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魔王編
シャクナク
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神父にいわれた通り、ユラシアは魔物の村にやってきた。シオネとラエルを連れて。
「魔物の村って聞いていたので、陰湿な所だとばかり思ってました」
「ああ、かなり賑わっているな」
二人は、見慣れない魔物と活気に溢れる村に見入っていた。
「さて、情報集めだ。シャクナクという魔物を探すぞ」
村にはたくさんの種類の魔物がいた。それ故、ヤギのような眼をした魔物は珍しいらしく、あそこにいるのがシャクナクだと魔物に教えてもらい、案外すぐに見つかった。酒場で軽く食事をし、酒を嗜んでいた。本当にヤギのような眼をしているのかは糸目であまり見えなかったのだが。
「お前がシャクナクか? 」
その魔物はゆっくりと顔を向けてきた。顔も心なしかヤギに似ている。ヤギ三割 人間七割と言ったところだ。
「そうですが、何か? 」
無愛想な返事が返ってきた。あまりいい印象は受けず、シオネに限ってはもう不機嫌になっていた。
「......神の命で参った」
「っ!! 」
シャクナクは酒を飲むのを止めた。ゆっくりユラシアの方を向くと、口を開いた。
「では貴方が......何が知りたいのです? 私は何をすればいい? 」
「魔王はどこにいるんだ? 」
「魔王ですか......私が案内しましょう。あそこは魔物の案内無しではたどりつくことも困難を極めます」
魔物の通貨を机に置き、シャクナクは席を立った。椅子にかけてあった上着を羽織り、店を出た。
「魔王の元へは一筋縄では行けません。道中危険な場所を通るのです。自分の身は自分で守ることですね」
シャクナクはそのまま道を歩いていった。ユラシアたちは、黙ってシャクナクについていった。
-森-
だいぶ霧が濃くなってきた。1メートル先のシャクナクがギリギリ見えるぐらいだ。シオネは、いつでも戦えるように野生化を使っている。
「視界が悪いな」
「魔物にとってはこんな霧、ないも同然です」
それが魔物の案内が必要な理由だ。この霧は微量の魔力を含んでおり、魔物以外の方向感覚を狂わせる。この森が迷いの森と呼ばれる所以だ。
「......止まってください」
シャクナクの声で、一行は止まった。シャクナクは周囲を見渡し始めた。
「......囲まれました。皆さんそのままじっとしていてください......悪魔スキル......雷! 」
一瞬周囲が明るくなったと思うと、さっきまでしていた敵の気配がなくなった。
「悪魔の雷は即死攻撃。これで進めますね」
再び歩み始めると同時に、シャクナクの強さを確認することができた出来事だった。
「おい、シャクナク。お前は何者なんだ? 」
「......答えても面白いことはありません」
「神を知っているのか? 」
「しつこいですね......分かりました。お教えしましょう」
-数年前-
私はそこら中にいるただの魔物でした。ある時、神が降りてきて言ったのです。
「お前は強くなれる。力を分け与えてやるから、俺を楽しませろ」
強くなり、この世を統べることしか頭になかった私は、愚かにも、その話を鵜呑みにしてしまいました。それが私の人生の分かれ目でした。
私には才能が無かったんでしょうか。それとも努力を怠ったからでしょうか。ある時から能力が一向に伸びなくなりました。それを見かねた神が、再び降りてきて言いました。
「失望した。俺が力を与えるまでもなくわかる。お前じゃダメだ」
すると、神は私を体験したこともない衝撃によって吹き飛ばしました。
生きていたのは奇跡でした。しかしもうじき死ぬ。そう悟った時でした。
「私の名は、創造神ゲユイナル。あなたは破壊神によって瀕死の状態にされました。なのであなたを助けます」
創造神様のお陰で、私は力を保持したまま全快することができました。私にとって、あの方は恩人という言葉では片付けられないお人なのです。
「......無駄話をしている間に、ほら、着きましたね」
森を抜けたことで霧が晴れ、魔王城が目の前に現れた。
「ここが魔王の城か」
「す、すごく緊張します! 」
「武者震いがするな」
邪悪なオーラを放つ魔王城を見上げていると、後ろからシャクナクの声がした。
「では、幸運を祈りますよ。破壊神に選ばれた男よ」
その言葉を聞き、振り返った頃には、もうシャクナクは霧の中へ消えていた。
「魔物の村って聞いていたので、陰湿な所だとばかり思ってました」
「ああ、かなり賑わっているな」
二人は、見慣れない魔物と活気に溢れる村に見入っていた。
「さて、情報集めだ。シャクナクという魔物を探すぞ」
村にはたくさんの種類の魔物がいた。それ故、ヤギのような眼をした魔物は珍しいらしく、あそこにいるのがシャクナクだと魔物に教えてもらい、案外すぐに見つかった。酒場で軽く食事をし、酒を嗜んでいた。本当にヤギのような眼をしているのかは糸目であまり見えなかったのだが。
「お前がシャクナクか? 」
その魔物はゆっくりと顔を向けてきた。顔も心なしかヤギに似ている。ヤギ三割 人間七割と言ったところだ。
「そうですが、何か? 」
無愛想な返事が返ってきた。あまりいい印象は受けず、シオネに限ってはもう不機嫌になっていた。
「......神の命で参った」
「っ!! 」
シャクナクは酒を飲むのを止めた。ゆっくりユラシアの方を向くと、口を開いた。
「では貴方が......何が知りたいのです? 私は何をすればいい? 」
「魔王はどこにいるんだ? 」
「魔王ですか......私が案内しましょう。あそこは魔物の案内無しではたどりつくことも困難を極めます」
魔物の通貨を机に置き、シャクナクは席を立った。椅子にかけてあった上着を羽織り、店を出た。
「魔王の元へは一筋縄では行けません。道中危険な場所を通るのです。自分の身は自分で守ることですね」
シャクナクはそのまま道を歩いていった。ユラシアたちは、黙ってシャクナクについていった。
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だいぶ霧が濃くなってきた。1メートル先のシャクナクがギリギリ見えるぐらいだ。シオネは、いつでも戦えるように野生化を使っている。
「視界が悪いな」
「魔物にとってはこんな霧、ないも同然です」
それが魔物の案内が必要な理由だ。この霧は微量の魔力を含んでおり、魔物以外の方向感覚を狂わせる。この森が迷いの森と呼ばれる所以だ。
「......止まってください」
シャクナクの声で、一行は止まった。シャクナクは周囲を見渡し始めた。
「......囲まれました。皆さんそのままじっとしていてください......悪魔スキル......雷! 」
一瞬周囲が明るくなったと思うと、さっきまでしていた敵の気配がなくなった。
「悪魔の雷は即死攻撃。これで進めますね」
再び歩み始めると同時に、シャクナクの強さを確認することができた出来事だった。
「おい、シャクナク。お前は何者なんだ? 」
「......答えても面白いことはありません」
「神を知っているのか? 」
「しつこいですね......分かりました。お教えしましょう」
-数年前-
私はそこら中にいるただの魔物でした。ある時、神が降りてきて言ったのです。
「お前は強くなれる。力を分け与えてやるから、俺を楽しませろ」
強くなり、この世を統べることしか頭になかった私は、愚かにも、その話を鵜呑みにしてしまいました。それが私の人生の分かれ目でした。
私には才能が無かったんでしょうか。それとも努力を怠ったからでしょうか。ある時から能力が一向に伸びなくなりました。それを見かねた神が、再び降りてきて言いました。
「失望した。俺が力を与えるまでもなくわかる。お前じゃダメだ」
すると、神は私を体験したこともない衝撃によって吹き飛ばしました。
生きていたのは奇跡でした。しかしもうじき死ぬ。そう悟った時でした。
「私の名は、創造神ゲユイナル。あなたは破壊神によって瀕死の状態にされました。なのであなたを助けます」
創造神様のお陰で、私は力を保持したまま全快することができました。私にとって、あの方は恩人という言葉では片付けられないお人なのです。
「......無駄話をしている間に、ほら、着きましたね」
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「す、すごく緊張します! 」
「武者震いがするな」
邪悪なオーラを放つ魔王城を見上げていると、後ろからシャクナクの声がした。
「では、幸運を祈りますよ。破壊神に選ばれた男よ」
その言葉を聞き、振り返った頃には、もうシャクナクは霧の中へ消えていた。
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