『毒蛾転生〜仲間と共に異世界巡り〜』

ユーキ

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第2章『エルフの里編』

宴の準備

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 里へと戻ったエルフ達は、運んできた獲物を広場にどんどん積み上げていく。

「ネラ!この辺りに出して頂戴!!」

 俺はアーシャにうながされ、[アイテムボックス]に収納していた獲物を全て出した。

『アーシャ、この獲物ってどうするんだ?』

「今夜の宴と家で使う分を持って帰って、余ったものは冷凍して里の倉庫に保存するのよ!でも、冷凍すると味が落ちちゃうから皆んなかなり多めに持っていくわね!!」

 よかった、それなら明日から始まる旅に持っていく分の肉も分けて貰えそうだな。

『アーシャ、明日からの旅で食料とか雑貨みたいな直ぐに必要にならない荷物は、俺が[アイテムボックス]で預かっておこうか?』

「そうね……お願いするわ!ネラ、あともう一回進化したら人前でも[アイテムボックス]を使って大丈夫だと思うわよ」

 おー、それならさっさと進化してしまいたいな。

「じゃあ持って帰るやつを選ぶわよ!えーっと、この熊と鹿、それにこの鳥も持っていきましょうか」

 アーシャが選んだものを収納して俺達は広場から家へと向かった。

「ただいま!いっぱい狩ってきたわよ!!」

 俺は言われる前に獲物を出しておく。

「あら、お帰りなさいアーシャ、それなら今夜の料理は張り切って作るわね。あなた!アーシャが沢山持って帰ってきてくれたから、解体するのを手伝ってちょうだい」

「分かったよリリー、これは……沢山あるね」

 ………まあ明日からの旅に持っていく分も含まれているからな、娘の旅がスムーズにいくように親として頑張って欲しいところだ。

 全員で毛皮を剥いだり羽毛を毟って、肉を切り分けていく。解体は順調に終わり、今から料理をしていくみたいだ。

 母だけでなくアーシャも一緒に作っている。宴で里の人達に振る舞う為なのか、どこから出してきたのか分からない大きな鍋とフライパンを使っている。そしてどんな料理かはまだ分からないが、既に良い香りが辺りに立ち込めていた。

 ………ヤバい、ここにいたら我慢出来ずに摘み食いでもしてしまいそうだ。俺は理性を保てている内に家をこっそりと抜け出して家の裏へと移動する。アーシャは俺の居場所が分かるので、料理が終わればきっと呼びにきてくれるだろう。

 さて、何故家を出てきたかというと摘み食い防止の為だけではない、もう一つというかメインの目的がある。それはスキルのレベル上げ、特にサポートに適している[薬剤生成]を重点的にするつもりだ。SPは無限にある………土を食べればいくらでも回復出来るのでどんどんスキルを使っていく。

 余りこういう物は食べたくないが、肝心な時に躊躇なく食べられるようにしておかないとな。あっ!?なんか今の甘かったぞ?……ここってさっき俺が[回復薬]を出した場所だよな。

 冷たくない砂糖水を掛けたかき氷と思えば、さっきよりもマシだな。………俺は一心不乱に土を食べ、スキルをどんどん使いまくる。


――――――――――――――――――――――――

【称号:[回復薬の虜]を獲得しました】

――――――――――――――――――――――――


「ネラー!広場に行くわよ………え!?何してるの!一体何をしたらこんなことになるのよ?」

 どれくらいの時間が経ったのだろうか、アーシャの呼び掛けに気付いた時にはかなり深くて大きな穴が出来上がっていた。そして俺はその深い穴の底に……やっちまったな、夢中になって全く考えなしに食べまくってしまった。

 ここから上に登るには斜めに掘り進んでいくか、地道にアイテムボックスに土を収納していくしかないだろう、とにかく自力でこの穴から出るには結構な時間が掛かってしまう筈だ。

『………アーシャ、助けてくれ!』

「もうっ!仕方ないわね………『水の精霊よ満たせ』ウォーターフォール」

 穴の上から大量の水が降り注いできた。芋虫って水に浮いたっけ、それとも沈む?ギャー!?………どっちにしろそりゃないぜアーシャ。

 ……水に揉みくちゃにされた俺は、気が付いたらアーシャの腕に抱かれていた。酷い目にあったな、そういえば社会の授業で鉱山では露天掘りなる方法が採用されていると聞いたことがある。………次は自力で登れるように工夫して掘ろう。
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