死刑になったら転生しました ~しかもチートスキル付きだとぉ?~

まこる

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エルフ編

エルフの戦い

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-森エルフの里-

普通の大きさではない樹木がそこら中に自生しているこの森は、古くからエルフが住まう地として語り継がれてきた。その木は、エルフの住みかとして作り替えられていた。

「おい! エルフ! 娘を救出した! 出てこい!! 」

それを聞くと、エルフの母親らしい人物が、家から飛び出してきた。

「ああ愛しのジェーン!! よく戻ってきてくれたわ! ......ありがとう冒険者さん。里のおさが人間との接触を禁じているものだから、ギルドへの依頼という形になってしまったのだけれど」

「いや、いい。それより、海エルフたちから話があるようだぞ」

「あ......」

森エルフの一人と、あの海エルフは、目を合わせた。

「......今日は戦いに来たのではないのだ。仲間たちもアジトにいる」

「......では、どんなご用で......」

海エルフは、ユラシアよりも一歩前に出て、昨日徹夜で考えてきた文章を開き、心を込めて読み上げた。

「我々海エルフは、長きに渡る戦いに終止符を打ちたい所存であります。この度、私ラエルは、森エルフの幼女を誘拐したことを強く反省し、金輪際もう二度と、森エルフの方々に危害を加えないことを、ここに表明いたします。強いては、森エルフと海エルフの因縁を打ち払いたく。海エルフの長ラエル......」

文章から目線を上げると、森エルフの女性は、少し間を開けて言った。

「......夫を呼んできます」

-数分後-

子供を抱き抱えたさきほどの母親と、その夫であり森エルフの長であるジェンクが、ユラシアとラエルの元へやってきた。

「......妻から聞いた。この戦いを終わらせたいと? 」

「......ああ」

「ふざけるな!! 人の娘を誘拐しておいて、何が平和だ!! 」

そんな森エルフを見て、前世を見ているようで呆れたユラシアは、二人の会話に口を挟んだ。

「......お前たち、なんで戦争がなくならないか知っているか? 」

双方、ユラシアの方を見た。気になっているということだ。

「......互いに、無知だからだ」

その言葉を聞き、ジェンクは少し考えていた。そこへ、空気を読み取った娘が話に入ってきた。

「おとーさん。あのおねえさんたち、すごく優しかったよ? 私が怖がらないように遊んでくれたし、私が寝るまでお話もしてくれたんだ。それに、私を捕まえたこと、すごく後悔してた」

その言葉でハッとなり、ジェンクは海エルフの方を見た。ラエルはなんとも言えない顔をしていた。申し訳ないような、嬉しいような。

「......森エルフの長ジェンクは、海エルフとの長きに渡る戦いを、終結へと向かわせたい所存である」

「で、では!! 」

「勘違いするなよ」

「え......」

ジェンクは冷たくいい放つと、一息ついて言った。

「これからは、海エルフが危機に陥ったとき、また助けを求めているとき、森エルフは全勢力をもって海エルフの救援をすることを約束しよう! 」

「あ......ありがとう!! 」

「ふん、娘のいうことを信じない父親はいないからな。それに......あんたのいうことにも色々と気付かされたよ」

ジェンクはそういうと、ユラシアの方を向いた。

「俺の? 」

「ああ。まるで、違う世界の教育を受けているようだった。そんな考え方はしたことがなかったからな。もしかしてだが、本当に異世界から来たのか? 」

ジェンクの言ったことは的を得ていた。ユラシアはこの世界の住民からしたら、異世界から来た存在。あの教会の神父以外で、ここまでユラシアの正体に近付いた者は、ジェンクが初めてだった。

「どうだかな」

「ふん......ではまた会おう。海エルフの長よ。里の者たちには私から言っておく」

「ああ、本当にありがとう」

ユラシアと共に、森エルフの里を離れるラエル。ジェンクの娘に目を振られ、互いが見えなくなるまで手を振り合った。

-海エルフのアジト-

ついてきてくれ、とラエルから言われたユラシア。やがてアジトに帰ってきた。

「ラエルさん!! どうなりましたか? 」

「......戦いは終わったよ」

歓喜のあまり、ラエルを抱き締める海エルフたち。もっとも、人数が人数なので、芋洗い状態になっているのだが。

「いやいや、私は文章を読んだだけだ。戦いが終わったのは、ユラシアのお陰だ」

その言葉から大体のことを察したユラシア。それは、見ている状況が物語っていた。

「ありがとうございますー!!! 」

案の定、大量の海エルフがユラシアの元へと駆け寄り、ユラシアを肌色の世界へと誘った。呼吸ができないほどエルフたちの胸は大きく、それでいてとても柔らかかった。

「うぶ......や、やめろぉ......」

-数分後-

どさくさに紛れて頬にキスマークをつけられていたユラシアは、その場でぶっ倒れていた。

「どうしようか......」

「......ユラシアが冒険者ということはあの町か......私が運ぼう。ついでだからな」

ラエルが名乗り出たが、悲しそうな顔をする海エルフたち。

「ラエルさん。もう行ってしまうんですか? 」

「また戻ってくるさ。彼から学ぶことはたくさんある。お前たちは、この一連の事を里の皆に報告してくれ」

「わ、わかりました!! 」

言いながらも涙する仲間たちを置いていくラエル。彼女自身も、ホロリと涙を流した。

-数時間後-

「......ラシア......ユラシアさん......ユラシアさん!! 」

ギルドの施設である医務室のベッドで目を覚ましたユラシア。呼んでいたのは、シオネだった。

「ん......シオネか」

「シオネか、じゃないですよ! ギルドの人に呼ばれて来てみれば、気絶したユラシアさんがいたんです。心配にもなりますよ!! 」

「す、すまん......」

「まったくもう......あ、それと、手にこんなのが握られてましたよ? まだ読んでませんけど」

シオネから渡されたのは、小さめな紙だった。用心して匂いを嗅ぐと、ほんのり潮の香りがした。つまり海エルフのラエルからだろう。

「なんなんだ? 」

紙にはこう書かれていた。

あなたには教えてもらうことがたくさんあります。あなたの傍にいさせてください。つまり、同棲させてください。

「......は? 」

「どれどれ......え!! 誰ですかこの人! 同棲って、そんな、はしたない! 」

文章は、端の方でこう締め括られていた。

ありがとうございました! 

「......フッ」

「フッてなんですかフッて! というか誰なんですかその紙を書いた人は! 」

「多分、もう来るだろう」

ユラシアの予想通り、医務室の扉を開けたのは、ラエルだった。

「主様! これから宜しくお願い致します!! 」

片足をつき、剣を目の前に置いたラエル。忠誠を誓うという、海エルフなりの表明なのだろう。

シオネはというと、自分以外にユラシアと同棲するものが来ることで、嫉妬していた。

しかし、そんな幸せは、あることをきっかけに崩れた。
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