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13・蜜獄

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「和紗ちゃん……だめ……」

 璃子の声が聞こえなかったふりをして、和紗は璃子の服を脱がせていった。柔らかくて大きな胸が現れる。その胸の先の飾りは少し立ち上がり始めていた。けれど和紗はそこにはまだ触れずに、璃子の乳房を下から押し上げるようにして揉んだ。まるで大きなマシュマロのような柔らかさだ。璃子は声が漏れないように堪えているようだったが、それでも吐息に含まれた色は誤魔化せなかった。
 和紗は薄く色付く璃子の乳輪をなぞる。璃子が内股を擦り合わせる度に腹部の模様が濃くなっていった。和紗が爪の先で硬くなった先端に触れると、璃子の体がビクリと震える。

「ここ……気持ちいいんだね、璃子ちゃん」

 温室での日々で、和紗は女子生徒が何をすれば喜ぶかを心得ていた。急に強く刺激しても痛いだけだ。璃子は泣きそうな顔をして首を横に振る。けれどその体に既に小さな火が灯っていることを和紗は知っていた。

「気持ち良くなんて、ない……こんなの、気持ち悪いだけだよ」

 しかし璃子も頑なだった。体の反応に抗えるほどの意志の強さもある。璃子は和紗に懇願するように言った。

「ねえ和紗ちゃん、こんなこともうやめようよ」
「……こんなこと、ね」

 和紗は愛撫に反応を示して固くなった蕾をそっと口に含んだ。軽く吸い上げてから飴玉のように舐めると、璃子は耐えきれずに甘い声を上げ始める。

「んん……! は、ぁ……ああ、う……かずさ、ちゃん……ッ!」
「こっちの方、まだ全然触ってないのにもう張っちゃってる。期待してるの?」
「っ、ちが……! そんなこと……!」

 実際、心は抵抗しているのだろう。けれど体は別だ。和紗はそれを証明するように、璃子の反対の胸にも舌を這わせた。璃子は嬌声を上げながら体をビクビクと震わせる。和紗はそのまま璃子のスカートの中に手を入れ、ショーツの上から璃子の大切な場所に触れた。

「もう洪水になってるよ。本当に気持ち良くないの?」
「だめ……和紗ちゃん、そんなところ……触っちゃ……ッ!」
「どうして駄目なの?」

 これまで正しいことを説いてきた人たちは言っていた。そこは大切な場所なのだと。でも現実はどうだろうか。そこはほとんど無用の長物と化している。排泄のために必要な部分以外は一生使われることなく終わっていく。

「っ……だって、きもちわるい……」
「そう。……私も最初はそう思ってたよ」

 和紗はそう言って、璃子のショーツを脱がせていく。下着には糸を引くほど愛液が付着していた。首を横に振り続ける璃子を無視して、和紗はその蜜壺に中指を挿れて音を立てながら掻き回す。

「気持ち悪いでしょ? でも、それと同じくらい気持ちいいんだよ」

 璃子は歯を食いしばっている。おそらく声を堪えているのだろう。しかしその媚肉は和紗の指に絡みつくように蠢く。和紗は時折指を軽く曲げながら、璃子の膣内を確かめるように動かしていった。

「っ……だめ、和紗ちゃん……もう、抜いて……!」
「ふぅん、抜いてほしいんだ。じゃあそうしてあげる」

 和紗が指を抜くと、璃子は少し安堵したようだった。しかしその直後の和紗の行動に気が付き、目を見開く。

「ちょっ……和紗ちゃん、そこは……んんっ、いや、あああッ……!」

 和紗は今しがた指を挿れていた場所に舌を伸ばしていた。こぼれてくる蜜を綺麗に舐めとるだけで、璃子は甘い声を上げる。

「いや、なに……これ……、おかし……っ、あああッ、」
「キスで感染するんだから、こんなことしたらもちろん伝染っちゃうよね」

 温室に来る女子生徒たちで実験をしたというわけではないが、この病気が体液を介して感染するものであるということはわかってきた。同じ空間にいるだけでは何も起こらない。けれど深いキスをすれば伝染ってしまう。そして相手が和紗の体液に触れれば触れるほど、その症状は強くなる。
 和紗の意図に気が付いた璃子は、和紗の頭を自分の性器から引き剥がそうとする。けれどその手は震えて力が入らなかった。和紗は璃子の性器を舐り続ける。璃子に恨みがあったわけではない。他の女子生徒たちのように求めてきたわけでもない。それでも止めることはできなかった。

