4 / 9
4 長男が来ました
しおりを挟む
「よう」
最近の俺は、諦めて一人で開拓をする事にした。
抗争中の侯爵家とは関わり合いになりたくない。
土人形に収穫させて、収穫物を空間収納に納めるかたわら、畑の周りのパトロールをする。
魔物も動物もきやしないが、一応柵を作って鳴子を引っ掛けてあるので、柵の点検がてらブラブラしていたら、ありえない人がいた。
「飯奢ってくれ」
武闘派トップの長男だ。
「兄さん? マジで?」
「なにきょどってんだ。飯くらいあるだろ」
「あるけど」
「俺に出す飯はねえってか」
「いや。あるけど。なんでここにいるの」
次男と抗争中だったんじゃないか。
「負けた。命からがら逃げてきたんだよ」
長男はがっしりと俺の肩に腕を回した。
「しばらくお前のとこでやっかいになるぜ」
強面でニカっと笑われた。
いいけど。ぎりぎり力入れて威圧するのやめて。
「わかったよ。なにもないところだけど、好きなだけいて」
「さすが、話せるな、兄弟。今日は夜通し飲み明かそうぜ」
ほんとに一晩付き合わされた。
いかに次男が卑怯で卑劣で兄さんが勇敢に戦ったかを延々と聞かされ、俺は最後には首振り人形になっていた。
「しっかし、ほんと何もねえな」
「なにそれ」
「グレートボアだろ」
朝、畑の水撒きに家を出てきたら、山の方から長男が歩いてきた。肩に巨大な猪を担いで。
「俺様が走ってる前に出て来やがったから、のしてやったのよ」
片手を顎にあてて満足そうに頷く長男。
この辺は俺のテリトリーだから魔物は出ないはずなんだけど。
どこまで走りに行ったんだ、この体力馬鹿。
「兄さんって俺様キャラだったっけ」
「キャラ変したんだよ。キャルが、負けて出て行くのにえらそーなのはおかしいって言うからな」
俺様キャラも、キャルのリクエストだ。
「キャルか」
末っ子のキャルは、末っ子特典で家族みんなに可愛がられている。
もうあいつが次期当主でいいんじゃないか。
「朝ごはん出来てるよ。食べてきなよ」
「わりーな。お前の飯うまいぞ。嫁に来るか?」
「現状逆だよね」
「俺は弟のヒモかよ。落ちたもんだぜ」
「俺様キャラ抜けてるよ」
「おっと」
キャルには内緒にしとけよ、と俺の肩を抱いて耳元で囁いた後、長男は家に戻っていった。
いいけど、肩だきすぎ。
馴染みすぎ。
なんなんだ。あの余裕は。
あれが長男の余裕か。
持てるものは追い出されても余裕かますんだな。
まあ、誰もいないこの辺境でかっこつけても誰も見ていないわけだけど。
「開拓、手伝ってくれないかな」
ヒモは勘弁して欲しい。
最近の俺は、諦めて一人で開拓をする事にした。
抗争中の侯爵家とは関わり合いになりたくない。
土人形に収穫させて、収穫物を空間収納に納めるかたわら、畑の周りのパトロールをする。
魔物も動物もきやしないが、一応柵を作って鳴子を引っ掛けてあるので、柵の点検がてらブラブラしていたら、ありえない人がいた。
「飯奢ってくれ」
武闘派トップの長男だ。
「兄さん? マジで?」
「なにきょどってんだ。飯くらいあるだろ」
「あるけど」
「俺に出す飯はねえってか」
「いや。あるけど。なんでここにいるの」
次男と抗争中だったんじゃないか。
「負けた。命からがら逃げてきたんだよ」
長男はがっしりと俺の肩に腕を回した。
「しばらくお前のとこでやっかいになるぜ」
強面でニカっと笑われた。
いいけど。ぎりぎり力入れて威圧するのやめて。
「わかったよ。なにもないところだけど、好きなだけいて」
「さすが、話せるな、兄弟。今日は夜通し飲み明かそうぜ」
ほんとに一晩付き合わされた。
いかに次男が卑怯で卑劣で兄さんが勇敢に戦ったかを延々と聞かされ、俺は最後には首振り人形になっていた。
「しっかし、ほんと何もねえな」
「なにそれ」
「グレートボアだろ」
朝、畑の水撒きに家を出てきたら、山の方から長男が歩いてきた。肩に巨大な猪を担いで。
「俺様が走ってる前に出て来やがったから、のしてやったのよ」
片手を顎にあてて満足そうに頷く長男。
この辺は俺のテリトリーだから魔物は出ないはずなんだけど。
どこまで走りに行ったんだ、この体力馬鹿。
「兄さんって俺様キャラだったっけ」
「キャラ変したんだよ。キャルが、負けて出て行くのにえらそーなのはおかしいって言うからな」
俺様キャラも、キャルのリクエストだ。
「キャルか」
末っ子のキャルは、末っ子特典で家族みんなに可愛がられている。
もうあいつが次期当主でいいんじゃないか。
「朝ごはん出来てるよ。食べてきなよ」
「わりーな。お前の飯うまいぞ。嫁に来るか?」
「現状逆だよね」
「俺は弟のヒモかよ。落ちたもんだぜ」
「俺様キャラ抜けてるよ」
「おっと」
キャルには内緒にしとけよ、と俺の肩を抱いて耳元で囁いた後、長男は家に戻っていった。
いいけど、肩だきすぎ。
馴染みすぎ。
なんなんだ。あの余裕は。
あれが長男の余裕か。
持てるものは追い出されても余裕かますんだな。
まあ、誰もいないこの辺境でかっこつけても誰も見ていないわけだけど。
「開拓、手伝ってくれないかな」
ヒモは勘弁して欲しい。
1
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?


チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。
ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。
高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。
そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。
そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。
弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。
※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。
※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。
Hotランキング 1位
ファンタジーランキング 1位
人気ランキング 2位
100000Pt達成!!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる