上 下
3 / 143

3話〜初めてのクエスト〜

しおりを挟む

 ハツヤドに滞在して三日経ったある日、俺はロウエンと共に集会所に来ていた。

 というのもハツヤドの近くにちょっと質の悪いモンスターの群れが現れたのでそれの退治依頼を受けようと来ていたのだ。
 が、その依頼を他にも受けようと

「俺で役に立てますかね」
「さぁな。まぁ少なくとも足手纏いにはならないだろうさ」
「……まぁロウエンがいれば俺としては百人力なんだけどな」
「ハハッ。謙遜すんな。素の俺ではお前の足に敵わんよ」
「マジっすか……って、バフかけたら勝てるみたいな言い方っすね!?」
「お? 気付いたか。まぁ……それは追々話すとしようかね。っと、来たな」

 ロウエンの表情が真面目なものに変わる。
 ロウエンだけでは無い。
 他の参加者達の表情も真面目な物へと変わっていく。

 ここの集会所の支配人が現れ、皆の前に立つ。
 支配人は若い女性だ。
 いや、若過ぎる。
 俺の妹と言っても通用するぐらい若い。
 あ、俺は村を出た日に19になりました。

「コホン、ホン。皆さん集まって下さり、ありがとうございます」

 そう言うとペコリと頭を下げる支配人。
 赤いツインテールがそれに伴い揺れるが、揺れない所もある。
 何処がとは言わない。

「集まっていただき、ありがとうごさいます。少々、厄介な事態が発生いたしました。この町の近くの森にあります洞窟に住み着いた魔物を退治して来て欲しいのです。もちろん、謝礼はギルド本部からタップリと用意させて頂きます!!」

 謝礼という言葉に周囲から歓声が湧き上がる。
 しかもその謝礼がギルド本部から出るとなると相当なはず。
 そういう事もあってか皆盛り上がっているのだ。

「よっしゃぁぁぁ!! やってやるぜぇぇぇっ!!」
「無理しない程度に稼いでカミさんにちっとは楽をさせてやるんだぁぁぁっ!!」
「見ていろー!!」父ちゃん頑張るからなァァァァッ!!」
「母ちゃん頑張るからな……この金で薬買って、病気治してやるからね!!」

 皆頑張る理由は様々な様だが、俺もこれからの旅の事もある。
 頑張らねばと気合を入れる。
 と……

「ケッ。報酬も名声もこの俺様がまとめて頂くぜぇ」

 とカラトの奴がニヤニタと笑みを浮かべながら呟いている……が

「また言ってるぜあの勘違い坊主」
「無聖剣のくせに勇者気取りが」
「お上りさんだから大目に見てやろうと思っていたがここまでとはな」

 と、周囲でボソボソと言われている。
 のだが当のカラトは意に介していない。
 どころか聞こえてすらいないようだ。

「相変わらず能天気な奴だ。羨ましいな」
「ですね……とりあえず、俺達は俺達で頑張りましょうか」
「その意気だ。我が主よ」
「だーかーらー」
「気にするな気にするな。カカッ!!」

 目を細め、口を開けて笑うロウエン。
 その様子は俺の緊張を幾ばくかほぐしたのだった。



 その後暫くして集まりは解散となり、俺達は指定された森へと向かった。

「流石に馬の用意は無かったか……」
「流石にそれは贅沢ってものですかね」
「仕方があるまい。それにそこまで離れた場所という訳でも無いからな。準備運動には丁度良い」
「……それにすらなっていない奴もいますけどね」

 そう言いつつ振り返る俺。
 その視線の先にいるのは……

「お、おい!! 愚弟!! お、俺にポーションを寄越せ!! ……ゼェ、ゼェ……」

 もうヘトヘトになっている兄カラトだ。
 何というか、小さい頃見ていた姿と違って小さく見えた。
 あの頃のカラトは本当に優しかった。
 何にもできる兄と、足しか速く無い俺。
 比べられるのは当然だった。

 足しか取り柄が無い、他に何も出来ない出来損ない。そう言われる俺と何でもできる兄。

 ただその時の兄貴は、足ではお前には勝てねぇと。
 すげぇ奴だよと笑顔で言ってくれた。
 笑顔で言って、撫でてくれたその手は暖かかった。
 幼い頃に死んだ父を思い出させるその手は俺にとって目指す物の一つだった。

 なのに、今のアイツは何だ。小さく見える。

「お、おい!! 聞いてんのかよ愚弟!!」
「……」
「無視すんなコラ!! ……お、おい……お、ぃ」
「悪いが、お前にくれてやる物は無い。それと、俺はお前の弟では無い」
「な、なんだ、と……」
「俺の兄貴は、もっとカッコ良かった。もっと頼りになって、もっと大きかった」
「なにを、言ってやがる……」
「……お前みたいな、小さい男は俺の兄貴なんかじゃない」
「ま、まて……頼む。頼むから……」

 頼む。
 いつ以来だろうか。
 兄貴が俺に頼んだのは。
 それを聞いて思わず足を止めてしまう俺だったが……

「皆に置いて行かれるぞ」

 というロウエンの言葉で歩みを再開させる。

「お、おい……頼むから。喉がカラカラで……へぇ、ぜぇ……頼む」
「そのぐらい回復担当のシスターにでも頼め。その程度できるだろう?」
「そ、それ、は……」

 そう言われて言い淀むカラトと俯くシスターのエラス。

「ハッ。出来ねぇのかよ。その程度の奴をよく雇ったな」
「くっ」
「喉が……熱い……」
「……ったく」

 仕方が無いので回復のポーションを一つ投げ渡す。
 それを受け取るや喉を鳴らして飲むカラト。

「……優しいねぇ」
「これ以上遅れられると困るだけだ」
「……優しいねぇ」

 二回同じ事を言いながら俺を見下ろすロウエン。
 が、その後ろでは……

「ったくテメェ渡すのが遅えぇんだよ!! 俺がカラカラに干からびたらどーするつもりだ!! え!!」

 やっぱやるんじゃなかったと思いつつ、俺は洞窟の入り口へと急いだのだった。



 入り口には既に先着組がおり、入念に準備運動をする者、持ち物を確認する者、武器の確認をする者がいる。
 俺も準備運動を行い、持ち物……初めてなので回復系を中心に確認し、槍を確認する。

(刃こぼれは無いな……良し)

 出かける前にも確認したが、その時と何ら変わらない。
 俺の隣ではロウエンも確認している。と、そこでふと気付いた。

「形違うんすね」
「ん? ……あぁ。こっちの方は普段用でな。こっちの鍔が無いのは特別用だ」
「特別って、ボスとか?」
「まぁ……そんなもんだな」

 特別用と言った方の刀は背中に斜めがけする様に背負っている。
 来る途中は背負っていなかったのでおそらくマジックバックの中にしまってあったのだろう。

「よし、問題は無さそうだ」

 鍔の無い方の刀のチェックが済み再び背負うロウエン。
 すると面白い事に持ち手部分に巻き付けられていた布が伸びて刃をグルグル巻きにしたのだ。
 成程。
 これならすれ違った時に相手を傷付けなくて済む。
 と内心頷く俺。

「……にしてもアイツ、本当にここに来る気か?」
「まぁ、良いんじゃないですか? 入ってみれば自分の実力だって分かると思いますし」
「ハハッ。ソイツァ違いない」

 俺達の言うアイツとは当然カラトの事だ。
 アイツの装備は革の鎧に鉄の剣、それと木の楯。
 魔法がどれ程使えるのかは分からないが自分が飲む程の水を用意できない程度の魔法使いなら期待しない方が良いかもしれない。

 その周りにいる女四人。
 モーラ、エラス、ヒモリ、セーラ。
 彼女達の武器だが、モーラは拳、ヒモリは槍、セーラは弓でエラスは杖となっている。
 分かりやすい構成だがアイツらもどれぐらいやれるだろうか。

