ハーレムから逃げられた男

あお

文字の大きさ
上 下
3 / 3

3

しおりを挟む
 ラウルはミレーユより三日遅れて産まれた。

 両親の仲が良かったため、子どもの頃は一緒に面倒を見られていた。

 ミレーユは近所でも評判の可愛い子で、そんな彼女の一番の仲良しが自分であることに、ラウルは優越感を感じていた。

 12歳になり、ミレーユが冒険者ギルドで依頼を受けると言うと、ラウルも一緒にいるために依頼を受けた。

 親の影響で、元々剣の修行はしていたけれど、それもミレーユの方が才能があったため、拗ねたラウルは手を抜いていた。

 しかし冒険者ギルドの依頼にいくとあっては、そんな事をしていたら命がいくつあっても足りない。

 ラウルは親に頼み込み、真剣にしごいてもらった。

 その甲斐あって、一緒に行くというラウルを、ミレーユも依頼に連れて行くようになった。

 ミレーユは皆の人気者だった。若いし可愛いし、斥候としても優秀だし、ストイックで手抜きを一切しないため、ベテランの冒険者にも可愛がられていた。

 ミレーユの金魚の糞のようだったラウルは、肩身の狭い思いをしていたものだ。

 そんな状況が変わったのは、学院に入ってからだ。

 ミレーユより背の低かったラウルの背はどんどんと伸び、彼女より頭一つ分高くなった。

 剣の腕もそれなりになってきて、ラウルはどんどん自信をつけた。

 決定的だったのは、依頼で知り合った女の子達がラウルに感謝して、一緒にパーティを組んでくれた事だ。

 それまではミレーユのおまけのような存在だったけれど、そこでの主役はラウルだった。

 これでミレーユも見直すだろうと、ラウルは内心得意になっていた。



 ところが。気づくとパーティにミレーユの姿がない。

 探そうとしても、同じパーティの女の子達に邪魔されてしまう。

 そして女の子達を振り切り、やっと見つけたミレーユは知らない男と一緒にいた。

 いままで、金魚の糞と言われていたけれど、ミレーユの横にいるのはラウルだけだった。

 だからラウルは勘違いしていた。

 ミレーユも、自分の事が好きなのだと。

 いまは自信がなくてカッコ悪くて言えないけど、自信がついたいま、ラウルはミレーユに告白するつもりだった。

 ミレーユもそれを待っていてくれるのだと思っていた。




 だが蓋を開けてみれば。




 ミレーユに見捨てられた。

 幼馴染だ。ミレーユの無関心な目をみれば、それがフリではなく本気だと分かった。

 ミレーユにとって、自分はまったく無価値な人間になっていた。



 ずっと、ミレーユのために頑張って来たのに。



 傷心からとぼとぼと校庭を歩いていたラウルは、同じパーティの女の子達に見つかった。

「やっと見つけた! 今日も私と依頼に行きましょう」
「ダメー! 今日は私と行くのです」
「私よね」
「私を忘れないでください」



 ラウルは力なく笑うも、自分を必要としてくれる女の子達を拒むことはできず、今日も女の子達に連れさられた。




 少年の心は恋に破れたが、これは無理、とさっさと割り切った少女は、恋はもうたくさんと、学園生活を満喫していった。




 将来、S級冒険者にまでなる、ミレーユ・ドルトン。



 若かりし日の、他愛ない話。



 ミレーユに捨てられたラウルは、そこそこの冒険者となったようだ。




しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

悪夢がやっと覚めた

下菊みこと
恋愛
毎晩見る悪夢に、精神を本気で病んでしまって逃げることを選んだお嬢様のお話。 最後はハッピーエンド、ご都合主義のSS。 主人公がいわゆるドアマット系ヒロイン。とても可哀想。 主人公の周りは婚約者以外総じてゴミクズ。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢は森で静かに暮らします。

あみにあ
恋愛
辺り一面が真っ赤な炎に染まってき、熱風が渦巻き、黒煙が舞い上がる中、息苦しさに私はその場で蹲った。 動く事も出来ず、皮膚が炎に触れると、痛みと熱さに意識が次第に遠のいていく。 このまま死んでしまう……嫌だ!!! そう思った刹那、女性の声が頭に響いた。 「私の変わりになってくれないかしら?」 そうして今までとは全く違う正解で、私は新しい命を手に入れた。 だけど転生したのは、悪役の令嬢のような女性。 しかも18歳に愛する人に殺される悲惨な最後らしい。 これは何とか回避しないと……ッッ。 そんな運命から逃れる為悪戦苦闘するお話です。

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

政略結婚ですか、はい、喜んで。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

番は無理です!

豆丸
恋愛
ある日、黒竜に番認定されました(涙)

処理中です...