1 / 40
第1話 召喚されし5人の生徒
しおりを挟む
普通の高校生の定義、それはいったい何なのだろうか。と考えてみたりする。
目先の教卓を囲んで楽しく会話をしている高校生たちと、こうして椅子に座って誰ともしゃべらず眺めている自分、客観的に見たら、どちらが普通の高校生だろうか。
答えは決まっている。
「おいおい、聞いたぜ、煉!お前、サッカー部のキャプテンになったんだってな」
「どこでそのことを聞いたんだよ、貴弘」
「それりゃあもちろん、サッカー部のマネージャーからだよ」
「貴弘っ!あんた、またマネージャーにナンパしたわね!」
「ちげぇよ、ただ通りかかったから、聞いただけだ。カリカリすんなよ、彩音」
「げっ、気安く私の名前を呼ばないでくれる、結奈も言ってやって」
「…………あっ、そうだね、うん」
「結奈?あ、もしかして、また日向君のこと心配しているの?」
「だって、毎日、一人だし…………」
「結奈は優しいな。ただ、あまり優しすぎると、日向くんも困るんじゃないか?」
「煉は嫉妬しているだけでしょ」
「なぁ、そんなことないが!!」
これが普通の高校生だ。何の話をしているかは周りの生徒たちの声が重なって分からないが、楽しくコミュニケーションを取り、人間関係を築く。まさしく、普通の高校生の模範。
だから、こうして、コミュニケーションも取れず、友達もいない僕、柊日向は普通ではない。
趣味はアニメ鑑賞、休日はボランティア活動、学校がある日は、こうして一人静かに椅子に座って窓の外を眺めたり、本を読んだりしている。
運動は苦手じゃないけど、好きじゃない。部活にも入っていないから、人間関係も終わっている。
もう高校2年生なのに、高校に入学してから、友達が一人もいないのだ。
だが、心配しないでほしい。正直、僕は諦めている。
この現状になってもう1年以上が過ぎ、僕のイメージは学年に定着してしまっている。こうなってしまった以上、なにかしら大きな印象を生徒たちに植え付けなくては助からない。
ならいっそ、このまま地味に高校を卒業したほうが、楽だろう。
だけど、そうさせてくれないクラスメイトが一人いる。
「ねぇ、日向くん」
「…………ん?」
声が聞こえるほうを向けば、目の前に女神がいた。と思ってしまうほどの学年一の美少女。西宮結奈が話しかけてくるのだ。
西宮結奈、学年が誇る女神であり、間違いなく、学年の一の人気者。
特に2年生になるまで、接点すらなかったが夏休み明けからよく話しかけてくるようになった。
「何してるの?」
「あ、ああ、今日の夜ご飯どうしようかなって」
「へぇ、日向くんって料理できるんだ」
「料理って言っても、簡単なものしかできないけど」
「すごいなぁ、私なんてお菓子しか作れなくて」
「お菓子作れるなんてすごいよ。お菓子作りって配分ミスるだけど、おいしくなくなっちゃうし」
「そうかな、えへへ」
今回は料理の話か、っと心の中で安堵した。
別に話すこともないはずなのに、何かしらの話題を作ってはほぼ毎日話しかけてくる。毎放課後だけじゃないだけ、マシだけど、問題はそこじゃない。
問題は西宮さんが学年の一の人気者だということだ。
おかげで、男子女子問わず、睨まれる、それに。
「結奈、日向くんと何を話しているんだい?」
「料理の話だよ、日向くん、料理できるんだって」
「そうなんだ、すごいじゃん。見るからにできなさそうなのに、本当にできるのか?」
御剣煉、学年一のイケメンで運動神経抜群、サッカー部に入部してすぐにエースと呼ばれるようになり、何より西宮さんと話していると必ず割り込んできては、トゲトゲした一言を必ず、言い放ってくる。
御剣くん、絶対、西宮さんのこと好きだよ。じゃなきゃ、おかしいぐらいに言葉にトゲがある。もし好きじゃないなら、それこそ「そっちに興味あるの!?」ってなるよ。
「煉くん、そんなこと言っちゃダメでしょ。ごめんね、日向くん」
「別にいいよ、気にしてないから」
「おいおい、俺たちを置いて、何を話しているんだよって、陰キャの日向じゃん。なんだよ、いつの間に仲良くなったんだ?」
「貴弘っ!言葉には気を付けないさいっ!ごめんね、日向くん。貴弘は別に悪気があるわけじゃないの」
気づけば、西宮さんを中心に、御剣くん、西郷くん、朱宮さんが僕の机を囲っていた。
今日は今週一の最悪な一日になるかもしれない。
西宮さんを中心に集まった4人は僕がいないかのように扱いながら、またいつものように会話を始めた。いや、正確に言うなら、西宮さんに好意を抱く男子二人が勝手に会話をしている。
西宮さんの可哀想と言わんばかりの瞳と視線、その様子を気遣う朱宮さん。
普通に恥ずかしいから、やめてほしい。僕だって羞恥心があるんだぞ。
しばらくすると、授業が始まるチャイムが鳴る。
