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十三・連鎖
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『ああ……ようやく私を求めてくださった』
女は男の上にしな垂れかかり、嬉しそうに言う。しかし男の意識はどこか朦朧としていた。女の中に胤を注ぎ込んだ日から、何かがおかしくなっている。抵抗していたはずの心にまで影が絡みつき、身動きが取れなくなってしまっているようだった。
『今宵も楽しみましょう?』
「っ、ああ……」
女の白い手が男の胸板をなぞる。女はその指の下で既に膨らみ始めた小さな蕾に気付き、微笑みを浮かべた。それを指で円を描くように刺激すると、男は声を上げる。
「ああ……、駄目、だ……」
『気持ちいいのでしょう? もう自分の心に逆らわないで下さいませ』
「う……、く……」
男は抵抗しようとするが、女の手管に抗えずに流されてしまう。男のものが張り詰めていることは男も女も気が付いていた。
『ふふ……いいのですよ、貴方の好きにしていただいて』
「あ、ああ……」
男の目から光が失われていく。女はそんな男の顔の上に跨り、濡れそぼつ性器をその指で開いた。とろりと溢れた蜜が男の口の中に入っていく。それは甘露のように男の喉を潤していった。しかしそれを飲み込んだ男の肌には、一瞬禍々しい黒い模様が浮かぶ。
男は夢中になって女の秘部に舌を這わせた。男の舌が蠢くたびに、女は甘い声をあげる。とろとろと溢れ出す蜜に、男の意識は徐々に酔わされていった。
『ここはこんなに張り詰めて……いいのですよ。私の中に入っても』
「ああ、あ……!」
女は男のものをその手で軽く扱いた。そして自らの秘部に男のものを何度も擦り付ける。男はたまらなくなり、女の腰を掴むと、一気にその体を貫いた。
『ああっ、あぁ……愛していますわ……っ』
「俺もだ……! ずっとお前と、こうしたかった……!」
男は女に誘われるままに口づけを交わした。二人は舌を絡め合い、お互いの唾液を啜り合う。
女は妖しく微笑みながら口を離すと、ゆっくりと腰を動かし始めた。その快楽に男は抗うことができず、ただ快楽を享受することしかできない。
「ああっ!」
『ふふ、可愛い……』
女は男の上で淫らに踊り続ける。やがて限界を迎えた男が絶頂を迎えると、女は満足げに微笑んだ。そして男の上に倒れ込み、耳元で囁く。
『愛しています――宿堤様』
「俺もだ……俺も……本当はずっと、お前のことが」
男は女の細い体を抱きしめながら答えた。男――宿堤は女の長い髪を無骨な手で梳る。その黒い髪にまとわりつく影に、宿堤は気付いていなかった。否、うっすらと気付いていながらも、もうそれを受け入れ始めていた。
「ああ……緑波、何故お前は……」
『過去のことはもういいではありませんか。私たちはこうして結ばれたのですよ』
女――緑波はもう死んでいる。それは宿堤が一番わかっていることだった。しかし意識はぼやけ、思考がまとまらないうちに、心の奥底に封じ込めた欲望が引き摺り出されてしまう。
「ああ、緑波……また――」
『ええ、わかっていますよ。貴方の全てを私に下さいませ』
宿堤は褥の上に緑波を横たわらせた。先程の行為で既にはだけていた緑波の着物を脱がせ、その白い胸に顔を寄せる。宿堤が胸に舌を這わせると、緑波は静かに微笑み、その頭を優しく撫でた。宿堤がその体を貪るように舐めたり吸ったりしても、緑波はただ優しく笑うだけだ。しかし宿堤はそれに気付かず、ただ緑波の体を求め続ける。
『ふふ、そんなに慌てなくても私は逃げませんよ』
「ああ……でも、もう」
緑波の脚を大きく開かせると、宿堤はその中心に顔を埋めた。既にそこは蜜が溢れている。それを舐め取り、吸い付くと、緑波は高い声をあげた。
『あぁ……っ! ああっ!』
