侯爵家の七男です。開拓村の村長を押し付けられました。村人はいません。

5 次男が来ました

「久しぶりだね。元気かい」

　翌日、土人形に畑の手入れをさせながらブラブラしていたら、ありえない人がいた。

「なんでいるの」

　長男との抗争に勝って今頃侯爵家の制圧に乗り出してる頃じゃないの。

「恥ずかしい話なんだけど、アレクに裏切られてね」

　暗殺されそうになったから、逃げて来たよ。
　朗らかに笑う次男。
　アレクは三男で、穏健派のNo.2だった。

「しばらくここに置いてくれないかい」

　なんで侯爵領広いのに、俺の兄弟は揃って辺境に来るんだ？

「いいけど。喧嘩しないでね」

「やっぱり兄さんも来てたか。お前のことを心配していたからな」

　うわぁ、卑怯。
　いきなり情で攻めてきた。

「そんな顔をするな。もう兄さんとは喧嘩をしないから」

　心配かけてごめんな、と頭一つ半は高い身長で、上からぽんぽんと頭を叩いて来た。

　それやられて喜ぶの、子どもだけだから。

「わかったよ。ご飯出来てるけど食べる？」

「もらおう。あの人は？」

「出かけてる。山を制覇するんだって」

「わー。暑苦しそう」

　タイミングは良かったな、と次男は片目を瞑った。

　弟相手にウインクするな。

　穏健派筆頭だった次男は、人当たりが良くて誰にでも愛想がいい。

　長男とは水と油だった。




『姉さん、大変です』

　長男と次男が来たよ。と次女に遠話で連絡を取った。

『やっぱりそっちにいったのね。侯爵領はどこも押さえられてるから、辺境だと思ったわ』

『いまどうなってるの』

『武闘派も穏健派もトップが変わって睨み合ってるわ。嵐の前の静けさかしら』

　嫌な例えだな。

『総領姫の方は』

『人死は、まだ出てないわね』

　でも料理に毒が入れられるようになったから、時間の問題じゃないかしら。

　相変わらず殺伐としてる。

『兄さん達の引き取りは』

『出来ると思う？』

　ですよねー。

『しばらくそっちで面倒みといて。ほっといても死なないから』

『わかった』

　長男次男には、子どもの頃に可愛がられていた恩がある。
　ぶっちゃけ俺が何もしないで生きて来れたのも姉兄のおかげだし。

　でもなー。
　あの二人と缶詰は嫌だなー。




『家を建てたので、開拓団を送ってください』

　父に遠話を送った。

『2人派遣シタ。アトヨロシク』

　くっそ親父！
　確信犯かよ！！


　この先も、侯爵家の抗争でドロップアウトした人が送られてきたら嫌すぎるな。