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 エミリーが会場で一人ぽつんと取り残されていた頃。

 ロブは同じ卒業生の友人たちと歓談している場でとても居心地の悪い思いをしていた。



 遠くでエミリーの様子を見ていた男子生徒が堪えきれずに笑い声をあげる。

「あいつ、エミリー・ビッスルだろ。よく懲りないよな」

「心臓に毛でも生えてるんじゃないか。いくら伯爵令嬢でも、あれはないよな」

「今度はサマンサのところに行くぜ。あいつ公爵令嬢にも喧嘩を売るつもりか」

 サマンサ達の集団は、エミリーの姿が近寄ってくると、うまく男子生徒を盾にして移動していった。

「お前も苦労するな」

 友達に憐れまれ、ロブが真っ赤になる。

 これが嫌だから、エスコートして会場入りしてすぐにエミリーとは分かれたというのに。

 同じ会場にいるだけで、物笑いの種になるエミリーに憎しみの目をむけて、

「そんなことより、」

 と話題を逸らすロブだった。




「皆、失礼ね!」

 近づくだけで人が散り、集団が遠ざかっていくエミリー。

 自業自得だなんてちっとも思わない彼女は、自分を仲間にいれない卒業生たちに怒っていた。

 だがチラリと見た限り、大した獲物はなかったし、そろそろ飽きてきた。

「お姉さまはどうしてるかしら」

 姉のロザリーは、卒業パーティのためのドレスを新調しなかった。

 学院には、ドレスを用意できない生徒のためにレンタルもしている。当然アクセサリーもだ。

 ドレスを新調しなかったという事は、学院のドレスとアクセサリーをレンタルしたのだろう。

 レンタルとはいえ、学院が用意したものだ。貧乏貴族が見栄を張って買うその辺のアクセサリーよりいいものが混ざっているかもしれない。

 センスのいい姉のこと。きっと素敵なドレスとアクセサリーを用意しただろう。

 姉は卒業パーティで相手を見つけないと行かず後家になってしまう。

 行かず後家が家に残るなんてみっともない。エミリーはそんなの許さないし、両親も卒業したらロザリーがなんと言おうと縁談をまとめ上げるつもりでいるため、姉が自由に結婚相手を探せるのは今日が最後だ。

 さぞかし力をいれているに違いないと、エミリーはいそいそと姉の姿を探した。

 姉の婚活を邪魔するつもりはないが、変な男を捕まえないように注意しなきゃ。

 姉のものはエミリーのもの。学院からの貸与品を失くしたら怒られるだろうが、怒られるのは姉で、エミリーには関係ない。



 エミリーは会場中を回ったが、ロザリーの姿は見つからなかった。



 エミリーが歩くだけで、人がいなくなるのを、ロブの男友達はニヤニヤと見ていた。その度に恥ずかしくて、ロブはエミリーを今日連れて来た事を後悔するのだった。





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