14 / 48
獣人裁判編
シオネと二人で
しおりを挟む
「被告、ユラシア・アナガデロ。貴様の罪状を読み上げる」
「......」
このような結果になってしまった事のてんまつは、数時間前に遡る......
-市場-
この日、ユラシアはシオネと、ギルドがある町とは別の町に買い出しに来ていた。
「ユラシアさんとお買い物ー。二人でお買い物ー」
シオネは、ルンルンでスキップまでしていた。
「やけに上機嫌だな」
「当たり前じゃないですかぁ」
シオネはユラシアの顔を、ニコニコの笑顔で覗き込みながらいった。
「最近、ユラシアさんたらあのエルフの人と訓練ばっかりなんですもん。二人っきりだったら上機嫌にもなりますよ」
「フッ。かまってやれなくて、悪かったな」
ユラシアは、拗ね気味なシオネの頭を撫でた。耳以外は人間の構造なので、嬉しい時は耳で分かる。ピョコンとはねるのだ。
「んふふーん、もっともっとですー」
自身の頭に乗っていた手に押しつけるように、シオネは背伸びをした。それに加えて、ユラシアに寄りかかった。
しかし、周りから見ると、それはあまりいい光景ではなかった。イチャイチャしているからという訳ではない。シオネの、獣人という種族の問題なのだ。
「お! お二人さん熱いねぇ! どうだい? この果物買って......いかな......いか......」
八百屋の主人は、シオネの耳を見て顔色を変えた。すると、慌てて顔を伏せた。その様子が、ユラシアにも見えていた。
「おい主人。なぜこいつを見て顔を反らすんだ? 」
「いや、それは......」
「答えろ」
ユラシアの威圧感に負けて、主人は思っていることを口にしてしまった。
「......じゅ、獣人を連れて歩くな! ノミが跳ねるんだ! 」
その言葉は、ユラシアの怒りを奮い立たせるのに十分な材料であった。
「おい、もう一度言ってみろクソジジイ。次に言ったときには、苦しむ間も与えずに殺す」
「うぐ......」
そんなやり取りをしていると、横から声が聞こえてきた。やけに、しゃくにさわる声だった。
「やめないか見苦しい。獣人を連れているお前が悪いだろう」
「あ? 」
声の主は、騎士の格好をした金髪の男であった。剣を帯刀していて、わきに部下を連れていた。
「獣人は重罪だぞ。それを保護するお前も勿論、極刑に処されるだろう」
ユラシアを見下すような目線は、ユラシア自身だけでなく、シオネの怒りのツボも刺激した。
「ちょっと、酷いんじゃないですか? 」
ユラシアとその騎士の間に割って入ったシオネ。しかし、すぐに騎士に頬を叩かれ、地面に倒れてしまった。そして、次の一言が、ユラシアの決心を促進するものとなる。
「おい、替えの手袋を持ってこい。汚ならしい獣人の頬に触ってしまった」
次の瞬間、ユラシアの口は勝手に動いていた。
「......殺人鬼スキル」
しかしその言葉を制するように、シオネがユラシアの服の裾を引っ張った。
「シオネ......! 」
「ダメ......です。ユラシアさん。私のために、怒らないでください」
シオネの言葉は、ユラシアの体へ直接響き、スキルの発動を制御した。
「さて......この罪人たちを連行しろ。地下牢に閉じ込めておけ」
シオネの言葉を深く頭に刻み、ユラシアは大人しく連行された。
「......」
このような結果になってしまった事のてんまつは、数時間前に遡る......
-市場-
この日、ユラシアはシオネと、ギルドがある町とは別の町に買い出しに来ていた。
「ユラシアさんとお買い物ー。二人でお買い物ー」
シオネは、ルンルンでスキップまでしていた。
「やけに上機嫌だな」
「当たり前じゃないですかぁ」
シオネはユラシアの顔を、ニコニコの笑顔で覗き込みながらいった。
「最近、ユラシアさんたらあのエルフの人と訓練ばっかりなんですもん。二人っきりだったら上機嫌にもなりますよ」
「フッ。かまってやれなくて、悪かったな」
ユラシアは、拗ね気味なシオネの頭を撫でた。耳以外は人間の構造なので、嬉しい時は耳で分かる。ピョコンとはねるのだ。
「んふふーん、もっともっとですー」
自身の頭に乗っていた手に押しつけるように、シオネは背伸びをした。それに加えて、ユラシアに寄りかかった。
しかし、周りから見ると、それはあまりいい光景ではなかった。イチャイチャしているからという訳ではない。シオネの、獣人という種族の問題なのだ。
「お! お二人さん熱いねぇ! どうだい? この果物買って......いかな......いか......」
八百屋の主人は、シオネの耳を見て顔色を変えた。すると、慌てて顔を伏せた。その様子が、ユラシアにも見えていた。
「おい主人。なぜこいつを見て顔を反らすんだ? 」
「いや、それは......」
「答えろ」
ユラシアの威圧感に負けて、主人は思っていることを口にしてしまった。
「......じゅ、獣人を連れて歩くな! ノミが跳ねるんだ! 」
その言葉は、ユラシアの怒りを奮い立たせるのに十分な材料であった。
「おい、もう一度言ってみろクソジジイ。次に言ったときには、苦しむ間も与えずに殺す」
「うぐ......」
そんなやり取りをしていると、横から声が聞こえてきた。やけに、しゃくにさわる声だった。
「やめないか見苦しい。獣人を連れているお前が悪いだろう」
「あ? 」
声の主は、騎士の格好をした金髪の男であった。剣を帯刀していて、わきに部下を連れていた。
「獣人は重罪だぞ。それを保護するお前も勿論、極刑に処されるだろう」
ユラシアを見下すような目線は、ユラシア自身だけでなく、シオネの怒りのツボも刺激した。
「ちょっと、酷いんじゃないですか? 」
ユラシアとその騎士の間に割って入ったシオネ。しかし、すぐに騎士に頬を叩かれ、地面に倒れてしまった。そして、次の一言が、ユラシアの決心を促進するものとなる。
「おい、替えの手袋を持ってこい。汚ならしい獣人の頬に触ってしまった」
次の瞬間、ユラシアの口は勝手に動いていた。
「......殺人鬼スキル」
しかしその言葉を制するように、シオネがユラシアの服の裾を引っ張った。
「シオネ......! 」
「ダメ......です。ユラシアさん。私のために、怒らないでください」
シオネの言葉は、ユラシアの体へ直接響き、スキルの発動を制御した。
「さて......この罪人たちを連行しろ。地下牢に閉じ込めておけ」
シオネの言葉を深く頭に刻み、ユラシアは大人しく連行された。
32
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜
赤井水
ファンタジー
クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。
神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。
洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。
彼は喜んだ。
この世界で魔法を扱える事に。
同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。
理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。
その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。
ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。
ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。
「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」
今日も魔法を使います。
※作者嬉し泣きの情報
3/21 11:00
ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング)
有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。
3/21
HOT男性向けランキングで2位に入れました。
TOP10入り!!
4/7
お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。
応援ありがとうございます。
皆様のおかげです。
これからも上がる様に頑張ります。
※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz
〜第15回ファンタジー大賞〜
67位でした!!
皆様のおかげですこう言った結果になりました。
5万Ptも貰えたことに感謝します!
改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる