は小さな膨らみに薬を塗る。ちなみに蚊に刺されたところも外傷と認識されるらしく、星音の能力で治せるのだが、流石にそんなものに能力を使わせることはしない。
「ていうか電気のやつ切らしてるじゃない……」
 この時間から買いに出かけるのも億劫だ。寧々は昨年しまっておいた渦巻き型の蚊取り線香を取り出した。
「ねえ、さっき蚊に指刺されたんだけど……」
 ちょうど火をつけたところで由真が入ってくる。由真は火のついた蚊取り線香を見て何かを察したらしかった。
「足の甲とか指とかって刺されると地味に痒いわよね」
「痒くならないように刺して欲しいよね」
「蚊は血を吸うときに唾液を出すんだけど、それが痒みの原因らしいのよね。でも刺されたときの痛みを麻痺させてもいるらしいわよ」
「その場で痛み感じたらやっつけられちゃうからか……」
 由真はそう言いながら、徐々に白い部分を広げていく蚊取り線香を見ていた。
「そう考えると上手くできてるんだなぁ」
「そういう反応する人珍しいわね……」
 一見意味がないようなことにも理由があったりする。それについて考えを巡らすことができる由真のことが寧々は好きだ。けれどそれは口に出さず、蚊取り線香の渦巻きが少しずつ灰に変わっていくのを見つめていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

淫魔(サキュバス)に支配された女学園~淫らに喘ぐ学生~

XX GURIMU
SF
サキュバスによって支配された女学園 愛されることの喜びを知り、淫らに喘ぐその様はまさに芸術 ふわりふわりと身を委ねるその先には何が待っているのか……

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...