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第3章『冒険者の街アーバン』

冒険者ギルドでの審査

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 ……朝か、アーシャは俺の隣で気持ち良さそうに眠っている。[気付け薬]を使えばすぐに起きるだろうけど、……誰かがアーシャを呼びに来てからでいいか。昨日までしっかり眠れていなかっただろうし、今日だけはもう少し寝かせてあげたい。


 コンコン!

「そろそろ起きて下さいアーシャ。ご飯を食べてギルドに行きましょう」

 おっ、ターニャが呼びに来たみたいだ。アーシャを起こしてあげないと。

「こほっ!……ネラおはよ。起こしてくれたのね?」

『ああそうだ、ターニャが外で待っているからな。「朝ごはんを食べたらギルドに行こう」って言っていたぞ』

「ターニャ、今起きたわ!すぐに準備するから先に食べておいてちょうだい」

「早くして下さいね。アーシャがゆっくり準備していたら、審査の後に魔の森へ行く時間はなくなってしまうかもしれませんね」

「え!?すぐに準備するから!」

 ターニャのアーシャに対する脅しは的確だった。流石、長年一緒に過ごしただけあるな。

 アーシャは宣言通り、急いで準備を終え食堂に向かった。……やっぱり女性ばかりの空間に戸惑うが、慣れていかないとだな。ちなみに朝ごはんは、パンとサラダで飲み物は牛乳だった。牛乳は何の乳か分からなかったから便宜上牛乳と呼んでいるのだが、クリームのように濃厚でとても美味しかった。

「ギルドに行きましょ!審査なんてさっさと終わらせて、魔の森に行きたいわ!!」

 アーシャはさっきの脅しをまだ引き摺っているようだな。

「アーシャ、……その前に地図を見せて貰うことを忘れてない?」

「ソフィーは心配症ね!大丈夫、忘れてないわ!!」


 冒険者ギルドに着くとアーシャは昨日担当してくれた受付嬢の元に向かい、話し掛けた。

「今から審査を受けられるかしら?」

「はい受けられますよ。審査の担当者を呼んできますので、少々お待ち下さい」

 受付の奥にある扉に入っていき、しばらくすると1人の男を連れて戻ってきた。その男は老人と呼んでも差支えないような年齢に見える。しかしその肉体は鍛え上げられており、全く衰えを感じさせなかった。

 ステータスを見ておくか、何かアドバイスできることがあるかもしれないし。

【鑑定レベルが足りないため、情報を開示できません】

 ……マジか、こんなの初めてだぞ?

「こちらの方は元Aランク冒険者のランドルフさんです。今は冒険者を引退されて、ギルドの教官として後任の育成に努めていらっしゃいます」

 元Aランクか、……想像以上にヤバいなこの爺さん。ステータスを確認しようとしたが、弾かれてしまった。俺の[鑑定]よりもレベルの高い隠蔽系スキルを持っているのだろう。

「儂がこのギルドで審査を担当している者じゃ、よろしくのう」

「「「よろしくお願いします!」」」

「早速じゃが訓練場へ行くとしようかのう、ではついてくるのじゃ」

 受付の横にある扉は、広めの体育館のような場所に続いていた。しかし体育館といっても床は板張りではなく、地面が剥き出しになっているからグラウンドといった方がいいのか?壁際には木と金属でできた打ち込み台のような物や矢の的、他にも何に使うかよく分からないような物まで設置されている。

「それでは、審査を始めるとするかのう。まずは1人ずつ掛かってくるのじゃ。……遠慮せずに全力でな」

 グラウンドの中央に立ち、そう言い放った。何の構えも取らず自然体で立っているだけの筈なのに、全くと言っていいほど隙がないように見える。

「私から行くわ!『風の精霊よ加護を』テイルウィンド!!」

 アーシャは魔法を使うと、ソフィーほどではないが普段とは段違いの速度で駆け出す。そして矢を雨のように放つが……。

「うむ、なかなか良い動きをするのう。しかし矢が素直すぎるぞ?もう少し変化をつけるように」

 老人は飛んできた矢を全て手で掴み、アーシャに一瞬で近付くとそれを手渡した。……は?どうやったら矢を手で掴めるんだ?

「くっ!『火の精霊よ燃え盛る壁を』ファイヤーウォール!!」

「こらこら、ギルドの中で火は使っちゃいかんぞ?しょうがないのう」

 そう言って手を振ったと思えば、火の壁はまるで幻だったかのようにフッと掻き消えてしまった。無茶苦茶だ!?……この爺さん本当に人間なのか?
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