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水
イヴァルが発見うまいもの
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冥界から人間として這い上がってきたイヴァル・ボーネグスは、普段はOLとして働き、人間と同等の生活を送っている。
仕事帰り、買い出しに来ていたときのことだった。
「......これは」
イヴァルが目を引かれたのは、ただのゆで卵だった。
「おっとそこのお姉さん。うちのゆで卵に目をつけるとは、いいセンスだねぇ。なんてったってうちのゆで卵はね? まず鶏の餌から徹底して」
店主の話など気にも止めず、イヴァルはそのゆで卵に見惚れていた。値段は1個100円と、少々お高めだったが、ここで引いては死神の名が廃る。
「店主。このゆで卵を、全部売ってください」
「はいはい全部ねー、値段は......え、えええ!! 全部、全部買ってくれんの? 」
店主は驚きを隠せず、飛び出んばかりに目を見張っていた。
「お、おーい!! ゆで卵の在庫全部もってこーい!! いやーありがとうございますお客さん。サービスで、1個70円にまけときますね」
思わぬラッキー。人間的な生活をしているのだと、つくづく思うイヴァルであった。
店のすぐ横にあったベンチに座り、大きいビニール袋2つにパンパンに入ったゆで卵を、トサっと置いた。そしてその中から一つを選別し、ハムっと食らいつく。
するとイヴァルは、今までしたことのないようなおっとりまったりとした顔をし、恍惚感とゆで卵を味わっていた。
「んー、ムフーン......」
手が止まらない。勝手にポイポイと口の中に入ってくるゆで卵を、イヴァルは防御出来ずにいた。
ゴクッと喉を鳴らして飲み込んだゆで卵が、食道を通っていくのがわかる。
半熟のゆで卵の黄身のようにトローンとなったイヴァル。死神である威厳など、とうに捨てたも同然であった。
仕事帰り、買い出しに来ていたときのことだった。
「......これは」
イヴァルが目を引かれたのは、ただのゆで卵だった。
「おっとそこのお姉さん。うちのゆで卵に目をつけるとは、いいセンスだねぇ。なんてったってうちのゆで卵はね? まず鶏の餌から徹底して」
店主の話など気にも止めず、イヴァルはそのゆで卵に見惚れていた。値段は1個100円と、少々お高めだったが、ここで引いては死神の名が廃る。
「店主。このゆで卵を、全部売ってください」
「はいはい全部ねー、値段は......え、えええ!! 全部、全部買ってくれんの? 」
店主は驚きを隠せず、飛び出んばかりに目を見張っていた。
「お、おーい!! ゆで卵の在庫全部もってこーい!! いやーありがとうございますお客さん。サービスで、1個70円にまけときますね」
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店のすぐ横にあったベンチに座り、大きいビニール袋2つにパンパンに入ったゆで卵を、トサっと置いた。そしてその中から一つを選別し、ハムっと食らいつく。
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「んー、ムフーン......」
手が止まらない。勝手にポイポイと口の中に入ってくるゆで卵を、イヴァルは防御出来ずにいた。
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