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学園生活編
狙い
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なんとも言えない朝。ただ気分の悪さだけが心に残り、後は疲労感だけ。
「手下......か」
敵は情報に敏感だと聞く。的確に弱点を狙ってくるだろう。つまりは。
-廊下-
「シオネ、ラエル。お前たちはもう帰った方がいい」
授業の準備時間に二人を呼び出し、ユラシアはいった。
「な、なんでですか?」
「何かまずいことがあったのか? だったら力を貸す」
「いや、お前たちの身の安全が第一だ。国王に話はしてある。退学の準備も整っている」
せっかく学校に来たのに、すぐに退学。しかし、それはユラシアが自分たちのことを心配しての行為。受け入れない訳にはいかなかった。
「分かりました......」
「危なくなったら呼んでくれ。絶対に助ける」
「ああ、ありがとう」
荷物をまとめ、クラスメイトに別れを告げて、シオネとラエルは学校を去った。
「やっと心置きなく戦えるな」
これでシオネたちが襲われる心配は無くなると言える。しかし良いのだろうか。
二人を見送らなくても。
-数分後-
どれほど校舎を歩いたか、ユラシアがセレーネの手下に襲われることはなかった。
「どういうことだ? 」
考えながら歩いていると、雰囲気が変わった。なにか暴力的な感じというか。
少し進むと、怪我をしている男子生徒がいた。その男子生徒とは、ギャンガであった。
「ギャンガ! どうした、なにがあった! 」
仰向けに倒れているギャンガの頭を膝に乗せ、手で支えた。
「シオネちゃん......たちが......準備室で襲われてて......助けようとしたら殴られて......出来るだけ......足止めはした......」
「襲われてた? セレーネの手下か! 」
「ああ......やつら生粋の野獣だ。あんな華奢で......かわいい女の子なんて見たら......ヤバい」
こうしている間にも、シオネたちが良からぬことをされているかも知れない。ユラシアはギャンガに感謝を伝え、その現場に急いだ。
-準備室-
「シオネ! ラエル! 」
肩を上下させて、準備室の扉を開けた。すると、信じられない光景が、ユラシアの目に飛び込んできた。
ビリビリに破かれた服。傷ついた肌。青アザ。何が起きたのか用意に想像ができる。
「......ああ」
そんな絶望した様子のユラシアを、セレーネが後ろで見ていた。そして、ネチネチとユラシアを責め始めた。
「ミツルくん、いや、ユラシアくんかしら? あなたのせいで彼女たちがこんなになっちゃったのよ? あなたが見送らなかったから」
「......るせぇ」
「かわいそうにねぇ。これだけ可愛かったら、もっと幸せな人生を歩めたでしょうね。それもこれも、あなたのせい」
「やめろ......! 」
ユラシアはだんだんと追い詰められていき、耳をふさいだ。目を固く瞑ってうずくまり、目の前の惨劇を見ないようにしていた。しかし、精神にも限界がある。ユラシアの自我は、すでに崩壊しつつあった。
そこで意識がとんだ。
真っ暗な空間。そこにいるのは、目を瞑ったユラシアと、謎の男が浮かんでいた。
「......」
「おい、ここで終わりか? 」
「......」
「期待してたのによ。もっと強くしてやるから、死に物狂いで抗えよ。そして楽しませてみろ。俺を。神を」
そんなことは露知らず、セレーネはどんどんユラシアを追い込んでいった。
「全部あなたのせい。全部あなたが悪い」
「......ちょっと黙れ」
しゃがんだ状態から立ち上がったユラシア。彼の言葉はただの声だったが、セレーネの口を閉じるのに十分な威圧感と魔力だった。
「うぐ......」
「なあ、死について教えてやろうか? 」
セレーネの方を振り向くが、その目は憎悪に満ち溢れ、セレーネを萎縮させた。見ただけでそれだけの威力が、今のユラシアにはあるのだ。
「いや、その必要はないな。今から体験することになるんだから」
目にも止まらぬスピードで、ユラシアはセレーネの首を掴んだ。その衝撃だけで気絶してしまいそうな威力だが、そこは貴族のエリート。耐えて見せた。
「......気絶していた方がよかったかもな」
ユラシアは、セレーネを掴んでいる手に力を入れた。血管が浮き出るほど力を入れた。セレーネは徐々に顔が赤くなり始め、やがてユラシアの手と同じ様に、血管が薄く見えるようになってきた。
「やめて! ユラシアさん!! 」
あの裁判の時と同じ様に、ユラシアはシオネの一言によってブレーキをかけた。それと同時にセレーネを掴んでいる手を離して、後ろを向いた。
そこには傷一つついていない二人の姿があった。
