16 / 48
獣人裁判編
国王
しおりを挟む
法廷で起きたあの出来事。騎士団の分隊長の耳が、被告人によって切り落とされる事件。これは一般へと広がり、町はたちまちその噂で持ちきりもとなった。
その男は、国王の元へと送られた。
-謁見の間-
広い部屋の最奥には、白ひげを生やした老人が、静かに座っていた。
「さて、我が国王に呼び出された理由は分かっておるか? 」
ユラシアは、国王の前に跪かされていた。
「知らないな」
「ふむ、私は政治に関与することを禁じられておる。それ故、何が起こったかを伝えてもらいたいのだ。私の耳には、貴様がただ死刑を言い渡され、法廷で暴れたとの報告しか入っておらぬ」
「......自分で考えろ」
「王様になんと無礼な!! 」
ユラシアの隣には、例の騎士団の分隊長がいた。分隊長は、ユラシアの頭を蹴ろうとしたが、スキルによって弾かれた。
「よせ。お前ごときが敵う相手ではないのだろう? 耳を切られたぐらいだからな」
分隊長は、苦虫を噛み潰したような顔をして、処置が施された自身の耳があった場所をさすった。
「さて......このままではお主は死刑に処されてしまう。何か真実を話してくれぬか? 」
ユラシアはあくまで黙秘を続けた。そのまま場が収まるかと思ったその時。
「その方の証言は、私が致します」
そこへ入ってきたのは、シオネと、海エルフたちだった。その中にはラエルもいた。
「くそ! 地下牢に入れていたはずなのに! 」
そう、シオネは地下牢にて壁に縛り付けられていた。しかし、そんな人間の拘束を、エルフが解けないはずがないのだ。
「何者かな? 」
「無礼をお許し願いたい、王よ。私は海エルフの長、ラエルである。その方、ユラシア・アナガデロは、海エルフと森エルフの戦いを収めてくださったお方。分隊長殿へ剣を突きつけたのにも、何か理由がありましょう」
「......私は、ユラシアさんが罪人となってしまった発端である、山犬の獣人、シオネです。ユラシアさんは、私を守ったあまり、罪を被せられてしまったのです」
「......詳しく」
皆より高い位置の玉座に座っている王は、髭を手で撫でるのをやめ、シオネの話に集中した。
「私は、獣人という立場であるにも関わらず、人間のユラシアさんと町に出掛けてしまいました。獣人は存在するだけでも罪になると知らなかったのです」
「獣人が、罪だと? 」
王は、分隊長へ顔を向けたが、分隊長は王と顔を合わせようとはしなかった。
「はい。そんな私を守るため、ユラシアさんは法廷であのような行動に出たのです。どうかお許しください」
王はその話に絶望した様子だった。次の瞬間、王は誰もが想像すらできなかった、あり得ない行動に出たのだ。
玉座から立ち上がり、カーペットが敷いてある階段を下り、シオネたちと同じ目線になった王は、突如として両膝をつき、いわるゆ土下座の形になった。
「......え? 」
「どうかお許し願いたい。言い訳にすらならないかもしれないが、そんなことが町で起きているなど、知らなかった......。政治に関わらないあまり、そのようなことが起こってしまった......」
少し顔を上げ、王はシオネを見、今一度謝罪の意を表明した。
「本当に申し訳ない......!! 」
「あの! 頭をあげ、上げてください王様! いいですよもう終わったことなんですから!! 」
「いや! もっと謝らせてくれ!! なんなら殺してくれ!! 分隊長を!! 」
「わ、私ですか!? 」
分隊長は、まさか自分が指名されるとは思わず、驚いていた。
「よし決めた!! 分隊長はクビだ!! 」
「えええええ!! 」
王様の側近は、分隊長の腰の剣を取り上げた後、騎士団の制服を剥ぎ取った。
「いやあああ!! 」
-数分後-
「本当にすまなかったな、シオネ殿。これからは子供たちの教育に、獣人や他の種族に関する差別の勉強もさせてもらおう。私も、今回のことで目が覚めた。政治に積極的に参加しよう」
「はい! よろしくおねがいします! 」
「何か困ったことがあったら、いつでも頼ってくれ。私に出来ることがあれば、必ず助けよう」
こうして、ユラシアは無実として釈放された。王がバックについているということで、シオネに箔がついた。
