上 下
5 / 51
第1章『始まりの森編』

進化先は‥‥‥

しおりを挟む
 ……やはり俺は、あの卵や芋虫の死骸を食べてしまったのか。意識を失っていたとはいっても、そんなことをしてしまったなんて。

 ……気持チ悪イ、吐キ気ガスル。

 俺は胃の中のものを吐き出してしまった。饐えた臭いが辺りに充満する。……だが、今の俺はソレがとても美味しそうだと思ってしまう。

 俺は人間だった頃とは、致命的な部分が変わってしまったことに気が付いた。心は肉体に引っ張られるのだということを。……そして受け入れられなければ、きっと心が壊れてしまうことを。

 ……もう二度と、こんな目に遭わない為にSPの管理はしっかりとしよう。

 気分転換に進化するか。……進化してしまえば、この穢れた体を新しく作り替えられるかもしれない。それに、強くならなければ遠からず死んでしまう。

 溺れ死んだときの記憶は、俺に死の恐怖と忌避感を深く植え付けていた。

 一応、進化する前に木の割れ目を[糸吐き]で塞いでおこう。進化している間の無防備なときに襲われたらどうしようもないからな。


――――――――――――――――――――――――

【進化可能先を表示します】

ラーヴァ/ランク:G
 一般的なラーヴァ種。森に立ち入れば、すぐに見つけることができる。

ミュータントラーヴァ/ランク:G+
 兄弟の血肉を喰らったことにより、突然変異を起こしたラーヴァ種。通常のラーヴァ種にはない、独自の進化可能先が存在する。

スモールパラライラーヴァ/ランク:G+
 小さなラーヴァ種。麻痺毒を身に付けた芋虫。この先の進化可能先は全てスモールに固定される。

スモールポイズンラーヴァ/ランク:G+
 小さなラーヴァ種。毒を身に付けた芋虫。この先の進化可能先は全てスモールに固定される。

グラトニーラーヴァ/ランク:B
 理性ハ腐リ堕チ、食欲ダケガソノ心ヲ支配スル。

スモールコクーン/ランク:G+
 小さなコクーン種。この先の進化可能先は全てスモールに固定される。

――――――――――――――――――――――――


 最初に進化した時と比べたら一気に進化可能先が増えたな。……消去法でいくか。

 まず、グラトニーラーヴァは論外だ。ランク:Bまで一気に上がれるが、心を支配される?ってことは死ぬことと同じだろうからな。

 次に、スモールも駄目だ。これを選んでしまったら進化可能先が狭まってしまう。

 ……とすると、ラーヴァかミュータントラーヴァのどちらかだが、ラーヴァになるのは通常の進化のようだ。しかし、ミュータントラーヴァに進化すれば、独自の進化可能先が存在する……か。

 ラーヴァの安定性は魅力的だが、俺はミュータントラーヴァの独自の進化可能先に惹かれてしまう。

 ……ミュータントラーヴァに進化。


――――――――――――――――――――――――

【進化を開始します。……ミュータントラーヴァに進化しました】

【進化に伴い、称号:[突然変異]を獲得しました】

【進化に伴い、スキル:[異貌魂魄Lv1]が与えられます】

【進化に伴い、スキル:[脱皮Lv1]が与えられます】

【スキル:[異貌魂魄]に[精神汚染][精神耐性]が統合されました】

――――――――――――――――――――――――


 ……気がつくと、茶色だった体色は灰色になっている。そして膨らんでいた体は蛇の様に細長い、スマートな体型になった。

 ステータスを確認しようか。


――――――――――――――――――――――――

【ステータス】
ランク:G+
種族名:ミュータントラーヴァ
個体名:未獲得
レベル:4/6
状態:正常?

能力値
HP:28/67
SP:69/212(53×4)
MP:9/15
攻撃力:32(16×2)
防御力:10(19÷2)
素早さ:12
魔法力:7
魔防力:8(15÷2)

パッシブスキル
[●●●の悪戯EX][言語理解EX][限界突破EX][復讐の一撃Lv3][飢餓発作EX][毒耐性Lv4][麻痺耐性Lv4][禁忌Lv1][食い溜めLv4][悪食Lv5][万物可食EX][無慈悲Lv1][異貌魂魄Lv3]

アクティブスキル
[アイテムボックスLv1][念話Lv1][鑑定Lv3][殻篭りLv2][糸吐きLv2][脱皮Lv1]

称号
[●●●に弄ばれる者][転生者][境界を越えし者][復讐の誓い][悪足掻き][絶望した者][引き篭もり][ハングリーラーヴァ][共食い][大食漢][腐肉漁り][全テヲ喰ラウ者][蹂躙肉塊][突然変異]

――――――――――――――――――――――――


 ……何でもうレベルが上がってるんだ?まぁ、上がる分には問題ないか、しかし進化にはSPを消費するのか、[大食漢]を持っていてよかったな……。

 新しく獲得した物を確認しよう、鑑定。


――――――――――――――――――――――――

【称号】

[突然変異]
 通常の進化の軌跡から逸脱した者に与えられる称号。普通では辿りつけない存在に至れるかもしれない可能性を獲得する。

【スキル】

[異貌魂魄]
 己の精神を他者に支配されることへの耐性を持つ。スキルレベルが上がるにつれ、効果も上昇する。《魂ノ在リ方ガ変容ヲ遂ゲタトシテモ、記憶ヲ無クシタワケデハナイ。精神ノ働キハ連続性ヲ持チ、以前ト同ジ反応ヲ示スダロウ》

[脱皮]
 肉体の損傷や欠損を回復できる。スキルレベルが上がるにつれ、効果も上昇する。SPを消費する。

――――――――――――――――――――――――


 ……[突然変異]っていい響きだよな。どこかロマンを感じさせてくれる。

 [異貌魂魄]については考えない方が良さそうだ。結局、自分は自分なんだから大丈夫だと思っておこう。[脱皮]は回復系のスキルだな、[食い溜め]と[万物可食EX]との相性が良さそうだ。

 ……少し木を齧ってみよう。いつ何があるか分からないから、SPは満タンにしておきたい。


――――――――――――――――――――――――

【経験値1を獲得しました。経験値1を獲得しました。経験値1を獲得しました。経験値1………た。経験値1を………ました……………レベルが上がりました。経験値……………ました。……………値1………獲…。レベル…上が………。経…………得…………1……ま……た。レベル上限に達しました………これ以上レベルは上がりません。[限界突破EX]の効果が適用されます…………これ以上の経験値は貯蔵されます。経験…1………ました…。経……した………】

――――――――――――――――――――――――


 意外とイケるな。……って、もうこの木は殆ど空洞じゃねえか。少しだけ食べてみるつもりだった筈が、想像以上に美味かったからつい食べすぎてしまったな。……人間だった頃は、こんな腹ペコキャラじゃなかった筈なんだけど。

 それにしてもこの木はボロボロだなぁ。もし猪みたいな動物がぶつかってきたら、倒れるんじゃないか?そうなれば中にいる俺は――、よし!移住しよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん
ファンタジー
 人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。 しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。  膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。 なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。  暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。 神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。  それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。 神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。  魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。 そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。  魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです! 元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!  カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ
ファンタジー
 『温もりが欲しい』  それが死ぬ間際に自然とこぼれ落ちた願いだった…。  そんな願いが通じたのか、彼は転生する。  意識が覚醒すると体中がポカポカと毛布のような物に包まれ…時々顔をザラザラとした物に撫でられる。  周りを確認しようと酷く重い目蓋を上げると、目の前には大きな猫がいた。  俺はどうやら猫に転生したみたいだ…。

処理中です...