85 / 156
多重虹から来る破砕帯(バーニングソウル・レインボーシーカー)②
しおりを挟む
■ ゴビ砂漠上空 三万メートル
AN-255ムリヤ 唯一無二の超大型巨人輸送機は神―地球外来知性体を、そう定義づければの話だが――の申命を一手に担っていた。御来光のごときオーマイゴッド粒子が降り注ぐなか、期待の星が燦々と携挙されていく。
こうしてみると弓のように広がる赤がね色の大地は、煉獄庭園の暗喩だ。潜熱が揺るがす空気にあぶられて、下弦の月が身震いしている。その遥か高み。見上げると首が痛くなるほどの位置にビーンスタークの破片が軌道を描いている。
それは、ボロボロと豆腐が崩れるように形を失いつつある。
輸送機内は前代未聞の儀式に蜂の巣をつついたような騒ぎだ。貨物室内居住区画の浴室に使用中の表示が灯った。
「中佐。なにやってんですか? 任務中に」
ハーベルトが慌てて扉を開くと簡易シャワールームから勢いよく白煙が噴出した。
「ひゃん☆」
転倒しかけて反射的に翼を開く。降り積もるスカートの残骸に足を取られながら部屋に転がり込んだ。
ざあっと生ぬるい液体がハーベルトのブラに掛かった。たいしてない胸を隠しつつ、振り仰ぐと、ハヴァロフスクの蒸気魔がアンダーショーツ姿で仁王立ちしていた。中佐の指輪が歯車をフル回転させている。
「見たまえ! 蒸気計算尺だよ」
彼女はホレホレと腕をふりあげる。鍛え上げたロシア美人の肉体は色気を通り過ぎて精悍ですらある。
「あなたはいちいち脱ぐんですか?!」
ハーベルトがバスローブを差し出すと、中佐はそれをブンと振り払った。
「そうだ。脱ぐのだ。認めたまい!」
「はいはい。ごめーれーのままに」
ハーベルトは諦めきった表情でローブを拾い上げて、袖を通した。操縦席では望萌が赤青橙の原色に染まっている。計器類は複雑なグラフや数値を目まぐるしく表示している・
ソーニャ・ファイスト中佐が計算尺の数値を読み上げ、荒井吹雪が運動方程式を組み立てていく。
「ふーはっは! 完璧だよ。きみ」
首からハンドタオルをかけた中佐が小走りに入ってきた。
「中佐。胸ぐらい隠してください。いくら女所帯の現場って……」
ハーベルトがカップのついた布切れを投げる。
「おお、乳ばんど、乳ばんど」
ひょいと上体でキャッチするソーニャ。
「ぶらぢゃあですっ」
下品なやりとりを聴覚から追い出しつつ、望萌は数値を打鍵した。
「邂逅予定空域。三次元座標算出完了。確定」
「諒解」
女性機長が操縦桿を引くと、床が大きく傾斜した。
「うわったった。これは一大事。乳バンドが転がる」
「だから、ぶらですってば」
間抜けな痴女トークをBGMをにしてコウノトリ(ムリヤ)が舞う。
プログレスD-18Tエンジンの吹きあがりは上々だ。196キロニュートンの出力を振り絞って上昇限界ギリギリまで迫る。
目と鼻の先に藤野祥子を象った思念体がある。隕石は自身を支えるエネルギーを振り絞って、最後の心理施療に取り掛かった。
「うるさい。ボクにゲレルトヤーなどといった妹はいない」
拒絶反応を示す祥子を隕石は粘り強く諭した。
「貴女がチャンスンを撃った動機は母性の裏返しです。大切な誰かを守りたいという衝動が攻撃を企図させるのです」
「母性が攻撃本能だって? そんなの嘘っぱちだ」
二つの意識が大気とせめぎあい、激しく燃え盛る。隕石が自我を維持できる時間は幾ばくも無い。納豆子は最後の賭けに出た。
ムリヤから湧き上がる力線が鳥かごのように火球を包み込む。ハーベルトは舷窓に藤野祥子のシルエットを見出した。いや、もう二人いる。面長のアジア人女性は納豆子だろう。赤ん坊が這い這いしている。それが立ち上がり、みるみるうちにスラリとした少女体形にかわる。ばさりと髪が腰まで伸びた。
「母体の心拍計が落ちています。酸素吸入量20を切りました。閣下」
ハーベルトは一気に現実へと引き戻された。
