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獣人裁判編

裁判

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-地下牢-

「......」

獣人を保護した罪として、地下牢へ閉じ込められたユラシア。すぐにでも脱出はできるが、シオネに言われた言葉が、ユラシアの行動に制限をかけていた。

「ユラシア・アナガデロ。裁判の時間だ」

騎士の格好をした男が、牢の鍵を開けた。あの時の騎士ではない。

ユラシアは重い腰をあげ、大人しく手枷をはめられた。

-法廷-

そこには、いつでも拷問ができるようにと、内側に向かって大きな針が何本も取り付けられた檻に、シオネが入れられていた。

裁判が始まると、つらつらと嘘の証言が流された。ユラシア・アナガデロは人を傷つけた。獣人は店のものを勝手に食べた。勿論どれも本当のことではない。しかし、獣人という種族を人間が嫌う限り、その嘘はどんどん出てくる。

「被告、ユラシア・アナガデロ。貴様の罪状を読み上げる」

「......」

白髪を生やした裁判官は、手元にあった紙を読んだ。

「ユラシア・アナガデロを死刑に処す」

そこで裁判は終了したが、その言葉を聞いたとたん、シオネが動いた。

「ちょっと待ってください!! 私と一緒にいただけで死刑なんて、そんなの酷すぎます!! 」

すると、傍にいたあの時の騎士が、檻の中のシオネに向かって言った。

「うるさいぞ獣人!! 黙っていろ!! 」

男は、檻に付けられた針を数本、シオネに突き刺した。急所は外れていた。

「ああああ!! 」

「獣人を叫ばせるな。耳障りだ」

裁判官の言葉である。ユラシアの怒りはとうに許容量を越えていた。しかし、シオネの言葉は、今もユラシアにストッパーをかけている。

「まあ、裁判はもう終わったんだ。殺しても構わない」

するとあの男が、腰に提げられた剣を抜き、シオネの顔を捉えた。そして、檻の隙間から一突きするために、剣先をシオネに向けた。

その光景が、ユラシアのタガを外した。

破壊ブレイク

まず始めに、自身につけられていた手枷を破壊した。

加速アクセル

ユラシアはスキルの制御が効かなくなり、一気に500倍ほどの速度まで上昇した。その速さで男の剣を奪い取った。

「わ、私の剣が! 」

万能マスター

そのスキルで、剣の重さ、握り方、年季、術を理解し、その男の顔の表面を切りつけた。そして、傍の檻で痛みに苦しんでいたシオネに言った。

「すまない。約束を破ってしまったな」

驚いてバランスがとれなくなり、仰向けに倒れたあの騎士の男の顔の真横に剣を突き刺した。そして言った。

「お前、この前極刑に処されるだろうと言っていたな? 」

「お、お前! こんなことをしてただで済むと思っているのか! 」

そんな口をきいた男には制裁。今度は耳を切り落とした。目にも留まらぬ速さだ。

「うああああ!! 」

「この国の極刑は死刑だな? 方法はなんだ? 斬首刑か? 絞首刑か? 」

「こ、絞首......!! 」

恐怖のあまり従順になった男は、ただユラシアの話を聞いていた。

「そうか......」

手に持っていた剣を捨てて、男の顎を持ち、自分の顔に近付け、一言。

「首吊りは......もう飽きた」

既に絞首刑をくらったことのある人物だけが言えるセリフである。
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