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第3章『冒険者の街アーバン』

野営

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「そろそろいくわよ!暗くなる前にテントを張り終わっておいた方がいいわよね?」

「そうですね、テントを張る場所へ行きましょうか」

 1時間ほど休憩したところで、今夜過ごす場所を決める為に移動し始めた。

「ここにしましょ!森から十分に離れているし、どうかしら?」

 アーシャは草原に生えていた1本の木の近くで立ち止まった。……人は『何にもない所ではなく、何か目印になるような物がある場所にいたい』そんな心理を持っているのかもしれない。

「いいと思う。私とターニャでテントを張っておくから、アーシャは夜ご飯を作って」

「分かったわ!美味しい料理を作るから、楽しみに待ってなさい!!」

 俺は木の下にテントと食料、それに各自の荷物を出した……アーシャの荷物だけバラバラだ。明日の出発までには整理しておいて貰おう。

 また何にもすることがなくなってしまった。……使ったことのない薬の実験でもするか。


――――――――――――――――――――――――

【生成可能な薬剤を表示します】

【下級】

[回復薬][毒薬][麻痺薬][睡眠薬][毒消し][麻痺消し][気付け薬]

【中級】

[SP回復薬][MP回復薬][石化薬][混乱薬][溶解液][鎮静剤]

――――――――――――――――――――――――


 今までは[毒薬]と[毒消し]、[睡眠薬]と[気付け薬]みたいに状態異常を引き起こす薬と治す薬がセットになって追加されていた。

 だから[石化薬]と[溶解液]も同じ関係だとは思っているが、確信はない。[石化薬]はそのまま意味を推測できるが、[溶解液]は石化の状態異常を治すのかということを事前に確かめておいたほうがいいだろう。

 自分の体で人体実験(?)をするつもりはない、そこら辺に生えている草を使って試してみるつもりだ。まずは[石化薬]から試してみよう。

 口から[石化薬]を吐き出す。おぉー!パキパキ音を立てながら固まっていく。完全に石になってしまったとき、サラサラと砂のように崩れ去ってしまった。あー……これだと獲物には使えないな、食べられなくなってしまうだろう。

 パキパキって音がした、……俺の口から。

『ッッー!?』

 ヤバいって!……[状態異常耐性]のお陰か速度はゆっくりだが、着実に石化しているのが分かる。このまま放っておいたら、俺は……さっき見た草と同じように砂になっちゃうんじゃ!?

 チッ!結局、自分の体で試すのかよ……。だが[溶解液]を使ってみるしかない。

 ポタポタ……ジュワー。

『ビギィッ!?』

 石化はかろうじて治ったが、口の中が溶けてしまった。それに滴り落ちた雫で地面も。[石化薬]と[溶解液]は酸と塩基みたいに打ち消し合うが、量に過不足があるとダメみたいだ。

 俺は少しずつ[石化薬]を出していき、[溶解液]の効果を中和(?)する。そして[脱皮]を使って怪我を治し、ようやくこの事態は収束した。

 ……思ったんだけど、[薬剤生成]って欠陥スキルだよな!?回復系の薬なら問題なく使える。だけど相手を状態異常にしたら自分も状態異常になってしまうなんて、……殆ど自爆と一緒だろうが!!使っているうちに耐性スキルのレベルが上がってはくるだろうけど、それって殴られ続けていたら痛くなくなりましたみたいじゃないか!?

 ……[状態異常耐性]上げといて良かったな。でもまだスキルレベルが足りないようだから、もっと上げておかなければならないだろう。

「夜ご飯ができたわよー!せっかく作ったんだから、冷めないうちに食べてちょうだい!!」

 おっ、ご飯か。……それなら落ち込んでいる場合じゃないな!

「こちらもさっき、テントを張り終えたところです」

 今日の夜ご飯は……炒飯だ!

「「「『森の恵みに感謝を』」」」

 ……前世で食べた炒飯とは味付けが異なっているが、この独特な香辛料を使った味付けもイケるな!やっぱり調味料とかをちゃんと持ってきて正解だった。もしも味付けが塩だけ……とかだったら、士気も下がってしまっただろう。

 夜ご飯を食べ終わると、アーシャ達は全員で食器を洗ったりといった後片付けをし始めた。それが終わると従魔とのシャワータイムだ。……当然のように魔法を使っている。そういえば家にも水道がなかったな、便利な魔法が使えるから必要ないのだろう。

 夜になるとアーシャ、ターニャ、サーシャの順にローテーションで不寝番をすることになった。正確な時間は分からないが大体3時間ぐらいだろうか、アーシャと喋っていたらあっという間に交代の時間がきた。

 あー今日は特にイベントもなかったから、明日は手に負える範囲で何か起きて欲しいものだ。
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