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大かつやく!ミスリルゴーレムVSはたらく女魔王さま。あんど、ぶらじゃー。

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 ■ 萌えるシャーマンの森

 世界が真っ赤に燃えている。戦略爆撃ワイバーンの搭載量は半端ではなく、たった数機の編隊が一時間近くも上空を旋回する間、焼夷弾が途切れることはなかった。

「木を隠すなら森の中、って言ったの誰だっけ?」

 パチパチと爆ぜる猛火に照らされて、アバター小町が罵倒する。ウルトラファイトの三名というか三本は植物生命体という特性を活かして、シャーマン将軍の森に紛れ込んだ。手足を枝葉のように伸ばして、衣服もふくめて保護色で擬態してみた。

 だが、安直な考えは見事に裏切られた。妖精王国は森ごと焼き払うという暴挙に出る。
 遼平の視界に赤黒いウインドウが開いた。

【ステータス:異常乾燥<注意>:体内水分↓40%】 活動限界まであと30秒。

 ウルトラファイトの身体が悲鳴を上げ始めた。

「駄目だ。ここから出よう!」

 小町が制止するが、遼平は聞く耳を持たない。メラメラと炎を茂らせた巨木が魔王の頭上に倒れかかる。
 遼平の12ミリショルダーバルカン砲が唸り、無数の木っ端が散る。

「敵の思う壺よ!――見つかったわ!」

 警告する小町の背後からオレンジ色に煌めく甲冑がワラワラと現れた。それぞれがバトルアックスを携えている。

「何なんだよ、こいつら。ロボットか? 妖精王国はロボットに苛まれているじゃねえのかよ? もう、わけわかんねーよ」

 敵は業火に身じろぎもせず、じりじりとにじり寄る。

「ミスリルゴーレムよ。地の属性を持ってる。耐火力はチート級」

「詳細はいい。こいつはロボなのか? 弱点は?」

 ありったけの残弾をぶっ放しながら遼平が尋ねる。ゴーレムの剛体にバルカン砲は豆鉄砲未満の威力しか無いらしく、怯む様子もない。

「こいつらは魔法金属で動く傀儡くぐつよ。物理攻撃をことごとく無効化するの!」

 小町も背面のバズーカ砲を降ろして応戦する。
木偶でく人形かよ! ――待てよ。じゃ、操り主が近くにいるのか?」

「ええ、術者はかなりの統一を要するから、その護衛と防御専門の結界師、計三人が潜んでいるはずよ」

 森林火災と砲撃が重なり合って、周囲の状況把握は困難だ。遼平は視点を上下左右に泳がせて、施術者を探した。

「【光学迷彩】の呪文スペルを使ってるから、無駄よ」

 小町が防戦に集中するよう促す。

 と、M字開脚して大いびきをかいているゲバルトが目に入った。

「おい、こんな時に寝込んでるんじゃねーよ! 魔王、仕事しろ!」

 遼平も負けじとスカートをまくり、濃紺の絶対領域を全開する。

「――! 痛いでございますよ。いくら御転婆さんでも蹴りはないでしょう」

「レベルアップして魔力点も増えただろうが! さっさとレベル2マジックを使いやがれ」
「人使いの荒い姫様でございますね。つか、女子のお腹にキックを見舞うとは……」
「ゴタク並べてないで、スキルはよ!」
「おげぇ!」

 遼平のグーパンが魔王のみぞおちに決まる。

「えーと、なになに? レベル2マジック【麻酔】???」
「勝手に人のステータスを覗かないでくださいませでございますよ」

 魔王のウインドウを覗き込む小町。

「何がレベル2だよ。あいかわらず、使えねー魔王だな」
「あなた様も同レベルですよ。お互いさまでございますですよ」

 口答えのスキルを得た魔王が遼平に反論する。
「何だかんだ言っている間に囲まれてしまったわ」

 魔王と遼平が口論をしている間、小町は防戦一途だった。

「おい、魔王。レベル2マジックを準備しろ!」
「しょ、正気ですか? ゴーレムに【麻酔】は効き……」
「いいから、さっさとやれ」

 遼平は敵勢の背後に迫る火災と自分達の距離を測った。彼はゲバルトを小馬鹿にしつつも、しっかりとステータスを読み込んでいた。

 レベル2マジック【麻酔】は、どこぞから笑気ガスを召喚するゴリ押しスキルだ。二十七世紀人である遼平には既知チートがあった。ガスの成分は一酸化二窒素だ。高熱に晒されると純度の高い酸素に分解する。

 このピンチを逃れる切り札としては上等だ。

 魔王が呪文を叫ぶ。同時に、遼平はゲバルトの柔らかい腰に手を回し、組み伏せる。

「はぁん☆彡 姫様、何をなさますぅ」
 小ぶりなお尻を見せつつ、ゴーレムの足元へ滑り込む魔王。
 タイミングを見計らって、遼平が機銃を撃ち込む。

「魔王、【浮遊】だ。全力でぶちかませ!」
「御意!」

 その後に生じた空白と耳鳴り。
 ゲバルト三世は何が起きたのか理解できぬまま、深い闇に落ちていった。

 ……
 ……………

「ゲバちゃん、大丈夫? ゲバちゃん!」

 激しく揺さぶられて魔王は意識を取り戻した。うっすらと目をあけると遼平が心配そうにのぞき込んでいる。

「気づいたのね! よかったぁ!」

「む、むぎゅ~。窒息するでございますよ」

 小町に思いっきり抱きしめられる魔王。

「あなた! こんどゲバちゃんをこんな目に合わせたら、ブッ殺すからネっ!」
 激しく叱責されて遼平は言いかえした。

「ひでぇな。俺の閃きで切り抜けたんだぞ。あの状況では選択肢が無かった。ちったぁ感謝しろ」

「感謝するのはあなたの方でしょ。ねー、ゲバちゃん?」
 確かにゲバルトの魔法が無ければ、ゴーレムどもを吹き飛ばし、その余波に乗って空中遊泳で逃げるという曲芸は出来なかった

「それにして、ここはどこなんだよ」

 遼平はいちゃつく二人から目をそむけ、周囲を観察した。
 深い谷の斜面。木々が鬱蒼と生い茂り、太陽を覆い隠している。渓流を挟んで石造りの門が見える。そのドアノブに白い布きれがひっかかっている。

「ぶ、ぶらじゃーじゃない?」

 小町が顔を赤らめた。
「なんでそんなモンがここにあるんだよ?」
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