「ずっとこうしてやりたかった……」
宿堤は緑波の秘部に指を這わせながら言う。緑波はその刺激に身を捩らせながらも、言葉を続けた。
『あ……愛して、います』
「ああ……俺もだ」
宿堤は顔を上げて緑波に口づける。そして自らのものを緑波の性器にあてがうと、一気に貫いた。その衝撃に緑波は声を上げるが、それでも彼女は幸せそうに微笑んだ。
『あぁっ、あ……! 宿堤様……っ』
宿堤は激しく腰を動かす。その度に緑波の口から甘い吐息が漏れた。彼女の肌は既に熱を持ち始めている。宿堤はその熱を孕んだ肌に舌を這わせた。そして再び緑波の体に覆いかぶさり、その胸や首にも愛撫を施していく。すると緑波は一層高い声を上げ、体をくねらせた。
『あっ……ああっ!』
「ああ……緑波、俺はずっと、お前が欲しかったんだ……あんな者になど、渡したくなかった!」
『ええ、わかっていますわ……っ、宿堤様……! 貴方が私を見つめる目は、いつもとても熱くございました……っ!』
緑波は宿堤の背中に腕を回すと、ぎゅっと抱きつく。そして耳元で囁いた。
『もっと激しくしてもいいのですよ……貴方が望む通りに……』
宿堤はその言葉通り、激しく抽挿を繰り返す。その度に緑波は声を上げた。宿堤が緑波の最奥に精を放つと同時に、彼女もまた絶頂を迎える。褥に体を預ける緑波の足の付け根から白いものがとろりと溢れた。それを見つめていた宿堤は目を濁らせ、暗い笑みを浮かべていた。
宿堤の体に影がまとわりついていく。しかし彼はそれを気にする様子も見せず、再び緑波の体に覆い被さった。
***
「っ……ぁ、いや……」
木蓮は微かに声を上げた。木蓮の白い体に影の蛇が纏わりついている。しかし木蓮は深い眠りの中にいた。影の蛇は木蓮の肌に触れながら、ゆっくりと服を剥いでいく。顕になった白い肌を蛇が這っていったが、木蓮は僅かに身じろぎをするだけだった。
『あの男は堕ちた。もうすぐだ――』
闇の中に声が響いた。蛇たちは木蓮の体の上を這い回りながら、細い体に巻きついていく。ぎちぎちと音がしそうなほどに締め上げられ、木蓮は微かに呻いた。
「ん……ぁ……」
木蓮は苦しげに眉根を寄せる。しかし木蓮はまだ深い眠りの中にいた。蛇は闇の中からどんどん湧き出し、木蓮の脚を開かせる。顕になった木蓮の秘部に蛇が頭を何度も擦り付けた。そこは徐々に潤み始め、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。それに誘われるように、何匹もの蛇がそこに群がり始めた。
「っ……ぁ、いや……やっ……」
木蓮は眉根を寄せ、苦しげな吐息を零す。それでもまだ起きる様子はない。細い脚の間から、とろりと透明な蜜が溢れ出し、床に滴り落ちた。蛇がそれを舐めとり、また秘部に頭を擦りつける。
やがて、充分に潤み、淫らな音を立てるその場所に蛇が次々と入り込んだ。木蓮は無意識にそれから逃れようと体を捩る。しかし木蓮の体に巻き付く蛇がそれを許さなかった。木蓮は脚を閉じようとしたが、それすらも叶わなかった。
「っ……ぁ……ん……あっ……」
敏感な部分を執拗に擦られ、木蓮は苦しげな声を漏らす。蛇たちはどんどん数を増やし、木蓮の秘部を蹂躙していく。やがて一匹が最奥に入り込み、子宮口に頭を擦り付けながらその中に体を潜らせていった。
「っ! ……ぁ……あ……」
木蓮はびくりと体を震わせる。しかしまだ意識は戻らなかった。木蓮の子宮口をこじ開けた細い蛇はその中に入り込み、入り口を頭で何度も擦ってから木蓮の秘部から抜け出る。するとまたすぐに別の蛇が木蓮の中にその身を捩じ込んだ。それを繰り返すうちに、木蓮の意識はより深い場所に沈んでいく。
『ああ……もうすぐだ、もうすぐ、この冷たい牢獄から解放される……』
闇の中に声が響いた。それに反応したかのように、蛇たちはさらに激しく動く。やがて一匹が木蓮の内側で影と同じ色の精を放った。続けざまに何匹もの蛇が同じように熱を放つ。それでもなお木蓮は目を覚まさない。彼女の中はもう大量の蛇で溢れかえっていた。
「っ……ぁ……あ……んっ……」
木蓮は苦しげな声を上げながらも、その行為を止めようとはしない。むしろ自分から求めるように脚を開き、腰を揺らしていた。蛇たちはそれに応じるように木蓮の体を蹂躙していく。
「ん……あ、ああ……」
木蓮の秘部からは大量の蜜が溢れ出し、褥を汚していた。それでもまだ蛇たちは満足しないのか、さらに数を増やしていく。
「っ……ぁ……あ……あっ」
木蓮はびくんと体を跳ねさせ、絶頂を迎えた。しかしそれでも蛇たちは動きを止めない。木蓮の体の上を這い回り、執拗に敏感な部分を責め続けた。
「っ……ぁ……あ……いや、やだ……」
木蓮は苦しげに眉根を寄せる。それでもまだ意識は深い眠りの中にあった。
『誰も気付くまい。そう……あの忌々しい神でさえも』
闇の中で再び声が響く。声の主は知っていた。同じ屋敷の中で、同じ刻、ある男が女にその欲望をぶつけている。最初は抵抗していたが、あえなく影に堕ちた男。それは己の隠した感情を解き放ち、木蓮によく似た女を犯している。
そして、その欲望は木蓮を襲う影と繋がっているのだ。
男――宿堤が死んだはずの緑波を貪る間、木蓮は影の蛇に体を弄ばれ続ける。狂宴は一晩中続くだろう。影の蛇に犯された体は、人知れず――神にさえ知られることなく、瘴気を溜め込んでいく。
『お前はこちら側に来るのだ。封印を解き、あの神を殺すために』
木蓮の中に再び大量の影の蛇が入り込んでいく。蜜壺を激しくかき混ぜられ、蛇たちが吐き出した黒いものと木蓮の透明な蜜が混ざり合いながら溢れ、褥を汚していった。しかしそれはたちまちのうちに掻き消え、何事もなかったかのような姿に変わる。
「っ、いや……ぁ、あ……ああっ!」
木蓮は再び絶頂を迎えた。しかし蛇はその動きを止めない。宿堤が暗い欲望を緑波に向け続ける限り、影の蛇は動き続けることができるのだ。
***
木蓮が蛇から解放されたのは、明け方、邑中に響いた半鐘の音のためだった。木蓮が跳ね起きると、蛇たちは刹那のうちに姿を消した。
「……人型の鬼が五体」
この前よりも数は少ない。しかし半鐘を鳴らしている者たちは櫓の上から見ているだけなので、人型と人形型など、遠目では違いがわかりにくいものは見抜けないこともある。油断はできない。木蓮は体にわずかな違和感を覚えながらも着替え、刀を手に部屋を飛び出した。
鬼が現れた場所に飛ぶと、そこには女の鬼が五体、ゆっくりと動いていた。人を食らうが動きは遅い、人型の中でもそれほど強くない鬼だということはすぐにわかった。木蓮はまず、近くにいた一体に斬りかかる。それは断末魔をあげる間もなく一瞬で塵となった。
「――おかしい」
最近、鬼はどんどん強くなってきていた。あまりにも手応えがなさすぎる。前回の侍たちは、まだ生前の鍛錬を偲ばせる動きをしていた。手駒が少なくなってきているのだろうか。それならいいかもしれないが、油断はできない。木蓮は次の鬼に斬りかかろうとした。
しかしその瞬間、鬼の体が膨れ上がり、血と肉片を撒き散らしながら弾け飛んだ。咄嗟のことで避けきれず、木蓮は大量の血を浴びてしまった。その血を浴びることは呪いを受けることを意味する。
「何が……」
一体何が起きたのか、木蓮には理解できなかった。鬼の肉片はすぐに塵となって消える。木蓮には鬼が木蓮に斬られる前に自分から死んだようにしか見えなかった。しかし訳がわからない事態に呆けている場合ではない。木蓮は気を取り直して他の鬼に目を向けた。
しかし次の一体も、木蓮の刃を受ける前に血と肉片に変わり、木蓮の体を汚していく。二度目はある程度は避けられたが、それでも血がかかった場所に熱を感じる。腕に広がり始めた黒い紋様を見て、木蓮は唇を噛んだ。
(私を殺すことじゃなくて、呪うことが目的……?)
