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そして私は、かつて愛した者たちを、最終的にことごとく裏切ってきた

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 金糸雀式蓋然性擾乱ベローゾフ・ジャボチンスキー反応液の結果がどう転んでも戦闘は避けられそうにない。
「どうなの? この子の言いなりになってた?」
 ヴァレンシア姫は切り札を使いこなして一気に形勢を逆転した。
 フランチェスカ・コヨーテ・枕崎。人類圏全軍の総帥がホモサピエンスの天敵『特権者』。
 そんな馬鹿なことがあり得るだろうか。しかし、現にその胸元で物的証拠が青白く光っている。
 別名、金糸雀カナリア液は不規則な周期で赤青交互に変色する化学物質である。その反応が青のままで固定するという現象は確率論的に0に近く、固有の確率変動で事象をねじ曲げる特権者にしかできない。
 彼女、コヨーテは人間でありながらたぐい稀なるパウリ効果(雨男晴女、あるいは触れただけで機械を壊すなど特異体質者)の持ち主ではあることは、彼女の妻として長年寄り添っているシアも承知している。
「貴女が特権者だなんて!」
 ありえない。信じたくない。とりあえず現実逃避したい。この場から一刻も早く離れたい。
 シアは思念波を送って強襲揚陸艦スティックスを呼び寄せる。
 考えるのは修羅場を乗り切ってからだ。
 ヘヴィ・ギアが大口径機関銃を突きつけているが、その弾丸は30ミリもあり、生身の人間から見れば大粒だ。
 シアは術式と翼の飛翔能力でじゅうぶんかわす自信があった。
「お姉さまから逃げられると思っているの?」
 挙動を察したアカネは先手を打った。精密照準で熊谷真帆の頭部を狙う。
 第一弾が自分ではなく、自分の守るべき家族に向けられれば回避能力は大幅に減少するだろう。
 アカネは銃を連射モードにして撃つべき目標をつぎつぎとインプットしていく。
 三島玲奈、慈姑姫、コヨーテ。人質にも容赦しない。まさか、殺すとは思っていないだろう。しかし、捕虜には捕虜以上の価値はなく、殺すには惜しい人材であればとっくに懐柔するか洗脳している。
 ヘヴィ・ギアの操縦者はシアの狼狽まで計算して事を運んだ。
 薬瓶ほどの弾丸が少女の後頭部に音速で迫る。「アキレスとカメのパラドックス」を唱えて遅延させる暇もない。
 ――ところが、ずしんと重たい衝撃を感じた。アカネは思わず銃を取り落としそうになった。
「避けた? 」
 視界に真帆の姿はない。かわりにオーランティアカの姉の方がドヤ顔で立っている。
「馬鹿な!」
 玲奈を照星に納めてガス! ガス! とトリガーを引く。薬莢が排出される前に機体のダメージ数値が増えていく。
「被弾した……だと?」
 アカネはガンカメラをスローモーション再生してみる。玲奈はゆっくりと手を伸ばして弾丸を掴み取っている。
「化け物か? お前は」
「ゼノンの無限遂行のパラドックスだよ。行動結果を確定するためは無限の証人を必要とする! 」
詐欺師ことばあそびしめ!」
 逆上したアカネがバリバリと無差別発砲し、玲奈が握りしめた銃弾をこれ見よがしにばら撒く。
「王城防衛隊、何をしている!」
 取り乱しているのはチキの方だった。そうこうして間に地平線の向こうからフレイアスター艦隊が近づいてきた。玲奈の網膜には子細な敵配置図が浮かび上がる。
「カブキ・フレシェット、一本いっとく?」
「在庫一掃しちゃえ!」
 鎮守府探題のお墨付きを貰って玲奈は嬉しそうにトリガーを引いた。ヴァレンシア王都に複葉可変翼のスマートな影が落ちる。そこから納豆が糸を引くように粘ついた噴煙がのびて、青空を褐色に染めていく。
 ドガッ! ドガッ!
 静止軌道上で、夜の側で、三つある月のそばで、ラグランジュポイントで、殺戮機械が風船のように弾けていく。
 王都の目抜き通りで、港の海軍基地で、対空火器が息をひそめる森林で、天高く銀翼を広げる常時首都防空編隊で、分厚い岩盤に護られた王立弾薬庫で、大地が揺らぎ、風が焦げ、爆炎が怒髪冠を衝く!
「させるかッ!」
 アカネはヘヴィ・ギアを駆って弾頭を追う。
「バーニング・スィーパー!」
 バーニャをめい一杯吹かして、空中でホバリング。大口径銃を構え、リミッター解除。腰だめで全射する。ぱぁっとオレンジ色の火球が半円形に広がっていく。たけり狂うカブキ・フレシェットを飲み込んでしまう
 ――寸前、敵弾が爆散。無数の子爆弾をまき散らしてしまう。
 バギュン! バギュン! バギュン!
 路地裏の装甲車がひっくり返り、自走砲が飛び上がり、戦車が横転、ワンテンポおいて爆散する。パッパッと軍事工場が居並ぶ通りに閃光が連なり、東西南北にあふれていく。バンっと建屋の屋根が吹き飛び、高炉が燃えながら倒壊する。
 超光速航行先進科学文明七つを一瞬で石器時代に退化せしめるという、航空戦艦ライブシップが威力を垣間見せた。
「やめてちょうだい! わたしが何か間違ったことをしていますか?!」
 ヴァレンシア王妃は両手を広げて真摯に叫んだ。
「わたしは不自由な体から解放されました。慈姑王国とヴァンパイアの医学によってです。重い障害で苦しんでいるタッシーマの国民、いや、全宇宙の人々。みんなが病苦からの脱出を待ち望んでいます。これは悪い事でしょうか?」
「うっ……」
 シアが返答に詰まっていると、どこからともなく子供たちの歌声が聞こえてきた。オーランティアカの姉妹も言葉を失っている。
 サンダーソニア号からの偵察映像が艦隊共同交戦システムに中継されてきた。
 王都の街角という街角に子供たちが集っている。彼らは誰一人として五体満足ではなかった。言葉の不自由な者は身振り手振りで自分たちの願望を主張している。そこへヴァンパイアであろうか、黒いマントを羽織り、黒のワンピースから濃紺ブルマーをひらひらと見せながら聖歌隊が合流した。そのどれもが青白く薄汚れて生気に満ち溢れているとは言い難い。
 ひときわ目立つ教会の陰から顔を出したのはウルトラファイトの女子高生だろうか。ヘヴィ・ギアを纏った少女が肩を貸している。彼女の片目は醜く爛れてふさがっていた。
「子供達には、いや、障害者には生きる権利があります。命あることは素晴らしい」
 チキバードが音頭をとる。
 ありふれた旋律の後に始まったのは汚らしい吼え声だった。シアは思わず耳を塞いだ。
 子供達の唱歌というのものは調教次第で凶器に変わる。
 このような人間はどのように育つのだろうかと恐ろしくなった。
 生き生きとした感性がまったく死滅して、奇妙に機械的な叫びと恐ろしい意志の力だけが残っている人間。
「吸血鬼や人型食虫植物や重装兵の身体が素晴らしいとでもいうの?!」
 シアの罵声が騒音を打ち破る。
「ハンディキャップが健康に勝るとおっしゃるの?」
 チキバードが質問に質問で答える。
「不自由は不便だけど不幸じゃない!」
 お決まりの文句で返すしかなかった。綺麗ごとであることは百も承知だ。障害者がバンパイアという怪物の肉体に宿って幸福になれるはずがない。
「メイドサーバントの癖に! 貴女だってメイドサーバントでしょうに!」
 チキバードは人間ではない女を、ハゲで貧乳で不妊症の航空戦艦生体端末を名指し批判した。
「だから何?」
 怒ったシアは鬘を床に叩きつけ、ブラジャーを引き裂いて、ガリガリにやせ細った乳房を見せつけた。
「だから何? そりゃ醜男も泣いて失禁する怪物おばさんよ。どんなに持てないブサメンもドン引くロリババアよ! でもわたしはマイナスをチャンスに変えた!」
 シア・フレイアスター。年収一千億ドル。ハンターギルドの稼ぎ頭だ。
「だから、何?」
 チキバードも黙ってはいない。
「だから、ピンチをチャンスに変えろと? 障害に甘んじず、更に努力しろと? 苦しんでいる人を追い詰めろと?」
 今度はボルテージをあげて言い返す番だ、とばかりにチキが高揚する。
『自分がブスハゲババーだからって、下を叩いて悦に入るとは、とことん見下げた奴め!』

 讃美歌が響く中、シアの頭上にレンブラント光線が降り注いだ。雲間からカーテンのように光が射す現象をいう。
「カミュ!」
 チキは救いの神の到来を喜んだ。
 おおぜいの天使たちが光り輝く輪を漕ぎながら、王都上空に降下してくる。
 彼女らの先頭に一組の夫婦が立っている。カミュとその妻。シアと面識ある人物だ。
「アンジェラさん!」
 シアが親愛の情を込めて呼ぶ。
 返事は破壊光線だった。
 シアが立っていたバルコニーが豆腐を砕くように崩れ落ちた。
「どうしたっていうんだ?」
 玲奈が空中でシアをキャッチ。アストラル・グレイス号に牽引ビームで引き上げる。
「ヴァレンシア陛下。馳せ参じました。到着が遅れまして申し訳けありません」
 かつての恩師はシアを無視したまま王女陛下に拝謁した。

「教育がなってないようですね?」
 チキバードはツンと横を向いてシアを見やる。
 航空戦艦たちは主たるメイドサーバントを収容して惑星を離脱しようとした。そこを天使の大軍団に阻まれた。ウルトラファイト/ヘヴィ・ギアの混成部隊が艦をがっしりと捉えて、王都に戻ってきた。
「わたくしの至らぬばかりに」
 俯くアンジェラをカミュがかばう
「この娘たちの調教は、わたくしにお任せください」
 カミュはコヨーテを引っ張り出すと、命じた。
「以前、私は忠誠心を自己宣伝していた。そして私は、かつて愛した者たちを、最終的にことごとく裏切ってきた。お前も大胆に裏切って見せろ」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どうするのよ、これ?!」
 爆発炎上する王都の廃墟で慈姑小町が叱責した。
 特殊迷彩を駆使して土壇場を切り抜けた慈姑姫だったが、逃げるのが精いっぱいだった。
「わからないわよ! 完全に手づまりよ。詰んでる!」
「ブンゴーは冥界を墜とすわ、テートクは吸血鬼を栽培するわ、愚者王は漁夫の利を狙ってるわ、ロボはお構いなしに攻めてくるわ、頼みの綱の航空戦艦は鹵獲されるわ」
 慈姑小町は容赦ない。
「こうなったら出直すしかないわ」
 慈姑姫は白旗を上げた。
「出直すって、もう猶予はないのよ」
 あきれ顔の小町を姫がなだめる。
「航空戦艦の親子が調教されている間は進展はないわよ。あいつ、父祖樹に一矢報いるためなら何でも利用するつもりよ」
「よくもまぁ悠長な御身分ですわね。姫様」
「悠長な御身分は愚者王よ」
 肩をすくめる妹に慈姑姫は作戦を切り出した。
「愚者王。あいつが人間じゃないって知ってた?」
「わぁ! おねえちゃんがとうとう壊れた!」
 突拍子もない発言に小町は驚いた。
「あながち出鱈目とは思えません…わね」
 バレル大佐がたどたどしい女言葉で付け加える。
「貴女、妖精王国民でもないのに何がわかるっての?」
 慈姑姫は大佐の知ったかぶりを責める。
「いいえ。よく理解しております。未完成フリーソフトだったゲバルト三世を完成させたのは愚者王でしょう。人間業とは思えません」
「一理あるわね。小町のモデリングだって相当な年月を費やしたもの」
 慈姑姫はアバターの開発作業を振り返って、疲れた顔をした。
「私が思うに、愚者王は自我を持つソフトウェア、もしくはそれを運用する技術者集団かと」
「飛躍しすぎだと思うわ」
 バレルの軽率さを小町がいましめる。
「突飛な発想だけでなく、論拠が欲しいわね。マンパワーを費やせばアバターの開発は出来るから。それに人工知能が統治者になれるかしら?」
「ありますとも」
 大佐は慈姑姫に胸を張って見せた。

 宇宙船レッドマーズ号は量子フォトロミック跳躍によって惑星ヴァレンシアの包囲網を突破したのち、惑星露の都に帰還した。
「愚者王が心の計算理論に基づいて活動している確たる証拠があります」
 バレルは愚者王がウルトラファイトに魔王を送り込んだ際のアクセスログを請求した。慈姑姫は悪意ある転用防止の透かしウォーターマークをしっかり施したあと、提出した。
「このネットワークノードに注目して下さい。いくつもの類似プロセスが動いています」
 バレル大佐は挙動不審なプログラムが集中している個所を指した。
「サイバーワームに場当たり的攻撃を並列処理させるなんて、人間でもできることよ」
 慈姑姫が造作もないことだと切り捨てた。
「では、こちらの個所を」
 バレルはネットワーク遷移図を時系列的に整列した。類似プロセスの一つ一つに専用プロトコルが設けられている。各プロセスはネットワーク攻撃用のチャンネルとは別に処理結果を逐次送信していた。作業用とは別にプログラム収納用と用途不明の記憶空間が確保されており、どうやら自己改革用に使われているようだった。
 それも各プロセスが一意の設計思想に基づいてプログラム修正を行っているのではなく、外部から指導されて仕様変更をおこなっている。
「プロセスごとに専属のプログラマーがいるってこと? しかも、マイクロ秒単位で仕様変更? 納期が守れないじゃない!」
「人間にはね」
 小町が慈姑姫の疑問に答えた。
「そういうことです。千分の一秒刻みの現場を監督するなんて機械にしかできません」
「そうね。大佐が言う通り強い人工知能なら可能よ」
 小町が断言する。
「あ~あたしより天才がいるなんて~」
 慈姑姫はヘナヘナとしおれた。
「よくもまあ国民が黙っていませんね」
 バレル大佐が自分の事のように怒る。彼は人外の支配に強烈な憤りを感じる人物だ。
「民衆の前に出る愚者王は生身の身体じゃないわ」
 気になったのだろう。小町は演説や議会答弁など愚者王にまつわるあらゆる動画をつぶさに検討している。
「やっぱりね。IAMCP製よ。シニフィエが共通している」
 慈姑姫が文化パターンを特定してみせた。
「――で、やっぱり破壊こわすの?」
 夜も更けた露の都の町工場。慈姑姫はブルマ姿で熱心に槌を振るっている。背中は汗びっしょりでクルーネックの体操服にレオタードが張り付き、スクール水着の肩ひもが透けて見える。
「綺麗さっぱり、ぶっ壊すに決まってるじゃん。人間に壊せない工業品なんて無いわ」
 トンテンカンと小気味よく鋲を打つ慈姑姫。
 キャットウォークの上では大佐が仁王立ちして先端部に精密加工を施している。
「こんなもので機械指導者をねぇ……あ、ハミれおたーどしてる♪」
 作業に立ち会う小町の位置からバレルのスカートが丸見えだ。紺色の大輪に白く開いた花弁。ふっくらとヒップを覆うふりふりのアンダースコート。その裾から濃紺とピンクの生地がのぞいている。
「うひゃあ☆ どこ見てるんですかぁ~※ ひゃん★」
 バレルが絶対領域を全開しながら落ちた場所にはフカフカの布団が積み重ねてある。
「本当にこんなもので愚者王を壊せるの?」
 ポンポンとスカートが丸見えになるのも気にせず跳ねて見せる。
「大佐、かわいい♪」
 小町が思わず鼻の下を長くする。
「その調子。世界一かわいい方程式でヴァンパイアどもをコテンパンにするわよ」
 慈姑姫が目を落とす。机の上には非線形方程式が微笑んでいた。

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