「シオネ......ラエル......」
ユラシアは、この世界に来てから初めて、心の底から泣いた。
「手下......か」
敵は情報に敏感だと聞く。的確に弱点を狙ってくるだろう。つまりは。
-廊下-
「シオネ、ラエル。お前たちはもう帰った方がいい」
授業の準備時間に二人を呼び出し、ユラシアはいった。
「な、なんでですか?」
「何かまずいことがあったのか? だったら力を貸す」
「いや、お前たちの身の安全が第一だ。国王に話はしてある。退学の準備も整っている」
せっかく学校に来たのに、すぐに退学。しかし、それはユラシアが自分たちのことを心配しての行為。受け入れない訳にはいかなかった。
「分かりました......」
「危なくなったら呼んでくれ。絶対に助ける」
「ああ、ありがとう」
荷物をまとめ、クラスメイトに別れを告げて、シオネとラエルは学校を去った。
「やっと心置きなく戦えるな」
これでシオネたちが襲われる心配は無くなると言える。しかし良いのだろうか。
二人を見送らなくても。
-数分後-
どれほど校舎を歩いたか、ユラシアがセレーネの手下に襲われることはなかった。
「どういうことだ? 」
考えながら歩いていると、雰囲気が変わった。なにか暴力的な感じというか。
少し進むと、怪我をしている男子生徒がいた。その男子生徒とは、ギャンガであった。
「ギャンガ! どうした、なにがあった! 」
仰向けに倒れているギャンガの頭を膝に乗せ、手で支えた。
「シオネちゃん......たちが......準備室で襲われてて......助けようとしたら殴られて......出来るだけ......足止めはした......」
「襲われてた? セレーネの手下か! 」
「ああ......やつら生粋の野獣だ。あんな華奢で......かわいい女の子なんて見たら......ヤバい」
こうしている間にも、シオネたちが良からぬことをされているかも知れない。ユラシアはギャンガに感謝を伝え、その現場に急いだ。
-準備室-
「シオネ! ラエル! 」
肩を上下させて、準備室の扉を開けた。すると、信じられない光景が、ユラシアの目に飛び込んできた。
ビリビリに破かれた服。傷ついた肌。青アザ。何が起きたのか用意に想像ができる。
「......ああ」
そんな絶望した様子のユラシアを、セレーネが後ろで見ていた。そして、ネチネチとユラシアを責め始めた。
「ミツルくん、いや、ユラシアくんかしら? あなたのせいで彼女たちがこんなになっちゃったのよ? あなたが見送らなかったから」
「......るせぇ」
「かわいそうにねぇ。これだけ可愛かったら、もっと幸せな人生を歩めたでしょうね。それもこれも、あなたのせい」
「やめろ......! 」
ユラシアはだんだんと追い詰められていき、耳をふさいだ。目を固く瞑ってうずくまり、目の前の惨劇を見ないようにしていた。しかし、精神にも限界がある。ユラシアの自我は、すでに崩壊しつつあった。
そこで意識がとんだ。
真っ暗な空間。そこにいるのは、目を瞑ったユラシアと、謎の男が浮かんでいた。
「......」
「おい、ここで終わりか? 」
「......」
「期待してたのによ。もっと強くしてやるから、死に物狂いで抗えよ。そして楽しませてみろ。俺を。神を」
そんなことは露知らず、セレーネはどんどんユラシアを追い込んでいった。
「全部あなたのせい。全部あなたが悪い」
「......ちょっと黙れ」
しゃがんだ状態から立ち上がったユラシア。彼の言葉はただの声だったが、セレーネの口を閉じるのに十分な威圧感と魔力だった。
「うぐ......」
「なあ、死について教えてやろうか? 」
セレーネの方を振り向くが、その目は憎悪に満ち溢れ、セレーネを萎縮させた。見ただけでそれだけの威力が、今のユラシアにはあるのだ。
「いや、その必要はないな。今から体験することになるんだから」
目にも止まらぬスピードで、ユラシアはセレーネの首を掴んだ。その衝撃だけで気絶してしまいそうな威力だが、そこは貴族のエリート。耐えて見せた。
「......気絶していた方がよかったかもな」
ユラシアは、セレーネを掴んでいる手に力を入れた。血管が浮き出るほど力を入れた。セレーネは徐々に顔が赤くなり始め、やがてユラシアの手と同じ様に、血管が薄く見えるようになってきた。
「やめて! ユラシアさん!! 」
あの裁判の時と同じ様に、ユラシアはシオネの一言によってブレーキをかけた。それと同時にセレーネを掴んでいる手を離して、後ろを向いた。
そこには傷一つついていない二人の姿があった。
「シオネ......ラエル......」
ユラシアは、この世界に来てから初めて、心の底から泣いた。
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