『毒蛾転生〜仲間と共に異世界巡り〜』

ユーキ

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第2章『エルフの里編』

後始末

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 ゴブリンの村があった場所からは濃密な血の匂いが漂ってきており、その周辺には沢山の魔物が集まっていた、狼や熊、猪の魔物だけでなく見たことのない奇妙な魔物までいた。

 こんなに魔物が集まっていたら争いが起きると思ったが、どうやら魔物達はゴブリンを食べる事に夢中で争う暇もないみたいだ。

 そして、エルフ達はゴブリンの村があった場所の周りでパッと散開し、集まっていた魔物を狩り始めた。

「いっぱい狩って今夜の宴で沢山食べるわよ!ネラ、準備はいい?」

 アーシャも張り切っているみたいだな、……里で消費しきれないほど沢山狩れば旅に肉を持っていけるだろう、そうなれば旅の途中で食料を補充する為に狩とか狩った獲物を解体する手間が省けるので丁度いい。

『勿論、準備万端だ!』

「よしっ!じゃあいくわよネラ!!」

 そう言ってアーシャは魔物の集団へと走り出した、走りながら矢を射っているが、どの矢も急所である頭や胸へと吸い込まれるように当たっている、……伊達に160年以上も生きていないな。

【経験値を13獲得しました、経験値を8獲得しました、経験値を9獲得しました、レベルが上がりました】

「ネラ?………あなた今、何かとてつもなく失礼な事考えていたわよね?」

 ヒッ!?別にアーシャの事をお婆ちゃんとか思ってないから勘弁して!………でもしょうがないと思う、人間の感覚でいえば大体90年も生きられたら大往生と言っていいだろうし。

『アーシャ、………エルフの寿命ってどれぐらいなんだ?これからどのくらい一緒に居られるかと考えていたんだよ』

 ………これぐらいの嘘というか言い訳は、人間関係を潤滑に進めていく為の機転だと自分に言い聞かせる、言わぬが花なんて言葉もあるしな。

【経験値を18獲得しました、経験値を7獲得しました、経験値を6獲得しました、レベルが上がりました】

「うーん、大体1000歳ぐらいかな?ドワーフは500年で魔族は300年、人間は80年だった筈よ!……あっ、でも私達エルフの女王様はこの世界が始まったときから生きていらっしゃるわね!!」

 は!?世界が始まったときからって、どんだけ長生きしているんだよその女王様!………取り敢えず今は考えないでおくとしよう、えーっとエルフの寿命が1000年だとしたらアーシャは人間でいえば16歳ぐらいだろう、それにこの世界でも人間の寿命は同じぐらいなんだな。

【経験値を9獲得しました、経験値を12獲得しました、経験値を8獲得しました、レベルが上がりました】

 ………前から思っていたが、この経験値をゲットしたりレベルアップした時の通知が煩くて仕方がない、どうにかして止めたり出来ないだろうか?

【システムユーザーの意思を感知しました………通知機能の一部停止を行います】

 おぉ!こんな簡単に出来るんだったらもっと早くやっておけば良かったな。

 1人の時だったらシステムの音声を聞く事が心の平穏を保つ為に必要だったが、今はアーシャがいるのでただ耳障りなだけになってしまった、ごめんなシステムさんアンタが悪いんじゃないんだ。

 あ………もう周囲に魔物はいないみたいだ、ということは今から死体を焼却処分するのだろう。

 エルフ達が狩った食べられる獲物を村の外へと運び出している、………ゴリラから節足動物の脚が大量に生えているバケモノもその運んでいる獲物の中に含まれていた、それ……本当に食用なのか?大分エグい見た目をしているが。

「ネラ、やったわね!今日の宴では滅多に食べられないゴリクランプも食べられるわよ!!とっても美味しいから楽しみにしていてね!」

 アーシャが指刺した方向には………、あの奇妙なバケモノが地面に置かれていた、アレが美味しいのか?うーん……一口だけ騙されたと思って食べてみるとしよう。

 一応鑑定しておくか。


――――――――――――――――――――――――

【ゴリクランプ】
 D+ランクの魔物、とても希少な魔物として有名でもし狩ることが出来れば4人家族なら3年は遊んで暮らせるほど高値で取引されている、一般の市場に出回ることはなくオークションでしか手に入らない、1番最初に食べた人物によると『この味を知らない者は人生の半分は損している』とのこと

――――――――――――――――――――――――


 マジかー、美味しいのなら食べないと損だよな!次にいつ食べられる機会が巡って来るかも分からないし絶対に食べる!

 というかエルフでも滅多に食べられないってどんだけ珍しい魔物なんだよ………。

「皆さん集合して下さい!魔物の排除が終わったので死体の焼却処分を始めます、儀式魔法を使うので僕の詠唱に合わせて下さい」

 村の柵から20メートルほど離れた場所でリーダーがエルフ達を呼び集めた。

「では始めます……、『『火の上位精霊サラマンダーよ、この地の不浄を焼き払い清め給え』』バーニングクリムゾン!」

 その瞬間、ゴブリンの村があった場所にまるで太陽が落ちてきたかと思うほど巨大な火球が炸裂した。

 殆ど村の中央に落ちたというのに俺達がいる場所まで熱気が伝わってくる………というか暑い、涼しい森の中だった筈がまるでサウナの中にいるみたいだ……って言うか、こんな魔法が使えるんだったら最初から使っておけばよかったのに。

 ………もしかしたらゴブリンの討伐ではなく、その死骸に集まった魔物を狩ることが目的だったのか?うーん……まあ別にいいか、アーシャが怪我しなかったし、お陰で宴もあるんだから。

 しかし……思っていたのと違うんだが、死体を一箇所に集めて燃やすと思っていたのに、ゴブリンの村丸ごと焼き尽くすって豪快すぎるだろ!?

「注目!後始末が終わったので里に帰還します、では各自で倒した魔物を分担して持って帰って下さい」

 そういえばなんで死体を焼いたんだろうか?埋めてしまう方が楽だったんじゃないのか?

『アーシャ、なんで死体を焼いたんだ?』

「それはね!沢山の死体をそのまま放っておいたらアンデッドになっちゃうからよ!!」

 あーそういうことか、アンデッドといえばゾンビみたいな腐ったやつかスケルトンみたいな骨だけになったやつ、それにゴーストなんかもいるが、どれも食べられないからな………。

 そしてアーシャは両手で獲物を抱え、俺は[アイテムボックス]で限界まで獲物を収納して里へと戻っていった。
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