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第3章『冒険者の街アーバン』

月鹿亭

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 おっ!ここが月鹿亭か?……外観は小洒落ており女性受けが良さそうだ。月と鹿の描かれた看板も可愛らしい。

「ギルドの紹介で来たのだけど、まだ部屋は空いているかしら?」

「おやまぁ、可愛らしいお嬢さん達だこと。1人部屋は銀貨5枚、3人部屋なら大銀貨1枚が一泊の料金だけどうちに泊まっていくかい?」

 宿の中では、人当たりの良さそうな女将さんが掃除をしている最中だった。……銀貨とか大銀貨ってどれぐらいの価値なんだろうか?

「……ご飯はついているの?」

「うちは朝と夜にご飯を食堂に用意してあるよ。それに従魔を連れているようだけど、従魔のご飯は1日銀貨1枚で用意できる。この宿の料理は『美味しい』ってお客さんの評判もいいよ」

 そんな、アーシャの手料理が食べられなくなるじゃないか!?……しょうがない、残念だけど利便性を考慮して我慢しよう。

「じゃあ1人部屋を3部屋、10日間借りるわ。それに、ネラとルリ、ヨルのご飯もお願い」

「それなら金貨1枚と大銀貨6枚だよ」

「はい、これでいい?」

「ちょうど受け取ったよ、部屋まで案内するからついてきておくれ」

 そう言って階段を登っていく女将さんの後をついていった。廊下は埃もなく清潔に保たれており、床や階段が軋んだりすることもなかった。

「え~っと、この部屋から後ろの2部屋までがお嬢さん達の部屋だね。はい、鍵は渡しておくよ。私は下にいるから何かあったら言っておくれ。……そういえば言い忘れていたことがあったね、この宿に男を連れ込むことはできないから気を付けておくれ」

 そう言い残して、女将さんはさっさと下に降りていってしまった。……アーシャ達は顔を真っ赤に染めてプルプルしている。

「そっ……そんなことしないわよ!男を連れ込むなんて考えてないわ!!」

「お嬢さん、宿の中では静かにしておくれ。今はお客さんが全員出払っていたからいいけどね、夜に騒がれたら困るよ」

 階段からヌッ……と顔を出した女将さん、正直言って怖い。しばらくして気を取り直したアーシャ達が部屋決めをした結果、アーシャが真ん中でターニャとサーシャはその左右の部屋に決まった。

 部屋の中も廊下と同様、清潔に保たれている。天井の隅に蜘蛛が巣を張っていたりすることなんて勿論ない。……なんだか眠くなってきた。アーシャと2人きりになって、緊張が解けリラックスしたからか?

「ネラ、休む前に体を洗いましょ」

 宿の個室には風呂場があった。浴槽はなかったが、魔道具が備え付けられている。それにMPを補充すると温かいお湯が出てシャワーを浴びられるみたいだ。

 元の大きさに戻った俺はアーシャに全身を綺麗にして貰う。そして体を拭き、ベッドに潜り込むとすぐに意識が遠くなっていった……。


「ネラ、……て!ねえ……」

 ……なんだ?誰かが俺を揺さぶりながら何か言っている。

「ネラ、ご飯を食べに行くから起きて!」

『アーシャ、もう起きたから。だからそんなに揺さぶらないでくれ』

 ……アーシャに起こされるのは初めてだ。いつもは俺がアーシャを起こす側だからな。

「早く行きましょ!」

 アーシャに抱かれながら食堂にきた。食堂では30人ぐらいが食事をしている。全員女性だから、なんだか異世界に迷い込んだ気分だ。……異世界で異世界に迷い込むってどういうことだよ!?ターニャとサーシャは既に席に着いている。

「お待ち遠さま、2人と従魔の分もすぐに持ってくるよ。従魔の食べる場所を用意しておいたから、そっちを使っておくれ」

 女将さんの言った通り、ちゃぶ台のような背の低いテーブルが設置されていた。そして料理が運ばれてくる。ご飯にスープ、サラダといった定食で出てきそうな料理だ。

「全員分揃いましたし、食べましょうか」

「「「『森の恵みに感謝を』」」」

 うん、美味しい。うちの料理は評判がいいと女将さんはいっていたが、どうやら本当だったようだ。女性でも冒険者の利用する宿だからか、ご飯の量も多くて満足のいく食事だった。

「明日は審査を受けた後、魔の森に行ってみない?」

「いいと思います。ですがその前に、冒険者ギルドにはこの辺りの地図があると思うのでそれを確認してからにしましょう」

「審査を受けるんだし、明日は早めにギルドへ行った方がいいと思う」

「分かったわ、……明日の方針も決まったし今日はもう寝るわね。おやすみなさい」

「「『おやすみなさい』」」

 明日からは結構ハードな冒険が待ち受けている筈だ。さっきまで寝ていたので今は眠くないが、それでも目を瞑っておけばいつの間にか眠りについているだろう……。
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