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学園生活編

誘惑

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体調はすっかり良くなり、授業も欠席することはなく受けられている。この調子で学園生活を充実すると共に、四天王を懲らしめなくては。イガロスは達成した。それに、アリスの悪行の噂も最近聞かない。何かに夢中になっているのか、傲慢な態度はそうそうとらなくなった。

「あと......二人か」

「何が、二人ですって? 」

いつの間にか背後に来ていた、四天王のセレーネ。それに驚き、ユラシアはバランスを崩し、転倒した。

「うう......」

「大丈夫かしら? 」

セレーネは、ユラシアへ手を差しのべた。爪はきれいに手入れされていた。真っ白でスベスベな手だ。

「ああ、すまない」

その手に触れた瞬間、頭が一回転したような感覚を覚えた。ぐわんとなって、焦点が合わなくなったと思うと、ユラシアはそのまま倒れてしまった。

次に目が覚めたのは、見覚えのない天井の部屋。起きたばかりでボーっとしていると、上から声がかかった。

「大丈夫かしら? 」

気付いていなかった。ユラシアはセレーネの太ももに頭を預けていたのだ。

「あ! すまない! 」

「いいのよ、もっと寝ていても」

「し、しかし......」

頭に響く声。また倒れそうになっていると、セレーネがユラシアを支えた。

「ほら、倒れちゃうから」

「ああ、しかし、このまま世話になるわけにもいかない。何か礼をさせてくれ。そしたらもう自分でなんとかする」

「そう? じゃあ一緒にお茶でもいかが? 」

「そうだな。奢らせてもらおう」

こういう経緯で、ユラシアは校内の小さなカフェにて、セレーネと紅茶を嗜んだ。しかし、紅茶が苦手なユラシアはコーヒーを頼んだ。

「......」

「あまり喋らないのね」

「......四天王と話すことはない。スキルを使って俺を貶めようとしたんだろう」

「ふうん。案外鋭いのね」

ユラシアは、口に当てたコーヒーカップを置き、腕を組んでセレーネを見据えた。

「単刀直入に言おう。人の男をとるのをやめろ」

セレーネの主な罪状は、カップルの男を誘惑し、自身の手中におさめるということだ。

「......無理、ね」

「なぜだか分からない」

「生まれもったサガだからよ。私には男を誑かす才能があった。それをフルに活用する人生を歩みたいの」

セレーネは、少し残った紅茶を飲み干すと、席を立った。そして去り際、ユラシアへ言った。

「早くしないと、私の手下が動き出すわよ」

「......」

-寮-

セレーネに用意された特別な部屋。そこへ何やら怒った表情の女子生徒がやってきた。

「今日も来たの? 」

「当たり前よ!! 私の彼をとっておいて、その態度は何!? 」

「彼が望んだことよ。来なさい」

セレーネが座っていたソファの陰から、四つん這いの男子生徒が現れた。首輪をしており、その手綱をセレーネが握っていた。

「ほら、彼も幸せそうよ」

「カルイ......目を覚まして! 私よ! ミネよ! 」

しかし、カルイはミネに見向きもせず、セレーネに愛でられることだけを望んでいた。

「カルイ......」

「分かったでしょう? 懲りたらもう帰りなさい。私の手下が欲情しない内にね」

セレーネの両側から大柄の男子生徒が二人現れ、ミネの方を見た。だいぶ鼻息が荒くなっている。

「ひっ......! 」

ミネはすぐさまその部屋を出た。自分の彼を置いて。

「......シオネちゃんとラエルちゃんね。頼んだわよ」

セレーネが二人の男に渡したのは、シオネとラエルの顔写真だった。男たちはその写真を見て、先ほどより更に鼻息を荒くしていた。
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