そうとわかれば鬼に近付くのは危険だ。十分な距離をとって、木蓮は弓を構えた。弦を引き絞る間も鬼は木蓮に近付いてくるが、足は遅い。木蓮は慎重に狙いを定め、矢を放った。矢は鬼の一体に命中するが、浄化の力が足りなかったのか、呻きながらもまだ動いている。木蓮が二本目の矢をつがえようとしたそのとき、鬼に突き刺さったままの矢に青白い炎が灯り、鬼は倒れた。
「――焔さん!」
「あと二体か。妾はあちらを仕留める。其方は右を」
どうしてここにいるのかを問う間もなく、焔は左側から向かってきた鬼に炎を放った。木蓮も右側の鬼に連続して三本の矢を放つ。
鬼が全て消えたのを確認すると、焔は息を吐き出した。
「ありがとうございます。また助けていただいて」
「いや――今回は迂闊だったわ。この程度の鬼なら一人で対処できるだろうと思って最初は手を出さずにいたんだけど」
実際、鬼はそれほど強くはなかった。しかし木蓮の記憶にも、邑の記録にも残っていない動きをしたのだ。倒される前に自決し、呪いだけを残そうとする鬼など聞いたことがない。鬼は己の飢えを凌ぐことを第一に考えるものだとこれまでは信じられてきたのだ。
「っ……」
木蓮は急に胸を押さえてその場に蹲った。体が熱い。腕を見ると、鬼の血がかかった場所から黒い紋様が広がっていくのが見えた。
「急ごう。このくらいならば、あの龍神の力で浄化できる」
「でも……」
「このままでは其方が鬼になってしまう。それはあの龍神も望まぬであろう」
焔は木蓮の体を軽々と抱え、そのまま虚空へと駆け上がる。木蓮は咄嗟に焔にしがみついて目を閉じた。
女は男の上にしな垂れかかり、嬉しそうに言う。しかし男の意識はどこか朦朧としていた。女の中に胤を注ぎ込んだ日から、何かがおかしくなっている。抵抗していたはずの心にまで影が絡みつき、身動きが取れなくなってしまっているようだった。
『今宵も楽しみましょう?』
「っ、ああ……」
女の白い手が男の胸板をなぞる。女はその指の下で既に膨らみ始めた小さな蕾に気付き、微笑みを浮かべた。それを指で円を描くように刺激すると、男は声を上げる。
「ああ……、駄目、だ……」
『気持ちいいのでしょう? もう自分の心に逆らわないで下さいませ』
「う……、く……」
男は抵抗しようとするが、女の手管に抗えずに流されてしまう。男のものが張り詰めていることは男も女も気が付いていた。
『ふふ……いいのですよ、貴方の好きにしていただいて』
「あ、ああ……」
男の目から光が失われていく。女はそんな男の顔の上に跨り、濡れそぼつ性器をその指で開いた。とろりと溢れた蜜が男の口の中に入っていく。それは甘露のように男の喉を潤していった。しかしそれを飲み込んだ男の肌には、一瞬禍々しい黒い模様が浮かぶ。
男は夢中になって女の秘部に舌を這わせた。男の舌が蠢くたびに、女は甘い声をあげる。とろとろと溢れ出す蜜に、男の意識は徐々に酔わされていった。
『ここはこんなに張り詰めて……いいのですよ。私の中に入っても』
「ああ、あ……!」
女は男のものをその手で軽く扱いた。そして自らの秘部に男のものを何度も擦り付ける。男はたまらなくなり、女の腰を掴むと、一気にその体を貫いた。
『ああっ、あぁ……愛していますわ……っ』
「俺もだ……! ずっとお前と、こうしたかった……!」
男は女に誘われるままに口づけを交わした。二人は舌を絡め合い、お互いの唾液を啜り合う。
女は妖しく微笑みながら口を離すと、ゆっくりと腰を動かし始めた。その快楽に男は抗うことができず、ただ快楽を享受することしかできない。
「ああっ!」
『ふふ、可愛い……』
女は男の上で淫らに踊り続ける。やがて限界を迎えた男が絶頂を迎えると、女は満足げに微笑んだ。そして男の上に倒れ込み、耳元で囁く。
『愛しています――宿堤様』
「俺もだ……俺も……本当はずっと、お前のことが」
男は女の細い体を抱きしめながら答えた。男――宿堤は女の長い髪を無骨な手で梳る。その黒い髪にまとわりつく影に、宿堤は気付いていなかった。否、うっすらと気付いていながらも、もうそれを受け入れ始めていた。
「ああ……緑波、何故お前は……」
『過去のことはもういいではありませんか。私たちはこうして結ばれたのですよ』
女――緑波はもう死んでいる。それは宿堤が一番わかっていることだった。しかし意識はぼやけ、思考がまとまらないうちに、心の奥底に封じ込めた欲望が引き摺り出されてしまう。
「ああ、緑波……また――」
『ええ、わかっていますよ。貴方の全てを私に下さいませ』
宿堤は褥の上に緑波を横たわらせた。先程の行為で既にはだけていた緑波の着物を脱がせ、その白い胸に顔を寄せる。宿堤が胸に舌を這わせると、緑波は静かに微笑み、その頭を優しく撫でた。宿堤がその体を貪るように舐めたり吸ったりしても、緑波はただ優しく笑うだけだ。しかし宿堤はそれに気付かず、ただ緑波の体を求め続ける。
『ふふ、そんなに慌てなくても私は逃げませんよ』
「ああ……でも、もう」
緑波の脚を大きく開かせると、宿堤はその中心に顔を埋めた。既にそこは蜜が溢れている。それを舐め取り、吸い付くと、緑波は高い声をあげた。
『あぁ……っ! ああっ!』
「ずっとこうしてやりたかった……」
宿堤は緑波の秘部に指を這わせながら言う。緑波はその刺激に身を捩らせながらも、言葉を続けた。
『あ……愛して、います』
「ああ……俺もだ」
宿堤は顔を上げて緑波に口づける。そして自らのものを緑波の性器にあてがうと、一気に貫いた。その衝撃に緑波は声を上げるが、それでも彼女は幸せそうに微笑んだ。
『あぁっ、あ……! 宿堤様……っ』
宿堤は激しく腰を動かす。その度に緑波の口から甘い吐息が漏れた。彼女の肌は既に熱を持ち始めている。宿堤はその熱を孕んだ肌に舌を這わせた。そして再び緑波の体に覆いかぶさり、その胸や首にも愛撫を施していく。すると緑波は一層高い声を上げ、体をくねらせた。
『あっ……ああっ!』
「ああ……緑波、俺はずっと、お前が欲しかったんだ……あんな者になど、渡したくなかった!」
『ええ、わかっていますわ……っ、宿堤様……! 貴方が私を見つめる目は、いつもとても熱くございました……っ!』
緑波は宿堤の背中に腕を回すと、ぎゅっと抱きつく。そして耳元で囁いた。
『もっと激しくしてもいいのですよ……貴方が望む通りに……』
宿堤はその言葉通り、激しく抽挿を繰り返す。その度に緑波は声を上げた。宿堤が緑波の最奥に精を放つと同時に、彼女もまた絶頂を迎える。褥に体を預ける緑波の足の付け根から白いものがとろりと溢れた。それを見つめていた宿堤は目を濁らせ、暗い笑みを浮かべていた。
宿堤の体に影がまとわりついていく。しかし彼はそれを気にする様子も見せず、再び緑波の体に覆い被さった。
***
「っ……ぁ、いや……」
木蓮は微かに声を上げた。木蓮の白い体に影の蛇が纏わりついている。しかし木蓮は深い眠りの中にいた。影の蛇は木蓮の肌に触れながら、ゆっくりと服を剥いでいく。顕になった白い肌を蛇が這っていったが、木蓮は僅かに身じろぎをするだけだった。
『あの男は堕ちた。もうすぐだ――』
闇の中に声が響いた。蛇たちは木蓮の体の上を這い回りながら、細い体に巻きついていく。ぎちぎちと音がしそうなほどに締め上げられ、木蓮は微かに呻いた。
「ん……ぁ……」
木蓮は苦しげに眉根を寄せる。しかし木蓮はまだ深い眠りの中にいた。蛇は闇の中からどんどん湧き出し、木蓮の脚を開かせる。顕になった木蓮の秘部に蛇が頭を何度も擦り付けた。そこは徐々に潤み始め、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。それに誘われるように、何匹もの蛇がそこに群がり始めた。
「っ……ぁ、いや……やっ……」
木蓮は眉根を寄せ、苦しげな吐息を零す。それでもまだ起きる様子はない。細い脚の間から、とろりと透明な蜜が溢れ出し、床に滴り落ちた。蛇がそれを舐めとり、また秘部に頭を擦りつける。
やがて、充分に潤み、淫らな音を立てるその場所に蛇が次々と入り込んだ。木蓮は無意識にそれから逃れようと体を捩る。しかし木蓮の体に巻き付く蛇がそれを許さなかった。木蓮は脚を閉じようとしたが、それすらも叶わなかった。
「っ……ぁ……ん……あっ……」
敏感な部分を執拗に擦られ、木蓮は苦しげな声を漏らす。蛇たちはどんどん数を増やし、木蓮の秘部を蹂躙していく。やがて一匹が最奥に入り込み、子宮口に頭を擦り付けながらその中に体を潜らせていった。
「っ! ……ぁ……あ……」
木蓮はびくりと体を震わせる。しかしまだ意識は戻らなかった。木蓮の子宮口をこじ開けた細い蛇はその中に入り込み、入り口を頭で何度も擦ってから木蓮の秘部から抜け出る。するとまたすぐに別の蛇が木蓮の中にその身を捩じ込んだ。それを繰り返すうちに、木蓮の意識はより深い場所に沈んでいく。
『ああ……もうすぐだ、もうすぐ、この冷たい牢獄から解放される……』
闇の中に声が響いた。それに反応したかのように、蛇たちはさらに激しく動く。やがて一匹が木蓮の内側で影と同じ色の精を放った。続けざまに何匹もの蛇が同じように熱を放つ。それでもなお木蓮は目を覚まさない。彼女の中はもう大量の蛇で溢れかえっていた。
「っ……ぁ……あ……んっ……」
木蓮は苦しげな声を上げながらも、その行為を止めようとはしない。むしろ自分から求めるように脚を開き、腰を揺らしていた。蛇たちはそれに応じるように木蓮の体を蹂躙していく。
「ん……あ、ああ……」
木蓮の秘部からは大量の蜜が溢れ出し、褥を汚していた。それでもまだ蛇たちは満足しないのか、さらに数を増やしていく。
「っ……ぁ……あ……あっ」
木蓮はびくんと体を跳ねさせ、絶頂を迎えた。しかしそれでも蛇たちは動きを止めない。木蓮の体の上を這い回り、執拗に敏感な部分を責め続けた。
「っ……ぁ……あ……いや、やだ……」
木蓮は苦しげに眉根を寄せる。それでもまだ意識は深い眠りの中にあった。
『誰も気付くまい。そう……あの忌々しい神でさえも』
闇の中で再び声が響く。声の主は知っていた。同じ屋敷の中で、同じ刻、ある男が女にその欲望をぶつけている。最初は抵抗していたが、あえなく影に堕ちた男。それは己の隠した感情を解き放ち、木蓮によく似た女を犯している。
そして、その欲望は木蓮を襲う影と繋がっているのだ。
男――宿堤が死んだはずの緑波を貪る間、木蓮は影の蛇に体を弄ばれ続ける。狂宴は一晩中続くだろう。影の蛇に犯された体は、人知れず――神にさえ知られることなく、瘴気を溜め込んでいく。
『お前はこちら側に来るのだ。封印を解き、あの神を殺すために』
木蓮の中に再び大量の影の蛇が入り込んでいく。蜜壺を激しくかき混ぜられ、蛇たちが吐き出した黒いものと木蓮の透明な蜜が混ざり合いながら溢れ、褥を汚していった。しかしそれはたちまちのうちに掻き消え、何事もなかったかのような姿に変わる。
「っ、いや……ぁ、あ……ああっ!」
木蓮は再び絶頂を迎えた。しかし蛇はその動きを止めない。宿堤が暗い欲望を緑波に向け続ける限り、影の蛇は動き続けることができるのだ。
***
木蓮が蛇から解放されたのは、明け方、邑中に響いた半鐘の音のためだった。木蓮が跳ね起きると、蛇たちは刹那のうちに姿を消した。
