上 下
33 / 51
第2章『エルフの里編』

宴の準備

しおりを挟む
 里へと戻ったエルフ達は、運んできた獲物を広場にどんどん積み上げていく。

「ネラ!この辺りに出して頂戴!!」

 俺はアーシャにうながされ、[アイテムボックス]に収納していた獲物を全て出した。

『アーシャ、この獲物ってどうするんだ?』

「今夜の宴と家で使う分を持って帰って、余ったものは冷凍して里の倉庫に保存するのよ!でも、冷凍すると味が落ちちゃうから皆んなかなり多めに持っていくわね!!」

 よかった、それなら明日から始まる旅に持っていく分の肉も分けて貰えそうだな。

『アーシャ、明日からの旅で食料とか雑貨みたいな直ぐに必要にならない荷物は、俺が[アイテムボックス]で預かっておこうか?』

「そうね……お願いするわ!ネラ、あともう一回進化したら人前でも[アイテムボックス]を使って大丈夫だと思うわよ」

 おー、それならさっさと進化してしまいたいな。

「じゃあ持って帰るやつを選ぶわよ!えーっと、この熊と鹿、それにこの鳥も持っていきましょうか」

 アーシャが選んだものを収納して俺達は広場から家へと向かった。

「ただいま!いっぱい狩ってきたわよ!!」

 俺は言われる前に獲物を出しておく。

「あら、お帰りなさいアーシャ、それなら今夜の料理は張り切って作るわね。あなた!アーシャが沢山持って帰ってきてくれたから、解体するのを手伝ってちょうだい」

「分かったよリリー、これは……沢山あるね」

 ………まあ明日からの旅に持っていく分も含まれているからな、娘の旅がスムーズにいくように親として頑張って欲しいところだ。

 全員で毛皮を剥いだり羽毛を毟って、肉を切り分けていく。解体は順調に終わり、今から料理をしていくみたいだ。

 母だけでなくアーシャも一緒に作っている。宴で里の人達に振る舞う為なのか、どこから出してきたのか分からない大きな鍋とフライパンを使っている。そしてどんな料理かはまだ分からないが、既に良い香りが辺りに立ち込めていた。

 ………ヤバい、ここにいたら我慢出来ずに摘み食いでもしてしまいそうだ。俺は理性を保てている内に家をこっそりと抜け出して家の裏へと移動する。アーシャは俺の居場所が分かるので、料理が終わればきっと呼びにきてくれるだろう。

 さて、何故家を出てきたかというと摘み食い防止の為だけではない、もう一つというかメインの目的がある。それはスキルのレベル上げ、特にサポートに適している[薬剤生成]を重点的にするつもりだ。SPは無限にある………土を食べればいくらでも回復出来るのでどんどんスキルを使っていく。

 余りこういう物は食べたくないが、肝心な時に躊躇なく食べられるようにしておかないとな。あっ!?なんか今の甘かったぞ?……ここってさっき俺が[回復薬]を出した場所だよな。

 冷たくない砂糖水を掛けたかき氷と思えば、さっきよりもマシだな。………俺は一心不乱に土を食べ、スキルをどんどん使いまくる。


――――――――――――――――――――――――

【称号:[回復薬の虜]を獲得しました】

――――――――――――――――――――――――


「ネラー!広場に行くわよ………え!?何してるの!一体何をしたらこんなことになるのよ?」

 どれくらいの時間が経ったのだろうか、アーシャの呼び掛けに気付いた時にはかなり深くて大きな穴が出来上がっていた。そして俺はその深い穴の底に……やっちまったな、夢中になって全く考えなしに食べまくってしまった。

 ここから上に登るには斜めに掘り進んでいくか、地道にアイテムボックスに土を収納していくしかないだろう、とにかく自力でこの穴から出るには結構な時間が掛かってしまう筈だ。

『………アーシャ、助けてくれ!』

「もうっ!仕方ないわね………『水の精霊よ満たせ』ウォーターフォール」

 穴の上から大量の水が降り注いできた。芋虫って水に浮いたっけ、それとも沈む?ギャー!?………どっちにしろそりゃないぜアーシャ。

 ……水に揉みくちゃにされた俺は、気が付いたらアーシャの腕に抱かれていた。酷い目にあったな、そういえば社会の授業で鉱山では露天掘りなる方法が採用されていると聞いたことがある。………次は自力で登れるように工夫して掘ろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ
ファンタジー
 『温もりが欲しい』  それが死ぬ間際に自然とこぼれ落ちた願いだった…。  そんな願いが通じたのか、彼は転生する。  意識が覚醒すると体中がポカポカと毛布のような物に包まれ…時々顔をザラザラとした物に撫でられる。  周りを確認しようと酷く重い目蓋を上げると、目の前には大きな猫がいた。  俺はどうやら猫に転生したみたいだ…。

【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん
ファンタジー
 人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。 しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。  膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。 なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。  暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。 神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。  それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。 神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。  魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。 そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。  魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです! 元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!  カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!

処理中です...