金目当ての婚約なんて、二度とごめんだわ!

あお

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お金目当ての婚約なんて、二度とごめんだわ。

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「レイリア! お前のような悪女とは婚約破棄をする!!」

 学院のお昼休みに友達と食堂でお昼ご飯を食べていたら、婚約者のラウールがひどく怒ったような顔をして私達のところへ向かってきた。

「悪女、ですか?」

「とぼけるつもりか。お前は取り巻きと一緒に、アリアをいじめていただろう。アリアから話は聞いているぞ」

「レイリア様、ごめんなさい。黙っていようと思ったのですが、優しくして下さったラウール様に聞かれて、お話してしまいました」

 ラウールの後ろから、ピンク色の髪の可愛い少女が顔を出した。
 誰かしら?
 話の流れからすると、彼女がアリアさんみたいだけれど、初めて見る顔だ。

「アリアさん。私達、初対面だと思うのだけど」

 知らない人にいじめられたと、言いがかりをつけられて、しかも婚約者がそれを理由に婚約破棄を叫んでいるなんて、カオスだわ。

「ひどいです!」

「お前はそうやってアリアをいじめていたんだな! 卑怯者め」

「お言葉が過ぎますよ」

 食堂で怒鳴られているので、ご飯を食べていた生徒たちも何事かとこっちを見ている。
 これ、絶対噂されるわね。
 平凡に生きてきたのに、なんの罰ゲームかしら。

 ラウールと婚約したのは、父がカーディナー侯爵に頼み込まれたから。
 カーディナー侯爵は名家だけれど貧乏で、お父様は伯爵だけれど裕福だった。
 婚約と引き換えにカーディナー侯爵家を支援しているんだけど、ラウールは忘れちゃったのかしら。
 婚約破棄となれば、支援はなくなるのに。
 もしかして、私の有責として、支援を続けさせるつもりかしら。
 もしそうだとしたら、誰に喧嘩を売ったのか、たっぷり思い知らせてあげないと、第二第三のラウールがでてきちゃうわね。

「ラウール様。アリアさんの事はおいておいて、婚約破棄は侯爵もご存知のことですか?」

「俺とお前の婚約だ。父は関係ない。俺はお前と婚約破棄をして、アリアと婚約する。アリアはお前と違って、俺が守ってやらないといけないからな」

「ラウール様。嬉しい」

 なんの茶番か知らないけど、ラウール様の独断なのね。
 婚約破棄をして別の女と婚約するなんて、物語の読み過ぎじゃないかしら。
 付き合っていられないわ。

「分かりました。ラウール様が不貞を働いたということなら、こちらから婚約破棄をさせていただく事になると思いますわ。今日の事は父に報告するので、お引き取りください」

「待て! アリアに謝れ」

「お断りします。初めてお会いする方をいじめていたなんて言いがかりで婚約破棄を言われるなんて、思ってもいませんでしたが。そこまでするほどラウール様に嫌われていたなら、今日の事も仕方ありませんわね。

ラウール様。私も貴方が嫌いです」

「なっ」

 面と向かって嫌いって言われるとは思っていなかったのか、ラウール様はショックを受けたように顔色を変えて言葉をつまらせた。
 打たれ弱いのかしら。

「皆さん、お昼休みも終わりますし、戻りましょう」

 お昼休みを台無しにしてしまった事を目で謝り声をかけると、皆んなも労るような視線を返してくれた。

 立ち上がりながら、ラウール様がまだなにか言おうとしたら、侯爵令息のガラスの心をボキボキに折ってやろうと、視線の端で伺う。

 ラウール様は顔を真っ青にして立っているのがやっとというありさまだった。



 夜、お父様に事情を説明すると、お父様は呆気に取られたような顔をした。

「言いがかりも甚だしいな。裏づけ調査をしたら、侯爵家とは縁を切ろう。つまらない男と婚約させてしまい、すまなかった」

「家のためですから、仕方ありませんわ」

「レイリア。お前はいい子すぎるな」

「お転婆をするとお母様にしかられてしまいますから」

「そうか。そうだな」

 父の代わりに領地を治めている母を思い出して、その夜は二人でしんみりとした。




 それから間もなく、婚約破棄は成立した。
 ラウール様有責ということで、伯爵家の支援を打ち切られ、いままでの支援金の返還を求められた侯爵は、金策に走り回っているらしい。

 学院ではラウール様が。

「レイリア! 待て!! もう一度婚約してやる」

 と喚いていたが、全て無視をした。
 お馬鹿さんには付き合っていられない。

 一月もすると、学費が払えなくなったラウール様は、学院を去った。

 アリアさんは、貴族の集まりでも見たことがなかったから平民かと思っていたが、男爵家のご令嬢だったらしい。
 男爵家に正式な抗議と慰謝料の請求をしたら、彼女も学費が払えなくなって学院から去った。

 私は、刃向かったら学院から追放されるという不名誉な噂が流れ、求婚者がいなくなったが、婚約はもうこりごりだったので、大変な中、友達に支えられて学院生活を送っている。

 お父様は、押しに弱いところがあるから、もしかしたらまた、誰かに泣きつかれて婚約の話を持って来るかもしれない。

 その時は、今回のことでお父様を怒っているお母様と手を組んで、お父様をとめる策を練っている。

 金目当ての婚約なんて、二度とごめんだわ。



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