死刑になったら転生しました ~しかもチートスキル付きだとぉ?~

まこる

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獣人裁判編

国王

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法廷で起きたあの出来事。騎士団の分隊長の耳が、被告人によって切り落とされる事件。これは一般へと広がり、町はたちまちその噂で持ちきりもとなった。

その男は、国王の元へと送られた。

-謁見の間-

広い部屋の最奥には、白ひげを生やした老人が、静かに座っていた。

「さて、我が国王に呼び出された理由は分かっておるか? 」

ユラシアは、国王の前に跪かされていた。

「知らないな」

「ふむ、私は政治に関与することを禁じられておる。それ故、何が起こったかを伝えてもらいたいのだ。私の耳には、貴様がただ死刑を言い渡され、法廷で暴れたとの報告しか入っておらぬ」

「......自分で考えろ」

「王様になんと無礼な!! 」

ユラシアの隣には、例の騎士団の分隊長がいた。分隊長は、ユラシアの頭を蹴ろうとしたが、スキルによって弾かれた。

「よせ。お前ごときが敵う相手ではないのだろう? 耳を切られたぐらいだからな」

分隊長は、苦虫を噛み潰したような顔をして、処置が施された自身の耳があった場所をさすった。

「さて......このままではお主は死刑に処されてしまう。何か真実を話してくれぬか? 」

ユラシアはあくまで黙秘を続けた。そのまま場が収まるかと思ったその時。

「その方の証言は、私が致します」

そこへ入ってきたのは、シオネと、海エルフたちだった。その中にはラエルもいた。

「くそ! 地下牢に入れていたはずなのに! 」

そう、シオネは地下牢にて壁に縛り付けられていた。しかし、そんな人間の拘束を、エルフが解けないはずがないのだ。

「何者かな? 」

「無礼をお許し願いたい、王よ。私は海エルフの長、ラエルである。その方、ユラシア・アナガデロは、海エルフと森エルフの戦いを収めてくださったお方。分隊長殿へ剣を突きつけたのにも、何か理由がありましょう」

「......私は、ユラシアさんが罪人となってしまった発端である、山犬の獣人、シオネです。ユラシアさんは、私を守ったあまり、罪を被せられてしまったのです」

「......詳しく」

皆より高い位置の玉座に座っている王は、髭を手で撫でるのをやめ、シオネの話に集中した。

「私は、獣人という立場であるにも関わらず、人間のユラシアさんと町に出掛けてしまいました。獣人は存在するだけでも罪になると知らなかったのです」

「獣人が、罪だと? 」

王は、分隊長へ顔を向けたが、分隊長は王と顔を合わせようとはしなかった。

「はい。そんな私を守るため、ユラシアさんは法廷であのような行動に出たのです。どうかお許しください」

王はその話に絶望した様子だった。次の瞬間、王は誰もが想像すらできなかった、あり得ない行動に出たのだ。

玉座から立ち上がり、カーペットが敷いてある階段を下り、シオネたちと同じ目線になった王は、突如として両膝をつき、いわるゆ土下座の形になった。

「......え? 」

「どうかお許し願いたい。言い訳にすらならないかもしれないが、そんなことが町で起きているなど、知らなかった......。政治に関わらないあまり、そのようなことが起こってしまった......」

少し顔を上げ、王はシオネを見、今一度謝罪の意を表明した。

「本当に申し訳ない......!! 」

「あの! 頭をあげ、上げてください王様! いいですよもう終わったことなんですから!! 」

「いや! もっと謝らせてくれ!! なんなら殺してくれ!! 分隊長を!! 」

「わ、私ですか!? 」

分隊長は、まさか自分が指名されるとは思わず、驚いていた。

「よし決めた!! 分隊長はクビだ!! 」

「えええええ!! 」

王様の側近は、分隊長の腰の剣を取り上げた後、騎士団の制服を剥ぎ取った。

「いやあああ!! 」

-数分後-

「本当にすまなかったな、シオネ殿。これからは子供たちの教育に、獣人や他の種族に関する差別の勉強もさせてもらおう。私も、今回のことで目が覚めた。政治に積極的に参加しよう」

「はい! よろしくおねがいします! 」

「何か困ったことがあったら、いつでも頼ってくれ。私に出来ることがあれば、必ず助けよう」

こうして、ユラシアは無実として釈放された。王がバックについているということで、シオネに箔がついた。

ちなみに今回の件で、王様が獣人の大ファンであることもわかった。
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