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ギルド編

ユラシアの信用

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気持ちのいい朝だ。雲一つない晴天。小鳥が囀ずるのが聞こえる。

「ふぁああ」

ベッドの上で寝返りをうつと、丁度枕に手が当たった。いやしかしおかしい。ユラシアはまくらを使わないで寝るタイプだ。つまりこれはなんなんだ。

目を開けるのも億劫なので、色々触って確認してみた。

形は山のような感じ。プニプニしていて、とても心地がよい。

「んんん......」

その声だけで、そのプニプニしたものがなんなのか、ユラシアは想像がついてしまった。

「シオネ!? 」

「キャアアア!! 」

-数分後-

朝食の準備をして、テーブルを挟んで食べる二人。しかし、シオネはムスッとしている。朝のことを怒っているのだ。

「ムーー」

「......シオネ、悪かった。本当に分からなかったんだ、あれがシオネの、その......」

言葉が出ない。下ネタもまともに言ったことがないユラシアにとって、あのワードは禁句も同様であった。

「おっぱい、ですよね。ユラシアさんが揉んでたの」

「まあ、そうなるな......」

「......別に、触られたことを怒っているんじゃありません。ユラシアさん、明らかにモミモミしてました」

「いやいや! あれはその」

誤解を解こうと慌てたのがまずかった。それを不審がったシオネは、ユラシアにトドメの一言をいい放った。

「ユラシアさん、エッチです」

-酒場 オズニーニャ-

扉を開けると、いつものようにあの童顔の女性、テイルが出迎えてくれた。

「おはようございますユラシアさん! って、なんか落ち込んでます? 」

誰が見ても、ユラシアは躁鬱な顔をしていた。それもそのはず、不本意で変態扱いされたら、誰だってそうなるだろう。

「別に、何でもない......」

「そう、ですか......あの、ユラシアさんに関係している噂が最近流れているんです」

「噂? 」

「はい。この前、ガレンさんと依頼をこなしてきましたよね? ガレンさんが帰ってこないのは、ユラシアさんが、あの、その......」

テイルは、その先を言いずらそうにしていた。それもそのはず、そんな物騒な単語を、戦闘経験もなさそうな人が言えるわけがない。

「殺した、と? 」

「はい......教えてください。それは本当なんですか? 」

深刻そうな顔。それだけで、テイルが本気であることは十分に読み取れた。それに、ユラシアはテイルのような真っ直ぐな女性に、嘘などつけなかった。

ギルドのたくさんの仲間が見守る中、ユラシアはゆっくりと真実を口にした。

「......ああ、俺が殺した。制裁を下したまでだ」

普段の賑やかさとはうってかわって、静かになった室内は、多くの人にとって不気味なくらいであった。

やってしまった。ユラシアは心の角でそう思った。

しかし、静けさなど忘れたかのように、ギルドの仲間たちはユラシアを称賛し始めた。

「よくやってくれたユラシア!! あのクソガレンをやってくれたのか!! 」

「これで報酬を横取りされなくてすむぜ! 家族に贅沢させてやれる!! 」

ユラシアは唖然とした表情で、突っ立っていた。多くの男たちは、昼間にも関わらず酒を大量に注文し、自分でも飲んだし、それ以上にユラシアにも大量に飲ませた。

「おいおいユラシア。ガレンは手強かったか? 」

ユラシアと半ば強引に肩を組みながら、男は楽しそうに質問した。

「いや、俺がちょっと威圧したら、叫びながら逃げていった」

「なんて言って叫んでたんだ? 」

ユラシアもちょっと楽しくなってきて、とことんガレンをバカにしてやった。

「おかあさーん、ってな」

「ガッハッハッハ!! いい気味だぜ!! 」

その一日だけ、ギルドは過去最低の依頼数を叩き出した。しかし、そのことに関して、ギルドマスターは何の文句も言わなかった。
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