 因みにだが俺はあの後近場で簡単なモンスター狩りの依頼をこなしたおかげでレベルが14から18へと上がる事ができた。
 今思って見ればあの日集会所で絡まれた時、たいして怪我を負わなかったのはアイツらの方がレベルが下だったからかもしれない。

 そう言う事を考えると……あれ、コレってもしかしてヤバイのではと思ってしまう。

 一応顔見知りだし死なれるのは困るが……他にも参加者いるし大丈夫だろうと結論付け、俺はその事を考えるのをやめたのだった。



 それから30分程経ってから洞窟に攻め込んだ俺達だったが……

「全然いねぇな……」
「そ、そうっすね」
「何だよ。緊張してんのかアンちゃん」
「いでっ!!」

 洞窟の中は複雑に入り乱れているうえに敵と全く遭遇しない。
 そんな中、報酬目当ての参加者達は

「俺はこっちを探すぜ!!」
「じゃあ俺はこっちだ!!」

 と散り散りに分かれて行ってしまった。

 今俺と行動している人達だって、そうだ。たまたま同じ通路を選んだのだが、敵が全く出てこず退屈そうにしていた。
 因みに一緒に進んでいるのは女性二人組。
 ただ、かなり鍛えられていて俺より筋肉がある。
 使う武器も斧や大剣と言った重量級の物。
 最終的には

「いざと言う時は守ってあげるからな!!」

 と言われる始末。
 はい、頼りにしています。お姉さん二人が前を、俺の後ろをロウエンが歩く。んでその更に後ろを

「ったく……足元もろくに見えねぇぜ……おいもう少し明るく照らせねぇのか?」
「これが精一杯よ。戦いの時の為に力も残しておかなきゃいけないんだし」
「ちっ……じゃあ仕方ねぇな」

 舌打ち大臣のカラト御一行が歩いている。
 エラスが生み出した光球をポワポワと周囲に浮かせて暗闇を照らしている。
 足元はおろか数メートル先も見えているので俺達も助かっているのだが、カラトはもっとハッキリと見えないと不満のようだ。
 贅沢な奴め。

「にしても敵が全然出て来ないな……外れの道を引いたか?」
「どうだろうな。もっと先にいるかもしれん」

 俺の疑問にロウエンが答える。
 その可能性もあるが果たしてどうだろうか。
 時折聞こえる風の音だけが不気味だ。

 と、先に進んでいると広い通路に出た。
 天井も高く、道幅も広い。
 が、不安定なのかギシギシと時折天井の方から軋む音が聞こえて来る。

「ここ、崩れねぇだろうな」
「いざ崩れたらアタシ等が道を作るから安心しな!!」
「そうそう、安心しなって!!」
「あ、は、はい……」

 女性二人に肩を叩かれながら励まされる俺。
 因みにだが斧を担いでいる方の女性の名前はリサ、大剣を背負っている方の女性の名前をアンナと言うそうだ。

「にしても今回の敵って何なんだ?」

 と呑気に言うカラト。
 話を聞いていなかったのだろう。
 今回の討伐対象はシザースビートルという、昆虫種の上位種だ。
 発達した後肢による二足歩行。
 同じく発達した腕は丸太のように太く、脇腹には人の腕程の太さの腕を持つ。
 ただし爪しかなく指は無い。

 シザースビートルという名の通り、頭部には角とハサミ状の発達した器官を持っており突撃攻撃の際にその威力を上昇させている。
 そしてその全身を鎧の様に硬い外殻で覆っている為、生半可な攻撃が通らない。

 しかもそれが群れとなって襲いかかって来るとなると想像しただけで恐ろしい。
 さっさと倒して帰りたい。

 一応奴等は上下社会を築いているが、時折外からやって来た流れ者のがボスの座を狙ってトップと戦うという事が起きている。
 その時にボスを倒す事に成功するとそのままトップの座を手に入れる事が可能なのだ。

 今回はその習性を逆手に取り、群れのボスを倒してそのまま支配して町の労働力にもしちゃおうぜ的な感じらしい。

(上手く行くのかな……言葉だって通じねぇのに……)

 まぁそんな事言ったら農家が飼っている馬とかも牛もそうなっちまうけど。
 と思っていると……

「なーなー。そう言えばさっきからさ、何か視線を感じんだけどさ」
「何?」

 カラトの言葉に振り向く一同。

「いや、上から見られている感じがして、さ……」
「……まさか!?」

 エラスがその言葉を聞いて上を照らす。
 するとそこにあったのは……

「何だ。ただの岩か……どーやら俺の勘違いだったか」

 天井にあったのは何かの鉱物を含んでいるのだろうか。
 光沢のある黒い岩だ。

「すまんすまん。ハハッ。勇者でも勘違いはするさ~」

 とケラケラ笑いながら言うカラトだったが……

「……!? 避けろ!!」
「あ!? おい!!」

 直後、天井から岩が崩れて来たのだ。
 それを見て叫ぶロウエンだったがカラトは急な事で動けない。
 ので、地を蹴り、跳ぶ様に駆け抜けるとロウエンはカラトを蹴り飛ばし、落石から助ける。
 と同時に抜刀し、落ちて来た岩を受け止める。

「っ!! 離れろ!!」
「う、うわぁぁぁぁっ!?」
「カラト様!!」
「ぜいやァァァッ!!」

 力を込め、岩を押し返すロウエン。
 だが不思議な事に、その岩は着地したのだ。
 その、逞しい後肢で。

「アイツは」
「成程……どうやら敵は既にいたようだな。それも」

 上を見上げるロウエン。
 それに連れるように俺達も上を見上げる。
 するとそこにいたのは……

「ギシャァァァァァッ!!」

 興奮状態となり、その目を真っ赤に染め上げ、口を左右に開いて吠え叫ぶシザースビートルの群れが其処にギッシリといたのだ。

「ハハッ、おいおいマジかよ」

 若干引き気味に笑うロウエン。
 とりあえず槍を構える俺。
 即座に武器を構えるリサとアンナ。
 腰を抜かしたカラトと武器を構える付き添い。
 そんな俺達に落ちて来るビートル達。

「おいおい来やがったぞ!!」

 刀をもう一本抜いて構えるロウエン。
 あ、ロウエンが言うには刀を数える単位は振りなのだという。
 一つ賢くなったぜ。

「ガアァァァッ!!」
「やっぱり硬いな……」

 硬い外殻に覆われた表皮を貫くのは難しい。だが、そんな奴等にも弱点はある。

「そこっ!!」
「ギギャァァァァッ!!」

 外殻と外殻の隙間は柔らかいのだ。
 鎧の様に複数の硬い外殻が組み合わさっている為、隙間が幾つかある。
 そこを狙えば多少なりダメージは狙える。
 だがそれでは俺の急所特攻スキルは発動しない。

(ちっ……そこじゃダメか)

 分かりやすい急所である目を狙いたいが難しいだろう。
 口を狙うかと思うもその口は固く閉ざされ、吠える際に開かれても直ぐに閉じられる。
 なら腹か。狙える事は狙える。
 が、それは奴等の真正面から挑む事になる。

 それは避けた方が良い。
 押し潰しにかかられたら耐えられる自信が無いからな。
 と俺が攻めあぐねていると……

「へ、へへ……コイツぁ俺の出番だなぁ!! どいてろよ愚弟。俺が何でお前よりハツヤドに着くのが遅れたか分かるか? 分からねぇよなぁ!! これを受け取りに行っていたからだ!!」

