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第2章『エルフの里編』

宴の夜

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 酷い目に遭った俺は、アーシャに抱えられながら宴会の会場である広場へと向かっていた。アーシャの両親は、既に作った料理を持って広場にいってしまったみたいだ。

「………ネラって土も食べるのね。料理が終わって呼びにいったら、裏庭に大穴ができていたからビックリしたわ!」

 !?ちょっと待って欲しい。俺はなんでも食べられはするが、好き好んで食べていたわけではない。もしも『これからの食事は土でいいわよね?』なんて言われたら最悪だぞ………。

『あー、一応食べられはするんだが、ちゃんとした料理の方が断然美味しいんだ』

「そうっ良かったわ!もしかしたら、ネラは土の方が好きなのかも……って不安だったのよ!!」

 ………これって俺が伝えてなかったら、これからのご飯はマジで土だったんじゃないのか?やっぱり、自分の気持ちを相手に伝えるのって重要なんだな。

 広場に着くとエルフが大量にいた、300人ぐらいだろうか?正直言ってヤバい、舐めプしながらでも20人でゴブリンの村を壊滅させられる存在がこんなにいるのだ。もしも『人類の敵ルート』を選んでいたら、即座にこの世に別れを告げることになっていただろう。

 だが、今はそんなことよりも至る所に設置されたテーブルに置かれている料理の方が重要だ。色々なこの世界ならではの料理に目を奪われてしまう。

「ネラ………さっきいっぱい土を食べていたけど、まだ食べられる?」

 さっき食べた分はSPとして、スキルで消費し終わっているからな。宴の料理を食べ逃してしまうなんて絶対にお断りだ!

『勿論食べられるし、早く食べたい!』

「ふふっそうね、いっぱい食べてちょうだい!じゃあいくわよ!!」

 この宴はビュッフェみたいな立食形式のようで酒も置いてあった。それぞれの好きな料理を皿に盛り付けて飲み食いしている人や、楽しそうに歌ったり踊っている人達もいたりして混沌としている。

「あっこれ美味しそうね!この肉団子も美味しそうだわ!!………あっちには何があるかしら」

 アーシャも並べられた様々な料理に夢中になっており、周りのエルフと同じようにはしゃいでいる。俺はアーシャの邪魔にならないように[共生]で体を小さくして肩の上に乗っていた。

「ネラ見て、ゴリクランプの蒸し焼きよ!1人一本までだから半分こしましょ!!」

 アーシャが指差した先には大量の蟹の足……ではなく、ゴリクランプの体に生えていたものが山のように積まれていた。原型を知らなかったならば蟹の足にしか見えないが、俺はあの不気味な本体を既に見てしまっている………。

 バキッ!

「うーん、久しぶりに食べたけどやっぱり美味しいわ!はい、こっちはネラの分よ!!」

 アーシャが俺にも差し出してきた。………昆虫食を勧められた人って、多分こんな気持ちになるんだろうな。………食べるしかないか。

『………美味い!?』

 そのプリップリの身は、蟹の旨味を凝縮したかのような味わいだ。単に蒸し焼きにしてあるだけなのに、こんなに美味いなんて………なんだか負けた気分になってしまった。

「まだいっぱい料理はあるんだから、沢山食べてちょうだい!」

 アーシャは上機嫌になり、また別のテーブルに向かっていった………。

「ネラ、あーん………美味しい?もっと食べて、あーん……美味しい?まだ食べられるわよね?あーん、ほら口を開けなさい!そう、どんどん食べるのよ……」

 宴の終わりが近づく頃には………アーシャは俺の口に料理を突っ込む機械になっていた。それは途中で喉が渇いたのか、テーブルに置いてあった飲み物を飲んでしまったことから始まった。そう、それは酒だったのだ。

 アーシャは俺にどんどん食べさせてくるが、流石にこれ以上は耐えられない。………眠り薬を使ってみるか?量を少なめにしておけば周囲への被害はないだろうし、いざ!

 ………バタン!

 俺はアーシャに[下級保護結界]を使って、広場の端の方まで運んだ。………明日の朝に出発だっていうのに大丈夫なのか?

 明日は早めに気付け薬で起こしてあげるとしよう。ろくに旅の準備もしていなかったし、風呂にも入らないといけないだろうしな。だが、今は………。

『おやすみアーシャ、明日からもよろしくな………』
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