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第39話 勇気の試練、終幕へ
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罪火の剣が光に代わり、握りしめる日向。
あらゆるすべてを注ぎ込み、その一歩を踏み出し、前に出る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
二人の声が重なり、心が一つになり、大きな力となって東條サチを襲う。
勇気とは、勇者にとって必要なもの。
それを手に入れるのがこのダンジョンの目的。
勇者日向は勇気の一歩をつかみ取ろうとしている。
「刀はただの道具…………私の一刀をもって断ち切ります」
ゆっくりと刀を握りしめ、一刀両断をする構えをした。
迎え撃ち、その心をたたきる。
東條サチから今までにない殺気を感じた。
それでも二人は止まらない。突き進み、刃をむき出しにする。
「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
勇者日向の刃すぐそこにまで迫った時、東條サチはささやいた。
「東條家免許皆伝奥義・楓」
風が彼女の味方をする。
風が刀をよけていく。
刀身が真っ赤に染まり、熱を帯びている。
あの一撃をまともに受けちゃだめだと、心が訴えかけてくる。
今からでも遅くない。
『ヒナタ…………』
アルス?
『いこう、前に進もうっ!!』
そうだな。
ここで引いたら、もう勝つすべがない。
これが正真正銘、最後なんだ。
ここですべてをかけなくてどうする。
僕は、アルスと一緒に外に!!
勇者日向がさらに一歩を踏み出したとき、一瞬だけ、東條サチの動きが止まった。
それが錯覚だったのか、本当に止まったのか、一瞬すぎてわからない。
ただその瞬間、東條サチの一振りより先に、僕たちの一振りが東條サチを真っ二つに切り裂いた。
「素晴らしい、それでこそ、勇者です」
東條サチが笑った。
その笑みは今までの東条サチの印象を壊すほど綺麗で満足した笑顔だった。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
僕はすぐに膝をつき、武器を手放すと、すぐに人の姿のアルスが現れ、肩を支える。
「大丈夫?」
「う、うん」
全然大丈夫ではない。
今のですべてを使い切り、足腰に力が入らず、少し気を抜くだけで気絶しそうだった。
それでも、僕はアルスを支えられながら、立ち上がり、東條サチのほうへと向く。
「…………まさか、私の一太刀をかいくぐるなんて、さすが、勇者ですね」
だが、僕たちが切り裂いた後がしっかりと残っているのにその体はしっかりとくっついている。
「勇者日向、あなたに一つ聞きたい。あなたの勇気は見つけられましたか?」
瞳はまっすぐこちらを見つめる。
僕は一息ついた後。
「わからないです」
「そうですか…………この先へ進みなさい。その先にあなたたちが求めるものがあります」
指さした先には、扉があった。
「行きなさい」
「ヒナタ、いこう」
「サチ…………さん、さようなら」
「…………敵にさようならなんてかける言葉ではありませんよ。…………さようなら、新たな勇者。今後待ち受ける試練を乗り越えることを私は願う」
また笑った。
それは、また違った笑顔。
僕とアルスはゆっくりと扉に近づいた。
「ここまで長かったな」
「そうだね」
「…………いこう」
「うんっ!」
僕たちは一緒に扉を開けた。
あらゆるすべてを注ぎ込み、その一歩を踏み出し、前に出る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』
二人の声が重なり、心が一つになり、大きな力となって東條サチを襲う。
勇気とは、勇者にとって必要なもの。
それを手に入れるのがこのダンジョンの目的。
勇者日向は勇気の一歩をつかみ取ろうとしている。
「刀はただの道具…………私の一刀をもって断ち切ります」
ゆっくりと刀を握りしめ、一刀両断をする構えをした。
迎え撃ち、その心をたたきる。
東條サチから今までにない殺気を感じた。
それでも二人は止まらない。突き進み、刃をむき出しにする。
「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
勇者日向の刃すぐそこにまで迫った時、東條サチはささやいた。
「東條家免許皆伝奥義・楓」
風が彼女の味方をする。
風が刀をよけていく。
刀身が真っ赤に染まり、熱を帯びている。
あの一撃をまともに受けちゃだめだと、心が訴えかけてくる。
今からでも遅くない。
『ヒナタ…………』
アルス?
『いこう、前に進もうっ!!』
そうだな。
ここで引いたら、もう勝つすべがない。
これが正真正銘、最後なんだ。
ここですべてをかけなくてどうする。
僕は、アルスと一緒に外に!!
勇者日向がさらに一歩を踏み出したとき、一瞬だけ、東條サチの動きが止まった。
それが錯覚だったのか、本当に止まったのか、一瞬すぎてわからない。
ただその瞬間、東條サチの一振りより先に、僕たちの一振りが東條サチを真っ二つに切り裂いた。
「素晴らしい、それでこそ、勇者です」
東條サチが笑った。
その笑みは今までの東条サチの印象を壊すほど綺麗で満足した笑顔だった。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
僕はすぐに膝をつき、武器を手放すと、すぐに人の姿のアルスが現れ、肩を支える。
「大丈夫?」
「う、うん」
全然大丈夫ではない。
今のですべてを使い切り、足腰に力が入らず、少し気を抜くだけで気絶しそうだった。
それでも、僕はアルスを支えられながら、立ち上がり、東條サチのほうへと向く。
「…………まさか、私の一太刀をかいくぐるなんて、さすが、勇者ですね」
だが、僕たちが切り裂いた後がしっかりと残っているのにその体はしっかりとくっついている。
「勇者日向、あなたに一つ聞きたい。あなたの勇気は見つけられましたか?」
瞳はまっすぐこちらを見つめる。
僕は一息ついた後。
「わからないです」
「そうですか…………この先へ進みなさい。その先にあなたたちが求めるものがあります」
指さした先には、扉があった。
「行きなさい」
「ヒナタ、いこう」
「サチ…………さん、さようなら」
「…………敵にさようならなんてかける言葉ではありませんよ。…………さようなら、新たな勇者。今後待ち受ける試練を乗り越えることを私は願う」
また笑った。
それは、また違った笑顔。
僕とアルスはゆっくりと扉に近づいた。
「ここまで長かったな」
「そうだね」
「…………いこう」
「うんっ!」
僕たちは一緒に扉を開けた。
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