「っ、ぁああ、ぁん……! だめ、そんな……あああっ!」

 璃子の性器からはとめどなく愛液が溢れていた。和紗はそれらをすべて逃さないように丹念に舐めとっていく。そして襞のひとつひとつに唾液を塗り込めるように舌を動かした。璃子の脚が震える。抵抗の言葉は徐々に璃子自身の喘ぎ声に掻き消されていった。璃子の手が和紗の頭から離れ、代わりにソファーの上に置いてあったクッションを握る。

「ああ、ぅ、ぁ……や、もっと……っ!」

 璃子は自分が口走った言葉に自分で驚いているようだった。和紗はそれを聞き逃さなかった。和紗はこれまでの興奮で立ち上がった璃子の陰核を軽く吸ってから、そこも丹念に舐め上げた。璃子の喉の奥で微かな音が鳴る。強すぎる快感で逆に声が出なかったのだろう。

「ここも好きそうだね」

 そう言いながらも、和紗は肯定も否定も求めてはいなかった。和紗は赤く尖る肉芽への責めを続ける。璃子はこれまで味わったことのない感覚に体をよじらせていた。震える脚に爪先まで力が入る。

「かずさ、ちゃん……っ、もう……ッ、ああ、なにか、何かが……きちゃうぅ……!」
「大丈夫だから、そのままそれに身を任せて。気持ちよくなってよ、璃子ちゃん」

 和紗は優しく甘い声で言った。そして璃子の陰核を丁寧に舐ってから、それを軽く吸う。その瞬間に璃子の体が跳ねた。璃子は体をのけぞらせて嬌声を上げる。

「あ、ア……ッ、あ、イっ、あああッ……!」

 和紗がゆっくりと璃子の体を解放する。絶頂に至った璃子は、びくびくと体を痙攣させながら荒い呼吸を紡いでいた。

「い、今の……和紗、ちゃん……」
「それがイくってことなんだよ、璃子ちゃん。オーガズムとかエクスタシーとか、言い方は色々あるみたいだけど」

 それは和紗たちが普通に生きていたら、一生知ることのなかったものだ。もちろん薬物による快楽や、精神的な修行の末に味わう忘我の境地といったものは存在する。けれど人間の体に本来備わっている悦楽の仕組みを使わないまま死んでいくのが普通だった。

「和紗ちゃん、私……」

 璃子は和紗の体にしがみつく。嫌悪していたはずのものなのに、璃子はすっかりその虜になってしまったようだった。それはもちろん、和紗が感染させた病気によるものが大きいだろう。けれど和紗は心の奥底で思っていた。
 璃子ですら、この快楽には抗えないのだ。真っ直ぐで、真っ白で、この世全ての汚れに染まらないとさえ思えた璃子でさえ。
 璃子に助けられたあの日からずっと抱えてきた心の中の靄が、すっきりと晴れていくようだった。けれど靄が消えた空に広がっていたのは青空ではなく、月も星もない夜の暗闇だった。

「いいよ、璃子ちゃん。もっと気持ちよくなろうか」

 和紗は再び璃子をソファーの上に倒し、ゆっくりと唇を重ねた。今度は璃子の方から口を開ける。和紗はその耳を塞ぎながら璃子と舌を絡めあった。唾液が混じり合う音が璃子の頭の中で反響する。それが既に壊れた理性をぐずぐずに溶かしていき、璃子の目はどこかぼんやりとしたものに変わっていった。けれど焦点が合っていないというわけではない。快楽にとろけた目は、それでも和紗のことだけを映している。

 和紗はゆっくりと璃子の首筋から鎖骨へと舌を滑らせる。璃子はその舌の感触と熱に体を震わせながらあえかな声を漏らした。

「あッ……んぅ……」

 璃子は先程までとは違うぬるま湯の中を揺蕩うような快感に目を細めた。和紗はそのまま璃子の胸の谷間にも舌を這わせる。そしてその位置を徐々に下げながら、璃子の二つの柔らかな膨らみにその魔手を伸ばした。

「ふっ……ん、んんっ……あ……」

 和紗は両手で璃子の胸を揉み、人差し指でその膨らんだ乳首を転がした。璃子は小さな喘ぎ声を上げながら時折太腿を擦り合わせている。しばらく璃子の胸を弄びながらその様子を見ていた和紗は、ふっと笑みをこぼしながら璃子に尋ねた。

「こっちもまだ熱いの?」

 璃子はこくこくと頷く。それを証明するように、和紗がその手を太腿の上に滑らせるだけで璃子は甘い声を上げた。和紗は璃子の太腿の内側を指でなぞりながら、濡れそぼつ性器に到達する。そこは表面をさっと撫でただけで指先が濡れるほどに蜜をこぼしていた。

「さっき全部綺麗にしたんだけど、またこんなに溢れちゃったんだね」
「んん……だって……っ」
「いいんだよ。璃子ちゃんが気持ちよくなってるってことなんだから」

 和紗はそこに中指を挿入していく。そこが既に柔らかくほぐれ、異物を迎え入れる準備ができていることを察した和紗は、痛みがないように慎重になりながらも人差し指も潜らせた。

「すごくとろとろになってる。綺麗だよ、璃子ちゃん」

 歯の浮くような言葉も、和紗にとっては本心だった。璃子の長い髪や、今は少し赤くなっている白い肌。どこもかしこも柔らかい曲線を描く体の全てが美しい。そして指を動かす度に漏れる甘く高い声も。和紗は二本の指をバラバラに動かしながら、璃子の膣内を蹂躙していった。
 指の動きに合わせて、いやらしい水音が響く。けれどそれは今の璃子にとっては興奮を煽る材料でしかなかった。すでに充分すぎるほどに愛撫されているのに、もっと、もっとと求めてしまう。そして和紗は求められたなら応えようとする。粘膜を擦り、敏感な陰核の裏側を指で押す。それを続けられるうちに、再び璃子は先程のような強烈な感覚に襲われ始めた。

「和紗ちゃん……っ、だめ、また……さっきのが、きちゃう……!」

 体を震わせる璃子に、和紗は優しい声で囁いた。

「駄目じゃないよ。怖がらないで、身を任せればいい。それから、イくときはちゃんとイくって言うんだよ?」

 和紗は徐々に指の動きを速く、激しくしていく。けれどまだ性の刺激に慣れていない璃子では、膣内だけで絶頂を迎えるのは難しいだろう。和紗は中指と人差し指を動かしながら、同時に親指で璃子の陰核を擦った。

「っ、ああ、和紗ちゃん……ッ、イ、イく……イッちゃ、あああッ……!」

 璃子は甘い声を上げながら再び絶頂する。和紗が璃子の性器から指を抜くと、弛緩した璃子の体からこれまでよりも少し粘度の低い液体が溢れ出た。

「え……あ、なに……?」
「潮って言うんだって。璃子ちゃんが気持ちよかった証拠だから、変なことじゃないよ」
「うん……本当に、気持ちよかった……だから」
「もっと欲しい?」

 璃子はすっかり快楽の虜になっていた。和紗は璃子の体を抱きしめながら、璃子の体が落ち着く前に尋ねる。

「璃子ちゃん、どうして欲しい?」
「もう一度……あ、あそこを……舐めて、欲しい……」

 顔を赤らめながら璃子が答えた。和紗は優しく頷くと、璃子に請われるがままにその脚を広げ、濡れてひくつく璃子の性器にむしゃぶりついた。奥の方まで舌を差し入れると、璃子がはしたない嬌声を上げる。

「あ、ああっ……和紗、ちゃん……もっと……ああ……んッ!」

 室内は淫靡な空気で満たされていた。璃子は肉欲に溺れ、その腹部の模様は妖しい光を放ち続けている。和紗もまた、夢中になって璃子への奉仕を続けていた。

 だからこそ二人は気付くことができなかった。玄関とリビングをつなぐ扉が細く開けられ、そこから二人の痴態を茫然として見つめている人がいたことに。
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