 やっと立てる様になったカラトが左手でメダルだろうか、円形の物を掲げている。

「この俺が命じる!! 光よ、魔を滅せよ!! ……魔滅の光明シャイニング・デストロイ!! ハァッ!!」

 メダルから迸る様に放たれる光。
 その光がカラトが右手に持った剣に吸い込まれ、三日月状の斬撃となって放たれる。

「グゲッ!?」
「ゲゲッ!?」

 その斬撃により二体のビートルが上半身と下半身に切り分けられる。

(何だあれ……)
「どうだ。これが勇者の力よ!!」
「あぁあのメダル。噂には聞いていたが勇者の印か」
「勇者の印?」
「おう。っとソラァッ!!」

 勇者の印と呼ばれるメダル。
 詳しくは分からないが、というか名前の通りのアイテムなんだろう。
 どうやら光属性のアイテムらしい。

「にしてもあの魔力量……凄いな。印から発生した他にも混ざっている」
「分かるのか? ロウエン」
「ある程度はな。まぁこればっかりは慣れだ慣れ。にしてもあの武器の素材であの威力。よく耐えているな」
「成程……なァッ!! え? 何か言ったか?」
「いや、なんでも無い」
「グァギャァ!!」

 ロウエンの言葉に頷きながら飛びかかって来たビートルの首の付け根に槍を突き立てて倒す。
 急所特攻スキルも発動し一撃でビートルが沈む。

「ちっ……ハヤテ、これを持ってろ!!」
「ロウエン!? ……ってこれお前の刀だろ」
「槍の間合いを抜けられた時用だ。持っとけ」
「お、おう。サンキュー!!」
「気にするな。主に死なれたら困るだけだ」
「ハイハイ。主人様ですよー」

 軽口を言いながらロウエンから渡された刀を腰にさす。
 ロウエンはロウエンで右手の刀だけになってしまっているが問題無いらしく、迫るビートル達を切り裂いていく。

「おいセーラ。俺のチャージが終わるまで敵を足止め」
「はい!! ……燃えろファイヤーアロー!!」

 セーラの弓から燃え盛る炎に包まれた矢が放たれる。
 弓使いが覚える初級技のファイヤーアロー。
 消費魔力の割に威力が高いので初心者向けの技だ。
 が、それであの外殻を破れるかと言われると俺は首を横に振る。

 これが炎属性強化スキルを持った弓を使っていたり、そもそも使用者が炎属性の扱いに長けていて炎の火力を上げられるのなら別だ。

 が、セーラがその様なスキルを持っていた覚えは無い。
 まぁ、俺と別れてから覚えたのなら別だが。
 そう思っていると矢がビートルの元に届き……

 カカンキンキンッ

 と音を立てて外殻に弾かれ、地に落ちるとその火は消えた。

「え、どうして……」

 それを見て呆然とするセーラ。
 どうやら通用すると思っていた様だ。

「ど、どうしたセーラ!!」
「矢が、矢の威力が落ちている……」
「何だと!? どういう事だ。ってええい!! 足止め!!」
「ハイナァッ!!」
「セイ、ヤァッ!!」

 モーラの拳とヒモリの槍がカバーに入る。
 が、二人で一体を足止めするのが精一杯のようだ。
 いや、二人がかりで一体足止めできているだけでも良い方だろう。

「ハッ!!」

 足止めされたビートルを背後からリサが斧で両断し、それに激昂した別のビートルをアンナが大剣で切り伏せる。
 それを見てロウエンが

「ちっ、ここでこのまま戦うのは得策では無いな……一旦外まで退こう」

 と提案する。

「はぁ? ふざけんな!! このままボスを倒すんだよ!!」

 と吠えるカラト。
 だがロウエンはそれを聞いて冷静にこう返す。

「ならお前等だけ残れ。俺は主を連れて外へ戻らせてもらう」
「んだと!? この俺を置いて行く気か!!」
「なら一緒に来い!! 一緒に来て生きるか、残って死ぬか今選べ!!」
「っ……」
「早くしろ!!」
「ぅ……ちっ、分かったよ!! 引くぞお前等!!」

