死刑になったら転生しました ~しかもチートスキル付きだとぉ?~

まこる

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苦悩

悩み

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「......」

ある日の晩、シオネたちの『ユラシアさんと一緒に寝たい』という要望で新調した大きめのベッドには、彼女たちが美しい寝顔で横たわっていた。しかしユラシアは側の椅子に座り、考え事をしていた。

創造神ゲユイナルは自分を庇ったあと、どうなったのか。破壊神ザヌスは本当に自分を諦めたのか。

確信がない以上、ユラシアは安心して眠れなかった。

「強く......強くならなければ......でないと」

ユラシアはベッドに視線を移した。そこには、ユラシアが守るべき存在がいた。

「......少し、風に当たるか」

彼女たちを起こさないように、ユラシアはそっと部屋を出ていった。

「......」

一人で静かに月を見上げる。近くにあった道沿いのベンチに腰掛け、これからのことについて考えていた。

「創造神が負けているのならば、破壊神はすぐに俺の元に来て何かしらのアクションを起こすはずだ。しかし俺はなんともない......」

だからといって安心していい理由にはならない。創造神がもう少しで負けてしまうという可能性も考えられる。

それに、まだユラシアだけがターゲットと決まったわけではない。

「破壊神が野放しになったら破壊神は......もしかしたら、世界を、シオネたちを......」

そう思い始めると、ユラシアはとても不安になった。今まで一緒に過してきた皆、そのすべてが突然破壊されてしまう。それに対抗するには、ユラシアが強くなるしかない。ことの発端はユラシアなのだから。

「強くならねば......強くならねば......」

軽く頭を抱えてそうつぶやいていると、誰かが隣に座り、肩に手を乗せてきた。

それは、シオネだった。

「......シオネ」

顔をよく見てみると、心配なことこの上ないというような顔をしていた。ユラシアの身を案じているのだ。

「ユラシアさん......そんなに背負いこまないでください。私にはなんのことか分かりませんけど、ユラシアさんが私達を守ろうとしてくれてることだけは分かります」

「シオネ......」

するとシオネはユラシアの肩に、目をつむり頭を乗せて寄りかかった。

「ユラシアさん、えっちなクセにそういうカッコいいところがあるから、ズルいです」

ツッコミどころはあったが、ユラシアはあえてそこには触れなかった。

それがシオネの優しさだと気づいていたから。

「......ありがとう、シオネ」

「な、なんで感謝なんですか......って、ユラシアさん、泣いて......」

「いや、大丈夫だ。本当にありがとう、シオネ」

「......えへへ。撫でてくれてもいいんですよ? 犬みたいにじゃなくて、女の子にするみたいに」

「ハハ、分かった」

ユラシアの胸に頭を寄りかからせたシオネ。それを優しく撫でてやった。

「わしゃわしゃ撫でられるのもいいですけど、たまにはこういうのも、悪くないですね」

「ああ、そうだな」

ユラシアは目を細めながらシオネを撫でた。

しばらく撫でていると、声が聞こえた。

「おやおや、二人だけでイチャイチャと。抜け駆けはズルいぞシオネよ」

「そんなにアツアツだなんて、なんだか妬けちゃいますね」

見るとその声の主は、いつの間にか起きていたラエルとリナだった。

「なッ! 」

「うひゃッ! 二人共! いつからそこに! 」

すると二人は、ラエルがユラシア役、リナがシオネ役でお芝居を始めた。

「えへへ、撫でてくれてもいいんですよ? 大好きなユラシアさん♡」

「ああ、いくらでも撫でてやろう。愛しのシオネ♡」

顔を真っ赤にしたシオネが真っ先に反応した。

「そ、そんなこと言ってないですよッ!! 」

「いや、我々にはこう聞こえていたぞ」

「アッツアツですねお二人、ウフフ」

こうして、ユラシアの不安は少し軽くなった。

そして、渋々ながらもユラシアは皆と同じベッドで眠るようになった。
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