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幼少期編
兄 ペール
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教会から帰ると、母親は食事の準備、父親は畑仕事の道具の手入れをしに行った。ユラシアと兄のペール、二人きりである。
「ユラシア、ちょっと来い」
「ん? 」
今までもユラシアに強く当たってきたが、ここまで冷たい目は初めてだった。
-雑木林-
林をどんどん進む兄を必死に追いかけるユラシア。ある程度開けたところまで行くと、兄は突然ユラシアの方を振り返った。
「おいユラシア」
兄の目には光がなかった。その目に、ユラシア......小神野は見覚えがあった。
殺人を犯した時の自分の目。すべてを諦め、自分の手を汚すと心に決めた目だった。
「何......お兄ちゃん」
「死ね」
するとペールは突然、隠し持っていた包丁を取り出し、自分の実の弟、5歳児のユラシアに向かってそれを振りかざしたのだ。
「......」
すんでのところで避けたユラシア。スキルのものではなく、直感だった。
「避けるなぁ!! 」
再び包丁を振りかざしたペール。その包丁に向かって、ユラシアはスキルを発動させた。
「......破壊」
するとその包丁は、なんの予兆もなく突然、跡形もなく弾けとんだ。ペールはとても驚いていたが、それ以上にユラシアを殺すことに必死だった。
「クソォ!! 」
次は首を絞めようと、両手を首に伸ばす。しかし、ユラシアにそれはきかなかった。
「隠密」
ユラシアが無になったことで、ペールの両腕はユラシアに触れることなく、バランスを崩して転倒する要因となった。
「うわぁ! 」
ペールは、敗北と土を噛み締めることとなってしまった。悔しそうに、震えた拳を握り、涙を流した。
「クソがぁ......! 」
「なぜ、こんなことを? 」
ペールは土をユラシアに投げつけ、言葉を吐き捨てた。
「お前ばかり特別扱いされててムカつくんだよ! 死ね! このクソ野郎!! 山菜摘みの時に、お前が一人になったのを見たとき、そのまま死んでくれるように父親に知らせなかったのに! なんで戻ってきたんだよ!! 」
ある程度の人は、ペールのことがかわいそうだと思うだろう。普通は弟に嫉妬することがあっても、決して殺したりはしないはずだ。そう、ペールは根っからの悪なのである。
ユラシアは、その一連の行動に怒りを募らせた。そして、スキルを使った惨たらしい処刑法を思い付いた。
「創造」
スキルによって作られたのは、大きな熊だ。あの時襲われた熊をもっと狂暴にしたものだ。ペールは、何が起きたか分かっていない様子だ。
「へ? おい......どこから......」
「この熊、少しだけ腹を空かしていてな。しょうがないから、エサになってくれ」
熊は怖がるペールをお構いなしに襲い始めた。とたんにペールの悲鳴が上がった。しかし助けはこない。
とても腹を空かしているのではなく、少しだけというところにも肝がある。つまりは、ゆっくり食べられるため、死なない限り苦痛がずっと続くのだ。
「助......けて......」
「こんな人気のないところまで来たのは自分だ。運がなかったな」
ユラシアは、仮にも血の繋がった兄弟が殺されている現場を見ても、なんとも思わなかった。それもそうだ。彼がこの世界に来たのは、人を殺したから。
アリバイ作りのため、早急に家へ帰ったユラシア。ペールが死体で発見されるのは、実に五時間後の出来事である。
「ユラシア、ちょっと来い」
「ん? 」
今までもユラシアに強く当たってきたが、ここまで冷たい目は初めてだった。
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林をどんどん進む兄を必死に追いかけるユラシア。ある程度開けたところまで行くと、兄は突然ユラシアの方を振り返った。
「おいユラシア」
兄の目には光がなかった。その目に、ユラシア......小神野は見覚えがあった。
殺人を犯した時の自分の目。すべてを諦め、自分の手を汚すと心に決めた目だった。
「何......お兄ちゃん」
「死ね」
するとペールは突然、隠し持っていた包丁を取り出し、自分の実の弟、5歳児のユラシアに向かってそれを振りかざしたのだ。
「......」
すんでのところで避けたユラシア。スキルのものではなく、直感だった。
「避けるなぁ!! 」
再び包丁を振りかざしたペール。その包丁に向かって、ユラシアはスキルを発動させた。
「......破壊」
するとその包丁は、なんの予兆もなく突然、跡形もなく弾けとんだ。ペールはとても驚いていたが、それ以上にユラシアを殺すことに必死だった。
「クソォ!! 」
次は首を絞めようと、両手を首に伸ばす。しかし、ユラシアにそれはきかなかった。
「隠密」
ユラシアが無になったことで、ペールの両腕はユラシアに触れることなく、バランスを崩して転倒する要因となった。
「うわぁ! 」
ペールは、敗北と土を噛み締めることとなってしまった。悔しそうに、震えた拳を握り、涙を流した。
「クソがぁ......! 」
「なぜ、こんなことを? 」
ペールは土をユラシアに投げつけ、言葉を吐き捨てた。
「お前ばかり特別扱いされててムカつくんだよ! 死ね! このクソ野郎!! 山菜摘みの時に、お前が一人になったのを見たとき、そのまま死んでくれるように父親に知らせなかったのに! なんで戻ってきたんだよ!! 」
ある程度の人は、ペールのことがかわいそうだと思うだろう。普通は弟に嫉妬することがあっても、決して殺したりはしないはずだ。そう、ペールは根っからの悪なのである。
ユラシアは、その一連の行動に怒りを募らせた。そして、スキルを使った惨たらしい処刑法を思い付いた。
「創造」
スキルによって作られたのは、大きな熊だ。あの時襲われた熊をもっと狂暴にしたものだ。ペールは、何が起きたか分かっていない様子だ。
「へ? おい......どこから......」
「この熊、少しだけ腹を空かしていてな。しょうがないから、エサになってくれ」
熊は怖がるペールをお構いなしに襲い始めた。とたんにペールの悲鳴が上がった。しかし助けはこない。
とても腹を空かしているのではなく、少しだけというところにも肝がある。つまりは、ゆっくり食べられるため、死なない限り苦痛がずっと続くのだ。
「助......けて......」
「こんな人気のないところまで来たのは自分だ。運がなかったな」
ユラシアは、仮にも血の繋がった兄弟が殺されている現場を見ても、なんとも思わなかった。それもそうだ。彼がこの世界に来たのは、人を殺したから。
アリバイ作りのため、早急に家へ帰ったユラシア。ペールが死体で発見されるのは、実に五時間後の出来事である。
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