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学園生活編

魔王

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あの試合でアリスたちが来ていたような戦闘服に着替える。ユラシアは、居間までに起きたことを整理し、今の目的を考えた。

アリスを力で従えていたあの魔物の親玉の正体と、ユラシアになんらかの方法で力を与えた存在。特に後者は、強大な存在である可能性が高い。それに加えて、前者は、スキルを一時的に封印する術を持ち合わせている。どちらも侮れない敵である。

「おい、そろそろだぜ......」

ギャンガが呼びに来た。ユラシアは重い腰を持ち上げて、闘技場へと向かった。

-第二闘技場-

「怖じ気付かずに来たわね」

「ああ、これで終わらせる」

張り詰めた空気の中、二人は着実に戦意を高めていった。

「勝負開始!! 」

仕掛けたのはサキだ。スキルの内容はわからない。警戒した上で、ユラシアは無敵インビンシブルを張った。

大地グランドスキル! ナックル! 」

サキのスキル、大地グランドスキルは、読んで字の如く、大地を味方につけるという強力なスキルである。その中のナックルという技は、自身の拳に周辺の岩や土を纏わり付かせ、巨大なメリケンサックを作り出すというものである。闘技場の壁は、元を辿れば大地より生まれたもの。それを引き寄せ、サキは巨大な岩を作り出し、ユラシアを殴った。

「おお! あんな攻撃食らったら、ひとたまりもないだろ! 」

「さすがに死んだな。あいつ」

席からはこのような言葉が降りかかった。しかし、こんなことでやられるユラシアではない。あらかじめスキルで自身を守っていたのだから。

岩は砕け散った。砂ぼこりが晴れる頃にはユラシアの姿が見えていた。そこにいたユラシアの体には、傷一つついてはいなかった。

「今のが限界か? 」

「ふふふ......そんなわけないわよ! 」

先ほどのスキルの応用。サキは砕けた岩をまた集めて一塊にすると、今度は拳につけず、自身の頭上に浮かして見せた。

「はあああ!! 」

想像の通り、サキはそれをユラシアへぶつけた。しかし、攻撃自体はあまり変わっていない。それでユラシアを倒せるはずがなかった。

「ぶつけるだけじゃないわ。この岩は対象を覆い尽くして、潰す! 打撃がダメならこうよ! 」

言った通り、砕けた岩はユラシアの体全体に張り付いて、力を加えていった。しかし、神より授かったこのスキルが破られるはずもなく。

「......退屈だな」

ユラシアは岩をすべて弾き飛ばし、サキに歩み寄っていった。

「この......ツリー!! 」

このスキルは、どこからでも木を生やすことができる技。それで遠距離攻撃を可能にしているのだが、ユラシアには効かなかった。木はユラシアに向かって急速に伸びたが、それがユラシアを吹き飛ばすことはなかった。

「そん......な」

「これで終わりか? 最初の威勢はどこへいった? 」

ユラシアがサキを追い詰めた戦い。決着は既についたように見えた。しかし、サキが驚くべき反応を示した。

「......お前サキ、何を笑っている? 」

「ふふ......アッハッハッハ!! いやぁ、可笑しくて......反則級ね、ミツルくん。もう降参よ」

「信用できないな」

「しなくても、結構よ......もう手が下るわ」

「あ? 」

サキのその言葉を境に、闘技場に重い声が響き渡った。

「人間共。余の名はゼホノゴス。この世を統べる王である......そこの人間、サキよ。その男を捕えよと命じたはずだ」

「魔王様、私じゃ無理よ。ここは引いてもらえないかしら? 」

サキがそういうと、大地が揺れるほどの覇気を纏った、魔王ゼホノゴスの声が流れた。

「ふざけるな! 余にはその男が必要なのだ。余が神となるためには」

それを聞くと、サキは地面に顔をやった。しばらくそうしていると、笑い声が聞こえてきた。サキからだ。

「ふふふ。元々あなたの指示でやろうとしたことじゃないわ。ついでだったよの。だからいつ諦めようと私の勝手」

それを聞くと、ゼホノゴスは急に落ち着きを取り戻した。

「......貴様の体に、余がくれてやったコアがあるはずだ。それを暴走させれば」

「......!! みんな離れて!! 」

サキは叫ぶと、地面に倒れ、うずくまってしまった。とても苦しそうにもがいている。

「おい、サキ」

「ウウ......! 」

ユラシアの方を向いたサキは、サキであってサキではなかった。そして、そのサキから放たれた言葉は、とても強力な魔力が込められていた。

大地グランドスキル......泥巨人ゴーレム!! 」
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