「……人型の鬼が五体」
この前よりも数は少ない。しかし半鐘を鳴らしている者たちは櫓の上から見ているだけなので、人型と人形型など、遠目では違いがわかりにくいものは見抜けないこともある。油断はできない。木蓮は体にわずかな違和感を覚えながらも着替え、刀を手に部屋を飛び出した。
鬼が現れた場所に飛ぶと、そこには女の鬼が五体、ゆっくりと動いていた。人を食らうが動きは遅い、人型の中でもそれほど強くない鬼だということはすぐにわかった。木蓮はまず、近くにいた一体に斬りかかる。それは断末魔をあげる間もなく一瞬で塵となった。
「――おかしい」
最近、鬼はどんどん強くなってきていた。あまりにも手応えがなさすぎる。前回の侍たちは、まだ生前の鍛錬を偲ばせる動きをしていた。手駒が少なくなってきているのだろうか。それならいいかもしれないが、油断はできない。木蓮は次の鬼に斬りかかろうとした。
しかしその瞬間、鬼の体が膨れ上がり、血と肉片を撒き散らしながら弾け飛んだ。咄嗟のことで避けきれず、木蓮は大量の血を浴びてしまった。その血を浴びることは呪いを受けることを意味する。
「何が……」
一体何が起きたのか、木蓮には理解できなかった。鬼の肉片はすぐに塵となって消える。木蓮には鬼が木蓮に斬られる前に自分から死んだようにしか見えなかった。しかし訳がわからない事態に呆けている場合ではない。木蓮は気を取り直して他の鬼に目を向けた。
しかし次の一体も、木蓮の刃を受ける前に血と肉片に変わり、木蓮の体を汚していく。二度目はある程度は避けられたが、それでも血がかかった場所に熱を感じる。腕に広がり始めた黒い紋様を見て、木蓮は唇を噛んだ。
(私を殺すことじゃなくて、呪うことが目的……?)
そうとわかれば鬼に近付くのは危険だ。十分な距離をとって、木蓮は弓を構えた。弦を引き絞る間も鬼は木蓮に近付いてくるが、足は遅い。木蓮は慎重に狙いを定め、矢を放った。矢は鬼の一体に命中するが、浄化の力が足りなかったのか、呻きながらもまだ動いている。木蓮が二本目の矢をつがえようとしたそのとき、鬼に突き刺さったままの矢に青白い炎が灯り、鬼は倒れた。
「――焔さん!」
「あと二体か。妾はあちらを仕留める。其方は右を」
どうしてここにいるのかを問う間もなく、焔は左側から向かってきた鬼に炎を放った。木蓮も右側の鬼に連続して三本の矢を放つ。
鬼が全て消えたのを確認すると、焔は息を吐き出した。
「ありがとうございます。また助けていただいて」
「いや――今回は迂闊だったわ。この程度の鬼なら一人で対処できるだろうと思って最初は手を出さずにいたんだけど」
実際、鬼はそれほど強くはなかった。しかし木蓮の記憶にも、邑の記録にも残っていない動きをしたのだ。倒される前に自決し、呪いだけを残そうとする鬼など聞いたことがない。鬼は己の飢えを凌ぐことを第一に考えるものだとこれまでは信じられてきたのだ。
「っ……」
木蓮は急に胸を押さえてその場に蹲った。体が熱い。腕を見ると、鬼の血がかかった場所から黒い紋様が広がっていくのが見えた。
「急ごう。このくらいならば、あの龍神の力で浄化できる」
「でも……」
「このままでは其方が鬼になってしまう。それはあの龍神も望まぬであろう」
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(大好きな先輩に2人の関係を伝える)
・さくら1st写真集編[完結]
(お風呂で♡♡)
・Wセンター編[不定期更新中]
※女の子同士のキスやハグといった百合要素があります。抵抗のない方だけお楽しみください。
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