僕の机を囲っていた4人組が淡々と離れていく中、西宮さんは最後、耳打ちで。
「またね」
「え…………」
僕はすぐに右耳を手で覆ったが、その言動が面白かったのか西宮さんはクスクスと笑いながら席に戻っていった。
女子生徒はみんな、平気であんなことをするのだろうか。
再び自分の世界に戻る。授業のノートはまじめにとりながら、時々窓の外を眺めていると、周りの生徒たちが突然、騒ぎ始めた。
「なんだ」「なんだ」っと声を上げ、その状態はあまりにも異常事態だった。僕もその声につられ、視線を戻すと、さっきまで僕の机を囲んでいた4人が不思議な光で包まれているではないか。
視線は4人に集まっており、みんな、その光に戸惑い、驚いていた。
いや、でもなぜだ。なぜ、僕にも視線が集まっているんだ。と疑問に思った。
そして、こんな僕でもすぐに気づいた。
謎の光に包まれていたのは、あの4人だけではなかった。この僕も謎の光に包まれていた。
「ど、どうなってるんだよ」
そんな状態に先生も慌てていると、謎の光は徐々に強くなり、一気に神々しく輝き始める。そして、教室全体を覆った。
その先のことは覚えていない。
ただ気がつけば、視界に広がったのは、現代とは似つかない衣服を纏った人たちが僕たちを見て驚きと歓喜に打ち震える姿だった。
目先の教卓を囲んで楽しく会話をしている高校生たちと、こうして椅子に座って誰ともしゃべらず眺めている自分、客観的に見たら、どちらが普通の高校生だろうか。
答えは決まっている。
「おいおい、聞いたぜ、煉!お前、サッカー部のキャプテンになったんだってな」
「どこでそのことを聞いたんだよ、貴弘」
「それりゃあもちろん、サッカー部のマネージャーからだよ」
「貴弘っ!あんた、またマネージャーにナンパしたわね!」
「ちげぇよ、ただ通りかかったから、聞いただけだ。カリカリすんなよ、彩音」
「げっ、気安く私の名前を呼ばないでくれる、結奈も言ってやって」
「…………あっ、そうだね、うん」
「結奈?あ、もしかして、また日向君のこと心配しているの?」
「だって、毎日、一人だし…………」
「結奈は優しいな。ただ、あまり優しすぎると、日向くんも困るんじゃないか?」
「煉は嫉妬しているだけでしょ」
「なぁ、そんなことないが!!」
これが普通の高校生だ。何の話をしているかは周りの生徒たちの声が重なって分からないが、楽しくコミュニケーションを取り、人間関係を築く。まさしく、普通の高校生の模範。
だから、こうして、コミュニケーションも取れず、友達もいない僕、柊日向は普通ではない。
趣味はアニメ鑑賞、休日はボランティア活動、学校がある日は、こうして一人静かに椅子に座って窓の外を眺めたり、本を読んだりしている。
運動は苦手じゃないけど、好きじゃない。部活にも入っていないから、人間関係も終わっている。
もう高校2年生なのに、高校に入学してから、友達が一人もいないのだ。
だが、心配しないでほしい。正直、僕は諦めている。
この現状になってもう1年以上が過ぎ、僕のイメージは学年に定着してしまっている。こうなってしまった以上、なにかしら大きな印象を生徒たちに植え付けなくては助からない。
ならいっそ、このまま地味に高校を卒業したほうが、楽だろう。
だけど、そうさせてくれないクラスメイトが一人いる。
「ねぇ、日向くん」
「…………ん?」
声が聞こえるほうを向けば、目の前に女神がいた。と思ってしまうほどの学年一の美少女。西宮結奈が話しかけてくるのだ。
西宮結奈、学年が誇る女神であり、間違いなく、学年の一の人気者。
特に2年生になるまで、接点すらなかったが夏休み明けからよく話しかけてくるようになった。
「何してるの?」
「あ、ああ、今日の夜ご飯どうしようかなって」
「へぇ、日向くんって料理できるんだ」
「料理って言っても、簡単なものしかできないけど」
「すごいなぁ、私なんてお菓子しか作れなくて」
「お菓子作れるなんてすごいよ。お菓子作りって配分ミスるだけど、おいしくなくなっちゃうし」
「そうかな、えへへ」
今回は料理の話か、っと心の中で安堵した。
別に話すこともないはずなのに、何かしらの話題を作ってはほぼ毎日話しかけてくる。毎放課後だけじゃないだけ、マシだけど、問題はそこじゃない。
問題は西宮さんが学年の一の人気者だということだ。
おかげで、男子女子問わず、睨まれる、それに。
「結奈、日向くんと何を話しているんだい?」
「料理の話だよ、日向くん、料理できるんだって」
「そうなんだ、すごいじゃん。見るからにできなさそうなのに、本当にできるのか?」
御剣煉、学年一のイケメンで運動神経抜群、サッカー部に入部してすぐにエースと呼ばれるようになり、何より西宮さんと話していると必ず割り込んできては、トゲトゲした一言を必ず、言い放ってくる。
