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50話〜兄、出立〜

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「そんじゃ、行ってくるよ」
「行って来ますね」

 昼少し前。
 アニキは修行の為に出発した。
 ロウエンが用意した紹介状を持ち、エラスと共に旅立った。
 と言っても向かうのは皇国領にある山。
 そこの村にその相手は住んでいるらしい。
 その人の教え方は独特らしく、相性が悪いとほとんど何も学び取れないらしい。
 ただし、学び取る事ができれば確実にレベルアップができるともロウエンは言っていた。

「アニキ……大丈夫かな」
「まぁ、大丈夫だろ。ま、これでしばらくは部屋が広くなる訳だし、万々歳だぜ」
「まぁ、それはそうだな」
「さて、俺達は俺達でやる事やるか……薪割りとか」
「あ、そうだな……ま、仕方ないだろ」
「だな。ま、アイツ等はアイツ等で頑張るだろうし、こっちも頑張らないとな」
「そうだな。じゃあまずは」
「あ、では私は集会所で何か依頼がないか見て来ますね」
「あ、じゃあ私もミナモと行く~」
「じゃあミナモ、ユミナ。頼んだ」
「はいはーい」
「はーい」

 ミナモとユミナに集会所に向かってもらい、俺とロウエンとエンシさんで薪割りをする事になったのだが……



 ある程度薪を割り終わり、一息吐いていた時だった。

「た、ただいま~。ハヤテいる~?」
「いるぞ~。こっちだ」
「薪割り中だった?」
「いや、休憩中だったが……お客さんか?」

 帰って来たミナモとユミナが連れて来たのは鎧を着た女性だった。

「あ、ちょっと違くてね……」
「私達が新築された集会所で会ったんだけど……」
「ご挨拶はわたくしから致しますわ」

 一歩前に出る騎士。
 先が巻かれた長い金髪に透き通った湖面のような色の目。
 エンシさんとは違い、両腰に剣、背中に大剣を背負っている。

「わたくしは教国第二騎士団のカルア。ただ今教国は全ての冒険者、パーティーを対象にある依頼を出しております」
「ある、依頼?」
「は、はい……」

 何故だろうか。
 カルアは俺やロウエンを見ると頬を赤くしている。

「大丈夫ですか?」
「は、はい……大丈夫です。んんっ、依頼というのはですね……」
「……あ、そうか。すみません、少しお待ちください。ハヤテ、ロウエン。上に何か着てください。風邪を引きますよ」
「え? あぁ……そうだな」
「……成程。そういう事か」

 エンシさんに言われて上着を着る俺と何か分かったのか、ニヤッと笑ってから上着を着るロウエン。
 確かに、俺達二人は薪割りの途中で熱くなった事もあり上着を脱いでいたのだ。

「ようは俺達の身体を見て興奮してたって訳か……噂通り教国の騎士は隊によって男だけ、女だけのようだな」
「え? ……あ、そういう事?」
「ちっ!? 違いますからね!? わたくし別にお二方の筋肉を見て触ってみたいとか、触りたいとか触らせて欲しいとか思っていませんからね!?」
「はいはい分かった分かった。んで、話ってのは?」
「はっ!? も、申し訳ございません……んんっ、我々が出した依頼と言うのがですね、第三王女が三日前から行方不明なので探して欲しい……というものなのです」
「第三王女が行方不明って……」
「見付けていただけた場合、500ゴールド。払うと現教王様は仰っております」
「500ゴールド……すげぇ」
「それだけ大切なのか……それとも……いや、今話す内容ではないか」

 顎に手を当て、考えながら呟くロウエン。

「それで、その第三王女はどこに?」
「教国の側にある、迷いの森付近でお姿を見られて以来行方知れずなのです」
「迷いの森……成程な」
「お、ロウエン。迷いの森を知っているのか?」
「……まぁな。名前の通り、何の準備もせずに入れば抜け出す事はほぼ不可能。一日中薄暗く、晴天の時でも曇りの日と間違える程に暗い森だ」
「モンスターは?」
「当然いる」
「……そうか」
「おいおいまさか……」
「行かないと思ったか?」
「そうだが……五日も経っている。可能性は低いぞ?」
「それでも、ゼロでは無い」
「……ったく。まぁ引き止めて諦めるお前じゃない、か」
「そうだよ」
「やれやれ……ま、仕方ないか」

 肩を竦めながら微かに笑むロウエン。

「受けて、くれるのですか?」
「あぁ。俺達、風月の群狼はその依頼を受けるよ」
「あ、ありがとうございます!!」

 俺達に頭を下げるカルア。
 その目には涙が浮かんでいる。

「じゃあメンバーだが……」
「え? 全員で行けないの?」
「余裕があればそうしたんだな……猶予が無いとすれば話は別だ。少数で行く」
「そ、そっか……そうだよね。って事は」
「俺とハヤテで行く事になるな」
「で、ではなるべく」
「分かっている。ウルとルフの足なら馬には負けん」
「そうですか……本当にありがとうございます」

 再度頭を下げるカルア。
 その言葉に簡単に返しつつ、ウルとルフを呼ぶ。
 初めは遊んでもらえるかと思ってすっ飛んで来た二匹だったが、俺達の様子から依頼で呼ばれた事を理解したのだろう。
 目付きが鋭い、レイブウルフの目へと一瞬で変わる。

「そうと決まれば荷物を用意してさっさと行くぞ」
「は、はい!!」
「ウル、ルフ。頼むぞ!!」
「ガウ!!」
「ガル!!」

 初めて向かう地での救助。
 荷物を背負い、俺はウル、ロウエンはルフに、カルアは馬に跨り駆け出した。





「にしても五日、か。発表までにやけに時間が空いているが、自国の騎士だけで何とかしようとした結果か? それとも……いや、当人見つけて聞いた方が早い、か」
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