上 下
47 / 51
第3章『冒険者の街アーバン』

包囲

しおりを挟む
「アーシャ、それは多分この辺りの森がダンジョンの影響を受けているからでしょう。魔の森で倒した魔物は魔石になります。つまり魔の森は簡易的なダンジョンの領域という事ですね。……まあ、これは本に記載されていた情報ですけど」

 ……マジで?それってダンジョンを放っておいたら魔物が溢れ出てくるだけではなく、ダンジョンの周りの環境もダンジョンに侵食されてしまうって事なんじゃないのか?

「そういう事だったのね!違和感の原因も分かったし、このまま立ち止まっていてもしょうがないから探索を始めるわよ!!」

 魔の森の中は鬱蒼とした木々と薄く広がる霧のせいで真っ暗かと思っていたが、外と比べて少し薄暗くなっただけだった。しかし霧のせいで見通しが悪く、湿度も高い。そのせいでアーシャ達は居心地が余り良くないようだ。ところが俺は見通しが悪い以外の影響は受けてない、それどころかこの森に入った時からSPが自動で回復している。

 ……都合が良いと言ってしまえばそれまでだが、これってモロにダンジョンの影響を受けてるって事だよな?アーシャの両親はそんな注意をしてなかったからおそらく大丈夫だとは思う。しかし頭では理解していても、ダンジョンに操られたりしないか不安になってしまう。



「ここが繁猿のダンジョンかしら?」

「……魔の森に入ってここまで来たのは初めてだから自信はありませんが、地図通りならここの筈です」

 俺達の前には木々が複雑に絡まりあって歪な円を形成している奇妙なオブジェがあった。その円の中は闇で覆われており、向こう側を見通せない。

「まあそんな事、入ってみればすぐに分かるわ!」

 ここまでの道中では雑魚の魔物、それも1匹ずつでしか遭遇しなかったから消耗は殆ど無いに等しい。準備万端といったところだ。

「……魔物に包囲されたみたい。ダンジョンに入れば追って来ないと思うけど、どうする?」

「ダンジョンに入る前の肩慣らしに丁度良いわね!倒しておくわよ!!」

 せっかく気持ちを切り替えてダンジョンに入る決意をしたのに、邪魔が入ったようだ。

 ……うわー、マジかよ。木々の間から姿を現したのは、体長1メートル程で縞々模様の蜘蛛だった。正確に言えば30匹程の蜘蛛の群だ。黒と黄色の警戒色がとても毒々しく、正直なところ関わりたくない。

 意思があるかは不明だが、俺達を何重にも囲っている様子からは『絶対に逃がさないぞ!』という意志を感じる気がする。……なんなのコイツら?


――――――――――――――――――――――――

【ステータス】
ランク:D
種族名:クピドゥス・ストラティオティス
個体名:未獲得
レベル:17/30
状態:正常

能力値
HP:358/391
SP:264/310
MP:213/247
攻撃力:143
防御力:113
素早さ:138
魔法力:98
魔防力:104

パッシブスキル
[猛毒耐性Lv2][探索Lv3][規律Lv3][連携Lv3]

アクティブスキル
[毒咬みLv4][操糸術Lv3][焼毒Lv3][粘糸Lv3][跳躍Lv2]

称号
[強欲の残滓][先兵]

――――――――――――――――――――――――


 気になる称号とスキルも確認しておこう。


――――――――――――――――――――――――

【称号】

[強欲の残滓]
 根源から無数に世代を経て希釈された残り香。

【スキル】

[焼毒]
 付着した箇所から徐々に範囲が広がっていく毒。犯された箇所からはまるで炎に炙られているかのような痛みを感じる。SPを消費する。

――――――――――――――――――――――――


 こんなキモい奴にアーシャが咬まれてしまったらと思うと、鳥肌が立つ……気がする。それにコイツらの毒は[毒消し]で解毒できなさそうだから絶対に咬ませないようにしないと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん
ファンタジー
 人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。 しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。  膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。 なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。  暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。 神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。  それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。 神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。  魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。 そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。  魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです! 元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!  カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ
ファンタジー
 『温もりが欲しい』  それが死ぬ間際に自然とこぼれ落ちた願いだった…。  そんな願いが通じたのか、彼は転生する。  意識が覚醒すると体中がポカポカと毛布のような物に包まれ…時々顔をザラザラとした物に撫でられる。  周りを確認しようと酷く重い目蓋を上げると、目の前には大きな猫がいた。  俺はどうやら猫に転生したみたいだ…。

処理中です...