『毒蛾転生〜仲間と共に異世界巡り〜』

ユーキ

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第2章『エルフの里編』

家族

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 …………何やら不穏な言葉が聞こえたんだが、魔物の一斉討伐?………もしあの時少女と契約していなかったら不味かったな。

「ちょっといい?貴方の名前を勝手に決めてしまった事は謝るわ……ゴメンなさい」

『いいけどさ、今度からは名前みたいな大切な事はちゃんと相談してくれよ………パートナーなんだろ?』

「そうね………わかったわ、次からはちゃんと相談するわね」

「ところで……自己紹介がまだだったわね、私の名前はアリシアっていうのだけど、アーシャって呼んでちょうだい、家族とか友人みたいな親しい人にはそう呼ばれているのよ」

『分かった……アーシャ、魔物の一斉討伐ってどんな感じでやるんだ?』

「ネラもついてきて貰うわよ、里の若者達で増えすぎた魔物を減らす為に討伐するの……」

「今回の対象はゴブリンよ、……アイツらは放っておくと直ぐにポコポコ増えていくから、そろそろ減らしておかないと手に負えなくなるのよ」

『………アーシャは俺の事、気持ち悪いとか思わないのか?俺……芋虫だし………』

「ふふっ、何言ってるのよネラ……そんな事を気にするなんてやっぱり本当に変な子ね、森に住んで居るんだから全く気にならないわよ」

「それに、もしそう思っていたら一緒に寝たりしないわ!………成長して大きくなったら一緒に寝れるか分からないけど」

「そういえばネラは変身出来たわね!変身すれば大きくなっても一緒に寝られるわ!」

『そう……か、………ならいいんだ』

 俺は人間だった事も言おうとしたが、その言葉は結局飲み込んでしまった……。

「よしっ!着替え終わったから下に降りるわよ、ネラの事を家族に紹介するわよ!」

「変身を解いて元の姿に戻ってちょうだい」

 俺が[擬態]を解いて元の姿に戻るとアーシャは俺を抱えて階段を降りて行った。

 キッチンではアーシャの母親が食事を作っていて、食卓には父親が座っている。

 二人とも金髪でモデルの様にスラッとした体型、優しげな顔つきだ。

「おはよう母さん、父さん!改めて紹介するわ、この子が私の従魔のネラよ!」

「おはようアーシャ、その子が昨日言っていた従魔なのかい?」

「そうよ父さん………ほら、ネラも挨拶しなさい」

『ネラです……アーシャの従魔になりました、これから宜しくお願いします』

「あら…………、本当に話す事が出来るのね」

「ちょっと母さん!?もしかして私が嘘をついたと思っていたの?」

「そうじゃ無いわ、本当に話したからビックリして言っただけよ………」

「ほらご飯よ、冷めないうちに食べなさい………ネラの分はこっちのお皿よ」

 アーシャの母親が皿を置いてくれた、皿の上には湯気の立った分厚い肉塊が乗っている。

「今日のメニューは大猪の肩ロースよ、昨日お隣さんに分けていただいたの」

「森の恵みに感謝を」

 …………この世界ではそういう風に言うのか、『郷に入っては郷に従え』という昔からの有難い教えもあるし、俺もそう言うか。

『森の恵みに感謝を』

「ネラは本当に変わっているでしょ!普通の従魔だったら皿を渡された途端に食べ始めるのに」

「そうね、ネラみたいな従魔は初めて見るわ」

 じゃあ食べるか、……………美味い!!やっぱ人の手が入った料理の方が美味しいな、絶妙な焼き加減に色々な香辛料の味が複雑に絡み合っている。

 …………こんな美味しい物を知ってしまったら、倒した魔物をそのまま食べるなんて事は、どうしようもない時にしか出来ないな。

【経験値を5獲得しました】

「まだお代わりもあるわよ」

 ペロリと平らげてしまった俺にアーシャの母親が皿をまた差し出してきた。

 女神だ!女神ってのは本当にいたんだな。

【経験値6を獲得しました】

 ………俺が最後の一口を食べ終わるとアーシャが話し掛けてきた。

「ネラは本当にいい食べっぷりね、今度私が作ってあげるから期待してなさい!」

 おぉっ!どんな料理かな?………もし俺が人間でこの台詞を言われていたら、『毎朝、僕に味噌汁を作ってくれないか』って言うんだけどな。

『………分かった、期待しておくよ』
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