御剣くん、絶対、西宮さんのこと好きだよ。じゃなきゃ、おかしいぐらいに言葉にトゲがある。もし好きじゃないなら、それこそ「そっちに興味あるの!?」ってなるよ。
「煉くん、そんなこと言っちゃダメでしょ。ごめんね、日向くん」
「別にいいよ、気にしてないから」
「おいおい、俺たちを置いて、何を話しているんだよって、陰キャの日向じゃん。なんだよ、いつの間に仲良くなったんだ?」
「貴弘っ!言葉には気を付けないさいっ!ごめんね、日向くん。貴弘は別に悪気があるわけじゃないの」
気づけば、西宮さんを中心に、御剣くん、西郷くん、朱宮さんが僕の机を囲っていた。
今日は今週一の最悪な一日になるかもしれない。
西宮さんを中心に集まった4人は僕がいないかのように扱いながら、またいつものように会話を始めた。いや、正確に言うなら、西宮さんに好意を抱く男子二人が勝手に会話をしている。
西宮さんの可哀想と言わんばかりの瞳と視線、その様子を気遣う朱宮さん。
普通に恥ずかしいから、やめてほしい。僕だって羞恥心があるんだぞ。
しばらくすると、授業が始まるチャイムが鳴る。
僕の机を囲っていた4人組が淡々と離れていく中、西宮さんは最後、耳打ちで。
「またね」
「え…………」
僕はすぐに右耳を手で覆ったが、その言動が面白かったのか西宮さんはクスクスと笑いながら席に戻っていった。
女子生徒はみんな、平気であんなことをするのだろうか。
再び自分の世界に戻る。授業のノートはまじめにとりながら、時々窓の外を眺めていると、周りの生徒たちが突然、騒ぎ始めた。
「なんだ」「なんだ」っと声を上げ、その状態はあまりにも異常事態だった。僕もその声につられ、視線を戻すと、さっきまで僕の机を囲んでいた4人が不思議な光で包まれているではないか。
視線は4人に集まっており、みんな、その光に戸惑い、驚いていた。
いや、でもなぜだ。なぜ、僕にも視線が集まっているんだ。と疑問に思った。
そして、こんな僕でもすぐに気づいた。
謎の光に包まれていたのは、あの4人だけではなかった。この僕も謎の光に包まれていた。
「ど、どうなってるんだよ」
そんな状態に先生も慌てていると、謎の光は徐々に強くなり、一気に神々しく輝き始める。そして、教室全体を覆った。
その先のことは覚えていない。
ただ気がつけば、視界に広がったのは、現代とは似つかない衣服を纏った人たちが僕たちを見て驚きと歓喜に打ち震える姿だった。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
強制無人島生活
デンヒロ
ファンタジー
主人公の名前は高松 真。
修学旅行中に乗っていたクルーズ船が事故に遭い、
救命いかだで脱出するも無人島に漂着してしまう。
更に一緒に流れ着いた者たちに追放された挙げ句に取り残されてしまった。
だが、助けた女の子たちと共に無人島でスローライフな日々を過ごすことに……
果たして彼は無事に日本へ帰ることができるのか?
注意
この作品は作者のモチベーション維持のために少しずつ投稿します。
1話あたり300~1000文字くらいです。
ご了承のほどよろしくお願いします。
最強魔法師の壁内生活
雅鳳飛恋
ファンタジー
その日を境に、人類は滅亡の危機に瀕した。
数多の国がそれぞれの文化を持ち生活を送っていたが、魔興歴四七〇年に突如として世界中に魔物が大量に溢れ、人々は魔法や武器を用いて奮戦するも、対応しきれずに生活圏を追われることとなった。
そんな中、ある国が王都を囲っていた壁を利用し、避難して来た自国の民や他国の民と国籍や人種を問わず等しく受け入れ、共に力を合わせて壁内に立て籠ることで安定した生活圏を確保することに成功した。
魔法師と非魔法師が共存して少しずつ生活圏を広げ、円形に四重の壁を築き、壁内で安定した暮らしを送れるに至った魔興歴一二五五年現在、ウェスペルシュタイン国で生活する一人の少年が、国内に十二校設置されている魔法技能師――魔法師の正式名称――の養成を目的に設立された国立魔法教育高等学校の内の一校であるランチェスター学園に入学する。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。
更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。
「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」
様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは?
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる