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26話〜ツケを払う時〜

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 セーラは非常に機嫌が良かった。
 魔族軍を退けてから三日。
 私が泊まっていた宿に届いた手紙を読んで私は王都の城へと向かっていた。
 手紙の差出人はラウ。
 内容は、用意が整ったから城に来て欲しいというもの。

(ふふっ。ついにこの日が来たわ)

 騎士であるラウに見初められた私はラウの家に嫁ぐのだ。
 騎士ともなれば収入は安定している。
 家もある。
 そして召使いも自由に使える。
 まぁ、跡継ぎを産まなきゃいけないが、産んでしまえば私の立場もより強固になる。
 そうなら何人だって産んでやろう。

(ふふっ……あ~楽しみ)

 用が無くなったし、宿を出る時にカラトにかけていた術は解いてあげた。
 私ってば本当に優しい。
 ただ自分がやって来た事は覚えているみたいで誰もいないのに謝っており、その姿は滑稽だった。

 他にも私が別れを切り出したら縋り付いて来てスカートにしがみ付いていたが、あの姿はハッキリ言って気持ち悪かった。
 ただひたすら僕を捨てないでと離さなかったカラト。
 私は私で城に行かなきゃいけないから蹴飛ばして踏み付けてやった。
 蹴り付けて、髪を掴んで壁に叩きつけてやった。

 それを最後に部屋の隅で泣くだけのカラト。
 最悪心が壊れたかもしれない。
 が、そんな事私の知った事では無いので私は、前にカラトに渡したピアスを奪い取り自分に着ける。

 そのピアスは私のスキル・魔具作成で作った経験値吸収スキルとちょろまかしというスキルを持つピアス。
 それには、カラトが本来受け取るはずだった経験値が溜め込まれている。
 普通ならバレるのだが、ちょろまかしのおかげでバレないで済む。
 アホのカラトなら尚更だ。

 そもそも何でこんな物を私が作れるのか。
 それは私のジョブが弓使いではなく、シーフだからだ。
 シーフである私は道具作成スキルを持っている。
 そこに、ヒモリの家で読んだ本を元に色んなスキルを身に付けた。
 スキル成長を使って道具作成を魔具作成にランクアップさせたし、ジョブを偽るジョブジャマーも習得できた。

 ただ、そっちに時間を使ったせいで弓使いとしてのスキルを覚える事がほとんど出来なかったが、そこはバカ弟から貰った番の指輪で補っていた。

 ただあのバカ。
 その指輪を捨てやがった。
 おかげで私は、しなくては良い事をカラトにする羽目になった。
 ま、そのおかげでカラトは私に余計逆らえない程に堕ちたので結果オーライってところかしら。

 ただそれももう必要無い。
 私達の周りを嗅ぎ回っていたアルとかいう騎士は私達が殺した。
 その様子を見ていたモーラも私達に一緒に行くから罪を償ってと言って来たので、この前川に落ちてもらった。

 カラトも、あぁなっては何もできないだろう。
 私の邪魔をできる者はもういない。
 そう、浮かれた気分のまま歩いていると……

「やっと見つけた……ま、待てこの!! 魔女!!」
「……あぁ?」

 私の前に立ち塞がるのは汚い服を着た、ボサボサの髪の見るからに見すぼらしい女だった。

「……あんた、誰?」
「っ!?」
「どっかで会ったっけー?」
「あ、……ぁ」
「あ?」
「あんな事をしておいて、忘れたっていうの!?」
「いや、初対面じゃん。私、そんな汚い知り合いいないし~?」
「っ~!!」
「早くしてくんない? 私忙し……」
「アンタに!! 目の前で婚約者をめちゃくちゃにされた!!」
「婚約者を? ……あ~、アンタあの時と女? いや~。そんか薄汚くなってたなんてね~。婚約者元気? また遊んであげよっか?」
「っ……お前のせいで……お前のせいで」
「なによ」
「お前のせいで……彼は心を壊して……全部、全部お前の」
「バッカじゃねぇの? なに私のせいにしてんだよ」
「は?」
「盗られたくなかったら、四六時中自分のそばに置いておきゃ良かったのに。お前のせいだよバーカ」
「ぅっ……くぅ、ふざけるなぁっ!!」
「はい、じゃ~ま♪」

 殴りかかって来た女に足を引っ掛けて転ばせる。
 一応勇者と旅をしていたし、勇者が受け取るはずだった分の経験値を手に入れた私に一般人が勝てる訳が無い。

「きったねぇ手で触ってんじゃねぇよ」
「うぅ……ひっぐ……」

 道端で泣いている女をよそに私は城へと急ぐ。

(そう言えばヒモリ。一昨日から出かけたっきり帰って来ないけど、どこに行ったのかしら)

 そんな事を思いながら私は城へと向かうのだった。



「こちらでお待ち下さい」
「はいはいど~も」

 騎士に連れて来られたのはなんと謁見の間。
 玉座があり、立派な赤い絨毯が敷かれている。
 なんでここでするのだろうと思ったが、きっと王様にも報告するのだろうと思った。
 つまり、私が嫁ぐ先はそれ程位の高い騎士なのだ。

(これはこれは……予想外ね)

 もし事実なら予想以上の贅沢ができる。
 ニヤつくのを堪えて私はラウが来るのを待つ。

 待ちながら私は騎士にはめられた腕輪を見る。
 宝石が散りばめられたそれはキラキラと輝いており、とても美しい。
 あぁ、私に相応しい。
 とても、とても美しい。
 まさに、いつまで見ていても見飽きない。
 その腕輪を見ながら待つ事十分。
 ウゼル王に水晶玉を持ったラウ、更にローザまで謁見の間に現れた。

「こ、これはウゼル王」
「やぁセーラ。遅くなったね」
「い、いえ……」
「そうか」

 膝をついて頭を下げる。
 だが何故だろう。
 ここから逃げろと本能が私に告げる。
 が、そんな事できる訳がない。

「さて、では話を始めようか。議題は……」

 そこで一度言葉を切るとローザとラウを見てから口を開く。

「魔女の処罰についてだ」
「……え?」
「魔女セーラ。貴様を今から、裁く!!」

 直後両手首にはめられたリングが光り、枷のようにピタッとくっ付いた。
 両腕は丁寧に後ろ手になるようにくっ付かれている。

「お、お待ち下さいウゼル王!!」
「何か異議はあるか?」
「当然でございます!! わ、私は勇者パーティーの一員です!! その私が魔女な訳が」

 顔を懸命に上げ、叫ぶ。当たり前だ。
 魔女として裁かれたらどうなるか分かったもんじゃない。
 なんとしても無罪を勝ち取らなければならないのだ。
 と、その時ローザが口を開いた。

「魔女な訳が無いと? 私の部下にあれだけの事をしておいてよく言うな。小娘」
「な、何の事だか私には分かりません!! いったい何を……」
「ふん。とぼけるか……なら、これを見てもそう言えるか? ラウ」
「はい」

 ラウの返事に応答するように彼が持つ水晶玉が光り出す。
 そして水晶玉から空中に映像が投影される。

「ふふ。驚いているようだな。これは記録水晶と言ってな。あの時の様子を記録させてもらった」
「な、なんで……」
「アルに持たせた紙人形には声だけでなく映像も送れたりする特別な物でな……全て記録させてもらったわ!!」
「なっ!?」

 目の前では私とヒモリがアルを刺して笑っている姿が映し出されている。

(ど、どうするどうするどうするどうする!? )

 このまま行けば私は魔女として裁かれる。
 それだけは。
 それだけは避けねばならない。
 ならばどうすれば良いか。

「わわ、私じゃない……」
「何?」
「ヒモリが……ヒモリが私を巻き込んだんです!!」
「ほう?」
「そ、そうです。ヒモリが!! 全部ヒモリが仕組んだのです!! 私が勇者様に愛されているのを妬んだアイツが!!」
「……」
「ウ、ウゼル様!! 私はただの被害者でございます」
「……言いたい事はそれだけか?」
「……ラ、ラウ様?」

 役目を果たした水晶玉を近くの侍従に渡すと部屋の戸を開けるラウ。

「……あとは生き証人に聞くとしようか」
「い、生き証人?」

 新たに部屋に入って来る二人の人物。
 一人はローブを着た女性。
 オレンジ色の髪にカラメル色の目をしている。
 もう一人は男なのだが……

「な、なんで……」

 その顔を見て私は声を震わせてしまった。

「驚いたか? 当然だろうな。お前が殺したと思っていた男なのだからな」

 目の前に現れたのは、アルという名の騎士だった。

「言っただろう。あの紙人形は特別製とな。あれには声や映像を送るだけでなく、持ち主が負う怪我を代わりに受ける他、魔力による自身の居場所の発信もできる。おかげで、救助隊も速やかに彼を見付ける事ができたわ」
「そ、そんな……」
「まぁ、川の下流に流されていたから少し時間はかかったがな」

 怪我をしているせいかアルは左腕を吊っている。

「ローザ様。では始めさせていただきます」
「あぁ。頼む」

 次にフードの女性が私を見る。

「では、ヒモリに次いで貴女の心実の声を聞かせてもらいます」

 目を閉じて両手を合わせる彼女。
 すると私の背後に鳥が現れる。

「語りなさい。貴女の心実を」
「私が全部仕組みました~」
「やはり貴様が兄を!!」
「ハァァァッ!?」

 どうやらこの鳥は私の心を言葉として話すそうだ。
 それも、嘘偽りなく。
 これ以上話されたらマズいと私は両手で鳥を捕まえる。
 が……

「カラトを誑かしたのも全部私~」
「ヒモリを引き込んだのも私~」
「全部全部私が仕組んだのです~」

 先程まで一羽だったのに今度は数十羽になって現れる。

「カラトを盲目の心で魅了して~」
「モーラの心を操って~」
「ヒモリと一緒に遊んで~」
「勇者の仲間と言ってストレス発散~」
「「「超楽しかった~」」」

 鳥達はズバズバと心実を話していく。

「これでぜ~んぶ」
「話したから」
「ばいば~い!!」

 ポフンッと可愛く煙を上げて鳥達は消えた。

「あっ、あうあう……あぁ」
「何か言い分はあるか? 魔女よ!!」
「ち、違う……違う私じゃない」
「禁止スキルである盲目の心を持ちし魔女セーラよ。そなたを魔女として裁く!!」
「違う!! 私だけじゃない!! ヒモリだって禁止スキルの心移しをモーラに使っています!!」
「そう言うという事は、禁止スキルと知って習得したな!!」
「そ、それは……」
「やはり情けをかける必要は無さそうだな」
「ま、ままま……待って……」
「ヒモリと言ったな。奴は既に裁いた。奴の家は取り潰し。カザミ村の統治の権限を剥奪したわ!!」
「違うんです……私は、そう、私にヒモリがあんな本を見せなければ」
「言い訳なら牢で言うのだな!! 刑は追って通達する。連れて行け!!」

 ウゼルの言葉を聞いた騎士達が私の両脇を抱えて立たせ、牢へと連れて行こうとする。

「待って!!」
「まだ何か言うか!!」
「い、いるんです!!」

 面倒くさそうに私を見るウゼルども。
 私ももうなりふり構ってられない。

「わ、私のお腹の中には勇者カラトの子がいるのです!! だ、だからどうかお慈悲を!!」
「そうか……子どもが」
「は、はい……ですので」
「なら後程魔導師に診せるとしよう。連れて行け!!」

 ウゼルに言われ私を連れて行く騎士。
 それでも私は身をよじらせて抵抗するが両手の自由を奪われては意味が無い。
 しかも枷の役目を持つリングには封魔の効果があるらしく、私が持つスキルの一切が発動しない。

「ち、ちくしょう。ちくしょうちくしょうちくしょう……チクショォォォォォッ!!」

 私の叫びは虚しく廊下にこだました。



 三日後。
 私は牢から出された。
 リングは相変わらず着けられたまま。
 更に同じ効果を持つ首輪が着けられ、鎖が繋がれている。
 その先を持つ騎士に連れられ、私は城の外に連れ出される。
 着ている服もボロ雑巾の様な物。
 髪もパサついている。

「おらサッサと歩け!!」
「あうっ……」
「さっさと立て!!」

 後ろを歩く騎士に蹴られて転ぶ私。
 なかなか立たない私に苛立った様子で、転んだままの私を引きずる騎士。
 あの後私は魔導師に調べられた。
 当然、身篭っている訳が無い。

「おら!! さっさとしろ!!」
「この魔女が!!」

 外へと出る。
 すると私は、城の前に置かれた木の板の前に連れて来られる。

「あ、あの……」
「魔女に対する罰だ。刑の執行まで貴様には、日の出から日の入りの間ここで民のストレス発散に使われてもらう」
「そ、そんな!?」
「さっさと始めよう」
「おう」
「ま、待って!! わ、私は魔女じゃない!! 私は勇者の!!」

 嫌だ。
 そんなの嫌だ。
 私は暴れるも騎士には敵わない。
 私は木の板に大の字で寝かされ、両手両足を鎖でしっかりと繋がれた。

「全く。こんなのに騙されるとは……勇者も哀れだな」
「そうだな。今度会ったら酒でも奢ってやるか」
「お~い、お待たせ~」
「おうおせーぞ」
「わりぃわりぃ。魔女用の器具が重いのなんのって」

 遅れて来た騎士が私の横にドスンと音を立てて大きな樽を置く。
 その中には刃物やトンカチ、棍棒が入っている。

「い、いやぁ……」
「安心しろって」
「そうそう。城の魔導師が痛みは感じるけど死なないように厳重に治癒魔法をかけてくれているからよ」
「お前がここで死ぬ事はねぇよ」

 どれだけ辛くても死ねない。
 それがどれだけ辛い事か。
 私は恐怖のあまり失禁したのだった。



「も、もう嫌だ!! お願い!! 許してぐだざい!!」

 ストレス発散に使われる様になって二日後。
 私は精一杯の抵抗を牢でしていた。

「さっさと来いよ!!」
「この魔女が……手間かけさせんかよ!!」
「ヒギッ!? いっ、痛い!! 痛い痛い!!」

 牢から出ようとしない私に業を煮やした騎士二人が牢の中に入り、実力行使に移る。

「お前のせいでなぁ、俺の弟夫妻は滅茶苦茶にされたんだぞ!!」
「あぐっ!!」
「俺の親友だって……お前のせいで!!」
「ひっ……や、やめてやめて!! 痛いからやめて!!」
「この魔女が!!」
「さっさと動け!!」
「痛いです!! 痛いと動けませんから!!」
「そんな事知った事か!!」
「お前の都合でどれだけの人達が!! さっさと……くっ!!」
「ひっ、ひぃ……ひぃ……」
「おら来い!!」
「い、嫌だぁ!! 嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁぁっ!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!! 何でもしますから外に連れて行かないで下さい!! なんなら騎士様達の夜のお相手もしますからお願いします!!」
「貴様のような恐ろしい魔女に相手してもらう訳無いだろうが!!」
「やだやだやだー!! やーだー!!」

 牢から引きずり出される私。

「私は幸せになりたかっただけなのに!! なんでこんな目に遭わなきゃいけないの!? ねぇどうして!!」
「そんな事俺達が知るか!!」
「さっさと連れて行こうぜ。コイツを待っている人達が大勢いるんだから」
「そうだな。急ごう」
「ヤダぁぁぁぁっ!! 嫌だぁぁぁぁっ!!」