看護婦達が慌てて酸素テントを準備する。
「まさか、こんなところで異世界逗留者適合手術をするとはね。やってちょうだい」
ハーベルトは重苦しい吐息をついた。
納豆子は消え入る前に祥子を思いっ切り抱擁した。「貴女はこうやってお母さんに抱きしめてもらったことはないんでしょう」
「どうしてわかるの? ボクは生まれた時から邪魔者扱いだった。乳児院の前で拾われて、今のうちに引き取られたんだ」
「貴女の旧姓は武鳥 そうなのでしょう?」
「それはボクと限られた親族しか知らないはずだよ。おばさん」
「だったら、わたしは生きとし生ける者の生みの親。わたしが抱きしめてあげる」
「ボクは……」
「あなたはそのままでいいのよ。時に男でもある。ならば、大切な物を守るために戦いなさい。敵対する者あれば女子供であろうと容赦なく殺せ。あなたの身近な人も言ってたよね」
「ハーベルト?!」
祥子が懐かしい名前を思い出した。すると、納豆子は静かにかぶりを振った。
「おねーちゃん♪」
小さなゲレルトヤーが祥子に寄り添う。その姿もぐんぐんと成長する。幼児独特の大きな瞳がみるみるうちに細っていく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ムリヤのだだっ広い貨物室に豊穣角機械が医療機器や培養装置を準備した。
助産師とハーベルトが機械の前で激しく口論している。
「当たり前でしょう。ゲレルトヤーは帝王切開に耐えられる身体じゃないわ。イリュージョン生命体として母子ともに再構成する」
「そんな、残酷な。生まれる前に殺すなんて」
「再構成よ。間違えないで。それと中佐。バリカン持ってきて」
ハーベルトは医師をはねつけ、代わりに異世界逗留者を招集した。
「220Aのコンセントはあるのかね?」
蒸気魔が例の指輪を回し始めた。
「お湯? 熱湯なんかいらないわ。それより留萌。旅人の外套を二セット用意してちょうだい」
「乳児用の型紙データなんかありませんよ」
「6号サイズでいいわ。女児異世界逗留者の外套があったでしょう」
「ヤボ~ル・ハ~トレ~」
望萌はセーラー服の包みを抱えて医務室に走った。
21世紀において分子生物学や生命化学が飛躍的に向上したが、未だに生命の点火に至っていない。地球外来有機物による藤野祥子の再生はのちのちコード2047世界に衝撃を与えることになった。
地球外来知性によるホモ・サピエンスの促成栽培、いや、きっぱりと言おう。これは製造だ。それが具体的にどういう影響を及ぼすかはソースコードにして、早くて三百年後の西暦2347年、おそくとも四万年後にあらわれる、と国立研究所は予測した。
■ バヤンノール空港
ターミナルビルの吹き抜けから枢軸特急のホームが見える。ハヴァロフスクの蒸気魔はそそくさと根城に帰った。ムリヤが豪快なスチームを残して滑走する。
ALX427は新たな乗務員を迎えることになった。ステイツ初の異世界逗留者が当面は人材育成に従事することになる。
スレン・オチルバトが浮かぬ顔をしているのも無理はない。産着にくるまれた我が子ではなく、立派に成長した少女と対面することになったのだ。出産の苦しみも育児の楽しみも奪われた。なんて事をしてくれたのだ、とハーベルトを貼り倒した。
「おかあさん!」
ゲレルトヤーがポニーテールを揺らして止めに入る。歳の差は十歳もなく、母親と呼ばれるは戸惑いを隠せない。
「命の恩人になんてことをするの? あのままでは二人とも命を吸い尽くされていたわ」
長女が深々と非礼を詫びている間、スレンは憎々しげに張本人を睨んでいる。
当の本人はTWX1369の席で身を低くしている。
「やっぱり、ボクは……」
俯いた祥子の肩に柔らかい手が触れた。
「おねえちゃん」
キョトンと振り向いた祥子にゲレルトヤーがほほ笑みを返す。
その後ろからバタバタと靴音が聞こえる。
「ゲレルトヤー!」
母親が駆け込み乗車しようとしたところで駅員に引き戻された。
「トワイライトエクリプス、発車します。ご注意ください」
望萌のアナウンスがホームに響き渡り、ハウゼルが閉扉する。
「ちょっと! あなたたち!!」
スレンの抗議は汽笛にかき消された。
ぐらりと列車が揺れ、次の瞬間にはターミナルビルが小さくなっていた。
「ゲレルトヤーはわたしが訓練するわ。ようこそ、枢軸特急トワイライトエクリプスへ♪」
ハーベルトはさも当たり前のようにゲレルトヤーを着席させる。
「どういう風の吹き回しだよ。ハーベルト?!」
目を白黒させる祥子にハーベルトは事情を説明した。
「スレンは母親失格だわ。独占欲が強すぎるもの。これはゲレルトヤーのためよ」
祥子が何か言いかけたが、ゲレルトヤーが隣席から話しかけてきたので、議論にならなかった
「次の停車駅はカルチェラタン地下駅。カルチェラタン地下駅。到着予定時刻は16時27分……」
誰もいないはずの貨物車からなまめかしい息遣いが聞こえる。
「ハーベルト。人攫い。生かして返さない……」
荒々しい呼吸にもう一人の声が重なった。
「その意気込みよ。あなたなら殺れる」
ズシリと重い量子アサルトライフル。
「ありがとう。マドレーヌ」
暗闇の中で周産期の女が目を光らせた。
AN-255ムリヤ 唯一無二の超大型巨人輸送機は神―地球外来知性体を、そう定義づければの話だが――の申命を一手に担っていた。御来光のごときオーマイゴッド粒子が降り注ぐなか、期待の星が燦々と携挙されていく。
こうしてみると弓のように広がる赤がね色の大地は、煉獄庭園の暗喩だ。潜熱が揺るがす空気にあぶられて、下弦の月が身震いしている。その遥か高み。見上げると首が痛くなるほどの位置にビーンスタークの破片が軌道を描いている。
それは、ボロボロと豆腐が崩れるように形を失いつつある。
輸送機内は前代未聞の儀式に蜂の巣をつついたような騒ぎだ。貨物室内居住区画の浴室に使用中の表示が灯った。
「中佐。なにやってんですか? 任務中に」
ハーベルトが慌てて扉を開くと簡易シャワールームから勢いよく白煙が噴出した。
「ひゃん☆」
転倒しかけて反射的に翼を開く。降り積もるスカートの残骸に足を取られながら部屋に転がり込んだ。
ざあっと生ぬるい液体がハーベルトのブラに掛かった。たいしてない胸を隠しつつ、振り仰ぐと、ハヴァロフスクの蒸気魔がアンダーショーツ姿で仁王立ちしていた。中佐の指輪が歯車をフル回転させている。
「見たまえ! 蒸気計算尺だよ」
彼女はホレホレと腕をふりあげる。鍛え上げたロシア美人の肉体は色気を通り過ぎて精悍ですらある。
「あなたはいちいち脱ぐんですか?!」
ハーベルトがバスローブを差し出すと、中佐はそれをブンと振り払った。
「そうだ。脱ぐのだ。認めたまい!」
「はいはい。ごめーれーのままに」
ハーベルトは諦めきった表情でローブを拾い上げて、袖を通した。操縦席では望萌が赤青橙の原色に染まっている。計器類は複雑なグラフや数値を目まぐるしく表示している・
ソーニャ・ファイスト中佐が計算尺の数値を読み上げ、荒井吹雪が運動方程式を組み立てていく。
「ふーはっは! 完璧だよ。きみ」
首からハンドタオルをかけた中佐が小走りに入ってきた。
「中佐。胸ぐらい隠してください。いくら女所帯の現場って……」
ハーベルトがカップのついた布切れを投げる。
「おお、乳ばんど、乳ばんど」
ひょいと上体でキャッチするソーニャ。
「ぶらぢゃあですっ」
下品なやりとりを聴覚から追い出しつつ、望萌は数値を打鍵した。
「邂逅予定空域。三次元座標算出完了。確定」
「諒解」
女性機長が操縦桿を引くと、床が大きく傾斜した。
「うわったった。これは一大事。乳バンドが転がる」
「だから、ぶらですってば」
間抜けな痴女トークをBGMをにしてコウノトリ(ムリヤ)が舞う。
プログレスD-18Tエンジンの吹きあがりは上々だ。196キロニュートンの出力を振り絞って上昇限界ギリギリまで迫る。
目と鼻の先に藤野祥子を象った思念体がある。隕石は自身を支えるエネルギーを振り絞って、最後の心理施療に取り掛かった。
「うるさい。ボクにゲレルトヤーなどといった妹はいない」
拒絶反応を示す祥子を隕石は粘り強く諭した。
「貴女がチャンスンを撃った動機は母性の裏返しです。大切な誰かを守りたいという衝動が攻撃を企図させるのです」
「母性が攻撃本能だって? そんなの嘘っぱちだ」
二つの意識が大気とせめぎあい、激しく燃え盛る。隕石が自我を維持できる時間は幾ばくも無い。納豆子は最後の賭けに出た。
ムリヤから湧き上がる力線が鳥かごのように火球を包み込む。ハーベルトは舷窓に藤野祥子のシルエットを見出した。いや、もう二人いる。面長のアジア人女性は納豆子だろう。赤ん坊が這い這いしている。それが立ち上がり、みるみるうちにスラリとした少女体形にかわる。ばさりと髪が腰まで伸びた。
「母体の心拍計が落ちています。酸素吸入量20を切りました。閣下」
ハーベルトは一気に現実へと引き戻された。
看護婦達が慌てて酸素テントを準備する。
「まさか、こんなところで異世界逗留者適合手術をするとはね。やってちょうだい」
ハーベルトは重苦しい吐息をついた。
納豆子は消え入る前に祥子を思いっ切り抱擁した。「貴女はこうやってお母さんに抱きしめてもらったことはないんでしょう」
「どうしてわかるの? ボクは生まれた時から邪魔者扱いだった。乳児院の前で拾われて、今のうちに引き取られたんだ」
「貴女の旧姓は武鳥 そうなのでしょう?」
「それはボクと限られた親族しか知らないはずだよ。おばさん」
「だったら、わたしは生きとし生ける者の生みの親。わたしが抱きしめてあげる」
「ボクは……」
「あなたはそのままでいいのよ。時に男でもある。ならば、大切な物を守るために戦いなさい。敵対する者あれば女子供であろうと容赦なく殺せ。あなたの身近な人も言ってたよね」
「ハーベルト?!」
祥子が懐かしい名前を思い出した。すると、納豆子は静かにかぶりを振った。
「おねーちゃん♪」
小さなゲレルトヤーが祥子に寄り添う。その姿もぐんぐんと成長する。幼児独特の大きな瞳がみるみるうちに細っていく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ムリヤのだだっ広い貨物室に豊穣角機械が医療機器や培養装置を準備した。
助産師とハーベルトが機械の前で激しく口論している。
「当たり前でしょう。ゲレルトヤーは帝王切開に耐えられる身体じゃないわ。イリュージョン生命体として母子ともに再構成する」
「そんな、残酷な。生まれる前に殺すなんて」
「再構成よ。間違えないで。それと中佐。バリカン持ってきて」
ハーベルトは医師をはねつけ、代わりに異世界逗留者を招集した。
「220Aのコンセントはあるのかね?」
蒸気魔が例の指輪を回し始めた。
「お湯? 熱湯なんかいらないわ。それより留萌。旅人の外套を二セット用意してちょうだい」
「乳児用の型紙データなんかありませんよ」
「6号サイズでいいわ。女児異世界逗留者の外套があったでしょう」
「ヤボ~ル・ハ~トレ~」
望萌はセーラー服の包みを抱えて医務室に走った。
21世紀において分子生物学や生命化学が飛躍的に向上したが、未だに生命の点火に至っていない。地球外来有機物による藤野祥子の再生はのちのちコード2047世界に衝撃を与えることになった。
地球外来知性によるホモ・サピエンスの促成栽培、いや、きっぱりと言おう。これは製造だ。それが具体的にどういう影響を及ぼすかはソースコードにして、早くて三百年後の西暦2347年、おそくとも四万年後にあらわれる、と国立研究所は予測した。
■ バヤンノール空港
ターミナルビルの吹き抜けから枢軸特急のホームが見える。ハヴァロフスクの蒸気魔はそそくさと根城に帰った。ムリヤが豪快なスチームを残して滑走する。
ALX427は新たな乗務員を迎えることになった。ステイツ初の異世界逗留者が当面は人材育成に従事することになる。
スレン・オチルバトが浮かぬ顔をしているのも無理はない。産着にくるまれた我が子ではなく、立派に成長した少女と対面することになったのだ。出産の苦しみも育児の楽しみも奪われた。なんて事をしてくれたのだ、とハーベルトを貼り倒した。
「おかあさん!」
ゲレルトヤーがポニーテールを揺らして止めに入る。歳の差は十歳もなく、母親と呼ばれるは戸惑いを隠せない。
「命の恩人になんてことをするの? あのままでは二人とも命を吸い尽くされていたわ」
長女が深々と非礼を詫びている間、スレンは憎々しげに張本人を睨んでいる。
当の本人はTWX1369の席で身を低くしている。
「やっぱり、ボクは……」
俯いた祥子の肩に柔らかい手が触れた。
「おねえちゃん」
キョトンと振り向いた祥子にゲレルトヤーがほほ笑みを返す。
その後ろからバタバタと靴音が聞こえる。
「ゲレルトヤー!」
母親が駆け込み乗車しようとしたところで駅員に引き戻された。
「トワイライトエクリプス、発車します。ご注意ください」
望萌のアナウンスがホームに響き渡り、ハウゼルが閉扉する。
「ちょっと! あなたたち!!」
スレンの抗議は汽笛にかき消された。
ぐらりと列車が揺れ、次の瞬間にはターミナルビルが小さくなっていた。
「ゲレルトヤーはわたしが訓練するわ。ようこそ、枢軸特急トワイライトエクリプスへ♪」
ハーベルトはさも当たり前のようにゲレルトヤーを着席させる。
「どういう風の吹き回しだよ。ハーベルト?!」
目を白黒させる祥子にハーベルトは事情を説明した。
「スレンは母親失格だわ。独占欲が強すぎるもの。これはゲレルトヤーのためよ」
祥子が何か言いかけたが、ゲレルトヤーが隣席から話しかけてきたので、議論にならなかった
「次の停車駅はカルチェラタン地下駅。カルチェラタン地下駅。到着予定時刻は16時27分……」
誰もいないはずの貨物車からなまめかしい息遣いが聞こえる。
「ハーベルト。人攫い。生かして返さない……」
荒々しい呼吸にもう一人の声が重なった。
「その意気込みよ。あなたなら殺れる」
ズシリと重い量子アサルトライフル。
「ありがとう。マドレーヌ」
暗闇の中で周産期の女が目を光らせた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
そして、燻む。美しく。
頭痛
ホラー
明朗快活で学校の人気者・詩朗(シロ)と、何もかもが正反対の句路(クロ)。
二人は、無二の親友だった。
高校最後の夏休みに起こったとある事件によって、二人の運命が、二人の日常が、無情にも崩れていく。
※誠に勝手ながら、本作は、縦読み環境にてお楽しみ頂ければ幸いです。
── ※御注意※──
本作は、流行りのテーマ(異世界、チート能力、特殊能力、魔法、本格謎解き、呪い、祟り、化物、妖怪、デスゲーム、サイコパス、BL、ラブコメ、過度の天災等等)が一切含まれておりません。
ごくごく普通の高校生達に起こる、不可思議な現象と身近に潜んだ殺人事件程度です。
刺激を求められる方は、御遠慮頂いた方が宜しいかと思いますので、どうぞ悪しからずご了承下さいませ。
【意味怖】意味が解ると怖い話【いみこわ】
灰色猫
ホラー
意味が解ると怖い話の短編集です!
1話完結、解説付きになります☆
ちょっとしたスリル・3分間の頭の体操
気分のリラックスにいかがでしょうか。
皆様からの応援・コメント
皆様からのフォロー
皆様のおかげでモチベーションが保てております。
いつも本当にありがとうございます!
※小説家になろう様
※アルファポリス様
※カクヨム様
※ノベルアッププラス様
にて更新しておりますが、内容は変わりません。
【死に文字】42文字の怖い話 【ゆる怖】
も連載始めました。ゆるーくささっと読めて意外と面白い、ゆる怖作品です。
ニコ動、YouTubeで試験的に動画を作ってみました。見てやってもいいよ、と言う方は
「灰色猫 意味怖」
を動画サイト内でご検索頂ければ出てきます。
怪異探偵 井ノ原圭
村井 彰
ホラー
この廃ペンションには、霊が出る。
事の始まりは二年前。オーナー夫妻が不審な死を遂げたその日から、このペンションではそんな噂がまことしやかに囁かれるようになった。
そして先日、ついにこの場所で男が死んだ。自らの喉を切り裂いて、"女"の声で叫び声をあげながら―
*
大学生の早坂奏太は、人には言えないアルバイトをしている。
時に廃墟、時に事故物件、様々な場所に赴き、人ならざる怪異を祓う霊媒師……の、助手だ。
怪異を以て怪異を祓う、奇妙な霊媒師・井ノ原圭と、その助手・早坂奏太。
これはそんな二人が出会う、普通から少し外れた世界の話だ。
刻の番人 ~あなたはもうすぐ死にます、準備はよろしいですか?~
みつばちブン太
ホラー
みなさんこんばんは、私の名前はトキノと申します、以後お見知り置きを。
私の仕事を簡単に説明させていただきます。
私の仕事は、この世の中に未練を残し過去の清算を行えないまま寿命を終えようとしている人
そんな可哀想な人の時間を本来死ぬ時間から必要な分だけ巻き戻して差し上げる、ただそれだけです。
選ばれた人は過去に戻ったとしても決して死から逃れることは出来ません
刻の運命に逆らうことは決して出来ないのです。
選ばれた人にできるのは過去の清算をするだけ、ただそれだけです。
そして、あちらの世界へお送りするまでが私の仕事となります。
あら、あちらに見えるのは………、私お仕事に行って参ります、少々お待ちくださいね。
呟怖千夜一夜
だんぞう
ホラー
twitterにてハッシュタグ「#呟怖」をつけて投稿している136文字怪談作品をまとめたものになります。
お題の大半はいただいたお題です。
霊や妖怪、名前もないナニカ、田舎の因習、人怖から意味怖、時には奇譚、猟奇、艶のある話からカニバリズム、クトゥルフまで、話ごとにテイストが異なります。ごくたまに実話も混ざることも。
毎晩、零時に一話ずつお届けする予定です。
他の場所(NOVEL DAYS)でまとめていた呟怖が千話を超えたので「千夜一夜」というタイトルを付けましたが、こちらへはお題画像の転載を基本行わない予定なので、お題画像がないと楽しめないものは省いたり、また、お題画像の使用許可が降りなかったものを画像なしで載せたりなど、差分は多々あります……というか、なんだかんだでほぼリライトしていますね。中には全くの新作も混ざっています。
念のためにR15をつけておきます。
ノスタルジック;メトリー ①帯付く村
臂りき
ホラー
高校生最後の冬、彼女に思いの丈を打ち明けるはずだった僕は死んだ。
約束の場所に向かう途中に遭遇した未知の存在との接触後、肉体を失った僕は彼女の守護に徹することに決めた。
しかし、元より内に熱いものを秘めた彼女を見守ることは容易ではなかった。
彼女の趣味である小旅行もとい「廃墟・心霊・パワスポ巡り」には何故かいつも不可思議な現象が付きまとう。
やがてそのどれもが僕の「死」と無関係ではないことを二人は知ることになる。
【探索メイン、稀に戦闘有り】
【やるべきことは二つ。 何より彼女のことを見守ること。あわよくば失った肉体を取り戻すこと】
※作中に登場する人物、地名は実在するものとほとんど関係ありません。安心してお読みください。
魔の巣食う校舎で私は笑う
弥生菊美
ホラー
東京の都心にある大正時代創立の帝東京医師大学、その大学には実しやかにささやかれている噂があった。20年に一度、人が死ぬ。そして、校舎の地下には遺体が埋まっていると言う噂があった。ポルターガイストの噂が絶えない大学で、刃物の刺さった血まみれの医師が発見された。他殺か自殺か、その事件に連なるように過去に失踪した女医の白骨化遺体が発見される。大学所属研究員の桜井はストレッチャーで運ばれていく血まみれの医師を目撃してしまう……。大学の噂に色めき立つオカルト研の学生に桜井は振り回されながらも事件の真相を知ることになる。今再び、錆びついていた歯車が動き出す。
※ライトなミステリーホラーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる