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第8話 召喚されし勇者結奈の思い
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それから3週間が過ぎ、ある噂が流れる。
それは僕が訓練に顔を見せないことで、訓練をさぼっているだとか、戦ったところを見たことないとか、本を読んでいるだけでとか、周りの勇者と比較され、気づけば、あの勇者は弱いのではという噂が流れた。
「まぁ、そういうこともあるよな」
その噂はもちろん、僕の耳にも届いていた。
しかし、僕は気にせず、本を読んでいるとジェルマンがアステルム大図書館に訪れ、唐突に深く頭を下げた。
「申し訳ございません、日向様。現在、噂の出処を探っておりますので、もうしばらくお待ちください」
「あ、はい…………」
別にそこまでする必要はないが、頭を下げてそんなことを言われたら、「そこまでしなくても」とは言いにくい。
この噂は王城だけでなく、ルクスニア王国の民にも流れているらしく、一部では僕のことを非難する声も上がっているらしい。
事実、流れている噂は大体あっているから僕も心が痛い。
しかし、一向に噂は止まらず、最弱勇者なんてあだ名も付けられた。周りのメイドさんからもひそひそ話が聞こえたり、変な視線を感じたりもした。
「おい、最弱勇者の日向君、こんなところで何をしているのかな?」
「西郷くん…………」
アステルム大図書館に珍しく西郷くんが訪れた。
「こんなところで本ばかり読んでよう。本を読む暇があるんなら、少しでも訓練に参加したらどうだ?」
どうやら、勇者たちの耳にも僕の噂が届いているらしい。
「…………」
「なんだよ、だんまりか?」
「その最弱勇者ってどこから聞いたの?」
「あん?ああ、メイドからだよ。知らねぇのか?今、王城内で言われているんだぜ」
噂の発生源はメイドなのだろうか。でも、メイドだけの力で外までうわさが広がるとは考えられない。なら、さらに上の立場の者。
貴族か王族か、いや考えて犯人を見つけても僕にできることなんてない。
「僕だって噂は聞いているよ。でも、西郷くん、僕は残念だよ」
「あん?」
「僕のうわさなんて聞き流せばいいのに。わざわざバカにしに来るんだから。もしかして、西郷くん、案外おこちゃまなのかな?」
「なぁ!?陰キャのくせっ!!」
やばっ!ちょっと調子に乗っちゃった。
噂のせいでメンタルがかなり摩耗して日向はつい八つ当たりに近いことをしてしまった。
突発的に拳を上げる西郷くんに、僕はよける動作を始める。
今の僕が西郷くんの一撃を直に受ければ、ただの怪我ではすまない。
すると。
「貴弘様、何をなされているのですか?」
と怒りをあらわにするジェルマンさんが言った。
「あ、ジェルマンさん」
「…………ふん、貴弘様、ガレスさんが呼んでいましたよ」
「ガレスさんが…………わかりました。次あったときは覚えてろよ」
と言葉を残し、西郷くんはアステルム大図書館から去っていった。
「死ぬかと思った」
腰が抜け、しりもちをついた。
「日向様、あまり挑発してはなりませんよ。あなたたちは仲間なのですから」
「はい…………」
ジェルマンさんの優しい説教に僕はただ頷くしかなかった。
気づけば、ストレスが溜まり、夜の時間になると外を眺めることが多くなっていた。
「あと1週間で、訓練期間が終わる。そしたら僕は…………」
死ぬ。
そんなイメージが湧いてくる。
ただこれは物理的ではなく精神的にという意味で、ルクスニア王国の民に会うことがあれば、きっと罵詈雑言を浴びせられるに違いない。
という被害妄想が頭の中で浮かび上がる。
「はぁ…………帰りたい」
そんな心の底から漏れた弱音。すると、トントンっとノック音が聞こえてくる。
「だ、誰ですか?」
「私…………だよ」
「この声…………結奈さん?」
こんな時間にいったい何の用なんだろう。
っと扉の近くまで歩き、部屋の扉を開ける。
「ちょっといいかな、お邪魔しても?」
少し露出のあるパジャマを着た結奈さんが訪れた。
「いいけど」
僕は何も考えず部屋に招き入れた。
「それで、何の用?」
結奈さんは周りをキョロキョロと見渡しながら警戒する素振りもなく、少し間をおいていつも通りの笑顔で口を開いた。
「大丈夫かなって?ほら、あんまりよくない噂が流れてるでしょ?」
「全然、大丈夫。心配してくれてありがとう、結奈さん」
「本当に大丈夫?私、心配だよ。だって、日向くん余裕な表情をよく見せてくれているけど、本当は心の中で傷ついてるでしょ?」
「…………本当に大丈夫だって、僕こう見えてもメンタル強いし、それに慣れてるから」
「慣れてる?」
「うん、まぁ…………」
昔、いろいろあって変な噂を流されたことがある。
その件は結局、中学を卒業したあと音沙汰がないけど。
「でも本当に心配しなくていいよ、結奈さん。僕は自分の問題は自分で解決したいんだ」
そう自分に起きた問題だ。結奈さんに迷惑はかけられない。
すると、結奈さんは。
「わかった。でも、本当につらかったいつでも頼ってね。私は、日向くんの味方だから」
と僕の手を強く握りしめた。
その手はすごく熱くて、その温もりが不思議と安心感があり、じわっと何かが込み上げてきた。
あふれ出そうになるその何かを抑えようと、グッとこらえながら、自分の気持ちを素直に伝えた。
「…………ありがとう」
すると、結奈さんの様子が変わった。頬が赤く染まり、耳も真っ赤しながら、握りしめていた手を離して、背中を向けた。
「結奈さん、大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫、大丈夫、大丈夫だから」
いつもの結奈さんとは違う。
そういえば、どうして僕なんかに話しかけてくれたんだろう。
とふと疑問がよぎる。
特に結奈さんとは接点なんてなかったし、ある日、突然、学校で話しかけられるようになった。
「あの結奈さんに一つ聞きたいことが…………」
「そろそろ部屋に戻るね。それじゃあ、また明日っ!」
「あっ」
慌てた様子で颯爽と部屋から出ていく結奈さんを見て、僕は静かに笑った。
「まぁ、また後で聞けばいいか。それに結奈さんって結構、おもしろいな」
少しだけ心なしか身軽になったような気がした。
久しぶりに気持ちいい朝を迎えた日向。
そして、残り時間を体力づくりと知識をつけることに費やし、ついに訓練期間を終える。
それは僕が訓練に顔を見せないことで、訓練をさぼっているだとか、戦ったところを見たことないとか、本を読んでいるだけでとか、周りの勇者と比較され、気づけば、あの勇者は弱いのではという噂が流れた。
「まぁ、そういうこともあるよな」
その噂はもちろん、僕の耳にも届いていた。
しかし、僕は気にせず、本を読んでいるとジェルマンがアステルム大図書館に訪れ、唐突に深く頭を下げた。
「申し訳ございません、日向様。現在、噂の出処を探っておりますので、もうしばらくお待ちください」
「あ、はい…………」
別にそこまでする必要はないが、頭を下げてそんなことを言われたら、「そこまでしなくても」とは言いにくい。
この噂は王城だけでなく、ルクスニア王国の民にも流れているらしく、一部では僕のことを非難する声も上がっているらしい。
事実、流れている噂は大体あっているから僕も心が痛い。
しかし、一向に噂は止まらず、最弱勇者なんてあだ名も付けられた。周りのメイドさんからもひそひそ話が聞こえたり、変な視線を感じたりもした。
「おい、最弱勇者の日向君、こんなところで何をしているのかな?」
「西郷くん…………」
アステルム大図書館に珍しく西郷くんが訪れた。
「こんなところで本ばかり読んでよう。本を読む暇があるんなら、少しでも訓練に参加したらどうだ?」
どうやら、勇者たちの耳にも僕の噂が届いているらしい。
「…………」
「なんだよ、だんまりか?」
「その最弱勇者ってどこから聞いたの?」
「あん?ああ、メイドからだよ。知らねぇのか?今、王城内で言われているんだぜ」
噂の発生源はメイドなのだろうか。でも、メイドだけの力で外までうわさが広がるとは考えられない。なら、さらに上の立場の者。
貴族か王族か、いや考えて犯人を見つけても僕にできることなんてない。
「僕だって噂は聞いているよ。でも、西郷くん、僕は残念だよ」
「あん?」
「僕のうわさなんて聞き流せばいいのに。わざわざバカにしに来るんだから。もしかして、西郷くん、案外おこちゃまなのかな?」
「なぁ!?陰キャのくせっ!!」
やばっ!ちょっと調子に乗っちゃった。
噂のせいでメンタルがかなり摩耗して日向はつい八つ当たりに近いことをしてしまった。
突発的に拳を上げる西郷くんに、僕はよける動作を始める。
今の僕が西郷くんの一撃を直に受ければ、ただの怪我ではすまない。
すると。
「貴弘様、何をなされているのですか?」
と怒りをあらわにするジェルマンさんが言った。
「あ、ジェルマンさん」
「…………ふん、貴弘様、ガレスさんが呼んでいましたよ」
「ガレスさんが…………わかりました。次あったときは覚えてろよ」
と言葉を残し、西郷くんはアステルム大図書館から去っていった。
「死ぬかと思った」
腰が抜け、しりもちをついた。
「日向様、あまり挑発してはなりませんよ。あなたたちは仲間なのですから」
「はい…………」
ジェルマンさんの優しい説教に僕はただ頷くしかなかった。
気づけば、ストレスが溜まり、夜の時間になると外を眺めることが多くなっていた。
「あと1週間で、訓練期間が終わる。そしたら僕は…………」
死ぬ。
そんなイメージが湧いてくる。
ただこれは物理的ではなく精神的にという意味で、ルクスニア王国の民に会うことがあれば、きっと罵詈雑言を浴びせられるに違いない。
という被害妄想が頭の中で浮かび上がる。
「はぁ…………帰りたい」
そんな心の底から漏れた弱音。すると、トントンっとノック音が聞こえてくる。
「だ、誰ですか?」
「私…………だよ」
「この声…………結奈さん?」
こんな時間にいったい何の用なんだろう。
っと扉の近くまで歩き、部屋の扉を開ける。
「ちょっといいかな、お邪魔しても?」
少し露出のあるパジャマを着た結奈さんが訪れた。
「いいけど」
僕は何も考えず部屋に招き入れた。
「それで、何の用?」
結奈さんは周りをキョロキョロと見渡しながら警戒する素振りもなく、少し間をおいていつも通りの笑顔で口を開いた。
「大丈夫かなって?ほら、あんまりよくない噂が流れてるでしょ?」
「全然、大丈夫。心配してくれてありがとう、結奈さん」
「本当に大丈夫?私、心配だよ。だって、日向くん余裕な表情をよく見せてくれているけど、本当は心の中で傷ついてるでしょ?」
「…………本当に大丈夫だって、僕こう見えてもメンタル強いし、それに慣れてるから」
「慣れてる?」
「うん、まぁ…………」
昔、いろいろあって変な噂を流されたことがある。
その件は結局、中学を卒業したあと音沙汰がないけど。
「でも本当に心配しなくていいよ、結奈さん。僕は自分の問題は自分で解決したいんだ」
そう自分に起きた問題だ。結奈さんに迷惑はかけられない。
すると、結奈さんは。
「わかった。でも、本当につらかったいつでも頼ってね。私は、日向くんの味方だから」
と僕の手を強く握りしめた。
その手はすごく熱くて、その温もりが不思議と安心感があり、じわっと何かが込み上げてきた。
あふれ出そうになるその何かを抑えようと、グッとこらえながら、自分の気持ちを素直に伝えた。
「…………ありがとう」
すると、結奈さんの様子が変わった。頬が赤く染まり、耳も真っ赤しながら、握りしめていた手を離して、背中を向けた。
「結奈さん、大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫、大丈夫、大丈夫だから」
いつもの結奈さんとは違う。
そういえば、どうして僕なんかに話しかけてくれたんだろう。
とふと疑問がよぎる。
特に結奈さんとは接点なんてなかったし、ある日、突然、学校で話しかけられるようになった。
「あの結奈さんに一つ聞きたいことが…………」
「そろそろ部屋に戻るね。それじゃあ、また明日っ!」
「あっ」
慌てた様子で颯爽と部屋から出ていく結奈さんを見て、僕は静かに笑った。
「まぁ、また後で聞けばいいか。それに結奈さんって結構、おもしろいな」
少しだけ心なしか身軽になったような気がした。
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