ちなみに今回の件で、王様が獣人の大ファンであることもわかった。
その男は、国王の元へと送られた。
-謁見の間-
広い部屋の最奥には、白ひげを生やした老人が、静かに座っていた。
「さて、我が国王に呼び出された理由は分かっておるか? 」
ユラシアは、国王の前に跪かされていた。
「知らないな」
「ふむ、私は政治に関与することを禁じられておる。それ故、何が起こったかを伝えてもらいたいのだ。私の耳には、貴様がただ死刑を言い渡され、法廷で暴れたとの報告しか入っておらぬ」
「......自分で考えろ」
「王様になんと無礼な!! 」
ユラシアの隣には、例の騎士団の分隊長がいた。分隊長は、ユラシアの頭を蹴ろうとしたが、スキルによって弾かれた。
「よせ。お前ごときが敵う相手ではないのだろう? 耳を切られたぐらいだからな」
分隊長は、苦虫を噛み潰したような顔をして、処置が施された自身の耳があった場所をさすった。
「さて......このままではお主は死刑に処されてしまう。何か真実を話してくれぬか? 」
ユラシアはあくまで黙秘を続けた。そのまま場が収まるかと思ったその時。
「その方の証言は、私が致します」
そこへ入ってきたのは、シオネと、海エルフたちだった。その中にはラエルもいた。
「くそ! 地下牢に入れていたはずなのに! 」
そう、シオネは地下牢にて壁に縛り付けられていた。しかし、そんな人間の拘束を、エルフが解けないはずがないのだ。
「何者かな? 」
「無礼をお許し願いたい、王よ。私は海エルフの長、ラエルである。その方、ユラシア・アナガデロは、海エルフと森エルフの戦いを収めてくださったお方。分隊長殿へ剣を突きつけたのにも、何か理由がありましょう」
「......私は、ユラシアさんが罪人となってしまった発端である、山犬の獣人、シオネです。ユラシアさんは、私を守ったあまり、罪を被せられてしまったのです」
「......詳しく」
皆より高い位置の玉座に座っている王は、髭を手で撫でるのをやめ、シオネの話に集中した。
「私は、獣人という立場であるにも関わらず、人間のユラシアさんと町に出掛けてしまいました。獣人は存在するだけでも罪になると知らなかったのです」
「獣人が、罪だと? 」
王は、分隊長へ顔を向けたが、分隊長は王と顔を合わせようとはしなかった。
「はい。そんな私を守るため、ユラシアさんは法廷であのような行動に出たのです。どうかお許しください」
王はその話に絶望した様子だった。次の瞬間、王は誰もが想像すらできなかった、あり得ない行動に出たのだ。
玉座から立ち上がり、カーペットが敷いてある階段を下り、シオネたちと同じ目線になった王は、突如として両膝をつき、いわるゆ土下座の形になった。
「......え? 」
「どうかお許し願いたい。言い訳にすらならないかもしれないが、そんなことが町で起きているなど、知らなかった......。政治に関わらないあまり、そのようなことが起こってしまった......」
少し顔を上げ、王はシオネを見、今一度謝罪の意を表明した。
「本当に申し訳ない......!! 」
「あの! 頭をあげ、上げてください王様! いいですよもう終わったことなんですから!! 」
「いや! もっと謝らせてくれ!! なんなら殺してくれ!! 分隊長を!! 」
「わ、私ですか!? 」
分隊長は、まさか自分が指名されるとは思わず、驚いていた。
「よし決めた!! 分隊長はクビだ!! 」
「えええええ!! 」
王様の側近は、分隊長の腰の剣を取り上げた後、騎士団の制服を剥ぎ取った。
「いやあああ!! 」
-数分後-
「本当にすまなかったな、シオネ殿。これからは子供たちの教育に、獣人や他の種族に関する差別の勉強もさせてもらおう。私も、今回のことで目が覚めた。政治に積極的に参加しよう」
「はい! よろしくおねがいします! 」
「何か困ったことがあったら、いつでも頼ってくれ。私に出来ることがあれば、必ず助けよう」
こうして、ユラシアは無実として釈放された。王がバックについているということで、シオネに箔がついた。
ちなみに今回の件で、王様が獣人の大ファンであることもわかった。
42
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる