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第6章 嵐の南方海
第57話 大海竜、そして蒼雷姫
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ロウドとヴァル、対照的な戦闘の推移を見守るミスティファーたち。
「ヴァル!」
「あの古大鬼の持つ斧、魔力が篭められているのか?」
ミスティファーが悲鳴を上げ、イスカリオスはレグの持つ首切りの斧の推察をする。
「よく分かったわね、魔術師。アレは闇の大聖母様が古大鬼の一族に下賜された由緒正しき神器。魔器ですらない、雑魚の使っていたのを流用していた物などとは格が違うのよ」
術で生み出した茨で、〈自由なる翼〉の面々を拘束し続けているパメラが心持ち自慢そうに説明する。
「ふん。そんなもん持ち出さなきゃ、ヴァルには勝てなかった、ということだな」
コーンズが鼻を鳴らして小馬鹿にするように呟く。
「ま、それは言えるわね。レグもいい薬にはなったんじゃないのかな。今まで格下の連中を大鬼としての基本スペックだけで圧倒してきたから全然腕が上達してなかったみたいだし」
コーンズの挑発をさらりと受け流して、劣勢のリーズの方へと目を向ける魔少女。
「ああ、リーズ様! あのガキ~、屠竜剣持ってるからっていい気になりやがって!」
お嬢様然とした外見からは想像もできない柄の悪い言葉が飛び出る。
「リーズ様から手を出すなと言われてなければ、あんなガキぶっ殺してやるのに!」
ドンドンと苛ただしげに足を踏みならすパメラ。その眼光には、気が弱い者なら卒倒するような殺気が篭められていた。
『よし! コイツの注意が向こうに向いてるうちに……』
パメラが熱くなり注意が散漫になってる今が好機と見て、コーンズが静かに屈み込み、ブーツに仕込んである小さな刃物を取り出した。
それを使って、己を縛る茨を切りにかかる。
イスカリオスがパメラとコーンズの間に静かに位置を変え、茨を切っているのがバレないようにカバー。
「ねえ。あのオルフェリアって魔剣、追っ手がかかるぐらいにヤバいの?」
パメラの注意を逸らせるために話しかけるミスティファー。
「ん? あ~、貴方たち、あの屠竜剣がどれだけの代物なのかも知らないで一緒に行動してるんだ? アレはね、数ある魔剣の中でも別格。あの忌々しき太陽神の〈天の栄光〉と同じく神器なんだから」
パメラの可憐な口から語られるオルフェリアの由来。
「神器?! オルフェリアが神の作りたもうた物だというの?!」
「ええ。 そういえば奇遇よね。戦いに敗れ、失意の元に肉体を失ったアレを拾い上げ、魔剣へと生まれ変わらせたのは、他でもないわ。貴方の信じる豊穣の神よ」
次から次へと明かされる衝撃の真実。
オルフェリアが神器であることも驚きであるが、それを生み出したのがミスティファーの信仰する豊穣と慈愛の女神とは。
「豊穣と慈愛の女神がオルフェリアを生み出した? そんな……ん、ちょっと待って。今、生まれ変わらせたって言ったわね。魔剣になる前は一体、何だったの?」
気を逸らせるために話しかけたということも忘れ、オルフェリアの正体をガチで追及にかかるミスティファー。
「それは……!」
パメラがミスティファーの質問に答えかけた時、船を揺れが襲った。
海面が大きく揺れたのだ。
「な、何だ! この揺れは?!」
「お、おい! あそこ見ろ!」
騒ぎ出す船員。
その中の一人の船員が指し示す方向の海面は大きく盛り上がっていた。まるで何かが浮上するかのように。
皆が固唾を飲む中、海面を割ってソレは姿を現した。
船よりも巨大な、角を四本備えた頭部。そして、それに続く青緑色の太く長大な蛇に酷似した、どこまで続いているのか分からない胴体。
「大海蛇……」
船員の一人が呆然と呟く。
しかし、それの呟きを船長が修正する。
「大海蛇なんてもんじゃねえ! コイツは、コイツは! 海の魔物の総大将、大海竜ティラだ!」
竜の祖、黒竜王アハトと唯一互角に戦うことのできる大海竜ティラ。
ソレが今、ここに顕現した。
その想像を絶する巨体に圧倒され、そこから発せられる濃密な妖気にも当てられて、人・魔族を問わず、ここにいる者全てが恐怖し萎縮していた。
いや、ただ一人 (?)動くモノがいた。
「そうか。ここら辺の海域は、棲み家の目と鼻の先であったか」
オルフェリアだ。
そのオルフェリアの呟きに気付いたのか、視線を向ける大海竜。
『覚えのある魔力を感じたので来てみれば、お前か。オルフェリアよ』
牙の生え揃った口を開き、短く吠える大海竜。それに篭められた意思は、皆の心に直接響いた。
さすが高等な知性ある竜、念話の類いを使えるようだ。
『久しいな。ところで、まだ竜を殲滅するなどと世迷い言を言っているのか?』
ティラの言葉にムキになって反論するオルフェリア。
「世迷い言などではない! いくら歳月が掛かろうと、妾は竜族をこの世から葬り去る!」
そんなオルフェリアに諭すように言葉をかけるティラ。
『いい加減、諦めて前を向け。いくら竜を狩ろうとも、お前が愛した平人の男が蘇るわけではないのだぞ』
「黙れ、黙れ! 知った風な口をきくな! 貴方に私の気持ちが分かるものか!」
オルフェリアのヒステリックな叫びが響く。
普段の老獪な態度はどこへ行ったのか、まるで子供のように泣き叫んでいる。
一同は呆気に取られて、その問答を見ている。
特にロウドは、いつも永遠とも言える歳月を経た先達として自分を導いてくれたオルフェリアが幼子のように駄々をこねているのを見て、目を白黒させていた。
『い、一体、どうなってんの? あのデカい竜と知り合いなの?』
そんな使い手の困惑を余所にヒートアップする口喧嘩。
『そもそも、そんな剣に成り下がったお前に何ができる? 身の程を知れ!』
「は、何を抜かす! 例え剣になろうとも我が力、衰えてはおらん! 竜相手なら制約抜きで戦えるわ!」
『ほう。なら、試してみるか。その全力を持って私に一撃くれてみるがいい。私に傷を負わせることができないのなら、あの黒竜王の相手など夢のまた夢よ!』
「くっくくく。妾も甘く見られたものよな……ロウド、妾を天にかざせ!」
いきなり話を振られて面食らうロウド。
「え、え?」
「早うせい!」
「わ、分かったよ」
オルフェリアを天に向けてかざすロウド。
「ティラよ。我が全力の一撃、受けてみよ!」
『己が思いを押し通したいなら、力を示せ! 力を持たぬ思いなど、押し潰されて終わるのみ!』
ピーカンの晴天だった空が曇り始めた。どんよりとした黒雲が空を覆う。
そして、その黒雲を幾条もの青白い雷光が切り裂く。
「おおお、招雷!」
黒雲より雷鳴を轟かせて雷が一条落ち、天に掲げたオルフェリアの刀身に宿る。
「よし! ロウドよ、ティラに向けて思いっ切り突きをかませ!」
刀身をバチバチと雷光に包まれながらオルフェリアの指示が飛ぶ。
「突き?!」
「そう、突きじゃ!」
「分かった! せいやぁ!」
雷を纏ったオルフェリアを、海面から首をもたげている大海竜に向けて、ロウドは渾身の突きを放った。
当然、刀身が届くわけは無いが、オルフェリアがやれと言った以上は信じてやるしかない。
その結果はどうなったか。
刀身から迸る、さながら青竜の吐息の如き雷の光条。
先程の落雷のエネルギーにオルフェリアの刀気を加えた一撃である。
「食らえ、ティラ! 雷光突き!」
オルフェリアの雄叫びと共に、ティラの巨体に炸裂する攻撃。
雷の一撃の熱量で、ティラの体に付いていた水が蒸発し、水蒸気に覆われて何も見えなくなる。
「オ、オルフェリア、今のは?」
あまりの一撃の凄さに腰が引けているロウドの言葉に、
「今のは妾の最大の一撃。これで駄目なら、打つ手は無い。詳しい話は後でしてやるから、今は黙っててくれ」
と答えるオルフェリア。
オルフェリアの攻撃は、果たして大海竜に痛手を負わせられたのか?
水蒸気が晴れ見えてきたのは、そこに変わらずにそびえ立つティラの巨体であった。
「駄目じゃったか」
悔しそうに言うオルフェリアだが、
「いや、傷を負わせた!」
というロウドの声に柄尻の宝玉を光らせる。
ティラの蛇のような胴体の一部が大きく抉れ、そこから青黒い血が吹きこぼれていた。
『アッハッハ! 傷を負ったのはいつぞやぶりか! さすがは我が妹、蒼雷姫オルフェリア!』
大海竜の腹の底から湧き出るような楽しそうな声が、ここにいる皆の頭に響き渡る。
「妹ですって?!」
「蒼雷姫?!」
ミスティファーとヴァルが声を上げる。
『さて、楽しませてくれた返礼はしないとな……これぐらいで死ぬなよ、我が妹の使い手よ』
ロウドを見やった後、息を大きく吸い込むティラ。
「いかん! 皆、何かに掴まれ!」
オルフェリアの声が響き渡った直後、ソレは放たれた。
超高圧の水の奔流が船すらひと呑みにする大口から放出され、二艘の船の真ん中の海面に直撃する。
先程などとは比べ物にならない勢いで揺れる海面。発生した波の高さは、客船や海賊船の帆柱を越えていた。
この大荒れにはひとたまりもなく、二艘の船は逆巻く海に転覆した。
いくらオルフェリアの助言で船縁などを掴んでいても船自体が転覆したら、もうどうしようもない。
船と共に逆巻き渦巻く海面に呑まれていく一同。
「う、うわあ!」
波に呑まれ海中へと沈んでいくロウドの意識は、あえなく途切れた。
大海竜、そして蒼雷姫 終了
「ヴァル!」
「あの古大鬼の持つ斧、魔力が篭められているのか?」
ミスティファーが悲鳴を上げ、イスカリオスはレグの持つ首切りの斧の推察をする。
「よく分かったわね、魔術師。アレは闇の大聖母様が古大鬼の一族に下賜された由緒正しき神器。魔器ですらない、雑魚の使っていたのを流用していた物などとは格が違うのよ」
術で生み出した茨で、〈自由なる翼〉の面々を拘束し続けているパメラが心持ち自慢そうに説明する。
「ふん。そんなもん持ち出さなきゃ、ヴァルには勝てなかった、ということだな」
コーンズが鼻を鳴らして小馬鹿にするように呟く。
「ま、それは言えるわね。レグもいい薬にはなったんじゃないのかな。今まで格下の連中を大鬼としての基本スペックだけで圧倒してきたから全然腕が上達してなかったみたいだし」
コーンズの挑発をさらりと受け流して、劣勢のリーズの方へと目を向ける魔少女。
「ああ、リーズ様! あのガキ~、屠竜剣持ってるからっていい気になりやがって!」
お嬢様然とした外見からは想像もできない柄の悪い言葉が飛び出る。
「リーズ様から手を出すなと言われてなければ、あんなガキぶっ殺してやるのに!」
ドンドンと苛ただしげに足を踏みならすパメラ。その眼光には、気が弱い者なら卒倒するような殺気が篭められていた。
『よし! コイツの注意が向こうに向いてるうちに……』
パメラが熱くなり注意が散漫になってる今が好機と見て、コーンズが静かに屈み込み、ブーツに仕込んである小さな刃物を取り出した。
それを使って、己を縛る茨を切りにかかる。
イスカリオスがパメラとコーンズの間に静かに位置を変え、茨を切っているのがバレないようにカバー。
「ねえ。あのオルフェリアって魔剣、追っ手がかかるぐらいにヤバいの?」
パメラの注意を逸らせるために話しかけるミスティファー。
「ん? あ~、貴方たち、あの屠竜剣がどれだけの代物なのかも知らないで一緒に行動してるんだ? アレはね、数ある魔剣の中でも別格。あの忌々しき太陽神の〈天の栄光〉と同じく神器なんだから」
パメラの可憐な口から語られるオルフェリアの由来。
「神器?! オルフェリアが神の作りたもうた物だというの?!」
「ええ。 そういえば奇遇よね。戦いに敗れ、失意の元に肉体を失ったアレを拾い上げ、魔剣へと生まれ変わらせたのは、他でもないわ。貴方の信じる豊穣の神よ」
次から次へと明かされる衝撃の真実。
オルフェリアが神器であることも驚きであるが、それを生み出したのがミスティファーの信仰する豊穣と慈愛の女神とは。
「豊穣と慈愛の女神がオルフェリアを生み出した? そんな……ん、ちょっと待って。今、生まれ変わらせたって言ったわね。魔剣になる前は一体、何だったの?」
気を逸らせるために話しかけたということも忘れ、オルフェリアの正体をガチで追及にかかるミスティファー。
「それは……!」
パメラがミスティファーの質問に答えかけた時、船を揺れが襲った。
海面が大きく揺れたのだ。
「な、何だ! この揺れは?!」
「お、おい! あそこ見ろ!」
騒ぎ出す船員。
その中の一人の船員が指し示す方向の海面は大きく盛り上がっていた。まるで何かが浮上するかのように。
皆が固唾を飲む中、海面を割ってソレは姿を現した。
船よりも巨大な、角を四本備えた頭部。そして、それに続く青緑色の太く長大な蛇に酷似した、どこまで続いているのか分からない胴体。
「大海蛇……」
船員の一人が呆然と呟く。
しかし、それの呟きを船長が修正する。
「大海蛇なんてもんじゃねえ! コイツは、コイツは! 海の魔物の総大将、大海竜ティラだ!」
竜の祖、黒竜王アハトと唯一互角に戦うことのできる大海竜ティラ。
ソレが今、ここに顕現した。
その想像を絶する巨体に圧倒され、そこから発せられる濃密な妖気にも当てられて、人・魔族を問わず、ここにいる者全てが恐怖し萎縮していた。
いや、ただ一人 (?)動くモノがいた。
「そうか。ここら辺の海域は、棲み家の目と鼻の先であったか」
オルフェリアだ。
そのオルフェリアの呟きに気付いたのか、視線を向ける大海竜。
『覚えのある魔力を感じたので来てみれば、お前か。オルフェリアよ』
牙の生え揃った口を開き、短く吠える大海竜。それに篭められた意思は、皆の心に直接響いた。
さすが高等な知性ある竜、念話の類いを使えるようだ。
『久しいな。ところで、まだ竜を殲滅するなどと世迷い言を言っているのか?』
ティラの言葉にムキになって反論するオルフェリア。
「世迷い言などではない! いくら歳月が掛かろうと、妾は竜族をこの世から葬り去る!」
そんなオルフェリアに諭すように言葉をかけるティラ。
『いい加減、諦めて前を向け。いくら竜を狩ろうとも、お前が愛した平人の男が蘇るわけではないのだぞ』
「黙れ、黙れ! 知った風な口をきくな! 貴方に私の気持ちが分かるものか!」
オルフェリアのヒステリックな叫びが響く。
普段の老獪な態度はどこへ行ったのか、まるで子供のように泣き叫んでいる。
一同は呆気に取られて、その問答を見ている。
特にロウドは、いつも永遠とも言える歳月を経た先達として自分を導いてくれたオルフェリアが幼子のように駄々をこねているのを見て、目を白黒させていた。
『い、一体、どうなってんの? あのデカい竜と知り合いなの?』
そんな使い手の困惑を余所にヒートアップする口喧嘩。
『そもそも、そんな剣に成り下がったお前に何ができる? 身の程を知れ!』
「は、何を抜かす! 例え剣になろうとも我が力、衰えてはおらん! 竜相手なら制約抜きで戦えるわ!」
『ほう。なら、試してみるか。その全力を持って私に一撃くれてみるがいい。私に傷を負わせることができないのなら、あの黒竜王の相手など夢のまた夢よ!』
「くっくくく。妾も甘く見られたものよな……ロウド、妾を天にかざせ!」
いきなり話を振られて面食らうロウド。
「え、え?」
「早うせい!」
「わ、分かったよ」
オルフェリアを天に向けてかざすロウド。
「ティラよ。我が全力の一撃、受けてみよ!」
『己が思いを押し通したいなら、力を示せ! 力を持たぬ思いなど、押し潰されて終わるのみ!』
ピーカンの晴天だった空が曇り始めた。どんよりとした黒雲が空を覆う。
そして、その黒雲を幾条もの青白い雷光が切り裂く。
「おおお、招雷!」
黒雲より雷鳴を轟かせて雷が一条落ち、天に掲げたオルフェリアの刀身に宿る。
「よし! ロウドよ、ティラに向けて思いっ切り突きをかませ!」
刀身をバチバチと雷光に包まれながらオルフェリアの指示が飛ぶ。
「突き?!」
「そう、突きじゃ!」
「分かった! せいやぁ!」
雷を纏ったオルフェリアを、海面から首をもたげている大海竜に向けて、ロウドは渾身の突きを放った。
当然、刀身が届くわけは無いが、オルフェリアがやれと言った以上は信じてやるしかない。
その結果はどうなったか。
刀身から迸る、さながら青竜の吐息の如き雷の光条。
先程の落雷のエネルギーにオルフェリアの刀気を加えた一撃である。
「食らえ、ティラ! 雷光突き!」
オルフェリアの雄叫びと共に、ティラの巨体に炸裂する攻撃。
雷の一撃の熱量で、ティラの体に付いていた水が蒸発し、水蒸気に覆われて何も見えなくなる。
「オ、オルフェリア、今のは?」
あまりの一撃の凄さに腰が引けているロウドの言葉に、
「今のは妾の最大の一撃。これで駄目なら、打つ手は無い。詳しい話は後でしてやるから、今は黙っててくれ」
と答えるオルフェリア。
オルフェリアの攻撃は、果たして大海竜に痛手を負わせられたのか?
水蒸気が晴れ見えてきたのは、そこに変わらずにそびえ立つティラの巨体であった。
「駄目じゃったか」
悔しそうに言うオルフェリアだが、
「いや、傷を負わせた!」
というロウドの声に柄尻の宝玉を光らせる。
ティラの蛇のような胴体の一部が大きく抉れ、そこから青黒い血が吹きこぼれていた。
『アッハッハ! 傷を負ったのはいつぞやぶりか! さすがは我が妹、蒼雷姫オルフェリア!』
大海竜の腹の底から湧き出るような楽しそうな声が、ここにいる皆の頭に響き渡る。
「妹ですって?!」
「蒼雷姫?!」
ミスティファーとヴァルが声を上げる。
『さて、楽しませてくれた返礼はしないとな……これぐらいで死ぬなよ、我が妹の使い手よ』
ロウドを見やった後、息を大きく吸い込むティラ。
「いかん! 皆、何かに掴まれ!」
オルフェリアの声が響き渡った直後、ソレは放たれた。
超高圧の水の奔流が船すらひと呑みにする大口から放出され、二艘の船の真ん中の海面に直撃する。
先程などとは比べ物にならない勢いで揺れる海面。発生した波の高さは、客船や海賊船の帆柱を越えていた。
この大荒れにはひとたまりもなく、二艘の船は逆巻く海に転覆した。
いくらオルフェリアの助言で船縁などを掴んでいても船自体が転覆したら、もうどうしようもない。
船と共に逆巻き渦巻く海面に呑まれていく一同。
「う、うわあ!」
波に呑まれ海中へと沈んでいくロウドの意識は、あえなく途切れた。
大海竜、そして蒼雷姫 終了
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