侯爵家の七男です。開拓村の村長を押し付けられました。村人はいません。

あお

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4 長男が来ました

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「よう」

 最近の俺は、諦めて一人で開拓をする事にした。
 抗争中の侯爵家とは関わり合いになりたくない。

 土人形に収穫させて、収穫物を空間収納に納めるかたわら、畑の周りのパトロールをする。

 魔物も動物もきやしないが、一応柵を作って鳴子を引っ掛けてあるので、柵の点検がてらブラブラしていたら、ありえない人がいた。

「飯奢ってくれ」

 武闘派トップの長男だ。

「兄さん? マジで?」

「なにきょどってんだ。飯くらいあるだろ」

「あるけど」

「俺に出す飯はねえってか」

「いや。あるけど。なんでここにいるの」

 次男と抗争中だったんじゃないか。

「負けた。命からがら逃げてきたんだよ」

 長男はがっしりと俺の肩に腕を回した。

「しばらくお前のとこでやっかいになるぜ」

 強面でニカっと笑われた。

 いいけど。ぎりぎり力入れて威圧するのやめて。

「わかったよ。なにもないところだけど、好きなだけいて」

「さすが、話せるな、兄弟。今日は夜通し飲み明かそうぜ」

 ほんとに一晩付き合わされた。
 いかに次男が卑怯で卑劣で兄さんが勇敢に戦ったかを延々と聞かされ、俺は最後には首振り人形になっていた。



「しっかし、ほんと何もねえな」

「なにそれ」

「グレートボアだろ」

 朝、畑の水撒きに家を出てきたら、山の方から長男が歩いてきた。肩に巨大な猪を担いで。

「俺様が走ってる前に出て来やがったから、のしてやったのよ」

 片手を顎にあてて満足そうに頷く長男。

 この辺は俺のテリトリーだから魔物は出ないはずなんだけど。
 どこまで走りに行ったんだ、この体力馬鹿。

「兄さんって俺様キャラだったっけ」

「キャラ変したんだよ。キャルが、負けて出て行くのにえらそーなのはおかしいって言うからな」

 俺様キャラも、キャルのリクエストだ。

「キャルか」

 末っ子のキャルは、末っ子特典で家族みんなに可愛がられている。
 もうあいつが次期当主でいいんじゃないか。

「朝ごはん出来てるよ。食べてきなよ」

「わりーな。お前の飯うまいぞ。嫁に来るか?」

「現状逆だよね」

「俺は弟のヒモかよ。落ちたもんだぜ」

「俺様キャラ抜けてるよ」

「おっと」

 キャルには内緒にしとけよ、と俺の肩を抱いて耳元で囁いた後、長男は家に戻っていった。

 いいけど、肩だきすぎ。
 馴染みすぎ。

 なんなんだ。あの余裕は。

 あれが長男の余裕か。

 持てるものは追い出されても余裕かますんだな。

 まあ、誰もいないこの辺境でかっこつけても誰も見ていないわけだけど。

「開拓、手伝ってくれないかな」

 ヒモは勘弁して欲しい。



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