『毒蛾転生〜仲間と共に異世界巡り〜』

ユーキ

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第2章『エルフの里編』

朝食

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 ……腹ペコの俺はじっとご飯を待っている、キッチンから漂ってくる香ばしい匂いにどうにかなってしまいそうだが我慢だ。

「はいっお待たせ!」

 アーシャが俺の前に料理の載っている皿を置いてくれた、……2枚のパンの間に分厚い肉と瑞々しい野菜が挟まっていて何やらソースが掛かっている、見覚えのあるこれは……。

 そう!サンドイッチだ!!………いや、このパンはカリッとトーストされているから、サンドイッチの中でもホットサンドというやつなのだろう。

「ネラ!ぼーっと見てないで、冷めない内に早く食べちゃいなさい!!」

 そうだな、冷めてしまったらホットサンドの魅力はきっと半減してしまうだろう。

『森の恵みに感謝を』

 では、いただきます!………食べると同時にトーストのサクッとした食感、挟んである肉のジューシーさと新鮮な野菜のほんのりとした苦味、さらに甘辛い濃厚なソースが合わさって完全に調和している。

 美味い!!………はっ!?皿の上にはもう何も残っていない。

 チラリとアーシャの方を見る、そこには………ニコニコと笑みを浮かべたアーシャがホットサンドの載っている皿を持って立っている。

 ………くっ、もしやお代わりと引き換えに何かとんでもない交換条件を提示するつもりか!?一度目は無料で提供し、一度使ってしまったらもう二度とそれ無しでは生きられない体にする、そして二度目からは高額な対価でそのブツを売り捌く、………まるでヤクザかマフィアの麻薬取引のようではないか!

 だが一度このホットサンドを食べた後にお代わりの誘惑に打ち勝てる者などいるだろうか?いや、絶対にいない!!これを食べるためならなんだってするから早く食べさせてくれ!!

「勿論お代わりするわよね!はいどうぞ、お代わりは沢山作ってあるからいっぱい食べるのよ!!」

 疑って済まなかったアーシャ!純真な彼女と薄汚れてしまった俺………、後ろ暗い気持ちもあるが折角の好意を無に出来るはずもない、………じゃあ食べるしかないな!

 あぁやっぱり美味い、あっ!明日この里を出発するということは………、もしかして旅の間は美味しい料理を我慢しなければならないのか!?

 旅に料理道具みたいな余計な荷物は持っていけないだろう、そうなれば必然的に簡素な料理になってしまう筈だ、別に簡素な料理を悪く言うつもりはないのだが、旅の間ずっとというのはキツい………。

 どうにかしてこの問題の解決を………、ターニャの従魔であるフォレストウルフのルリ先輩に運んで貰えば、背中にリュックのような物を付ければいけるだろうか?………いや絵面が酷すぎてダメだな。

 どうしようもないのか!?何か解決の糸口はないだろうか?ステータスを確認してみよう………なんで忘れていたんだ?俺には[アイテムボックス]があるじゃないか!

 灯台下暗しだな………、『売り飛ばされる』みたいな物騒なことを言われて無意識のうちに選択から外していたのかもしれない、だが旅の最中なら仲間以外に見られる事もないだろうし大丈夫な筈だ。

 そうと決まれば、後でアーシャに必要最低限の荷物以外は預かっておくことと、料理道具や調味料、それに食材も持っていくように進言しておくか。

「ネラ、食べ終わったみたいね!そろそろ広場に行くわよ!!」

 ん?何かあるのだろうか、昨日でゴブリンの作った村の討伐は終わったみたいだし………、今度は別の?

『また何か討伐しに行くのか?』

「うーん、違うけどそうとも言えるわ!昨日倒したゴブリン達を森に返すついでに、死骸に集まった魔物を狩りに行くの!!」

「そして掃除が終わったら、倒した魔物を持ち帰って里で宴を開くのよ!!」

 おぉー、宴か!……きっと沢山のご馳走を食べれるだろう、夜が待ち遠しい。
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