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エトワール・ノワールの燭光 ⑥
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■ 寂寥の漠野(承前)
次から次へと投げ込まれるコンテナ。曇天が白熱電球のように照らされる。ハーベルトの宝物は対空砲火を大盤振る舞いしている。それが連合側の思惑とも知らず。事態は彼らのペースで進んでいる。
百裂鬼の族長こと鬼哭は勢力を結集して着々と冥界管理社会のシナリオを進行している。それは強行突破(ブレイクスルー)技術をもった連合側の飛躍的な技術進化と邨埜純色の宿命量子色力学の結びつきによるものだ。彼女は鬼哭の言葉にヒントを得て地獄に渦巻くドロドロした感情を綺麗な原色に分光してみせた。カギとなるのは「欲望」だ。人間の欲求は奥深いように思えて、解きほぐしてみると単純明快だ。それは際限のない消費行動に尽きる。何かを追い求め、むさぼる。金、異性、地位名声、そして何かに執着して蓄積すること。それだって消費の前提に過ぎない。
酒や薬物などの快楽も嗜好品を等比級数的にかき集め、消費することには変わりない。
「これはある意味、『引力』と見なしていいわ。何かを消耗するという一方通行の力。『似合わぬ僧の腕立て』って諺があるように、地獄で生産的や建設的って言葉を語る人はいないでしょ」
運命量子色力学者は地獄をブラックホールに見立てた。
「なるほどな! 暴力一辺倒の生活は環境の変化によるものか。お前から理論物理を習うまで疑問に思わなかった」
鬼哭が目から鱗が落ちたように驚く。
「死はおおむね不可逆的なものよ。黄泉がえりとか例外はあるけど、レアケース」
「そうだな。地獄の釜の蓋が開くなんて、そうそうあるもんじゃない。で、先生よ。千載一遇をどうやって常態化するんだ?」
百裂鬼のエリートは鬼の中でもずば抜けて知能指数が高いらしく、熱心に耳を傾ける。
「ペンローズ過程という現象があるの。作用反作用の法則は習ったでしょ? エネルギー保存則も。要はブラックホールに物を投げ捨てると、見返りを得られるってわけ。そして、その分、ブラックホールは痩せるのよ。私は地獄といブラックホールにペンローズのモデルが適用できると考えている」
スラスラと地面に数字を書き殴る純色。
「ちょっと、待って。ついていけない」
高美が白熱する議論に水を差した。「理論はいいから、実用化の目度を聞かせてちょうだい。私の興味は実現性が乏しいか否か。私は実業家だから」
「要するに脱出不可能な宇宙規模の『貪欲』――ブラックホールもペンローズ過程という詐欺に引っかかるってこと。同様に不可逆とされていた黄泉路も遡行できるってこと。だから、地獄から脱するにはペンローズ過程を盛大にやればいい」
邨埜は実直な高美にも理解できるよう嚙み砕いた。惜しげもなく地獄に寄付しろと。
「それって、人間どもがずっと昔から捧げている……」
鬼哭もようやくピンときたようだ。
「そうよ、生贄。そうそう、単細胞生物どもが仕事してくれたみたいよ」
空を見上げる純色の先には異様にざらついた雲が浮かんでいる。
■ 枢軸特急地獄大陸線 世界間連絡路
けたたましい汽笛。線路上の侵入者に臆することなく枢軸特急が驀進する。むしろ、スピードを緩めるどころか、ますます加速をつける。
「緩衝排除器、作動!」
ハウゼル列車長が職権で機関車の安全ロック解除を命じた。ガシャリと機首の思い鋼鉄版が降り、鉤爪が生える。続いて、パンタグラフが折り畳み、連装ロケットランチャーがせりあがる。鋼板の上部がスライドして30ミリ量子銃機関砲が飛び出す。
運転台に警告が鳴り響き、ATSが「停車します。停車します。停車」と念仏を繰り返している。
「ぃ、やっかましい!!」
留萌が両手でキーボードをひっぱたいた。喧騒が走行音にとって代わる。
「ブレース機関手、小姑は黙らせたわ。思い切り圧をあげてちょうだい!」
「やってますよ。言われる前から、とっくに定格超えてるんですよ。こっちは孤軍奮闘なんだからッ」
職人肌の彼女は作業に口を挟む人間を嫌う。飛び跳ねる数値をキー操作でなだめ、許容範囲ぎりぎりで出力を安定させる。
TWX666Ωが探照灯を浴びせる。巨大な影がさぁっと横切った。
「対人量子レーダーロックオン。セーフティー解除、殺傷モードへ!」
ハーベルトが射撃統制装置を操ると、半獣半人の魔物が枠内に捉えられた。
「アスモスデウス?!」
異世界各地を渡り歩いてきたハウゼルは息を呑んだ。例のハーベルトの任務で地獄に立ち寄った際、鬼が宴席の話題にあげたが、実際に見ると聞くとでは大違いだ。牛の胴体に人間と羊の双頭が乗っている。翼と羽はガチョウ、尾は毒蛇そのものだ。
「あれは何でしょうか?」
留萌が別の障害物を見つけた。映像を拡大し車内に投影する。画像解析ソフトが異世界雑音を除去し、鮮明化した。灼熱龍が口から火を噴いている。
「アスモスデウスのペットよ。注意して」
ハーベルトが注意を促す前にブレスが飛んできた。
「しょうがないわね」
彼女はセーラー服の胸当てを左右に引き裂いた。もどかしそうにスクール水着の紐を肩から抜く。はち切れそうなヒップにパツパツの黒ビキニ。純白の翼がバサリと覆う。
「荒井先生。何ぐずぐずしてるのよ。もう!」
ハーベルトは自分に見惚れている風吹を背中から剥いた。ブルマとスカートが破れ落ち、女教師も素肌をさらす。
「え? ……ひゃん!」
恥ずかしがる荒井に壁のライフルを投げるとハーベルトは後部デッキから飛び立った。
「わたしがダイマー能力で撹乱するから、援護射撃して!」
ハーベルトは火焔の周囲に重水素を浴びせ、爆発する前に酸素と結合させる。燃え盛る火が、そのままバシャっと飛沫に変わる。
「え、援護ってどうやって?」
風吹の内耳にダイマー共感聴覚が響く。「サラマンダーに地団太を踏ませて。銃は列車の射撃統制装置とリンクさせたから、足元を狙ってトリガーを引くだけでいい」
「わかりました」
スキンヘッドのビキニ女教師がうつむき加減に銃を構える。
「運航阻害要因の排除は立派なお仕事ですよ。恥ずかしがらないで前を向いてください」
電柱の両脇を火焔がかすめる。ハーベルトはダイマー能力を揮って妨害するが、火の勢いは収まらない。
「先生! 姿勢が悪いですよ!!」
叱咤されて風吹は背筋を伸ばした。腰だめで引き金を絞る。彼女にとっては殺人に等しいタブーだ。戦後教育の担い手として首尾一貫、子供たちに平和を説いてきた。平和憲法が幅を利かせる日本人の自分がまさかこの手に銃を握るとは。それでも勇猛果敢に戦う自分――ハーベルトは本当に風吹と瓜二つだ――を見て、彼女をどう支えるかしっかりと考えた。
「はいっ、閣下」
覚悟を決めて一発。しかし、ぶれが大きすぎて射撃統制装置の補正が効かない。大きく初撃を外した。炎上の儀式を中断させられたサラマンダーは怒りをあらわにした。ブレスの連射が電柱を鞭打つ。
「おやめなさい!」
量子弾が炸裂。火炎龍の鼻先を焦がす。その間に列車は急停止。貨車から重装歩兵がバラバラと線路上に降りる。風吹は射撃を続けるだが、火炎龍は大きくジャンプした。射線を飛び越えて列車の反対側へ着地。人間の意表をつく。
ハーベルトがけん制をしかける。アスモスデウスがサラマンダーにまたがり、列車に接近する。ブンと槍を投げる。
「「ハーベルト?!」」
留萌が運転台から貨車の対空機銃を遠隔操作する。カメラを鮮血がよぎった。
天使が刺し貫かれたまま、地面に激突する。
「誰かーッ」「衛生兵ーーッ!」
慌てふためく兵士たち。すぐさま担架が運ばれる。ぐったりとしたハーベルトが二言三言、指示を出した。風吹は自分を戒めた。躊躇したばかりに被害を受けた。きっぱりと平和主義に決別し、自分に言い聞かせる。ここは戦場なのだと。アスモスデウスとサラマンダーは再び分離して、投槍とブレスで畳みかけてくる。パンタグラフのミサイルランチャーがパッパッと煙る。線路沿いに沸き起こる爆風。兵士たちの混じって風吹も銃口を向ける。電柱と架線の被害を避けるために踏み込んだ攻撃ができない。
息も絶え絶えにハーベルトが決断を下した。応急処置が施される中、女子兵が傅いて言葉を聞き取る。
「撤退だそうです」
小隊長が復唱する。「撤退ーーーーーー」
「待ってください。続きがあります」
少女はある作戦を具申した。
■ 邨埜宿命量子色力学研究所礼拝堂
「あいつがどこに行ったか判った?」
盗賊団の女ボスは身についた血痕を洗面所で流していた。
「見つかりやしたぜ、ヌマタさん。どっから出てきたと思います? あ、開けていいですか?」
大声が響いてくる。遠慮も呵責もない。ずうずうしい物言からボスに対する関係が垣間見える。
「いや。いい。ドア越しに聞くから。開けた瞬間にドタマぶち抜くかんね」
沼田は拳銃を握り、耳をドアに押し当てた。
「沼田さんのアンダースイムショーツ姿なんて誰得……」
途端に物凄い音がして天井に大穴が開いた。
「今度はお前の腹だよ。クイズしている暇はないんだ」
さっきとは裏腹におどおどした口調に変わる。
「すみませんでしたボス」
「で、行き先がどうしたって?」
「奴の寝室からさっき殺した女のツーショット写真。それと奴の引き出しから指輪が出てきました。婚約していたようです」
沼田が雷に打たれたようにビクッと身震いする。そして、今にも吐きそうな表情で訴えた。
「――?! ……気持ち悪い」
薄い軽金属一枚を隔てて気まずい雰囲気が循環した。最初に口を開いたのは男の方だ。
「不気味なのはこっちでさ。あのババア、とんでもない山師ですぜ。ホウ素12Λの埋蔵量を正確に把握してやがる」
沼田の手が止まった。新品のショーツがヒップの半分まで上がっている。「マランツ界の鉱脈を知り尽くしているというの? ホウ素12の?!」
「知ってるってレベルじゃありませんぜ。ホウ素12に関しちゃ庭みたいなもんでしょう。案の定、指輪に翡翠が嵌まってました。結納の代わりなんでしょうかね。大鉱脈の緯度経度が刻んである。
「どれどれ!」
沼田はドアから飛び出そうとして盛大に転んだ。パンツに足を取られたのだ。Gカップが男を窒息させた。
■ TWX666Ω 簡易ビュッフェ
トワイライトエクリプス自慢のダイナー・アンブロシアはあいにく営業停止中だ。異世界逗留者たちはカウンターで缶コーヒーとサンドイッチをパクついている。軽食しか出せない理由がある。ドイッチェラント軍高級将校用コンパートメントの後部は食堂車に繋がっているはずだが、今は異世界をつなぐ紫色の空が見える。
「迫真の演技で、あっちの方もどうにかならなかったんですか?」
風吹がやり玉に挙げると「外套効果はあいつには通用しないのよ」、とハーベルト。ピンピンしている。
「勿体ないというか思い切ったことをしますね」
食べ物を粗末にしてはいけないと戦中派から教わった風吹は半ばあきれている。「あいつから逃れる代案があって?」 ハーベルトの世代は、「『反対のための反対運動をする輩』と不毛な議論に時間を費やすぐらいなら、多少の思い切った犠牲は仕方ない」という価値観が主流だった。
「そう言われても……」 風吹は振り返る。
あの時、アスモスデウスは怒りに我を忘れていた。三つの首からありとあらゆる方向にブレスを吐き、火炎龍とタッグを組んでそこらじゅうを火の海にする勢いだった。
「列車長! 食堂車を切り離してください」
陸戦隊長が運転室に飛び込むやいなや、アンブロシアの分離を要請した。時価総額で一両数十億円する量子アミューズメントの塊である。カスタムメイドなので再調達するとなるとコンテンツの開発費込みで二百億は下らない。彼女が戸惑っていると隊長は結論から語った。「百万世界を渡り歩いた貴女だ。アスモスデウスの弱点をご存知でしょう。今はあれをぶつけるしかない。それとも恥を曝したいですか!」
隊長は女を煽るのが上手だ。「なんですってぇ! 冷凍アンチョビの百億や二百億、くれてやるわよ!!」
ハウゼルは職権で食堂車の廃棄を決定。爆発ボルトの起爆ボタンを押した。
そして、逃げるように急加速。置き去りにされた食堂車はレールを全速力で逆走。
アスモスデウスに特攻を仕掛けた!
大きな揺れで白昼夢から覚めた。夜間中等部に向かう道すがら、風吹は女の子の悲鳴を聞いた。
「女子寮?」
彼女は踵を返し、暗がりの中を駆けだした。初めての授業が遅刻とはいただけないが、致し方無い。
「ハ~ベルト~~」
息せき切って二階にあがると、案の定、祥子が冤罪に苦しんでいた。
「何ですか? 夜間部の先生が」
「だまらっしゃい!」
学年主任と押し問答になりながら、ようやく祥子を解放した。わあわあと泣き崩れる教え子に代わって抗弁する。
「もしかして荒井先生が見過ごしているんじゃないでしょうね?」
なおも食い下がる主任に風吹が爆発した。「そこまでおっしゃるなら物的証拠を揃えてください。吸い殻の一本、灰の一かけらでも落ちていましたか?」と正論で畳みかける。
主任は苦虫を噛み潰したような顔で、夜も遅い事ですし、明日の教職員会議に諮りましょうと一旦は引き下がった。長谷江と鈴原なるみは風吹に気圧されたのかガタガタと震えている。二人の目線を追うと、なんと通風孔に青白い手が生えて手招きしている。
『ハーベルトったら!』
風吹は部屋まで祥子を送り届けるフリをして、通風孔の下を通過した。生暖かい風が勢いよく吹き込んで、二人を何もない空間に誘った。
■ TWX666Ω 戦闘指揮車両
「ボクに構わないでと言ったでしょ。乗りたくないんだ。帰して!」
暴れる祥子にハーベルトは耳を貸さなかった。「不知火高美の一派が地獄で勢力を拡大しているのよ」
「知るもんか。犯人捜しなんか警察がすればいい。それよりボクの両親を治療してよ。先生を治したみたいに」
子供は純粋だ。時に正鵠を射る。痛いところをつかれたハーベルトは、正直に告白した。
「まだ退院してもらうわけにはいかない。命を狙っている奴がいるのよ」
「嘘だ。誰? とうさんやかあさんは真面目で人の恨みを買う人間じゃない。バカにしないでよッ!」
祥子はハーベルトに蹴りかかった。スカートがめくれ、アンダースコートが丸見えになる。
ハーベルトはひょいとよけ、質問を投げた。
「思い出して御覧なさい。あの夜、屋根にのぼる直前、お父さんは何と言ってましたか?」
――
家族そろってオカルト番組を見ていた。でレーシング事故から生還したドライバーが臨死体験を語っていた。町営図書館の司書である父は番組を科学研究の荒廃だと一蹴し、迷信家たる母は人間の驕りを戒めた。
――
「えっ? それのどこが悪いの?」
きょとんとする祥子にハーベルトは厳しい口調で言った。「万死に値する冒涜だと感じて殺意を燃やす人もいるわ」
「そいつって誰――……」
衝撃と爆音が襲ってきた。列車は虚無山のカルデラ湖臨時駅に急停車している。
「首を長くしてお待ちしておりました。閣下の留守中に情勢が大きく動きつつあります」
前線司令官が壁面モニターがら状況説明をしている。画面が二つに割れて、高高度偵察カメラのライブ映像が重なった。
曇天の晴れ間から街並みが見える。いや、それらは桜の花びらが舞うようにクルクルと回転しながら近づいてくる。
「地上が崩落しています。ブライトリング世界の一部に間違いありません。地形図と一致します」、と司令官。
まるでかさぶたを剝がすように住宅密集地が地盤ごとめくれ、真っ逆さまに落ちてくる。滑り込むように工業地帯が降りてきた。
プラントにスペースX社のロゴが入っている、
「高美は何を考えているの?!」
ハーベルトはなすすべがない。彼女は未曽有の事態に対処すべく風吹たちに応援を求めた。
「何か策はないの? 貴女も考えてよ。先生でしょ?!」
言われても、彼女は苦々しく曇天を見上げるしかなかない。
空には粉塵で沸き返っている。じっと目を凝らすハーベルト。その瞳にこころなしか希望の色がみえた。
「そうだわ。判った。そういう手口か!」
■ 異世界【マランツ】 邨埜研究所 山麓付近。
「こいつは灯台下暗しってやつですねぇ。ボス」
沼田の部下たちは急峻な崖を垂直離着陸機で300メートルちかく降りた。そこはすり鉢状の谷の奥深く。
鮮やかな緑のヴェールが広がっている。
「ホウ素の鉱脈がこんな辺境世界に眠っているとはねぇ」
息を呑むような美しさに沼田が感銘を受けている。
「喜んでもいられませんぜボス。こいつぁ、ヤンガードライアス彗星の存在証明だ。世界が壊れちまう」
次回、最終回。
次から次へと投げ込まれるコンテナ。曇天が白熱電球のように照らされる。ハーベルトの宝物は対空砲火を大盤振る舞いしている。それが連合側の思惑とも知らず。事態は彼らのペースで進んでいる。
百裂鬼の族長こと鬼哭は勢力を結集して着々と冥界管理社会のシナリオを進行している。それは強行突破(ブレイクスルー)技術をもった連合側の飛躍的な技術進化と邨埜純色の宿命量子色力学の結びつきによるものだ。彼女は鬼哭の言葉にヒントを得て地獄に渦巻くドロドロした感情を綺麗な原色に分光してみせた。カギとなるのは「欲望」だ。人間の欲求は奥深いように思えて、解きほぐしてみると単純明快だ。それは際限のない消費行動に尽きる。何かを追い求め、むさぼる。金、異性、地位名声、そして何かに執着して蓄積すること。それだって消費の前提に過ぎない。
酒や薬物などの快楽も嗜好品を等比級数的にかき集め、消費することには変わりない。
「これはある意味、『引力』と見なしていいわ。何かを消耗するという一方通行の力。『似合わぬ僧の腕立て』って諺があるように、地獄で生産的や建設的って言葉を語る人はいないでしょ」
運命量子色力学者は地獄をブラックホールに見立てた。
「なるほどな! 暴力一辺倒の生活は環境の変化によるものか。お前から理論物理を習うまで疑問に思わなかった」
鬼哭が目から鱗が落ちたように驚く。
「死はおおむね不可逆的なものよ。黄泉がえりとか例外はあるけど、レアケース」
「そうだな。地獄の釜の蓋が開くなんて、そうそうあるもんじゃない。で、先生よ。千載一遇をどうやって常態化するんだ?」
百裂鬼のエリートは鬼の中でもずば抜けて知能指数が高いらしく、熱心に耳を傾ける。
「ペンローズ過程という現象があるの。作用反作用の法則は習ったでしょ? エネルギー保存則も。要はブラックホールに物を投げ捨てると、見返りを得られるってわけ。そして、その分、ブラックホールは痩せるのよ。私は地獄といブラックホールにペンローズのモデルが適用できると考えている」
スラスラと地面に数字を書き殴る純色。
「ちょっと、待って。ついていけない」
高美が白熱する議論に水を差した。「理論はいいから、実用化の目度を聞かせてちょうだい。私の興味は実現性が乏しいか否か。私は実業家だから」
「要するに脱出不可能な宇宙規模の『貪欲』――ブラックホールもペンローズ過程という詐欺に引っかかるってこと。同様に不可逆とされていた黄泉路も遡行できるってこと。だから、地獄から脱するにはペンローズ過程を盛大にやればいい」
邨埜は実直な高美にも理解できるよう嚙み砕いた。惜しげもなく地獄に寄付しろと。
「それって、人間どもがずっと昔から捧げている……」
鬼哭もようやくピンときたようだ。
「そうよ、生贄。そうそう、単細胞生物どもが仕事してくれたみたいよ」
空を見上げる純色の先には異様にざらついた雲が浮かんでいる。
■ 枢軸特急地獄大陸線 世界間連絡路
けたたましい汽笛。線路上の侵入者に臆することなく枢軸特急が驀進する。むしろ、スピードを緩めるどころか、ますます加速をつける。
「緩衝排除器、作動!」
ハウゼル列車長が職権で機関車の安全ロック解除を命じた。ガシャリと機首の思い鋼鉄版が降り、鉤爪が生える。続いて、パンタグラフが折り畳み、連装ロケットランチャーがせりあがる。鋼板の上部がスライドして30ミリ量子銃機関砲が飛び出す。
運転台に警告が鳴り響き、ATSが「停車します。停車します。停車」と念仏を繰り返している。
「ぃ、やっかましい!!」
留萌が両手でキーボードをひっぱたいた。喧騒が走行音にとって代わる。
「ブレース機関手、小姑は黙らせたわ。思い切り圧をあげてちょうだい!」
「やってますよ。言われる前から、とっくに定格超えてるんですよ。こっちは孤軍奮闘なんだからッ」
