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かいだんのとこの、みっつのまど
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いろはちゃんのおうちのかいだんには、ほそながい、まどがあります。
ましかくをみっつ、たてにかさねたそのまどに、ごさいのいろはちゃんはまだ、せがとどきません。せのびをして、かおをあげると、やっといちばんしたのしかくから、おそとがみえます。
めには、いつも、おそらがうつりました。だいたいは、くものある、あおいおそら。くもは、おおいときもあるし、ほんのちょっとのときもあります。それから、おそらはときどき、きいろだったり、はいいろだったりしました。
いろはちゃんは、おそらをみるのがたのしくて、めいっぱい、せのびをします。
きょうのおそらは、まっかっか。おひるはみずいろだったのに、いつのまに、あかいろにかわったのでしょうか。
まっかなおそらは、おこっているみたいで、ちょっとこわいです。からすさんのまっくろなからだも、いつもより、つよそうにみえます。
でも、よーくみていると、くもはいつもとおんなじ。ゆっくり、ながれています。まっかなおそらも、そんなにこわくないのかな?
まっかなおそらが、だんだん、いつものみずいろのおそらとおなじくらい、きれいにみえてきました。
「いろはちゃん。おゆうはんですよ」
「はあい」
おかあさんのこえがします。いろはちゃんは、おおきなこえでおへんじをして、いっかいへおりていきました。
リビングから、おいしそうなにおいがします。きょうは、いろはちゃんのだいすきな、ハンバーグです。
ごこのハンバーグがならんだ、しょくたくのまえで、みっつとしうえの、やまとおにいちゃんが、おてつだいをしています。いろはちゃんも、おててをあらってから、いっしょにトマトのヘタをとりました。
「おとうさん、まだかな。ハンバーグ、もうできてるのにね」
いろはちゃんのおうちでは、いつもごにんそろってから、「いただきます」をします。
おとうさんと、おかあさん。やまとおにいちゃんと、さらにおっきい、あさきおにいちゃん。それに、いろはちゃんの、ごにんです。
やまとおにいちゃんは、とけいをみて、
「きっと、もうすぐだよ」
といいましたが、いろはちゃんはまだ、とけいがよめません。
すると、にかいから、あさきおにいちゃんがおりてきて、いいました。
「おとうさん、いま、かえってきたよ」
「えっ。ほんとう?」
いろはちゃんは、びっくりしました。げんかんのドアは、まだ、あいていません。
でも、いろはちゃんがろうかにでてみると、ちょうどかぎがあいて、おとうさんがかえってきました。
「あれ、いろは。まっていてくれたのかい」
おとうさんも、いろはちゃんが、ぴったりにげんかんにあらわれたので、ちょっとおどろいたようすです。
でも、すぐにうれしそうにわらって、いろはちゃんをだっこしてくれました。
おとうさんが、きがえにいってから、いろはちゃんはきいてみました。
「あさきおにいちゃん。どうして、おとうさんがかえってくるって、わかったの?」
すると、あさきおにいちゃんがわらいます。
「まどから、かえってきたのが、みえたんだよ」
「かいだんの? ほそながい、まど?」
「そうだよ」
「うそだあ」
こんどは、いろはちゃんがわらいました。だって、あのほそながいまどからは、おそらしかみえません。おとうさんは、ひこうきじゃなくて、バスでかえってきたはずです。
すると、やまとおにいちゃんがいいました。
「ぼくには、まどからいつも、とおりのむこうのマンションがみえるよ。ごがつには、ベランダにこいのぼりが、みえたよ」
「こいのぼりが、みえたの? いいなぁ」
せのひくい、いろはちゃんには、おそらしかみえない、まど。
なのに、ちゅうくらいの、やまとおにいちゃんには、マンションやこいのぼりがみえて、うんとおおきな、あさきおにいちゃんだと、おとうさんがかえってくるところまで、みえてしまう、まど。
どうやら、のぞくばしょによって、ちがうけしきがみえるみたいです。
かいだんのまどって、まほうつかいみたい。
「じゃあ、おとうさんやおかあさんには、なにがみえるのかな」
いろはちゃんは、また、まどのしたへいってみました。やっぱりまだ、いろはちゃんには、おそらしかみえません。しかも、きょうはもう、まっくらです。
でもいつか、マンションがみえるようになって、おとうさんがかえってくるときも、わかるようになります。それから、もっとおおきくなると、もしかして、いろはちゃんじしんも、じぶんでみえるようになるのでしょうか。
いろはちゃんは、てをうんとうえに、のばしてみました。ちょっとつめたいまどに、ぺたんと、てのひらでさわれます。
はやく、このほそながいまどのてっぺんまで、とどくくらいになりたいな。いろはちゃんは、おおきくなるのが、またたのしみになりました。
(おしまい)
ましかくをみっつ、たてにかさねたそのまどに、ごさいのいろはちゃんはまだ、せがとどきません。せのびをして、かおをあげると、やっといちばんしたのしかくから、おそとがみえます。
めには、いつも、おそらがうつりました。だいたいは、くものある、あおいおそら。くもは、おおいときもあるし、ほんのちょっとのときもあります。それから、おそらはときどき、きいろだったり、はいいろだったりしました。
いろはちゃんは、おそらをみるのがたのしくて、めいっぱい、せのびをします。
きょうのおそらは、まっかっか。おひるはみずいろだったのに、いつのまに、あかいろにかわったのでしょうか。
まっかなおそらは、おこっているみたいで、ちょっとこわいです。からすさんのまっくろなからだも、いつもより、つよそうにみえます。
でも、よーくみていると、くもはいつもとおんなじ。ゆっくり、ながれています。まっかなおそらも、そんなにこわくないのかな?
まっかなおそらが、だんだん、いつものみずいろのおそらとおなじくらい、きれいにみえてきました。
「いろはちゃん。おゆうはんですよ」
「はあい」
おかあさんのこえがします。いろはちゃんは、おおきなこえでおへんじをして、いっかいへおりていきました。
リビングから、おいしそうなにおいがします。きょうは、いろはちゃんのだいすきな、ハンバーグです。
ごこのハンバーグがならんだ、しょくたくのまえで、みっつとしうえの、やまとおにいちゃんが、おてつだいをしています。いろはちゃんも、おててをあらってから、いっしょにトマトのヘタをとりました。
「おとうさん、まだかな。ハンバーグ、もうできてるのにね」
いろはちゃんのおうちでは、いつもごにんそろってから、「いただきます」をします。
おとうさんと、おかあさん。やまとおにいちゃんと、さらにおっきい、あさきおにいちゃん。それに、いろはちゃんの、ごにんです。
やまとおにいちゃんは、とけいをみて、
「きっと、もうすぐだよ」
といいましたが、いろはちゃんはまだ、とけいがよめません。
すると、にかいから、あさきおにいちゃんがおりてきて、いいました。
「おとうさん、いま、かえってきたよ」
「えっ。ほんとう?」
いろはちゃんは、びっくりしました。げんかんのドアは、まだ、あいていません。
でも、いろはちゃんがろうかにでてみると、ちょうどかぎがあいて、おとうさんがかえってきました。
「あれ、いろは。まっていてくれたのかい」
おとうさんも、いろはちゃんが、ぴったりにげんかんにあらわれたので、ちょっとおどろいたようすです。
でも、すぐにうれしそうにわらって、いろはちゃんをだっこしてくれました。
おとうさんが、きがえにいってから、いろはちゃんはきいてみました。
「あさきおにいちゃん。どうして、おとうさんがかえってくるって、わかったの?」
すると、あさきおにいちゃんがわらいます。
「まどから、かえってきたのが、みえたんだよ」
「かいだんの? ほそながい、まど?」
「そうだよ」
「うそだあ」
こんどは、いろはちゃんがわらいました。だって、あのほそながいまどからは、おそらしかみえません。おとうさんは、ひこうきじゃなくて、バスでかえってきたはずです。
すると、やまとおにいちゃんがいいました。
「ぼくには、まどからいつも、とおりのむこうのマンションがみえるよ。ごがつには、ベランダにこいのぼりが、みえたよ」
「こいのぼりが、みえたの? いいなぁ」
せのひくい、いろはちゃんには、おそらしかみえない、まど。
なのに、ちゅうくらいの、やまとおにいちゃんには、マンションやこいのぼりがみえて、うんとおおきな、あさきおにいちゃんだと、おとうさんがかえってくるところまで、みえてしまう、まど。
どうやら、のぞくばしょによって、ちがうけしきがみえるみたいです。
かいだんのまどって、まほうつかいみたい。
「じゃあ、おとうさんやおかあさんには、なにがみえるのかな」
いろはちゃんは、また、まどのしたへいってみました。やっぱりまだ、いろはちゃんには、おそらしかみえません。しかも、きょうはもう、まっくらです。
でもいつか、マンションがみえるようになって、おとうさんがかえってくるときも、わかるようになります。それから、もっとおおきくなると、もしかして、いろはちゃんじしんも、じぶんでみえるようになるのでしょうか。
いろはちゃんは、てをうんとうえに、のばしてみました。ちょっとつめたいまどに、ぺたんと、てのひらでさわれます。
はやく、このほそながいまどのてっぺんまで、とどくくらいになりたいな。いろはちゃんは、おおきくなるのが、またたのしみになりました。
(おしまい)
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