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 卒業式の後には卒業パーティがある。

 卒業生は煌びやかな衣装へと衣替えし、今日で別れる学友たちとの最後の時間を楽しんでいた。

 パーティの参加者は卒業生のみだが、婚約者がいる場合は、婚約者の同伴が許されている。

 ロブは婚約者のエミリーをエスコートして、卒業パーティに参加していた。

 本心では嫌だが、婿入りの身。しかもエミリーがパーティへの参加を楽しみにしている。

 連れて行かないとなったら、ビッスル伯爵家の義両親がどんな反応をするか。

 恐ろしくて考えたくもなかった。

 ロザリーが婚約者だったら、こんな苦労をしなくてもいいのに。

 卒業生代表として立派に答辞を詠んだロザリーの姿を思い出す。

 嫌われ者のエミリーと違い、ロザリーが婚約者だったなら、ロブも晴れがましい気持ちで卒業パーティを迎えられた事だろう。

 仕方のない事とは言え、運命の皮肉を呪うロブだった。




 婚約者にエスコートされ卒業パーティに参加したエミリーは、この日のために新調したドレスとアクセサリーに飾られた自分の姿に自信満々だった。

 だが世の中には素敵なものが溢れている。

 卒業パーティともなれば、一つ上のお姉さま達は、さぞや素敵なドレスにアクセサリーをつけてくれるだろう。

 中にはエミリーのお眼鏡に叶うアクセサリーもあるに違いない。

 獲物を物色するために、エミリーは足取りも軽やかに、お茶会で顔見知りになっていた集団に近づいていった。




「卒業おめでとうございます」

「ありがとう」

 下級生に声をかけられて振り向いたローラは顔を引きつらせた。

 振り向くとエミリーがいた。

 主席のロザリー・ビッスルの妹だ。

 ロザリーとは交流があったが、その妹のエミリーは最悪だった。

 ローラは以前お茶会で、エミリーに買ってもらったばかりのアクセサリーを奪われた事がある。

 その時は、親を通して伯爵家に抗議し、返してもらったのだが。以来、エミリーの事は避けていた。

 目をつけられたら、アクセサリーを奪われる。

 ローラの他にも被害者は大勢いて、同年代の少女たちの間でそれは合言葉になっていた。

「嫌だわ。あちらにサマンサ様がいらっしゃる。ご挨拶にいかなくちゃ」

「あら、ほんとう。ごめんなさい、皆様。また後でお会いしましょう」

「私も、ネリー様にご挨拶しなくちゃ。失礼するわね」

 エミリーの姿を見た少女たちは、私も私もと、一人二人と集団の中から抜けていき、後にはエミリーが一人ぽつんと残された。

「なによ、あれ。まぁいいわ。大したものはないみたいだったし」

 エミリーを避けるように消えた少女たちに憤慨しつつも、素早く獲物の鑑定を済ませていたエミリーは次の獲物を探して別の集団へと突撃していく。

 だがエミリーが声をかける度、その集団からは一人抜け二人抜け、エミリーは一人ぽつんと取り残される。

 いっそ見事だった。




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