職人肌の彼女は作業に口を挟む人間を嫌う。飛び跳ねる数値をキー操作でなだめ、許容範囲ぎりぎりで出力を安定させる。
TWX666Ωが探照灯を浴びせる。巨大な影がさぁっと横切った。
「対人量子レーダーロックオン。セーフティー解除、殺傷モードへ!」
ハーベルトが射撃統制装置を操ると、半獣半人の魔物が枠内に捉えられた。
「アスモスデウス?!」
異世界各地を渡り歩いてきたハウゼルは息を呑んだ。例のハーベルトの任務で地獄に立ち寄った際、鬼が宴席の話題にあげたが、実際に見ると聞くとでは大違いだ。牛の胴体に人間と羊の双頭が乗っている。翼と羽はガチョウ、尾は毒蛇そのものだ。
「あれは何でしょうか?」
留萌が別の障害物を見つけた。映像を拡大し車内に投影する。画像解析ソフトが異世界雑音を除去し、鮮明化した。灼熱龍が口から火を噴いている。
「アスモスデウスのペットよ。注意して」
ハーベルトが注意を促す前にブレスが飛んできた。
「しょうがないわね」
彼女はセーラー服の胸当てを左右に引き裂いた。もどかしそうにスクール水着の紐を肩から抜く。はち切れそうなヒップにパツパツの黒ビキニ。純白の翼がバサリと覆う。
「荒井先生。何ぐずぐずしてるのよ。もう!」
ハーベルトは自分に見惚れている風吹を背中から剥いた。ブルマとスカートが破れ落ち、女教師も素肌をさらす。
「え? ……ひゃん!」
恥ずかしがる荒井に壁のライフルを投げるとハーベルトは後部デッキから飛び立った。
「わたしがダイマー能力で撹乱するから、援護射撃して!」
ハーベルトは火焔の周囲に重水素を浴びせ、爆発する前に酸素と結合させる。燃え盛る火が、そのままバシャっと飛沫に変わる。
「え、援護ってどうやって?」
風吹の内耳にダイマー共感聴覚が響く。「サラマンダーに地団太を踏ませて。銃は列車の射撃統制装置とリンクさせたから、足元を狙ってトリガーを引くだけでいい」
「わかりました」
スキンヘッドのビキニ女教師がうつむき加減に銃を構える。
「運航阻害要因の排除は立派なお仕事ですよ。恥ずかしがらないで前を向いてください」
電柱の両脇を火焔がかすめる。ハーベルトはダイマー能力を揮って妨害するが、火の勢いは収まらない。
「先生! 姿勢が悪いですよ!!」
叱咤されて風吹は背筋を伸ばした。腰だめで引き金を絞る。彼女にとっては殺人に等しいタブーだ。戦後教育の担い手として首尾一貫、子供たちに平和を説いてきた。平和憲法が幅を利かせる日本人の自分がまさかこの手に銃を握るとは。それでも勇猛果敢に戦う自分――ハーベルトは本当に風吹と瓜二つだ――を見て、彼女をどう支えるかしっかりと考えた。
「はいっ、閣下」
覚悟を決めて一発。しかし、ぶれが大きすぎて射撃統制装置の補正が効かない。大きく初撃を外した。炎上の儀式を中断させられたサラマンダーは怒りをあらわにした。ブレスの連射が電柱を鞭打つ。
「おやめなさい!」
量子弾が炸裂。火炎龍の鼻先を焦がす。その間に列車は急停止。貨車から重装歩兵がバラバラと線路上に降りる。風吹は射撃を続けるだが、火炎龍は大きくジャンプした。射線を飛び越えて列車の反対側へ着地。人間の意表をつく。
ハーベルトがけん制をしかける。アスモスデウスがサラマンダーにまたがり、列車に接近する。ブンと槍を投げる。
「「ハーベルト?!」」
留萌が運転台から貨車の対空機銃を遠隔操作する。カメラを鮮血がよぎった。
天使が刺し貫かれたまま、地面に激突する。
「誰かーッ」「衛生兵ーーッ!」
慌てふためく兵士たち。すぐさま担架が運ばれる。ぐったりとしたハーベルトが二言三言、指示を出した。風吹は自分を戒めた。躊躇したばかりに被害を受けた。きっぱりと平和主義に決別し、自分に言い聞かせる。ここは戦場なのだと。アスモスデウスとサラマンダーは再び分離して、投槍とブレスで畳みかけてくる。パンタグラフのミサイルランチャーがパッパッと煙る。線路沿いに沸き起こる爆風。兵士たちの混じって風吹も銃口を向ける。電柱と架線の被害を避けるために踏み込んだ攻撃ができない。
息も絶え絶えにハーベルトが決断を下した。応急処置が施される中、女子兵が傅いて言葉を聞き取る。
「撤退だそうです」
小隊長が復唱する。「撤退ーーーーーー」
「待ってください。続きがあります」
少女はある作戦を具申した。
■ 邨埜宿命量子色力学研究所礼拝堂
「あいつがどこに行ったか判った?」
盗賊団の女ボスは身についた血痕を洗面所で流していた。
「見つかりやしたぜ、ヌマタさん。どっから出てきたと思います? あ、開けていいですか?」
大声が響いてくる。遠慮も呵責もない。ずうずうしい物言からボスに対する関係が垣間見える。
「いや。いい。ドア越しに聞くから。開けた瞬間にドタマぶち抜くかんね」
沼田は拳銃を握り、耳をドアに押し当てた。
「沼田さんのアンダースイムショーツ姿なんて誰得……」
途端に物凄い音がして天井に大穴が開いた。
「今度はお前の腹だよ。クイズしている暇はないんだ」
さっきとは裏腹におどおどした口調に変わる。
「すみませんでしたボス」
「で、行き先がどうしたって?」
「奴の寝室からさっき殺した女のツーショット写真。それと奴の引き出しから指輪が出てきました。婚約していたようです」
沼田が雷に打たれたようにビクッと身震いする。そして、今にも吐きそうな表情で訴えた。
「――?! ……気持ち悪い」
薄い軽金属一枚を隔てて気まずい雰囲気が循環した。最初に口を開いたのは男の方だ。
「不気味なのはこっちでさ。あのババア、とんでもない山師ですぜ。ホウ素12Λの埋蔵量を正確に把握してやがる」
沼田の手が止まった。新品のショーツがヒップの半分まで上がっている。「マランツ界の鉱脈を知り尽くしているというの? ホウ素12の?!」
「知ってるってレベルじゃありませんぜ。ホウ素12に関しちゃ庭みたいなもんでしょう。案の定、指輪に翡翠が嵌まってました。結納の代わりなんでしょうかね。大鉱脈の緯度経度が刻んである。
「どれどれ!」
沼田はドアから飛び出そうとして盛大に転んだ。パンツに足を取られたのだ。Gカップが男を窒息させた。
■ TWX666Ω 簡易ビュッフェ
トワイライトエクリプス自慢のダイナー・アンブロシアはあいにく営業停止中だ。異世界逗留者たちはカウンターで缶コーヒーとサンドイッチをパクついている。軽食しか出せない理由がある。ドイッチェラント軍高級将校用コンパートメントの後部は食堂車に繋がっているはずだが、今は異世界をつなぐ紫色の空が見える。
「迫真の演技で、あっちの方もどうにかならなかったんですか?」
風吹がやり玉に挙げると「外套効果はあいつには通用しないのよ」、とハーベルト。ピンピンしている。
「勿体ないというか思い切ったことをしますね」
食べ物を粗末にしてはいけないと戦中派から教わった風吹は半ばあきれている。「あいつから逃れる代案があって?」 ハーベルトの世代は、「『反対のための反対運動をする輩』と不毛な議論に時間を費やすぐらいなら、多少の思い切った犠牲は仕方ない」という価値観が主流だった。
「そう言われても……」 風吹は振り返る。
あの時、アスモスデウスは怒りに我を忘れていた。三つの首からありとあらゆる方向にブレスを吐き、火炎龍とタッグを組んでそこらじゅうを火の海にする勢いだった。
「列車長! 食堂車を切り離してください」
陸戦隊長が運転室に飛び込むやいなや、アンブロシアの分離を要請した。時価総額で一両数十億円する量子アミューズメントの塊である。カスタムメイドなので再調達するとなるとコンテンツの開発費込みで二百億は下らない。彼女が戸惑っていると隊長は結論から語った。「百万世界を渡り歩いた貴女だ。アスモスデウスの弱点をご存知でしょう。今はあれをぶつけるしかない。それとも恥を曝したいですか!」
隊長は女を煽るのが上手だ。「なんですってぇ! 冷凍アンチョビの百億や二百億、くれてやるわよ!!」
ハウゼルは職権で食堂車の廃棄を決定。爆発ボルトの起爆ボタンを押した。
そして、逃げるように急加速。置き去りにされた食堂車はレールを全速力で逆走。
アスモスデウスに特攻を仕掛けた!
大きな揺れで白昼夢から覚めた。夜間中等部に向かう道すがら、風吹は女の子の悲鳴を聞いた。
「女子寮?」
彼女は踵を返し、暗がりの中を駆けだした。初めての授業が遅刻とはいただけないが、致し方無い。
「ハ~ベルト~~」
息せき切って二階にあがると、案の定、祥子が冤罪に苦しんでいた。
「何ですか? 夜間部の先生が」
「だまらっしゃい!」
学年主任と押し問答になりながら、ようやく祥子を解放した。わあわあと泣き崩れる教え子に代わって抗弁する。
「もしかして荒井先生が見過ごしているんじゃないでしょうね?」
なおも食い下がる主任に風吹が爆発した。「そこまでおっしゃるなら物的証拠を揃えてください。吸い殻の一本、灰の一かけらでも落ちていましたか?」と正論で畳みかける。
主任は苦虫を噛み潰したような顔で、夜も遅い事ですし、明日の教職員会議に諮りましょうと一旦は引き下がった。長谷江と鈴原なるみは風吹に気圧されたのかガタガタと震えている。二人の目線を追うと、なんと通風孔に青白い手が生えて手招きしている。
『ハーベルトったら!』
風吹は部屋まで祥子を送り届けるフリをして、通風孔の下を通過した。生暖かい風が勢いよく吹き込んで、二人を何もない空間に誘った。
■ TWX666Ω 戦闘指揮車両
「ボクに構わないでと言ったでしょ。乗りたくないんだ。帰して!」
暴れる祥子にハーベルトは耳を貸さなかった。「不知火高美の一派が地獄で勢力を拡大しているのよ」
「知るもんか。犯人捜しなんか警察がすればいい。それよりボクの両親を治療してよ。先生を治したみたいに」
子供は純粋だ。時に正鵠を射る。痛いところをつかれたハーベルトは、正直に告白した。
「まだ退院してもらうわけにはいかない。命を狙っている奴がいるのよ」
「嘘だ。誰? とうさんやかあさんは真面目で人の恨みを買う人間じゃない。バカにしないでよッ!」
祥子はハーベルトに蹴りかかった。スカートがめくれ、アンダースコートが丸見えになる。
ハーベルトはひょいとよけ、質問を投げた。
「思い出して御覧なさい。あの夜、屋根にのぼる直前、お父さんは何と言ってましたか?」
――
家族そろってオカルト番組を見ていた。でレーシング事故から生還したドライバーが臨死体験を語っていた。町営図書館の司書である父は番組を科学研究の荒廃だと一蹴し、迷信家たる母は人間の驕りを戒めた。
――
「えっ? それのどこが悪いの?」
きょとんとする祥子にハーベルトは厳しい口調で言った。「万死に値する冒涜だと感じて殺意を燃やす人もいるわ」
「そいつって誰――……」
衝撃と爆音が襲ってきた。列車は虚無山のカルデラ湖臨時駅に急停車している。
「首を長くしてお待ちしておりました。閣下の留守中に情勢が大きく動きつつあります」
前線司令官が壁面モニターがら状況説明をしている。画面が二つに割れて、高高度偵察カメラのライブ映像が重なった。
曇天の晴れ間から街並みが見える。いや、それらは桜の花びらが舞うようにクルクルと回転しながら近づいてくる。
「地上が崩落しています。ブライトリング世界の一部に間違いありません。地形図と一致します」、と司令官。
まるでかさぶたを剝がすように住宅密集地が地盤ごとめくれ、真っ逆さまに落ちてくる。滑り込むように工業地帯が降りてきた。
プラントにスペースX社のロゴが入っている、
「高美は何を考えているの?!」
ハーベルトはなすすべがない。彼女は未曽有の事態に対処すべく風吹たちに応援を求めた。
「何か策はないの? 貴女も考えてよ。先生でしょ?!」
言われても、彼女は苦々しく曇天を見上げるしかなかない。
空には粉塵で沸き返っている。じっと目を凝らすハーベルト。その瞳にこころなしか希望の色がみえた。
「そうだわ。判った。そういう手口か!」
■ 異世界【マランツ】 邨埜研究所 山麓付近。
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次回、最終回。
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