 ロウエンの勢いとビートル達の多さに負けたのだろう。
 あれだけボスを倒すんだと言っていたのに我先にと外へ向かって走り出すカラト。

「全く。殿は俺がやる。主達は先に行け!!」
「お、おう。助かる!!」

 殿をロウエンに任せ、俺はリサ達と共にカラトから一足遅れて外へと向かう。


「うっ、眩し……」

 無事に外へと出れた俺をまず出迎えたのは日の光だった。

「カ~ッ」
「やっと外に出れたね!!」

 リサとアンナが伸びをする。
 ただし、その手にそれぞれの得物を持ったままだ。
 また周囲を見渡して見ると他の冒険者達も外に戻って来ている。
 その様子からすると俺達と同じ目にあった様だ。

 そんな俺達から少し離れた木陰ではカラト達が休んでいる。
 ただしセーラだけは足止めに失敗したとして木陰の外に出されている。
 小さい男め。

「にしてもあのニイちゃん、大丈夫かねぇ」
「レベル高そうだったけど大勢でかかられたら無事では済まないだろうね……」
「……」
「あ、ごめんよ。ニイちゃんの連れだよな。気になるよな……」
「大丈夫だ。ロウエンは強いから」

 そう信じて洞窟の入り口をキッと睨み付ける。
 すると……

「グウゥゥゥッ!!」

 凄まじい勢いでロウエンが吹っ飛ばされながら洞窟から出て来たのだ。

「ロウエン!!」
「っ!! 下がれ!! 出て来るぞ!!」

 空中で回転し、進行方向に歩きに着地し地に降りるロウエン。
 その額には玉の様な汗が浮かんでいる。
 そのロウエンに遅れる様に腹に響く様な音が聞こえる。
 その音が近付くに連れ周囲で休んでいた者達は立ち上がり、武器を手に取り構える。
 そして音の主が洞窟の入り口から陽光の下に現れる。

 大岩の如き体躯。
 他のビートルを超える巨体を包む外殻は何度もボスの座を守った際に付いたと思われる傷痕がまるで血管の様に走っている。
 左右に開くはずの口は右側の一部は欠けている。
 ハサミは左側は半分、右側に至っては全て失われている。
 左脇腹の腕も失われている。

 しかしその角は違う。
 無傷の角。
 王冠の様に幾重にも枝分かれした先端を持つ角。
 ハサミを失ってもボスの座を守り続けた角。
 逞しきその角は雄々しく、天を貫かんと真っ直ぐそびえ立っていた。

 余程の死線を潜り抜けて来たボス。
 明らかにレベルが違う。
 その場にいる全員がそう確信した。
 でも……

「俺が右から行く!! お前は左から頼む!!」
「おう!!」
「「ウオォォォォォッ!!」」
「あ、待て!!」
「コイツを倒せば金が手に入るんだ!! その金があれば、娘を医者に連れて行けるんだよ!!」
「待ってろ。必ず父ちゃんと一緒に倒して、病院に連れて行ってやるからな!!」

 父親とその息子が、剣を片手にボスビートルに突っ込む。
 が……

 ガッスン

 という鈍い音を立てて二人は振るわれた右腕によって吹っ飛ばされた。

「っ……ロウエン!!」
「あまり気乗りはしないが……我が主の命令とあらば!!」

 俺は槍、ロウエンは刀を構えて駆ける。

「ググゥ? ……グッグッグ」

 そんな俺達を見てまるで肩を震わせて笑う様な動作をするボスビートル。

「グッガァァッ!!」
「ッラァッ!!」
「ハァッ!!」

 突き出した槍、刀による切り上げ。
 それを奴は腕先の爪で受け止める。
 反動が腕を駆け抜け、痺れに似た感触を俺に与える。

「こいつ、硬い!!」
「硬いのもあるが、筋密度が他の個体と桁違いだ……っ、まだ抜けない、か!?」
「ゴガァァァッ!!」
「主!!」
「ロウエン!!」

 俺目掛けて振り下ろされる角。
 頭突きの要領で振り下ろされた角が俺の頭を割る前にロウエンが俺を蹴り飛ばして脱出させる。

「俺を、俺を狙って来い!!」
「ググガァァァッ!!」

 刀一つでボスビートルと対等に戦う様に見せるロウエン。
 その姿ははたから見れば対等に戦っている様に見えるが、戦い慣れた人が見れば分かる。
 今のロウエンは防戦一方。受け身側になっている。

 が、当の本人の表情は暗いものでは無い。
 むしろ明るいものになっている。

(レベルが近いのか?)

 そんな事を思ってしまう。
 ただ防戦してはいるが危なげは無い。
 安定していると言える。

「助太刀する!!」

 そこへ割って入ろうとするリサとアンナ。
 いや、周りの皆が助けに入ろうとするが

「邪魔すんな!! 分け前の独り占めはしねぇからそこでジッとしてろ!! 死ぬぞ!!」

 まるで狼が吠える様に周囲の冒険者達を一喝し、押し留める。
 すると

「そうだそうだ。皆死にたくなければそこにいろ!!」

 勇者の印を掲げたカラトが剣に光を集める。

「ふっ、ボスならば火力を上げて一息に滅してやる!!」

 金色に輝く光が剣へと集まって行き

「受けるが良い!! 聖なる光流れセイクリッド・レイ!!」

 振り下ろすのではなく、剣を突き出して放つ。
 それはまるで川の様に光を放つ。
 怒涛の勢いで放たれたそれは真っ直ぐボスビートルへと突き進む。

「ちっ……あの馬鹿」

 ボスビートルと斬り合っていたロウエンは舌打ちをしつつ跳んで射線上から即座に離脱する。

「グ? ……グッゴウ!!」

 光の川を真正面から迎え撃つボスビートル。
 自慢のその角を振り下ろし、なんと真正面から受け止める。

「ググルゥゥッ!!」

 ズッ……ズズッ……と徐々にではあるが押され始めるボスビートル。
 だがその目にはまだ余裕の色がある。

「ハハハッ!! いつまで持ちこたえられるかな? 虫の王よ!!」

 対するカラトは高らかに笑いながら光を放ち続ける。
 悔しいが、あのまま行けば勝てるかもしれない。
 事実、衝撃で巻き起こった風は周囲の木々を揺らしており、冒険者達は飛ばされぬ様に踏ん張っている。

「グッ、グウゥゥゥッ……ググッ!?」

 ボスビートルが驚きの声を上げる。
 なんと硬い外殻にヒビが入り始めたのだ。
 しかも、角の根本にもだ。
 ピシッピシッと音を立てて入るヒビ。
 その音は一箇所からでは無い。

「ハッハッハ!! 所詮は魔の存在!! 光には勝てないのだ!!」
「ググゥ!!」
「そう、この勇者であるカラト様にはなァッ!!」
「オグググッ……」

 そして遂に……

 パキィィィン……

 と音を立てて、カラトの剣が折れた。
 技の威力に剣の材質が耐えられなかったのだ。

「……はえ?」

 根元からポッキリと逝った剣を見て口が塞がらないでいるカラト。
 だが対するボスビートルは……

「ゴゲアァァァァァァァァァッ!!」

 凄まじい雄叫びを上げている。
 うん、あれはブチ切れてる奴だと一目で分かる。
 目が真っ赤なのは変わらない。
 が、何と奴は全身の筋肉を隆起させたのだ。それに伴い割れる外殻。
 ボコボコバキバキと音を立てて筋肉が膨張していく。

 が、俺としてはラッキーだった。というのも……

(よっしゃ。胸が開いた)

 胸の外殻もヒビ割れた事で、柔らかい肉部分が見えたのだ。
 筋密度は高そうだが貫けない程では無い。
 が、一つ問題がある。

(真正面からは厳しいな……)

 やはりというか何というか。
 奴の最大の急所である心臓を貫くには正面から行くのが最短。
 だがそれは奴に捕捉されるのと同じ。
 極めて危険だ。俺一人ならば。

「フリーズアロー!!」
「ライトニングフォール!!」
「ファイアークラスター!!」

 次々と属性を付与された攻撃や魔法が撃ち込まれ、ボスの動きを止められないが遅らせる事に成功する。
 そう。
 俺達は今、大勢で戦っているのだ。
 そのボスの救援に行こうとする手下ビートルを抑える者もいる。
 そして……

「その角さえ落とせれば!!」

 飛び上がったロウエンが背負った刀に手を伸ばす。

「牙を剥く時だ!!」

 その言葉に応じる様に刀の刃を覆っていた布が解け、夜の湖の様に黒い刃が姿を現す。

「落ちろ!!」

 落下の勢いを乗せて振り下ろされる黒刀。
 それはスパッと切れ味の良い包丁が野菜を切る様にすんなりとボスビートルの角を切り落とす。

 そのままスタッと着地し、真後ろに跳んで距離を取るロウエン。
 跳びつつ彼は背後を肩越しに背後を見て叫ぶ。

「今だ!! 穿て主ィッ!!」

 俺に向かって叫ぶ。
 分かっている。ロウエンが跳んだ時にはもう構えていた。
 彼の事だ。
 その自慢の刀であの角を切り落とすのだろうと信じていた。

「分かっている!!」

 槍を目線の高さで構え、魔力で生み出した風を纏わせ、切っ先をピタッとボスビートルへと向ける。

「ま、待て!! ソイツは俺が!!」

 勇者の印を掲げ、チャージを急ぐカラト。
 悪いな。
 譲る気は無い。
 先程の衝撃波が生んだ風により、俺のスキル魔力補給が発動。
 大量の魔力を補給する事が出来た俺はその魔力を解き放つ。

「駆ける!!」

 右足でトンッと軽く地を蹴る。
 左足でタッと地を蹴る。

「ま、待て!! そいつは俺が……」
「縮地・旋風つむじかぜ!!」

 カラトの言葉を聞くが、今更止まれない俺は真っ直ぐ突き進む。
 轟ッ!! という音を立てながら跳ぶ。右足でパンッと地を蹴り最後の加速を行うと同時に槍を突き出す。

「やめて~!!」
「オラァッ!!」

 カラトの静止を振り切って槍の刃をボスビートルへと突き刺し、そのまま纏わせていた風を風の刃に変換。
 ボスビートルの、いや生物の最大の急所に向けて放つ。
 密閉された空間を風の刃が吹き荒れる。

「? ……ギガッ!?」

 直後体が膨れ、破裂するかと思ったがその強靭な肉体は耐えきり破裂する事は無かった。
 代わりにその目から光を消し、もう動く事の無い大岩の様なボスビートルの亡骸がそこにあった。

「……や、やったのか?」
「あのボスビートルが死んだ……」
「や、やったんだ!!」
「ウオォォォォッ!! 俺達勝ったんだ!!」
「すげぇよあの槍の小僧!!」
「あの変な剣の旦那の連れらしいぜ!!」
「マジかよ!!」
「他にもあの勇者とか言っていたニイちゃんもやるか!! ちっとばっかし見直したぜ!!」
「だな!! あんなの撃てるなんて本当に勇者だったんだな」

 沸き起こる歓声。
 皆それぞれの得物を片手に持ち上げ、勝利の雄叫びを上げる。

「ウオォォォォッ!!」
「俺達の勝ちだァァァッ!!」
「よっしゃぁぁぁぁっ!!」

 それに応じる様に俺も槍を掲げる。

「勇者と槍の兄ちゃんに!!」

 揃わない歓声。
 バラバラの歓声。
 でもその声に秘められた気持ちは皆同じ物だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori
ファンタジー
転移したのはざまあ~された後にあぽ~んした王子のなか、神様ひどくない「君が気の毒だから」って転移させてくれたんだよね、今の俺も気の毒だと思う。どうせなら村人Aがよかったよ。 王子はこの世界でどのようにして幸せを掴むのか? 元28歳、財閥の御曹司の古代と中世の入り混じった異世界での物語り。 これはピカレスク小説、主人公が悪漢です。苦手な方はご注意ください。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...