 またされる。
 ストレス発散と言われて私の身体は私の物でなくなる。

「ほら、外が見えて来たぞ」
「アァァァァァァァァッ!? アァァァァァッ!! ヤァァァァァァッ!!」

 外に連れ出される。
 私はただただ叫ぶ。

「ほれお待たせ!!」
「嫌だ嫌だ嫌だ!!」
「はいどーぞ!!」

 板に固定される私。
 そんな私に近づく一人の女性。

「珍しいな。一番が男じゃないとはな」

 彼女を見て呟く騎士。
 すると一人の男性が口を開く。

「コイツァ婚約者をこの魔女に壊された女さ。しかもコイツに足蹴にされた……おかげでこの前まで家に篭っていたんだがよ、城の前でこうなっているって教えたら出て来たんだ」
「そうか。そうだったのか……何か使うか?」
「……」

 騎士の問いかけに女性は首を振る。

(いや待て……私が婚約者で遊んで先日蹴った女性って)

 まさかと思い女性の顔を見る。
 間違いない。
 私が城に向かったあの日、蹴り飛ばした相手だ。

「あ、あの私……」
「今更謝るの?」
「ご、ごめんなさい私……あの」
「良いのよ。謝らなくて……」
「な、なら……」
「今から私と彼の痛み……」

 そう言って彼女は持って来たのだろう。
 キラリと朝日を浴びて光るナイフを見せる。

「味わわせてあげる」

 そう言って彼女は私をナイフで切りつける。

「あ、あぁぁぁ……」
「痛い? そうよね……でもね」
「痛い!? 痛い痛い痛い痛い!! 痛いからやめてよぉぉぉおっ!?」
「彼はもっと辛かったの!!」
「ギャォァァァァァァァッ!?」
「私も辛かった!!」
「嫌ぁぁぁぁっ!? 痛い!! やだ!! やだやだ!! やめろクソ女!! このクソ女がぁぁぁぁっ!!」
「私も彼も……どれだけ苦しめられたか。あなたに分かる訳無いわよね?」
「ギヒィィィィッ!?」
「でも良かったわね……あなた、死なないんでしょう?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「彼もなんとか生きているわ……」

 彼女はそう呟きながらナイフを振りかざし

「ごめんなさいって謝ってやってんだろぉぉぉぉぉぉっ!?」

 真っ直ぐ私の下腹部に振り下ろした。
 ストレス発散だけじゃない。
 私が遊んだ男の妻や娘、息子、婚約者が恨みを晴らしにも来るのだ。
 ただストレス発散に使われるのなら殴られたりする程度で済む。
 だが恨みを晴らしに来ている相手は違う。

「お前殺す!! いつか殺す!! お前の顔は覚えたからな!! 絶対にブッ殺してやるからな!!」

 その相手目掛けて叫ぶ。痛みに堪えて叫ぶ。

 だって私は悪くないのだ。
 私はただ幸せになりたくてやったのだ。
 私の幸せのために使われたのだ。

 それはとても光栄な事なのに。
 なのにコイツらは。
 逆恨みもいい所だ。
 そんな事よりヒモリだ。
 あのグズはどこに行った。
 どこで何をして……

「お、向こうでも始まるな」
「おーおー。やっぱ魔女は火炙りだな」

 私から少し離れた広場に注目が集まる。
 そこに木で作られた十字架に磔にされているのはヒモリだった。

「熱い!! 熱い熱い熱い!! 熱い!! 嫌だっ!! 燃える!! 燃えちゃう燃えてる!! 嫌だ!! 死んじゃう!! 嫌ぁぁぁぁぁっ!! うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ヒモリの絶叫が風に乗って聴こえてくる。
 私も同じ目に遭うのだ。

(なんでアイツは同じ目に遭わないんだよ……)

 だが私はそんな事を思っていた。
 同じ魔女なのに、なんでアイツはさっさと焼かれておしまいなんだよ。
 なんで私の様に苦しまないんだよ。

 そう思う私。
 だってヒモリは私と一緒で禁止スキルを持っていて、一緒に遊んで、アルを刺して、モーラを魔獣と一緒に川に落としたのに。
 なんで。どうして……




 私だけがこんな目に遭わなきゃいけないの……
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